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今月の言葉

2019年1月1日

この国の未来

 一昨年の後半、日本を代表する製造系の大企業が、自社製品の検査数値をごまかしていたことが、続々判明した。神戸製鋼、三菱マテリアル、日産自動車、スバル、東レ等々がそれである。個々の事例の詳述は避けるが、要するに我が国製造業の競争力の原点であった、精細なものづくりの信用にケチがついたと言う意味で、これらの事件の影響は計り知れない。技術立国日本を世界に誇っていた時代を知っている世代としては、これからの日本は、何をプライドに生きていけば良いのか、この国の未来に暗澹とせざるを得ない。

 何故このようなことになってしまったのか。

 まず、上記のごまかしは、最近起きた事象ではなく、それぞれの企業で十数年、あるいはそれ以上の長きにわたって行われてきた点に注目したい。およそ、「バブル経済の崩壊」「その後空白の二十年」を経て、平成年間を通じてこれらのごまかしが企業の内部を蝕んできた。

 この時代の企業に起きた事どもを整理してみよう。高度成長期の終身雇用、年功序列による雇用形態は終末を告げ、企業内における分社化、あるいは事業部への権限分散と下部への経営責任の丸投げ、経営者による信賞必罰という名の単なる業績数値の追求、正規雇用労働者の減少と、派遣社員等非正規雇用比率の増加、そして、国全体の貧富格差の増大などが起きた。

 この稿の筆者がかねがね、不思議に思っているのは、貧富の格差が拡大する一方で、雇用の保証という意味でも、この時代日本は上に厚く下に薄い社会になっていったことだ。その結果、末端の非正規労働者からは、企業の中でまじめに働くモチベーションが奪われ、中間の正規労働者層は、経営者から課された業績目標数値の死守だけが自己の生き延びる方途となり、経営者でさえも、在任期間中の数年以内の業績数値だけが自らの老後を決定してしまう要素となった。

 誰もが永年培われてきた企業のブランドや信用とか、二十年、三十年先の企業や国の未来に、関心を払わず、責任も負わない様になってしまったのだ。

 紙数が尽きそうなので、これらの事態を解決する未来への処方箋を簡単にスケッチしたい。

それは貧富と雇用保証のトレードオフによるハイリスク・ハイリターン社会の実現である。

 年収400万円未満は、65歳まで終身雇用。年収400万円-1000万円までは、55歳までの正規雇用とその後10年間の非正規労働者としての就業保証。年収1000万円以上は2年間で更新される雇用契約というのが、この稿の筆者のアイディアである。

 企業は、景気その他の理由による売り上げの上下に応じて、労働者を増やしたり、減らしたりしたい。だから、末端に非正規雇用の労働力を置く配置は、企業にとって都合が良い。しかし、社会全体の安定と、国民の福利を考えれば、末端層の終身雇用こそが大切であり、また戦後日本の経済競争の原動力でもあったことを忘れてはなるまい。一方で、沢山稼いで良い暮らしをする者は、失敗すればクビになるリスクを負うのが当然ではないかと思うのである。