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今月の言葉

2015年11月1日

猫まんま

 本誌に、二回にわたって犬族の会議について書いたところ、発行元の税理士法人内に猫の愛好家がおられて、「あれだけ犬を取り上げたのだから猫も書いてほしい」という要望が、編集担当者を通じて寄せられた。

 正直に言うとこの稿の筆者は、猫と暮らした経験がない。犬と猫とどちらが好きかという問題ではなく、生まれたときから身近に犬がいたのであって、猫とはほとんど個人的な友好関係を結ぶに至らなかっただけである。かろうじて、小学校時代の学友次郎君が飼っていたトラという名の猫と、母方の伯母の家にいたやはりトラ猫(筆者より年長のおばあさん猫だったように思う)だけが、筆者のことを個人として認識してくれて、先方の機嫌の良いときはフニャアと挨拶にすり寄ってきてくれた。が、猫は元々犬より気まぐれだから、次郎君の家や、伯母の家に遊びに行っても、猫が遠くの方であくびをしていて全く筆者に関心を示さない日もあった。

 筆者の猫とのつきあいはまあそんなものなので、どうも猫について何かを書けるだけの材料がない。と、思ったら、ひとつだけ「猫まんま」については書けそうだということが分かったので、それで文責を塞ぐこととする。

 「猫まんま」とは、文字通り猫が食するご飯のことである。キャットフードなどという商品が市場に出回るようになったのは、第二次世界大戦後のことであるから、それまでの日本では、家庭に飼われている猫は、概ね人間のご飯のお下がりを食べて暮らしてきた。敢えて残飯とは言わない。猫好きの人はそれなりに心を込めて人間のご飯を調進していたはずである。それが「猫まんま」である。「猫まんま」には定義がある訳ではなく、猫用に人間の食べものをアレンジしたもの、というに過ぎない。が、猫の立場になれば、おかず、ご飯、汁が別々に出てきたとて、箸を持って食べる訳ではないから不便である。よって、「猫まんま」とは概ね人間の食事をall in oneにしたものであると言える。

 さて、関西と関東では、「猫まんま」のイメージがちがう。関西の「猫まんま」は、汁掛け飯(先般「味噌汁」の項で筆者が「ポチ飯」と称したものに近い)、関東は混ぜご飯(とくに鰹節を混ぜたご飯)のことを「猫まんま」と呼ぶらしい。なぜ関西がwetで関東がdryなのかはよく分からないが、日本史の流れから想像するに、まず汁掛け飯が生まれ、後に混ぜご飯となっていったと考える方が自然ではないかと思う。

 この稿の筆者は、wet、dryいずれの「猫まんま」も大好きである。とくに独身時代は、よく風邪を引くと自分で「猫粥」という、卵と鰹節とが入った粥に醤油で味付けしたものをつくって食べていた。また、混ぜご飯の方も、シラスと鰹節入り猫まんま、猫まんま炒飯、青海苔とおかかの猫まんま、鰹節生卵かけご飯等々すぐに豊富なバラエティーを思いつき、つくることができる。

 ただ、猫の健康を考える立場からは、注意を要することがある。猫は、人間はもちろん犬に比べても炭水化物の消化能力が低い。また人間と比較すると腎臓の能力が低いので、人並みの塩分を摂取すると過剰な負担がかかるのだそうだ。だから、人間の食する米飯を(汁掛けにしろ、混ぜご飯にしろ)人間の味付けで猫に与えることは、猫の健康には良くない。人猫共貧しかった昔はともかく、猫も食べたいだけ食べられるようになった現代においては、猫向きの、薄い味付けの、炭水化物の少ないキャットフードの方が、猫には良い。「猫まんま」は人間が食べれば良いのだ。

タマネギ中毒に注意!タマネギ、ニンニク、ニラなどは「猫まんま」に入れてはいけない。
タマネギ中毒(From Wikipedia) タマネギなどの摂食を原因とする犬、猫や、ウシなどの食中毒のことである。サルなどは、タマネギ中毒にはならない。タマネギ、ニンニク、ニラなどのネギ属に含まれるアリルプロピルジスルファイドなどがヘモグロビンを酸化させることにより、溶血性貧血を起こすことによるもの。タマネギ中毒起因の溶解性貧血が発生すると、赤血球内のカリウムが血液中に流出し高カリウム血症に伴う死亡の危険が高まる。