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TOPえ〜っと通信税金安夫の税務講座・住宅購入編 149号

え〜っと通信

149号

2013年9月13日

秋山 友宏

税金安夫の税務講座・住宅購入編

自宅購入でできるだけ多くのTAXメリットを受けるぞ!!
~区分所有登記と共有登記はどちらがよいか~


1.住宅ローン控除と住宅資金贈与の非課税

 マイホーム購入代金は即金払、といきたいところですが、住宅ローンのお世話になる人も多いでしょう。返済期間10年以上の住宅ローンであれば、所得税で住宅ローン控除の適用が考えられます。また、両親や祖父母からの資金援助であれば住宅資金贈与として平成25年は最高1,200万円まで非課税になります。これら2つの制度は、併せて適用することもできます。それぞれ適用要件が設けられていますが、今回は、床面積の要件にスポットを当てることとします。


2.床面積の要件

 まずは、住宅ローン控除。床面積は「50平方メートル以上」とされています。これに対して、住宅資金贈与は、「50平方メートル以上240平方メートル以下」とされ、上限が設けられている点が異なります。この場合の床面積は、登記簿に表示されている床面積(以下「登記面積」という。)によります。購入の際にパンフレットや設計図を見て、52平方メートルと表示されていても安心できません。登記面積は50平方メートルに満たないこともあります。周囲に壁のないベランダやバルコニーなどは登記面積に含まれないからです。では、単独所有ではなく共有の場合はどうなるでしょう。登記面積80平方メートル、夫婦で2分の1ずつの共有の場合、40平方メートル(80平方メートル×1/2)にはなりません。共有者が何人いても、床面積は登記面積(80平方メートル)で判定します。
 分譲マンションの場合はどうでしょう。壁やサッシ、ドアで区切られた内側の専有部分と玄関ホール、階段、エレベータ室などの共用部分に分かれます。前者の専有部分についてされた登記を区分所有登記といい、その登記に表示された床面積で判定します。したがって、共用部分は含みません。
 2世帯住宅の場合はどうでしょう。建物内で行き来できる構造の場合は、一部の例外を除き、区分所有登記できません。そのため、子世帯と親世帯の合計の登記面積で判定します。なお、建物内で行き来できない構造で、区分所有登記できない構造体の場合も全体の登記面積で判定します。建物内で行き来できない構造で、それぞれの部分を区分所有登記できる構造体の場合は、登記方法で結論が変わります。区分所有登記をすれば専有部分(自己の使用部分)の登記面積で、しなければ全体の登記面積で判定します。


3.念願の新居が完成、でも相続税は・・・ 

 安夫さん世帯と親世帯との合計床面積は350平方メートルを超える豪華プランになりました。建築資金は、住宅ローン3,000万円、父親からの贈与1,200万円、残額は自己資金を充てることにしました。贈与を受けた1,200万円について、住宅資金贈与の非課税の適用を受けるには、登記面積を240平方メートル以下にする必要があります。そのため、区分所有登記可能な構造体を選択しました。
 念願の2世帯住宅(省エネ住宅)が完成し、無事、区分所有登記(安夫さん世帯の建物の登記面積200平方メートル)も完了しました。軽減された税額を計算すると、所得税は、住宅ローン控除が10年間で200万円(20万円×10年間)、贈与税は、住宅資金贈与で320万円相当(「1,200万円-基礎控除110万円」に対する税額)、合計でなんと520万円にもなり、満足、満足。
 マイホームも手に入れたことだし、次は父の相続税対策ということで、ATOの初回無料相談を利用することにしました。するとATOの春山税理士に、『区分所有登記の2世帯住宅にお住まいですね。平成26年1月以後の相続からですが、お父様世帯部分の敷地のみが小規模宅地の80%減額特例の対象になります。もし、共有登記にしていれば安夫さん世帯部分の敷地も適用できたのですが。まあ、ザーットですが、相続税額で約2千万円の差ということですね。』と言われてしまい目の前が真っ暗に。住宅ローン控除が終わり次第、共有登記に変更できるのか? できたとしても相続開始の方が早いのか?  


4.念のため通達改正を待ちましょう  

 実は、住宅資金贈与に床面積の上限が設けられたのは平成24年からなのです。安夫さんのように区分所有登記にして面積要件をクリアした人もおられるかもしれません。そうしたら、今度は、2世帯住宅に関する小規模宅地の改正です。区分所有登記をすると、被相続人の区分所有部分に対応する敷地のみが被相続人の居住用とされたのです。区分所有登記から共有登記への変更もできるようですが、抵当権が設定されている場合などは厄介なようです。2世帯住宅の場合の小規模宅地の特例、これまで国税庁の通達(取扱い)で法令の規定をゆるめる執行がなされてきました。今回の法令改正に伴い通達も改正されることと思います。今は慌てず、まずは、改正内容が明らかになるのを待つことにしましょう。

※執筆時点の法令に基づいております