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税務署の調査結果に不服あり!~不服申立制度のご紹介~

 7月から12月は税務調査が多く行われる時期です。
 税務署が調査した結果、申告内容に誤りがあるとの指摘や重加算税がかかると説明を受けたが、納得できずに不服がある。そんなときの救済制度に関し、私が国税局・税務署・審判所に勤務していた際の経験を交えてご紹介します。

1.税務調査終了の際の手続き

 税務調査終了の際は、調査官から調査結果の内容説明として、申告誤り等の金額とその理由などの口頭説明を受け、修正申告(期限後申告)を勧奨されます。
 修正申告の勧奨に応ずるかは、任意の選択となりますが、修正申告に応じなかった場合は調査結果に基づき更正等の処分をされます。
 なお、修正申告に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にありません。

2.不服申立制度

 税務署長等が行った更正等の処分に不服があるときは、その処分の取消し等を求める不服申立てをすることができます。
 不服申立ては、税務署長に対する「再調査の請求」と国税不服審判所長に対する「審査請求」の選択制となっています。そして、国税不服審判所長の裁決を受けた後、なお処分に不服があるときは、裁判所に「訴訟」を起こすことができます。
 私は、再調査の請求は処分した者と審査する者が同じ税務署長なので、あまり意味がないと思います。以下は、審査請求についてご説明します。

3.審査請求できる処分は?

 審査請求できるのは、更正や決定のほか、更正請求に対する更正すべき理由のない通知、重加算税の賦課決定など、税務署長が行った不利益処分が対象です。
 ところで、調査官の勧奨に応じて修正申告した場合は、税務署長は更正等の不利益処分をしないので、審査請求できなくなります。調査結果の内容説明に納得できないときには、修正申告するか慎重に検討してください。また、調査結果の内容説明の理由が不明確だというときは、更正等では理由付記が義務付けられていますので、書面で処分の理由等を確認することができます。更正通知書の理由付記をみてから、審査請求するか決めるのも一計です。
 基本的には、処分の理由等に誤りがあれば審査請求が認められることになります。例えば、調査官の言葉遣いや態度に対する不満は、お気持ちは分かるのですが、審査請求の場面ではいわゆる苦情として取り扱われてしまいますので、請求理由にはなりません。

4.審査請求にかかる費用や期間は?

 基本的に審査請求をするために国税不服審判所に支払う費用はありません 。
 国税不服審判所では、通常要すべき標準的な期間を 1 年と定めています。この間に裁決書という書面で判断結果が郵送されてきます。

5.どんな人が判断しているのか?

 通常は担当審判官1名、参加審判官2名の合議体というものが構成され、他に調査に従事する職員が担当者として指定されます。
 審判所は国税庁の特別機関ですが、より公正な立場から判断ができるよう、原則として、3名の審判官のうち最低1名は弁護士・税理士又は公認会計士などの民間専門家から登用された者が配置されています。

6.実際に認められた割合は?

 刑事事件の有罪率は99.9%といわれていますが、税務署長の処分に関する審査請求の処理状況はどうでしょうか。
 税務署長の処分の全部又は一部がダメと判断されたものは、下表の「認容」欄になりますので、1割前後の審査請求が認められたということになります。刑事事件と比べれば、審査請求が認められる割合はグンと高くなっています。

                   (単位:件、%)

区分取下却下棄却認容
令和3年度
(構成比)
321
(14.1)
98
(4.3)
1566
(68.6)
297
(13.0)
令和4年度
(構成比)
286
(9.1)
385
(12.2)
2263
(71.6)
225
(7.1)
                          

7.税務署側の処分に当たって

 税務署は税金を集める役所ですから、不利益処分の適正性が担保されていなければ、信頼できる組織とはいえないでしょう。そのような意味で、税務署は安易に審査請求の対象となる不利益処分ができません。更正見込み案件は、修正申告見込み案件よりも多くの職員が関与して慎重に検討されますので、調査担当者が意見を通すハードルは相当高くなります。

8.まとめ

 不服申立制度をご紹介しましたが、決して積極的に活用をお勧めする訳ではありません。税務署の調査結果に納得がいかないときは、信頼できる税理士とよく相談していただき、早めに調査官にご自身の考えを伝えることが大事です。不服申立制度は、1つのツールとしてご活用いただければ幸いです。

2024年7月18日

円滑な事業承継のための対策について

 資産管理会社などの非上場会社の事業承継を検討する際に最も重要な検討事項の一つが相続税等の税金対策です。資産管理会社のように常に黒字が見込まれる会社は株価が上昇し続けるため、株式の移転時における税負担が年々増加する傾向にあります。相続税への影響を考えると、株価が低いうちに後継者に株式を渡すことが効果的です。しかし、後継者の年齢が若い場合には多くの株式を渡すことに抵抗感を持つ方も少なくないでしょう。今回はそんな非上場株式の事業承継方法についてご紹介します。

1.事業承継の基本的な考え方

 業績が好調な会社であるほど毎期生み出される利益によって会社の財産が増えていきますので、株式の相続税評価額は年々増加していく傾向にあります。このように将来的に会社の株価上昇が予想される場合、株価がまだ低いうちに大部分の株を後継者へ贈与することで、将来の値上がりに係る相続税の負担を軽減できます。また、短期間に大きな値上がりが見込まれるものの、税負担が重い場合は相続時精算課税制度を活用することも有効です。相続時精算課税を適用した場合は相続税の計算に贈与財産が組み込まれてしまいますが、株式の評価は贈与時(値上がり前)の株価で固定されるため、値上がりによる相続税の負担を軽減することができます。このように資産管理会社の株式を計画的に贈与していくことが肝要です。
 しかし、家族間で円滑にコミュニケーションが取れている場合でも、税金が安いからといってまだ若いうちに多額の財産を所有させることや後継者が行う役員の選任や解任に対抗できなくなることに対して懸念を抱く経営者は少なくありません。このような場合、段階的に事業承継を行うための方法として、黄金株(拒否権付株式)や属人的株式を活用する手法が有効です。
 黄金株や属人的株式は基本的には普通株式と同様の相続税評価額とされているため、黄金株等を活用しても税負担が増加することはありません。ただし、黄金株を後継者以外が所有している場合には事業承継税制が利用できなくなる点には注意が必要です。

2.黄金株を利用する場合

 黄金株(拒否権付株式)とは、会社の重要な経営方針等を株主総会等において決議する際に、通常の株主総会の決議に加え、黄金株を持つ株主だけの株主総会での決議が必要となる株式です。この株式は事実上の拒否権を持ち、役員の選任や解任、報酬の決定、重要な財産の譲渡、新株の発行など多岐にわたり任意の拒否権を設定することができます。現社長が普通株式の一部を黄金株に変更して残りを後継者に譲渡することで、重要な経営判断に現社長の同意が必要となります。
 これにより通常の業務は後継者に任せつつ、重要な経営判断が必要な事項については現社長の承認が必要となる体制を作ることが可能です。ただし、黄金株の導入には登記が必要であり、強力な権利を確保しているため、取り扱いには注意が必要です。例えば、現社長が保持する黄金株が相続により後継者以外の相続人に渡ると後継者が重要な決定を下すことができなくなる可能性があります。
 したがって、黄金株が常に設定されている状況は望ましくありませんので、時期を見て普通株式に変更したり、遺言を通じて後継者が黄金株を確実に相続できるような出口戦略を考えることが重要です。

3.属人的株式を利用する場合

 通常は株主平等原則から、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければなりません。しかし、非公開会社では株主平等原則の例外として剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株主総会の議決権については定款で株主ごとに異なる取扱いを定めることができます。同族法人内においては、議決権以外の権利についてはみなし贈与として課税されるリスクがあるため、実務的には議決権について利用されることが多いと思われます。
 属人的株式が普通株式や黄金株と違う点は株式ではなく、株主に対して特別な権利を与えている点です。例えば現社長が所有している株式の議決権を1株につき100個の議決権と設定すると、99株を後継者へ贈与しても議決権上は100個(1株)対99個(99株)となるため、経営をコントロールしやすくなります。そして属人的株式が設定された場合、黄金株とは違い、現社長から後継者以外の相続人に株が渡ってもその権利は引き継がれません。前述したように属人的株式は株主に対して付与される権利であるため、相続が生じ、相続人が取得した上記の株式は普通株式1株(議決権1個)として取り扱われます。
 属人的株式の利点は次の二点があげられます。一つは、定款で定めるだけで導入できるため、黄金株より導入のハードルが低い点です。二つ目は、生前に株式のほとんどを後継者に渡していれば被相続人が所有している株式は少数であり、誰の手にわたっても後継者が安定的に会社経営をすることができるため、黄金株よりも出口戦略が比較的容易に描ける点が挙げられます。

4.まとめ

 黄金株と属人的株式はどちらも事業承継に役立つ手法ですが、導入する際には出口戦略も含めた慎重な計画が必要です。したがって事業承継を検討する際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

2024年6月14日

倒産防止共済を上手に活用しよう

 中小企業倒産防止共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するもので取引先事業者が倒産した際に中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。上記が制度の趣旨ではございますが、今回はその倒産防止共済を上手に活用するための掛金の支払いや解約した場合の取り扱いをご紹介致します。

1.制度の特徴

 取引先が倒産した際には無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入することができます。また、支払った掛金の全額を経費に算入することができます。
 ただし、個人事業者は事業所得以外で掛金を経費に算入できませんので不動産所得のみという方は税金に関するメリットがありません。

2.加入資格

 法人や個人事業者で1年以上事業をしていることが要件となります。従って、事業を開始したばかりの個人事業者や法人に関しては、事業開始(設立)から1年以上経過しないと加入要件を満たさないことになります。

3.掛金の支払い

 掛金は月額5千円から20万円まで5千円単位で選択することができ、手続きをすることで増額・減額をすることができます。また、支払方法に関しては、月払いだけでなく申出により2か月から12か月までの範囲で前納(前払い)をすることができます。最大の掛金である20万円を12か月分年払いすることで、一度に最大240万円を経費に算入することができます。決算月等に利益が大きく見込まれる場合には、12か月分をまとめて支払うことで大きく節税をすることができます。
 しかし、積み立てすることができる累計の限度額は800万円と決まっています。最大の掛金である20万円を継続して積み立てると40か月(3年4か月)で限度額に達してしまいますので、今後の事業展開で増益が見込まれる場合には、調整しながら掛金を検討すると良いでしょう。

4.借入もできる

 取引先事業者が倒産した場合以外でも12か月以上掛金を支払っていれば、事業資金として借入をすることができます。金利は金融情勢により変動しますが、令和5年9月1日現在で年0.9%です。借入できる金額は、後記5で述べる解約手当金の95%の範囲内(最低30万円)になります。また、銀行借入のように審査はありませんので解約するまでもなく資金が必要な場合には借入も一つの選択肢として考えることができます。

5.解約した場合

(1)解約返戻率
 自己都合の解約であっても、12か月以上掛金を支払っていれば解約手当金を受け取ることができます。返戻率は次表の通りであり、納付月数が40か月以上経過すれば、掛金の全額を受け取ることができます。

掛金納付月数返戻率
1~11か月0%
12~23か月80%
24~29か月85%
30~35か月90%
36~39か月95%
40か月以上100%

(2)税務上の取り扱い
 解約した場合には、解約手当金がその年度の所得となり、税引前の所得に対して法人税又は所得税が課税されます。
 そのため、本来の制度の趣旨とは異なりますが、利益が生じているときに掛金の経費化により税負担の軽減を図りつつ、大規模修繕などの将来の多額の支出に備える資金を確保する手段として活用するのが良いでしょう。そのようにすれば、解約手当金による収入と大規模修繕による経費を相殺することができます。

6.解約後再度加入することができるの?

 解約した場合であっても再度加入することができます。令和6年度の税制改正により、令和6年10月以降に解約する場合には、解約した日から2年間は経費に算入することができなくなりました。従って、近々解約をして再度加入することを考えている場合には、令和6年9月末までに解約しないと、その後2年間は掛金を経費に算入できませんので解約時期に関して注意が必要です。

7.最後に

 倒産防止共済は、前記6の場合を除けば支払った掛金が全額経費となりますので節税効果は大きいです。法人での節税に関しては、そのほかにも生命保険の加入などもございますが、返戻率が高い生命保険は経費にできる割合が限られていますので節税効果を考えると優先順位は倒産防止共済の後になるでしょう。節税を考えている方でまだ加入されていないのであればまずは倒産防止共済に加入することをお勧めします。

2024年5月15日

貸宅地経営の悩みどころ~価値のわりに高い相続税がかかる!?~

 先祖代々の貸宅地は、普段はあまり手もかからず地代が入ってくるので、定額収入としてそれなりに価値のある資産だと思います。しかし、一旦相続が発生すると意外と高い評価に驚きます。今回は、貸宅地を所有している場合の相続対策やお悩みポイントについて検討してみます。

1.貸宅地とは

 貸宅地とは、土地に建物を建てて使用することを目的として第三者に貸している土地のことです。地主(賃貸人)の立場から見ると所有しているのは底地部分で、土地を借りている人(借地人)の権利部分は借地権になります。

2.地代の値上げが難しい

 貸宅地はアパートのような空室リスクや修繕などのメンテナンスが必要ないので、普段は管理の手間がいらず、とても優良物件のように思えます。しかし、特に昭和の時代から貸しているような貸宅地は、地代の値上げもままならないことも多いです。地代の値上げ交渉をした結果、借地人に受け入れられず地代を法務局に供託されてしまうケースもあります。利回りから見ると、とても価値の低い資産とも考えられます。

3.旨味があるのは更新料の受領時だけ

 貸宅地経営で最も利益が出るのは、更新料を受領したときです。20年(又は30年)に一度となかなか長期でのリターンですが、一番旨味がでるときです。あとは、借地人が借地権を譲渡する場合に「名義書換承諾料」を受け取る時です。これは、必ずしも発生するとは限りませんので、発生すれば臨時収入です。そのほかに、建物建替え時の「建替え承諾料」も発生する可能性があります。

4.相続時の評価

 さて、そんな貸宅地を所有している方の相続が発生します。相続税を申告する場合、底地部分に対して課税がされます。底地の評価額は、基本的に国税庁が公表している相続税路線価に基づく完全所有権としての土地の評価額から借地権価額を控除して評価することになります。

  底地の相続税評価額=路線価×地積×(1-借地権割合)
  例)路線価500千円×160㎡×底地割合30%= 24,000千円

 底地の相続税評価額が24,000千円の場合、相続税率が仮に20%だとすると4,800千円の相続税の負担が発生します。相続登記費用は、貸宅地による減額が一切なく、固定資産税評価額(更地評価)による登録免許税がかかります。普段の維持費はかかりませんが、相続で引き継ぐときには、意外と負担感があります。

5.貸宅地の利回り

 仮にこの貸宅地の地代収入が年間510千円、固定資産税等の負担が170千円と仮定します。純利益が340千円の場合、相続税評価額に対する利回りは1.4%にしかなりません。

   利回り1.4%=純利益340千円÷底地の相続税評価額24,000千円

 地代に関係なく周りの一般的な土地取引の価格を基に路線価が決定されているので、収益性が悪い底地でも相続税評価額が高く設定されてしまうのです。

6.底地の市場価値

 底地を借地人以外の者と取引する場合の市場価値を考えてみるといくら位になるでしょうか。一般的な期待利回りを3%と仮定した場合、底地の評価額は約11,333千円と考えられます。

  底地評価額   純利益   期待利回り
   11,333千円 = 340千円 ÷   3% 

 先ほどの相続税評価額24,000千円の約半分くらいにしかなりません。一般的な底地買取業者に査定してもらうとおおよそこのような価額になると言われています。

7.納税資金確保のために売却

 相続税の納税資金を確保するために、慌てて売却先を探すのは、貸宅地の場合とても大変です。底地買取業者の査定だと相続税評価額より大幅に安い価額でしか買い取ってもらえないのに、相続税の負担は変わらず、買い叩かれる可能性も高いです。底地売却の交渉相手として最良なのは借地人です。借地人が買い取るメリットは以下色々あります。
① 担保価値が上がり、建て替え等もスムーズになる
② 地代の支払や更新料の支払が無くなる
③ 完全所有権となり売却がしやすくなる

8.敢えて相続発生前に売却も

 視点を変えて、相続発生前に売却を考えるのも一計です。借地権の更新時期などに交渉して多少安くても現金化することにより、遺産分割や納税資金確保がスムーズになります。流動性の低い資産から高い資産へ変えることによって、新たな投資への変更も可能になります。老人ホームへの入居金などへの補填に充てることも可能です。自分の代で先祖から引き継いだ土地を売却することにためらいもあると思いますが、相続時に高い相続税を払って継承させるより、次世代へ円滑な承継が可能になるかもしれません。

2024年4月15日

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ATO通信

事業用資産の買換えは届出を忘れずに

 事業用の土地建物等を売却して譲渡益が生じたときは、買換えの特例制度を適用することで譲渡益を繰延べることができます。この制度ですが、令和6年4月1日以後に譲渡をした方からは、あらかじめ届出書の提出が必要になるケースがあります。特例の適用を考えるのであればこれからは届出の有無がポイントです。

1. 事業用資産の買換え

 事業の用に供している土地建物等を譲渡して、新たに事業用の土地建物等を取得(買換え)した場合には、事業用資産の買換え特例という制度が適用できます。この制度を適用すれば、譲渡益の60%~90%を将来へ繰り延べることができるため、その分の税負担が減少します。ちなみに、繰り延べ割合は80%になることが多いです。
 譲渡資産と買換資産には組み合わせの要件があり、一昔前はいくつものパターンが用意されていました。しかし、最近は制度そのものが縮小傾向で現在は4つの組み合わせが残るだけです。このうち一般的に利用されるものは、10年超所有する国内の土地・建物・構築物を譲渡して、国内の土地(300㎡以上)・建物・構築物を取得する制度です。

2. その1 譲渡年の前年又は翌年の買換え

 買換えですから、譲渡と取得という2つの取引きがあります。譲渡をしてから取得するのか、それとも先に取得してその後に譲渡するのか、様々な事情もあるでしょうから一定の期間内であればその順番に制限はありません。譲渡が先でなくてもいいのです。ただし、譲渡年と取得年が異なっている場合には買換えの特例を適用する予定なのか否か、税務署には分かりません。そこで、このような場合には特例適用に関する届出をしなくてはならないことになっています。
 ① 買換資産の取得が、譲渡の翌年の場合
   ⇒譲渡年の翌年3月15日までに届出
 ② 買換資産の取得が、譲渡の前年の場合
   ⇒取得年の翌年3月15日までに届出
 つまり、譲渡年と取得年が異なるのであれば、譲渡か取得のいずれかの取引きをした年の翌年3月15日までに、特例適用を予定している旨の届出書を提出しておくのです。

3. その2 同一年内の買換え(新しい届出制度)

 令和6年3月31日までは上記2の届出があるだけでした。なぜなら、譲渡年と取得年が同一年の場合には譲渡年の確定申告内容を見れば、特例適用の有無やその内容が分かるはずだからです。
 これが、令和6年4月1日以後の譲渡で、かつ、買換資産の取得も同日以後の方からは、譲渡年と取得年が同一年であっても新たに届出が必要になったのです。
 取得が前年や翌年の場合には届出が必要ですから、同一年のときもあらかじめの届出(報告)をさせて足並みを揃えようという意味もあるのでしょうが、意地悪く要件を増やしただけのように感じます。
 この新たな届出の期限は次のようになっています。

譲渡の日(又は先行取得の日)届出の提出期限
1月1日から3月31日まで5月末日
4月1日から6月30日まで8月末日
7月1日から9月30日まで11月末日
10月1日から12月31日まで翌年2月末日

 すなわち、1年を四半期に分けてその間に譲渡又は取得があれば、これからは四半期経過後2カ月以内に届出書を提出しなくてはなりません。
 例えば、事業用の土地建物等の譲渡をしたが、具体的な買換資産はまだ決まっておらず、事業用資産の買換えの特例を適用するかどうかも検討中の方がいたとしましょう。このような場合で、もしかすると良い物件があれば譲渡年に買換資産を取得する可能性が1%でもあるのであれば、とりあえずこの届出書だけは提出しておくのが良いでしょう。提出しておいて結局は特例を適用しなくてもそれはそれでOKです。提出をしておかなければ確定申告で特例の適用を選択することはそもそも出来ません。選択肢を広げておきたいのであれば、届出を忘れてはいけないのです。

4. 届出を忘れたら翌年取得?

 もしも同一年の事業用資産の買換え特例に関する届出を忘れてしまったらどうなるのでしょう?確かにこの場合は、同一年の譲渡と取得による特例適用はできません。ただし、買換資産の取得が譲渡後を予定しているのであれば、取得を翌年に繰り越せばよいのです。買換資産の取得が翌年であれば、その届出期限は譲渡年の翌年3月15日までですから、確定申告期限まで大丈夫です。年内に買換資産の売買契約を締結していたとしても、引渡しが翌年であれば適用が可能になります。

5. 新届出は事業用資産の買換えだけ

 買換え制度は他にもあります。自宅の場合の居住用の買換え、収用等の場合の代替資産の取得などです。ただしこれらの制度では上記3の改正がされておらず、買換えが同一年の場合の届出制度はありません。事業用資産の買換えだけが不運にも目を付けられたのです。

2024年6月28日

法定相続情報一覧図の実務ポイント!

 相続手続きに必要な戸籍の取得ができたならば、次は法定相続情報一覧図を作成しましょう。この書類を作っておくことで様々な相続手続きがスムーズに行えるようになります。ただし、例外として全ての戸籍が揃わないケースでは利用ができないことになっています。

1. 法定相続情報一覧図を活用

 相続がおきると相続人や遺産額を確定して、不動産の名義変更や預貯金の解約などの様々な手続きをしなければなりません。被相続人が不動産を所有していたのであれば、相続を原因とする所有権の移転登記が必要です。令和6年4月1日からは、いよいよ相続登記の申請義務化がスタートしました。これからは、費用が生じるから、面倒だから、などと相続登記をしないで放置することができなくなります。登記まで忘れずにしっかりと手当てしましょう。これらの相続手続きを行う際には、戸籍や除籍・原戸籍などの書類の束を手続きごとにその都度提出しなくてはなりません。特に相続人が兄弟姉妹の場合など、関係者が多岐にわたると戸籍の枚数が物凄い量になることもあります。色々な窓口で何度も書類の束を出しては返却をしてもらう、この手間に時間が取られて煩わしいこと、これが相続手続きを億劫にさせる大きな理由の1つでしょう。
 そこで、みなさまは是非とも法定相続情報一覧図を活用しましょう。法定相続情報一覧図とは、戸籍の記載から判明する被相続人と法定相続人の情報をまとめた一覧図で、その内容が正しいと法務局が証明したものです。法務局がお墨付きを与えていますから、分厚い戸籍の束の代わりとして様々な相続手続きに利用できます。当然、銀行や証券会社の手続きにも用いることができます。そのため、これを作成しておくことが実務ではもはやスタンダードです。

2. 住所の記載は必須

 法定相続情報一覧図の作成は、相続人が一覧図を用意してそれを法務局に申出(申請)して証明してもらう流れなのですが、そのときは相続人の住所を必ず記載しましょう。実は、相続人の住所を一覧図に記載するのかどうかは任意事項なのですが、住所が無い書類では実務的にはまったく意味がありません。相続手続きを行うときは、相続人の住所確認がなされるのが一般的なため、これを考えれば至極当然のことです。相続人の住所記載をしないで法定相続情報一覧図を作成したものの、手続きの都度に住民票の写しなどの確認を求められて面倒なため、結局は作り直しをしたケースを見たことがあります。
 そもそもこの制度は、相続登記の促進のために創設された制度です。手続きのために必要となる相続人の住所情報は記載条件にしても良かったのではないかと思います。

3. 日本国籍を喪失していると使えない

 法定相続情報一覧図を作成するときは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍等を用意する必要があります。また、相続人の戸籍も必要です。したがって、日本国籍を有していない方がいるとこの制度は利用できません。例えば、国際結婚をして配偶者の国籍に帰化したため、日本国籍を喪失した相続人がいる場合があります。国際結婚をしても、日本国籍のままであれば戸籍があるので利用できるのですが、日本国籍を喪失しているとダメなのです。また、次のようなケースがありました。被相続人は国際結婚歴があり、その際に一時期だけ日本国籍を喪失していました。なぜ一時期なのかと言うと、その方は数年で離婚をしたため再度日本に帰化、日本国籍をまた取得していたのです。つまり、戸籍はあるものの途中に空白の時期があるため、出生から死亡までの連続性が無いわけです。結局、この相続手続きでは司法書士と相談して、他の相続人はいない旨の上申書を法務局へ提出することで相続登記を進めました。
 ちなみに、火災などにより戸籍等が滅失しているため謄本の交付を受けられないという場合がありますが、この場合はその旨の市町村長の証明書を添付すれば大丈夫です。国籍喪失とは異なります。

4. 海外居住者は在留証明が必要

 相続人は国際結婚をして海外に居住しているが日本国籍は保有している、この場合には法定相続情報一覧図が利用できます。ただし、海外居住をしている訳ですから国内に住所は無いため住民票を取得することができません。そのため、相続人の住所を記載したいのであれば在留証明を添付しないといけません。海外にいる相続人にお願いをして、総領事館などの在外公館で取得をしてもらう必要があるでしょう。国際郵便で書類を揃えなければならないため、時間的な余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。

5. 代理人による申出

 法務局へ申出ができる人は原則として相続人ですが、一定の資格者は代理人として手続きを行うことができます。税理士もこの代理人になれますので、手続きが面倒なときはご相談ください。戸籍取得から相続税申告まで一気通貫でお手伝いします。

2024年5月31日

戸籍の取得が便利になったらしい?

 令和6年3月1日に改正戸籍法が施行され、戸籍制度が利用しやすくなりました。相続手続きのときに必要になる戸籍も今までより取得しやすくなったと言われています。確かに間違いありませんが、相続実務を考えた場合に果たしてどこまで便利になったのでしょうか。

1.最寄りの役所窓口で取得できる

 今までは、戸籍を取得するのであれば本籍地の役所に請求する必要がありました。これが戸籍法の改正によって、今年の3月からは本籍地以外の役所でも取得することができるようになっています。戸籍の広域公布制度と言い、戸籍の取得について便利になった点は次の2点です。
 ① どこの役所でも取得可能
   本籍地が遠くにある方でも、最寄りの市区町村の窓口で請求・取得ができます。
 ② まとめて取得可能
   取得したい戸籍の本籍地が全国各地にあったとしても、1か所の市区町村の窓口でまとめて
   請求・取得ができます。
 取得ができるのは、「戸籍と除籍の全部事項証明書(以下、戸籍証明書等)」です。したがって、戸籍の一部事項証明書、いわゆる抄本の取得はできません。
 また、戸籍証明書等の請求は本人が窓口に出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできないことになっています。そして、窓口では運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書を提示する必要があります。
 郵送では請求することが出来ないため、役所に行かなければならないのが不便な点でしょう。

2.自分以外のものも取得できる

 戸籍証明書等は、本人のものを取得できるのは当然ですが、次の方の分も取得が可能です。
 ① 本人
 ② 夫または妻(配偶者)
 ③ 父母、祖父母など(直系尊属)
 ④ 子や孫など(直系卑属)
 したがって、相続手続きで必要となる関係者分も同時に取得ができるというわけです。ただし、兄弟姉妹の戸籍証明書等は取得が出来ません。兄弟姉妹は必ずしも相続人になるわけでは無い立場だからなのでしょう。

3.本当に便利になった?

 いままでの説明を聞くと、本籍地以外で戸籍の取得ができるようになったのでとても便利になったと思うはずです。法務省のパンフレットでも、「最寄りの窓口で戸籍が取得できるので相続登記もばっちり!」などとアピールしています。
 しかし、よく考えてみましょう。相続のときに必要な戸籍としては、被相続人が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍を集めなくてはなりません。そうすると、何十年も前の戸籍や除籍、改製原戸籍と言われるものを取得する必要があるのです。それのどこが問題なのか、ここでピンと気付かれた方は相当察しが良い方です。
 改正戸籍法で取得ができるようになったのはあくまでも「戸籍証明書等」です。戸籍証明書等であって戸籍謄本や除籍謄本そのものではありません。つまり、コンピュータ化前の従前の戸籍、いわゆる紙作成の戸籍謄本等は含まれていません。全国の市区町村とデータ連携して行うサービスですので、コンピュータ化されていないものは相変わらず本籍地に請求するしかないのです。閉鎖された古い不動産登記簿をインターネット登記情報サービスで閲覧できないことと一緒です。
 ■ 広域公布制度で取得できるもの
   コンピュータ化された戸籍証明書等
 ■ 広域公布制度で取得できないもの
   コンピュータ化されていない一部の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、戸籍の附票
 相続のときに集めなければならない戸籍は、コンピュータ化されていないものもまだ多くあるのではないでしょうか。特に現在はシステムが不安定なため暫定運用中です。将来は全ての戸籍情報を最寄りの役所で取得できるようになるのでしょうが、もう少し先のことなのかもしれません。

4.今のところ便利な手続き

 この改正戸籍法によって便利になるのは、今のところは現在の戸籍情報が必要な手続きと理解しておくのが良いでしょう。本籍地ではない役所窓口で行う婚姻届などは戸籍添付が不要になりました。今後は、児童扶養手当認定の手続やパスポートの申請にあたって戸籍証明書等の添付が省略される予定になっています。

5.税理士は職権で取得可能

 相続のときに必要となる戸籍は、相変わらず全国各地の本籍地に郵送で請求をする可能性もある、これが当面の現実かもしれません。
 税理士は相続税申告などに必要な場合には、職権で戸籍を取得することが可能です。相続手続きで戸籍の取得に困ったときや、煩わしいときなどは、相続税の申告依頼とあわせて是非ご相談ください。委任状無しで代理取得ができます。


 


 

2024年4月30日

源泉徴収義務者の仕事は増えるばかり

 給与の支払者は源泉徴収事務を負わなければならない決まりです。月々の給与における手続きはもちろんのこと、年末になれば年末調整も行います。法律で定まっているのですから仕方ないとはいえ、最近は税制改正を経るごとに事務負担は増すばかりです。

1. 源泉徴収と年末調整

 給与の支払者は、源泉徴収義務者として月々の給与計算を行う必要があります。そして、源泉所得税を給与から天引きして税務署へ納付をしなければなりません。さらに年末になれば、年末調整事務を行って税金の精算手続きまでを本人に代行して行います。
 これはまさに、給与支払者が徴税代行を行うという制度そのものと言えるでしょう。税務署としては徴税コストを民間に押し付けられるという大きなメリットがありますから、この制度を今後も手放すことはないでしょう。源泉徴収事務は仕方ないとしても年末調整はどうにかして欲しいものです。

2. 年末調整の負担が多すぎる!

 12月末までの正確な情報を年内最後の給与支払時までに把握することが難しいからなのでしょう。医療費控除や、ふるさと納税などの寄附金控除は年末調整では計算対象外です。逆に言えば、それ以外は全て年末調整で調整可能です(雑損控除は除く)。このように、給与所得者はできるだけ確定申告をしなくても大丈夫なようにと設計されているのが年末調整制度です。ただし、給与が2000万円超の方は年末調整の対象外です。税務署が個別に把握・補足したい高額所得者と見ているのかも知れません。
 年末調整の確認内容を要約すると次のようになります。
 ・配偶者(特別)控除や扶養控除・障害者控除など、いわゆる人的所得控除を全て確認
 ・生命保険料控除、地震保険料控除や社会保険料控除、小規模企業共済・ideco・国民年金基金などの支払額を確認
 ・所得金額調整控除の対象者か否かを確認
 ・基礎控除に制限がない方かを確認
 ・住宅ローン控除の有無を確認
 このように、いくつもの確認・調整項目があり事務手続きが複雑すぎる!と感じるのは私だけでは無いはずです。

3. 基礎控除の確認はナンセンス

 基本的には、今後も事務手続きが減るようなことは無いでしょう。年末調整時に行わなければならない事項は増え続けていくと思われます。
 特に制度としてナンセンスだと思うのが基礎控除額の確認です。従前、所得税の計算をするときには誰もが基礎控除額を差し引くことができました。これが令和2年分からは控除に制限がかかりました。所得が2400万円以下の方は満額の48万円を控除できますが、2400万円超になると次のように減額されます。
  2400万円超2450万円以下・・・基礎控除32万円
  2450万円超2500万円以下・・・基礎控除16万円
  2500万円超・・・基礎控除0円(適用無し)
 例えば、給与収入が1000万円で年末調整を行う必要がある方がいたとします。ただしこの方は、給与以外にも別の所得があるためそれを加算すると所得が2400万円を超える見込みであるとしましょう。この場合、その他の所得状況も踏まえて年末調整を行うのが事務上の取扱いになっているのです。
 つまり、勤務先に対して勤務先以外の所得までを伝えなさい。そうすれば正しい税金計算ができるはずだという制度設計をしたのです。現実的に考えれば、勤務先に他の所得状況を正直に答える人がどこまでいるのでしょうか?甚だ疑問です。そもそもこのような方は自ら確定申告を行っていると思われますから、年末調整で把握する必要がどこまであるのでしょうか。お節介すぎる制度だと感じてしまいます。

4. 令和6年は定額減税で負担増

 今年は岸田首相肝いりの定額減税が行われる予定です。給与がある方は6月以降の給与・賞与から本人分3万円が最低でも差し引かれることになっています。どんなに多額の給料がある方も一旦は控除することになります。しかし、この定額減税は所得制限がありますので、所得が1805万円を超える見込みの方は年末調整時にその分が徴収されます。また、年末調整対象者ではない給与が2000万円超の方は確定申告時に納税させられます。またもや給与支払者の手間を増やす無駄な制度ができたと思ってしまいます。そもそも今回の定額減税は国会の討論でも言われていましたが、給付金として支給すれば良かっただけです。誰かの見栄?で導入された制度に周りが振り回されているだけに見えるのは私だけでしょうか。

5. 簡素でシンプルが一番

 そもそも税金は簡素でシンプルが一番のはずです。徴税コストを肩代わりしている会社の事務作業をこれ以上増やさないで欲しいものです。

2024年3月29日

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今月の言葉

トロイの木馬

 ギリシャ神話というのは、日本の古事記みたいなもので、半分神話、半分歴史を著したものである。「トロイの木馬」はそのギリシャ神話のトロイア戦争の条に出てくるお話である。ミュケナイ、スパルタなどギリシャの都市連合とトロイア(ダーダネルス海峡南方、現在のトルコ内の都市)との間でおこった戦争は、両軍の勇将アキレウスやヘクトルの戦死を経て膠着状態、長期戦と化した。
 開戦十年を経て両軍共に戦争に倦み始めた頃、ギリシャ方の知将オデュッセウスは、ある計略を思いついた。ギリシャ軍はついにトロイア近郊の浜から去って、海へ撤退。あとには巨大な木馬が残されていた。トロイア軍は、木馬を戦利品として城内に持ち帰り、凱旋した。ギリシャ軍撃退に沸くトロイアの深夜、木馬の中に潜んでいたギリシャ軍の小部隊が、密かに内側からトロイアの城門を開くと、撤退したはずのギリシャ軍がそっと戻ってきて、トロイアの町に攻め入り、トロイアはついに滅亡したというのが、「トロイの木馬」伝説のあらすじである。
 さて、ここからは現代の情報セキュリティのお話。今日「トロイの木馬」(英語でTrojan horseという)は、コンピュータの中に住み着くマルウェアの一種をあらわす言葉として使われている。「トロイの木馬」はコンピュータウィルスと似ているが、少しだけ違う特徴がある。コンピュータウィルスが特定の宿主(ファイル)を持ち、ウィルスによって改変された宿主が、次々と感染を引き起こすのに対して、「トロイの木馬」は殆ど感染拡大しない代わりに、時限爆弾のようにコンピュータの中に密かに住み着いて、ある時がくると突然起動し悪さを始める。「トロイの木馬」の行う悪さの代表的なものは情報漏洩で、この稿の筆者が知っているある研究機関では、約三年間も「トロイの木馬」が住み着いて、サーバー内の研究上の機密情報をこっそり外部に送り出していたことが、後に判明した。もちろん漏洩する情報の中にはこうした企業秘密だけでなく、端末へのログインIDとパスワードの組み合わせ、端末に格納された個人の口座番号や社会保険番号などの個人情報も含まれる。そのほかにも、神話の「トロイの木馬」と同様に、トロイの木馬の中の機能が、コンピュータセキュリティ上の防御機能(城門)を無効化し、その部分の脆弱性を利用して外部からサイバー攻撃を仕掛けて成功させるというような手口もある。社会的な被害例としては、2013年に韓国で起きた、主要放送局と銀行のネットワークが一斉にダウンし、テレビと銀行が終日機能不全に陥った事件なども、「トロイの木馬」の仕業ではないかと噂されている。我が国では、2015年に日本年金機構の100万人以上の個人情報を流出させた、遠隔操作型ウィルスEmdiviを「トロイの木馬」の一種とする見解もある。
 以上述べたのは、主にコンピュータソフトの世界の話であるが、この稿の筆者が、本業の専門としている対象にハードウェアトロージャンという「木馬」がある。略称をHTというこの「木馬」は、たとえば半導体チップの回路の中や、組み込み機器(マイクロコンピュータで制御される小さな機械、たとえば自動車、ロボット、医療機器、監視カメラなどのさらに内部の電子部品、センサなど)内に住み着く極小の回路であって、ソフトウェア界の「木馬」同様に悪さをする。HTは、情報漏洩のような複雑な悪さができる機能はない。が、半導体や組み込み機器は大量生産されるので、たとえば、決められた時刻が来ると、同じ型式の機械が、全国一斉に止まってしまう(応用で、外部から機器などに短い停止命令を入力して無効化してしまう)などという悪さをすることは出来る。筆者は、ウクライナの次の時代のサイバー戦争では、このHTが登場するのではないかと思っている。

2024年6月28日

幕臣四態

 慶應3(1867)年10月徳川慶喜が大政を朝廷に奉還してから、翌々明治2(1869)年5月箱館戦争終結までの期間をここでは広義の戊辰戦役と呼ぶことにする。今月は、戊辰戦役における徳川家臣団(旧幕臣)の対応を、封建と近代、恭順と抗戦の二つの軸で四態に分けて評価していきたい。
 まず、戊辰戦役における東軍(徳川方、抗戦派)にも二種類があったことがこの稿の主題である。
 封建-抗戦派の代表格は、言うまでもなく彰義隊である。彰義隊ははじめ寛永寺大慈院で恭順している徳川慶喜の警護を名目に結成されたが、その本意は薩長の政権簒奪を容認せず、徳川家への忠節を尽くすということにあった。武器は概ね刀槍。旗本の二、三男等で武術に自信がある者と、東日本の草莽出身で幕末になって徳川氏に臨時で雇用された者などを中心に構成された。束ね役は上野国の元名主出身の天野八郎。アジテーターは覚王院義観という坊さんだった。彰義隊は江戸市民の間では大人気を博したが、やがて大村益次郎率いる新政府軍の近代兵器に追い詰められ、明治元(1868)年5月15日、上野寛永寺における一日の会戦で壊滅した。
 一方、近代-抗戦派の代表は、なんと言っても榎本武揚率いる旧幕府海軍と旧幕府陸軍の脱走部隊や新撰組の残党などで構成される蝦夷共和国の一党であろう。旧幕府海軍が脱走を敢行したのはそもそも彰義隊が壊滅した数ヶ月後、徳川慶喜の処分と静岡藩の立藩が決まった後のことであるし、箱館行の趣旨も、七十万石に減知され家臣団の食い扶持に困った徳川家に、蝦夷地を賜って開拓したいというタテマエであった。つまり薩長による新国家の建設自体は否定していないのである。その一方で、この一党の軍事力は、大政奉還までの日本政府軍の中核部隊を成すもので、薩長を中心とする当時の西軍に十分拮抗しうるものであった。要求を通す自信もあったのだろう。
 このように、メンタリティにおいても前者は徳川氏に対してウェット、後者はややドライと違いがあるが、以下に記す恭順派との大きな違いは、西軍が旗印に掲げる「天皇・錦旗・官軍」というものに対して、かなり鈍感であったということだろう。
 さて、紙数が尽きるので簡単に恭順派のことについて触れたい。封建-恭順派は、いわば大多数の旗本・御家人。徳川家への忠節の念には遜色なけれども、上様が恭順なさるのであれば、黙ってそれに従い、ほかに飯を食う手段も手に職もないので、無禄にちかい減給を覚悟して、新たにできる静岡藩に、十六代となられた徳川亀之助君のお供をするというものである。この人々は実際に静岡に行ってから、武士という身分そのものがなくなるという近代への動きの中で、様々な苦労をすることになる。箱館戦争の反乱軍が(手に職を持っていたが故に)比較的早期に赦されて新政府の役職に就き、活躍の場を与えられたのに比較しても、不遇であった。
 最後に、近代-恭順派の代表選手は、徳川慶喜その人と西周ら周辺のブレーン達であろう。あるいは、(少し近代度は落ちるが)松平容保や松平定敬もふくめて、孝明天皇が存命であれば、もしかすると日本国の別の近代化を成し遂げたかもしれない「一会桑」派の人々がこのジャンルに当たる。この人々を特徴付けるものは、近代化に向けての十分な教養と抱負を持ちながら、国民統合の象徴たる天皇へのメンタリティが極めて厚く(尊皇の気持ちが強く)、それだけに「天皇・錦旗・官軍」にとても敏感であったことであろう。この稿の筆者としては、この近代-恭順派の人々が廃藩置県や四民平等に対して、どのようなビジョンを持っていたかを、もう少し知りたいのだが。

2024年5月31日

総力戦

 第一次世界大戦というものは、日本にとっては、中国の山東省青島にあったドイツ要塞の攻略と、海軍小艦隊の欧州派遣くらいがトピックスで、日清、日露戦争から太平洋戦争に至る十年おきくらいに大日本帝国が続けてきた、謂わば連続的な戦争の一環に過ぎない印象がある。
 が、世界史的に見れば、第一次世界大戦は、第二次世界大戦に優るとも劣らないくらいの画期であり、戦争というものの定義を根本から変えてしまうものであった。それはどのような画期だったかというと、まずこれまでに見なかったような大量の戦死者が出たこと、軍人以外の犠牲者がきわめて多数にのぼったこと、世界中の有力国が参戦し、長期間にわたって文字通り死力を尽くして戦い続けたこと、戦争開始時に用意された兵器では全く足りずに、両陣営とも戦中に兵器や食糧の生産、そして物流、さらには技術開発の営みを盛んにして、国力を戦争に注ぎ込んだこと、最後に戦争の決着がついたときに、ロシア、オーストリア、ドイツ、トルコなどそれまで帝国として世界に君臨してきた国々が滅亡したことなどが挙げられる。
 これを要すれば、戦争は、軍隊という国家の部門が行う軍事的な争闘から、国家全体が行う政治、経済、軍事的な営みへと「発展」したということになる。そのような戦争の様相を、「総力戦」という言葉で呼ぶことが多い。総力戦とは、近代国家の総力を挙げて、国家の滅亡を賭してたたかう戦争と言うほどの意味である。
 第一次世界大戦の後、もうこのような悲惨な世界戦争を、二度と起こすまいとの動機から、国際連盟という一種の世界政府的機構の萌芽が構築され、侵略戦争と武力による現状の変更は国際法的にも違法と言うことになった。が、その一方で世界の主な国々では、「次の総力戦」に備えて、戦時に国家の総力を効率よく動員する計画と法制の整備が行われた。そのことを「総動員体制」の整備という。我が国では、1938年(昭和13年)第一次近衛内閣の下で制定された国家総動員法が有名であり、第二次世界大戦後は、この法律の制定が日本の軍国主義化を決定づけたと評価されている。(が、法の本旨は、少なくとも始めは戦時における物資等の効率的な動員にあった)
 「総動員」には、様々な側面があるが、主な特徴として、経済統制と言論統制の二つを挙げたい。
 経済統制は、生産と物流の側面から国家の(戦争)目的に適うように、政府が計画的に民間企業の活動を規制し、資源を配分しようとするもので、第二次世界大戦の際には両陣営がともに行ったものであるが、企業活動における所有と経営の分離にどこまで踏み込んでこれを行うかによって、自由主義経済における臨時の規制なのか、国家社会主義的な企業統制なのかがかわってくる。
 言論統制について言えば、戦時における情報管理(守秘)や防諜を目的とした規制は、多くの国で行われたが、それだけでなく、謀略や戦意高揚を目的として意図的に曲げられた情報発信を、政府が計画的に行うことも、総動員のための言論統制に数えられ、正当化される場合が多かった。その目的は、はじめ戦争の勝利に限られていたが、第二次世界大戦後は、「国家の存亡」のためには、意図的に曲げられた情報発信を、政府が計画的に行うことも正当化されるとする拡大解釈が、一部の情報機関や軍によって行われ、そのことが専制政治の温床となっている面も見逃せない。
 結局の所、「総力戦」のための「総動員」は、パンドラの箱のようなもので、一度これを開ければ、「総力戦」の後に、自由と民主主義に復帰するのに、多くの困難が伴うことを知るべきなのである。

2024年4月30日

札幌の葬い

 この数年の間に本誌で何度か、名古屋の嫁入り、岐阜の嫁入りなど昭和期の中部地方の婚礼について書いた。この稿の筆者が、人生の中で住んだことのある地方都市は、中部地方の名古屋と北海道の札幌である。そこで今月号では、昭和期の札幌の葬祭習俗について書くことにしたい。
 まず、一般論としてだが、昭和期の日本の田舎では、どちらかというと婚礼は「家」の行事、葬礼は「村」の行事という傾向があった。すなわち結婚披露の主催者は新郎新婦の父親であり、案内状も「この度両家の婚儀相整い、ささやかながら披露の宴を催したく、ご多忙の所恐縮ながらご来駕給わりたく・・」といった文面が通常であった。一方葬礼はというと、故人が誰であっても「家」の者は遺族であるから、故人を悼んで呆然としていることが多く、周囲の地域の者が、葬式の世話やら通夜の炊き出しやらを手伝うのが通常であった。よほどの分限者になれば、それでも通夜の門前には大きな○○家と墨書した提灯か何かを掲げたものだが、あまり金のない家であれば、玄関先は「忌中」の貼り紙で済まし、家の中では近所のおばさん達が立ち働き、座敷ではこれも近所の者が故人を悼むにしてはやや無遠慮な酒盛りを行い、遺族は奥の一間の棺の前で、おとなしくめそめそしているというのが平均的な姿であっただろう。
 さて、北海道である。北海道はその昔、開拓民の土地であり、開拓民とは、一度本土の故郷と親族を捨てて海を越え、北辺の地に入植した者である。なので、故人の遺族なる者は、同じ屋根の下に住む数名以内であって、隣近所とか離れた土地から「親戚のおじさんおばさん」などが駆けつけてくることは余り想定されていない。そこで、葬祭自体が村落の行事として扱われ、実行委員会主催の形式で行われる。実行委員長は、村落の長老とか、町内会長とかが就任する。昭和期でも第二次世界大戦後になってくると、札幌の市中ではいわゆる地域コミュニティのつながりが次第に薄くなってくる傾向にあり、その場合、実行委員長は括弧付きの「ご近所の有力者」ということで、地元の市議や道議といった政治家に頼んでなってもらう様な場合も多くあった。
 葬儀の会計(香典を集めて、寺または式場や坊さんの支払いに充てる)も実行委員会単位で行うので、赤字にするわけにはいかない。よって葬儀費用は本土の葬儀よりも質素なことが多い。この稿の筆者は、十年ほど前にこの札幌形式の葬儀に出席して驚いたのだが、葬儀式場が昼間だけで二ラウンドまわるように運営されていた。私の出席したのは早いほうの会であったので、なんと朝9時開式、10時30分にはもう出棺という次第であった。
 もう一つ、この実行委員会形式とつながりがあるのかないのかよくわからないのだが、地元紙の地方版(北海道新聞であれば札幌市東部版とか○○支局版とかそんな頁)にやたらと「普通の人」の死亡記事が掲載されるのである。本土の新聞では、訃報が(広告費を払わずに)掲載されるのは、芸能人、スポーツ選手、政治家等の「有名人」だけであり、一方通称「黒枠広告」というものは高価有料と決まっているから、そんなものを掲載するのはだいたい元企業の経営者とか「公人」のすることであり、結局の所、新聞には「普通の人」の死亡記事は有料でも、無料でも載らないのである。
 が、札幌ではだいたい数行くらいずつ、ご近所の普通人の死亡記事が、毎日紙面一頁の半分以上は掲載される。まあ、昔の北海道では人口密度が低かったので、死亡記事でも読まなければ、ほかに情報を知る手段がなく、葬儀に駆けつけることができなかったのかもしれないが。

2024年3月29日

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