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今月の言葉

2014年2月1日

祭祀主宰者

民法(祭祀に関する権利の承継)
第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 お墓は、民法上、相続財産の例外として扱われている。その例外規程が上に掲げた民法897条である。この規程は何を定めているかというと、まずお墓を継ぐ人は一人だけということである。それはどういう人かというと、地域等の慣習によって「跡継ぎ」とされている人(ふつうは長男だが、家業があって女子や次、三男が跡を継いでいるような場合は家業の跡を継いだ人の時もある)である。

 ついでに言えば、お墓には相続税はかからない。民法のこの規程は、どういう考えから出来ているのだろうか。通常の相続財産に関する民法規程を援用すると、相続人という者は多数出来ることになる、何代かの相続を繰り返す内には、その数はねずみ算式に増えてしまい、親戚の行き来も途絶えるので、お墓の管理について権利者同士で話し合って決めたりすることが出来なくなる。だからお墓は「本家のお墓」として長子が継いでいき、嫁いだ女子や、年少の男子は別の墓に入るなり墓を買うなりすべきだと言うことなのである。

 さらにお墓に相続税がかからない理由は、墓が換金できるものではなく、先祖の祭祀のための祭具(祀るための道具)であるからということになる。お墓を継ぐ人は、その祭具を用いて先祖を祀る責任も同時に継ぐことになる。

 一方、たとえば貴方の長男が特定の信仰を持っていて、死後自分を望むような形には弔ってくれないかも知れないような場合、貴方は遺言で別の人を自己の祭祀主宰者に指定することが出来る。この場合は赤の他人の指定も可である。身寄りのない人が、世話をしてくれた第三者を指定することも可能である。もし貴方が先祖の墓の管理者であれば、先祖の墓は子供に、自分の祭祀は第三者に分けて委ねると遺言することも出来る。貴方が特別な宗教の信徒である場合その宗教の関係者を主宰者に指定することも可能である。先祖代々の墓はお寺にあっても、自分だけキリスト教会の墓に入るという人もいる。

 だが、主宰者に指定された方が迷惑という場合もある。そこで、民法は祭祀主宰者がどのように祀るかを定めていない。散骨しようが、何をしようがそれは主宰者の裁量である。本家の跡継ぎが、お墓を荒れ放題にしても、罰せられたり課税されたりすることはない。だから、貴方はよくよく考えて、自分が望むように「祀って」くれそうな、信頼のできる人を、自分の祭祀の主宰者に指定しなければならない。そうでないと、(宗教によっては)間違った死後の世界に行ってしまうことになりかねない。