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TOPATO通信本年分確定申告の総括-税務署の審判はこれからです- 5106号

ATO通信

5106号

2001年3月29日

高木 康裕

本年分確定申告の総括-税務署の審判はこれからです-

今年も確定申告は終了しました。弊社でお手伝いをした事案の中で、今後の皆様の参考になりそうな事柄のご紹介特集です。ご注意頂く点、見習うべき点、お役に立てれば幸いです。


1.共有なのに一人で申告、売却時の申告は?

母子で半分ずつ共有の土地がありました。 月極駐車場です。所得税ではこんな時、実際の管理状況や使用方法に関係なく、半分ずつ、二人で申告することになります。登記簿上の所有関係だけで決まってしまうのです。 さて、上記の状況で長年にわたり、母が全額を一人で申告していました。勿論間違いです。が、税務署もいちいち登記簿と照合なんかしていません。それはそれで指摘も受けなかったのです。 問題は、この土地を売却することになり、事業用資産の買換えの適用を受けようとしたことです。税務署に相談に行ったそうです。本来は共有なので、二人とも買換え特例の適用を受けたい旨を話したら、答はNO。 母は申告をしているため適用できても、子は無申告だから駄目と言うのです。 こんな時、税務署は決して救いの手を差しのべてはくれません。解決策はただ一つ。今から過年分を修正し、二人の申告のやり直しです。母は減額、子は増額で、若干の附帯税はかかっても、本来の姿に戻せばいいのです。これでも駄目なら、あとは得意のどなりこみ作戦。声の大きさなら自信はあります。


2.いつまで事業の用に供したか?

同じく事業用資産の買換えです。郊外に約千坪の土地をお持ちの地主さんで、その土地で貸し倉庫を営んでおられました。 倉庫のテナントが退去したため、新たな借り主探しです。が、いい所まで話は行くものの決まらず、4年の歳月が経過。とうとう売却のご決断をなさったのです。 さて、事業用資産の買換えは、売却時点で事業用でなくても構いません。かつて事業用であれば、その後相当の期間内に売却すれば特例の適用は可能です。 10年前までは事業用と言われても、それは無理というもの。4年、5年は微妙です。期間的な事柄もさることながら、問題は事業用でなくなってから、転用があったのかどうかです。 子供が居住用に改造したり、事業以外の使用法があったりすれば、もはや、事業用ではありません。 今回のケースでは、テナント退去後、引き続き借り主を捜していたこと、他に転用がなかったことを、書面で証明できたため、問題はないものと思われます。


3.取得価額が不明でも、諦めないぞ!

 土地や建物を売却した際、税金はその売却によって得られた売却益に課税です。
言うまでもなく、この売却益、売却価額から取得原価や譲渡のための諸経費を控除して計算されます。 問題は10数年前に買った不動産の取得価額が、書類が火災で消失してしまっているため、不明なのです。税務上、相続等による取得のように、その年月が古く判然としない場合には、売却価格の5%を取得費として計算して良いことになっています。 今回も勿論これで計算はできるのですが、5%では実際よりも少な過ぎ、不利になってしまうのです。5%が嫌なら真実の金額を証明でる書類で立証する必要が生じます。が、火災でそれは無理。
このお客様、当時の売り主である不動産屋に、自分と同じ契約書の控えがあると考えたのです。やっと探し当てた不動産屋でしたが、運悪く既に倒産。これにもめげず、元社長の自宅を突き止め、概ねこの金額である旨の念書を印鑑証明付きで取ってきたのです。
なんたる執念、お見事の一言です。パチンコで2~3千円投資して、出ないと直ぐに諦める筆者とは大きな違い。大いに見習うべき姿です。但し、これで税務署が納得するかどうかは、今後の課題です。執念に栄光あれ!

※執筆時点の法令に基づいております