お役立ち情報

COLUMN

TOPATO通信遺留分への対策はお早めに 5363号

ATO通信

5363号

2022年8月31日

高木 康裕

遺留分への対策はお早めに

 相続の際には揉めることが無いようにと、遺言を用意しておくとします。円満相続のための第一歩といったところでしょうか。その際、相続人には遺留分という最低限の権利があるため、一定の配慮が必要になってきます。もし遺留分を侵害してしまうと争いに発展するケースだって有り得ます。遺留分への事前対策ができるか否か、それが運命の分かれ目なのかもしれません。


1. 遺留分とは

 自分の財産、相続が起きたら誰に何をどのように引き継がせるかを、自分で決めることができるのは当然です。つまり、遺言書を作成すれば、自分の意志のもと財産の承継方法を指定することができます。
 しかし、特定の親族や親族以外の人に全財産を渡してしまうと、残された相続人は住む家すら失ってしまうかもしれませんし、生活に困窮することだってあり得るでしょう。そこで、相続人には一定割合の財産を取得する権利が保障されており、これを遺留分といいます。そのため、遺言書で定めた財産の取得額が遺留分に満たない場合には、その足りない分を請求することができ、これを遺留分侵害額請求といいます。ちなみに、この遺留分は兄弟姉妹にはありません。相続人が兄弟姉妹の場合には、遺言書を作成しておけば争いが生じることは無いのです。
 この遺留分は、相続人が直系尊属(両親や祖父母)だけの場合は財産の1/3、それ以外の場合は1/2が対象です。例えば、相続人が配偶者と子2人の場合は遺留分の対象は1/2です。各相続人はこれを法定相続分で分けることになるので、配偶者は1/4,子は1/8ずつの遺留分を有するという具合です。


2.遺留分の計算方法

 遺留分の対象となる財産の計算方法を確認します。

 遺留分の対象となる財産 = 相続財産 + 生前贈与財産※ - 相続債務  
(財産は時価計算) 

  ※加算対象の生前贈与財産は次のものです。
  (1) 相続開始前1年以内の贈与
  (2) 遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与
  (3) 相続開始前10年以内の相続人に対する特別受益としての贈与
     (婚姻・養子縁組・生計の資本のための贈与)
 それでは、特定の相続人ができるだけ多くの財産を承継できるように、遺留分への対策を考えてみましょう。


3.遺留分の生前放棄は可能?

 家庭裁判所の許可があれば、相続人は遺留分を生前に放棄することができます。したがって、これができれば遺留分を気にせずに柔軟な遺言書の作成が可能です。ただし、裁判所に認めてもらうには合理的な理由が必要になります。一般的には、「遺留分放棄の代償と考えられるような相応の生前贈与を受けた。よって私には遺留分は必要ない。」というような理由です。しかし、遺留分を放棄させたい相手とは、そもそも多額の財産を渡したくない相続人ではないでしょうか。そうするとこの制度、実務的に利用できるケースは限られることでしょう。


4.生前贈与を活用する

 遺留分の計算に組み込まれる生前贈与は、通常は長くても過去10年間のものです。多額の生前贈与であっても悪意が無ければ10年より前のものは関係ありません。
 つまり、早いうちからの計画的な贈与が功を奏します。
 例えば、取引時価が1億円のマンションを所有しているとしましょう。遺留分の計算では当然1億円の財産としてカウントされます。しかし、相続税評価額は2~3千万円程度ということはよくある話です。そこで、生前に贈与をしてしまいます。贈与税は相続税評価額で計算しますが、10年経てば遺留分の対象額からは時価の1億円分が減少します。ご自宅マンションであれば、配偶者贈与の2000万円控除を利用することで贈与税を軽減することができます。また、相続時精算課税の2500万円控除も利用価値があるかも知れません。
 いずれにしても、早い段階からの計画的な生前贈与が実は遺留分対策にもなるのです。ポイントは、時価と相続税評価額の差額が大きいものを移転することです。


5.生命保険金の活用

 生命保険金は、民法上は相続財産ではありません。あくまで受取人固有の権利だからです。したがって、遺留分の計算対象から生命保険金は原則除外されます。預金や株式を解約して、一時払終身保険へと変更してしまえば、遺留分の計算対象はその分減少します。相続直前は問題になりそうなので、余裕を持って実行しましょう。


6.不動産の法人化

 不動産も同じです。所有する不動産を同族会社へ適正価格で売却して法人化します。売却代金は計画的な生前贈与で減らすとともに、保険金に代えてしまいましょう。そうすれば遺留分の計算対象から消えてしまいます。悪意と見られるような行き過ぎた行為はダメですが、相続対策の一環ならばリスクは軽減することでしょう。遺留分を気にするなら、早めの遺言と対策です。

※執筆時点の法令に基づいております