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今月の言葉

2017年10月1日

洋館散歩

 たとえば貴方が、自営業を子供に譲った、会社を定年で退職した、子供が就職して地方に赴任した等々の理由で、いくらか暇になったとする。

 もちろん、第二、第三の人生を求めて、儲からなくてもよいからなにかのお仕事に就く、と言うのもひとつの考え方だろう。が、もう一方で悠々自適、これまでの人生で忙しくて出来なかったことを、身体が元気な内にしてみる、という考え方もあってもよい。

 しかし、悠々自適も初めのうちは良いが、読書にしても映画や芝居を見るにしても、グルメツアーにしても、そうそうひとつのことは続かない。これまでの人生が忙しい人ほど、やりたかったこと、できなかったことが意外にも少ないことに気づくはずだ。

 そんな時は、他人様のお勧めに素直に耳を傾け、これまで思ってもいなかったことをしてみる機会を探して、気持を若く、挑戦してみることをお勧めしたい。

 と、言うわけで、今月のお勧めは、洋館散歩。東京都内にある明治、大正、昭和の歴史的建造物を見物する散歩である。

 まずは、東京駅。(辰野金吾設計、1914年12月竣工)丸の内の駅舎そのものが2012年10月に建築時の姿に復元されて、公開された。とくに正面から見た南北のドームは、東京大空襲で焼け落ちて以来、仮屋根がかかっていたのが、元の姿に戻った。この稿の筆者などは終戦後の生まれなので、元の姿を写真でしか知らなかったが、なるほどドームを復元してみれば、仮屋根よりはよほど駅舎のたたずまいにあっているように思える。駅舎はもちろん電車の乗り降りに使われているが、ほかに駅舎内の東京ステーションホテルでお茶を飲み(ほんとうは、夜にバーでカクテルを飲むのがお勧め)東京ステーションホテルギャラリーを見てから帰るのもよい。

 東京駅を丸の内の方角に出ると、三菱一号館の赤煉瓦建築(ジョサイア・コンドル設計1894年竣工)が、近代的なビルに張り付いている。これは2010年にレプリカとして復元されたものだが、かなり精緻に昔のたたずまいを残し、内部は美術館として運営されている。その昔丸の内一帯は、三菱の赤煉瓦街として有名であった。そのよすがを偲ぶ建物は、このレプリカ一棟になってしまっている。東京駅を八重洲側にくぐり抜け、少し歩くと、丸の内駅舎と同じ辰野金吾設計の日本銀行本館の旧館(1896年竣工)がある。内部は残念ながら日本銀行の業務に使われていて一般人は入れないが、外から見ても堂々たる洋館だし、少し上から見ると建物が円の形をしているという説もある。向かいには貨幣博物館があって、古今東西の貨幣や紙幣を見ることが出来る。

 以上の洋館は、いわば業務用のビルディングであるが、やや小規模な邸宅風の洋館三箇所を紹介しておく。いずれもお金を払うか客になれば入ることが出来る。

JR駒込駅より旧古河邸庭園内の大谷美術館
(ジョサイア・コンドル設計1917年竣工)。

大江戸線赤羽橋駅より綱島三井倶楽部
(ジョサイア・コンドル設計1913年竣工)。

JR目黒駅より東京都庭園美術館本館
(アンリ・ラパン内装設計1933年竣工)。