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幼児への贈与は大丈夫?

 相続税の節税として、贈与を活用するのは世間の常識となっています。税制改正により、令和6年1月1日以後の贈与から相続開始前の贈与加算が段階的に7年に延長されるため、節税のための贈与はより早く行うのが効果的です。
 子や孫が生まれてから、贈与税(暦年贈与)の基礎控除110万円を活用すれば、18歳で成人するまでの間、無税で約2千万円を渡すことができます。そこで、幼児への贈与についてご説明します。

1.贈与が成立するには

 贈与は、無償(タダ)で資産を移転する契約をいいます。贈与の効力が生じるのは、贈与者が自分の財産を無償で相手方にあげることを伝え、もらう人が承知した場合です。つまり、あげる人ともらう人の双方の合意があってはじめて贈与が成立します。

2.税務署が認めない贈与は

 税務署が認めない贈与は、贈与が成立していない場合です。たとえば、親が子の名義で作った預金の場合、以下のような理由から、その預金は親子間で「あげる」「もらう」の合意がなく贈与が成立していないと判断されると、名義が子であっても親のものと判定されます。このような預金を「名義預金」といいます。
 ・通帳、カード、印鑑を贈与者(親)が管理している。
 ・子がその預金の存在を知らない。

3.幼児への贈与は大丈夫?

 幼児は、贈与が成立するための意思表示や財産管理ができないから、贈与が成立しないのではという疑問が生じます。
 結論から言えば、幼児に対する贈与はできます。なぜなら、未成年者の場合、親権者が法定代理人となるからです(民法824条)。つまり、両親が、幼児である子に代わって贈与を承諾し、子が受けた贈与財産として管理していけばよいのです。

4.贈与契約書は必要なの?

 贈与は口頭でも成立するので、身内で贈与契約書を作るのは堅苦しく感じます。しかし、将来の親族間トラブル防止や税務署に「名義預金」といわれないよう贈与契約書を作ることは重要です。たとえば、相続が発生したとき、幼児が大きな金額の預金を持っていると、税務調査を受ける可能性が高くなります。そんなときに、贈与契約書があれば、贈与成立を証明するため非常に有効です。署名押印のある贈与契約書を作成した上で、契約通りに財産が移っていれば、特殊な事情がない限り、贈与契約は成立しているとみます(民訴228条④)。税務署が、その贈与を成立していないとひっくり返すことはまず無理です。

5.口座振込をお勧めします

 贈与契約書は作ったけれども、実際には契約通り財産を移していない場合などは、税務署から契約の真実性を疑われ、贈与が成立していないと指摘される恐れがあります。そのような意味では、記録が残らない現金で贈与するよりも記録の残る口座振込で贈与するほうが間違いありません。

6.贈与税の申告や納税はどうするの?

 贈与税(暦年贈与)は、1年間に基礎控除額110万円を越える財産の贈与を受けた場合に申告が必要になります。贈与を受けた人が幼児であっても申告・納税をしなければなりません。実際には、親権者が代理人として申告と納税の手続きを行うことになります。
 この場合の贈与税は、贈与を受けた幼児の負担となることにご注意ください。税金の支払いであっても、負担者が違えば贈与税の対象になってしまいます。

7.贈与を受けた子が成人したら

 名義人である子が預金の存在を知らないまま、通帳を管理していた両親が亡くなってしまうと、贈与は成立していないとみられ、その預金は管理していた両親の相続財産になってしまいます。遅くとも子が成人するまでには、預金の存在を伝えて管理方法を親子で話し合いましょう。

8.まとめ

 幼児への贈与はできます。しかし、せっかく子のためにコツコツ貯めてきたお金が、子の財産とは認められず、贈与税や相続税といった税金の対象となっては苦労が水の泡になってしまいます。
 贈与契約書の作成や親権者としての財産管理方法など、不安やお悩みのことがあれば、当事務所にご相談ください。

2023年3月16日

令和5年度税制改正の概要

令和4年12月16日に令和5年度の税制改正大綱が発表されました。今回は税制改正の主要項目のうち、特に注目すべき点をご説明します。

1.暦年課税における相続開始前贈与加算の見直し

  資産移転の時期に対する中立性を高めていく観点から、相続財産に加算される贈与の期間につい  
 て、令和6年1月1日以後の贈与から次の見直しが行われます。

(1) 加算期間の延長相続財産へ加算される贈与は、相続開始前7年間(現行3年間)に延長されます。
※1 令和9年1月以降、加算期間は順次延長
※2 加算期間が7年間となるのは令和13年1月以降
(2) 延長期間の加算額調整   延長される4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、総額100万円まで相続財産に加算しないこととされます。

2.相続時精算課税制度の見直し

(1) 110万円の基礎控除の導入
 令和6年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税より、相続時精算課税で受け
 た贈与は、暦年課税の基礎控除110万円とは別途、毎年110万円まで非課税とされます。
 ※1 暦年課税分と合わせると基礎控除は最大220万円
 ※2 複数の特定贈与者から贈与を受けた場合は、110万円を各贈与額に応じ按分


(2) 土地建物が災害で被害を受けた場合の再評価の導入
 令和6年1月1日以後に生じる災害により、相続時精算課税で贈与を受けた土地建物が、一定以上の被
 害を受けた場合は、相続時において評価額を再計算することができるようになります。

3.特定の事業用資産の買換えの見直しと延長

 既成市街地等の内から外への買換え(1号買換え)が適用対象から除外されます。また、コロナ禍
からの経済社会活動の回復を確かなものとし、土地の有効活用による投資促進と不動産市場の活性化
のため、長期(10年超)所有の土地建物等からの買換え(4号買換え)は、譲渡益の課税繰延割合を下
記の通り見直した上で、適用期限が3年間(令和8年3月31日まで)延長されます。
  ・地方から東京23区への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換え 70%から60%に引き下げ
  ・東京23区から地方への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換え 80%から90%に引き上げ

4.相続空き家に係る譲渡所得の特別控除の拡充・延長

 令和6年1月1日以後の譲渡から、次の見直しを行った上で、適用期限が4年間(令和9年12月31日まで)延長されます。
 (1) 適用要件の見直し

  ①家屋の耐震リフォーム又は②家屋の取壊しは、売主にて行う必要がありますが、売主の負担感が 

  強いこともあり、譲渡年の翌年2月15日までに①又は②の要件を満たせば良いこととされます。


 (2) 特別控除額の見直し

  相続人等による共有の場合、現行は、1人当たり3,000万円まで控除できますが、相続人等が3名以 

  上の場合は、2,000万円までが限度とされます。

5.適格請求書等(インボイス)保存方式にかかる見直し

(1) 消費税の納税額についての負担軽減措置
  免税事業者が適格請求書発行事業者の登録をした場合の負担軽減を図るため、令和5年10月1日から
 令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となった
 こと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者となった場合には、申告時の選択によ
 り納付税額を売上に対する消費税の2割とすることができるようになります。


(2) 1万円未満の課税仕入れに係る経過措置
  インボイス制度における仕入税額控除の適用にあたっては、金額の多寡にかかわらず、原則として取
 引の相手先からインボイスを取得・保存する必要があり、事務負担の増加が懸念されていました。そこ
 で、基準期間(2期前)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(前期の上半期)における課税売
 上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において
 行う課税仕入れについて、支払対価の額が1万円未満である場合には、インボイスの保存がなくとも一
 定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認めることとされます。

6.極めて高い水準にある高所得者層に対する負担の適正化

 税負担の公平の観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化を図るため、令和7年分所得税より、次の②が①を上回る場合に限り、差額分を申告納税する新たな措置が設けられます。
 ① 通常の所得税額※1
 ②(合計所得金額※2-3.3億円)×22.5%
 ※1 分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除の控除前の所得税額
 ※2 確定申告を要しない配当所得等の特例及び上場株式等の譲渡による所得の特例を適用しな
    いで計算した合計所得金額(源泉分離課税及び非課税の所得は含まない。)

7.その他の主要な改正項目

2023年3月2日

税金安夫の税務講座 

外貨建て取引による為替差益に関する税務
~外貨預金とFXを中心として~

 昨年は円安が進んだ一年でした。年初の1ドル115円が10月には150円を超えた日も。円安が進むのならドルを買っておけばよかった、と思うのも後の祭りです。今回は、外貨建て取引による為替差益に纏わる税務のお話です。


1.為替差益は"雑所得"で総合課税

安夫:財産の持ち方ですけど、今後の日本や世界の情勢は不透明のため、リスク分散が必要と思い、預金の約30%をドル預金とし、株式の約70%を米国株にしています。
税理士: 昨年は円安が進みましたね。お持ちのドル預金ですが、円転しましたか?
安 夫:一部ですけど、30,000ドルを1ドル140円で。購入時は、確か1ドル100円くらいだと記憶しています。
税理士:そうすると為替差益は約120万円ですね。 (140円-100円)×30,000ドル=1,200,000円
安 夫:税金はどうなりますか?
税理士:為替差益は雑所得で総合課税。給与所得や不動産所得と合算して課税されます。安夫さんの最高税率は、所得税と住民税で合わせて約50%。半分が税金ですね。
安 夫:儲けた割に手取りは少ないですね。残念。一方、株ですが、米国の株式も売却しました。一般口座で保有していたので、譲渡税の申告も必要になりますよね。


2.株式の譲渡における為替差益の取扱いは?

税理士: FRB(連邦準備理事会)による利上げの影響で、昨年の米国株式市場は下落基調でしたよね?
安夫:実は、新型コロナの影響で株価が急落した2020年に買っておきました。米国T社を1株40ドル、100株で4,000ドルでした。当時は1ドル105円でした。
税理士:オーナーが著名な米国T社。急成長しましたね。
安 夫:一時は1株300ドルを超えました。でも下落してきたので、昨年の10月に240ドルで売却しました。売却時は、円安になっており1ドル145円でした。
税理士:1株40ドルが240ドルに値上がりして、さらに円安も加わったので、かなり儲かりましたね。
安 夫:株価上昇による売却益と円安による為替差益。売却益部分は税率約20%の申告分離課税、為替差益部分は総合課税で、私の場合は税率約50%だから……。
税理士:税務ではそのような計算はしませんね。購入や売却の都度、円換算をします。1株240ドルで100株を売却し、売却時レート145円で円換算するので、譲渡収入は348万円ですね。 240ドル×100株×145円=3,480,000円(①) 1株40ドルで100株を購入し、その購入時レート105円で円換算するので、譲渡原価は42万円ですね。
 40ドル×100株×105円=420,000円(②) 証券会社への手数料は省略するとして、売却益は306万円(①-②)になります。適用される税率は約20%で、譲渡税は62万円程度ですね。
安 夫:実質的に為替差益と考えられる部分についても税率20%の課税で済んでしまうのですね。
税理士:そうですね。1ドル当たり145円から購入時の105円を引いて40円の差益。4,000ドルでは16万円になり、この部分は実質的には為替差益と言えますね。 (145円-105円)×4,000ドル=160,000円
安 夫:本来の為替差益であれば総合課税の雑所得。でも、外国株投資では、為替差益部分も含めて売却益扱いになり、20%の税率で済む点はメリットですね。


3.為替差益も税率20%の申告分離課税にできる!!

税理士: 為替相場や株価は変動します。儲かることもあれば損をすることもあります。損失となった場合に、利益との通算や損失の翌年への繰越しができるか否かも重要になります。
安 夫:為替差益が雑所得ということは、円高が進み、為替差損となってしまった場合はどうなりますか?
税理士:公的年金など他の雑所得の範囲内で通算できます。しかし、通算しきれない損失は切捨てです。
安 夫:上場株式の売却損は、翌年以降に繰り越せるようですけど、外国株式の売却損でも繰り越せますか?
税理士:外国市場で取引されている外国株に限り、一定の金融機関を通じて取引をすれば繰り越せます。
安 夫:雑所得内で通算しきれない為替差損は切捨てになり、翌年に繰り越せない点がデメリットですね。
税理士:国内の指定業者でのFX(外国為替証拠金取引)を活用すれば、株式の譲渡と同様に税率約20%の申告分離課税で、損失は3年間の繰越しが可能です。
安 夫:レバレッジをかける取引(少ない元手で大きな取引が可能)ですよね。儲かればいいですが、損をするとひどい目に遭いますよね。
税理士:詳細は省略しますが、レバレッジを「1倍」にしておけば、通常の為替差損益と同じですね。


4.おわりに

 外貨預金の利息は税率約20%の源泉分離課税(申告不可)、為替差益は総合課税で、損失の繰越しはできません。一方、レバレッジ1倍のFXについては、利息(スワップポイント)も為替差益も税率約20%の申告分離課税で、損失は3年間繰り越せます。所得状況に限らず約20%の固定税率で、かつ、損失も繰り越せる点は、FX取引のメリットになります。総合課税で適用される税率が高い方は、一考の価値があるかもしれません。

2023年1月13日

土地売買における消費税の注意点
~予想外の税負担を減らすために~

 不動産を売買して譲渡益が生じる際に、譲渡益に対して所得税や法人税を納める必要があります。そのほか、消費税を納める課税事業者であれば、建物を売買した場合には消費税を納める必要があります。なお、土地の売買では消費税は非課税ですが、消費税の計算方法によっては、例年と比べて消費税の負担が増える場合もあります。そこで、今回は、土地売買における消費税の注意点について触れたいと思います。


1.消費税の計算方法

(1)個別対応方式 
 消費税の納税額は、原則としては、預かった消費税から支払った消費税を控除して計算をします。控除する消費税額の計算は、原則、「個別対応方式」により行います。この方式は、支払った消費税を次の(ア)~(ウ)に区分した上で、控除する消費税額を次の算式で求めます。
 控除する消費税額 = (ア) + (イ) × 課税売上割合
 (ア)課税売上のみに対応する支払った消費税額
 (イ)課税売上と非課税売上に共通して対応する支払った消費税額
 (ウ)非課税売上のみに対応する支払った消費税額
 この算式の意味するところは、消費税が課税となる収入を得るために支払った消費税(ア)はすべて控除できますが、土地売買のように消費税が非課税となる収入を得るために支払った消費税(ウ)は控除できません。また、課税と非課税の両者に共通する支払いに係る消費税(イ)は、次で説明する「課税売上割合」に応じて控除することになります。
(2)課税売上割合
 課税売上割合は、次の算式で求めます。
 課税売上割合 = 課税売上高(税抜き) ÷ 総売上高(税抜き)
 課税売上割合とは、収入全体に占める消費税の課税対象となる収入の占める割合です。土地売買は消費税が非課税ですから、上記算式の総売上高には含まれますが、課税売上高には含まれません。そのため、土地売買があるときは、通常の場合に比べ課税売上割合が低くなり、その結果、控除できる消費税が減少することになります。
(3)一括比例配分方式
上 記(1)の個別対応方式に掲げた(ア)~(ウ)の区分をせず、支払った消費税額に上記(2)の課税売上割合を乗じて控除税額を計算する「一括比例配分方式」を採用することもできます(採用すると2年間の継続が必要)。
 控除する消費税額 = 支払った消費税額 × 課税売上割合
 この方法は、支払った消費税のすべてについて課税売上割合に応じた金額を控除するものですから、土地売買があると、控除税額が大幅に減少するリスクがあります。


2.その他の消費税の計算方法

 消費税の計算方法の原則は、前記1のとおりですが、他の方法として、中小企業者の納税事務負担に配慮した「簡易課税制度」もあります。この方式は、2年前の課税売上高が5,000万円以下であり、かつ、年度開始日の前日までに「簡易課税制度選択届」を提出する必要があります。詳細は省略しますが、この制度は、消費税のかかる課税売上高に一定の控除率を乗じて控除税額を計算しますから、土地売買のように消費税が非課税となる収入による影響はありません。


3.土地売買における注意点

 土地売買があると課税売上割合が下がるリスクがあることを前記1で説明しました。そのため、土地売買については、次の制度を適用することが認められています。
(1)たまたま土地売買があった場合
 土地売買が単発であり、かつ、その土地売買がなかったとした場合には、事業実態の変動がないと認められる場合には、税務署長の承認を得ることにより、課税売上割合に代えて次の(2)に掲げる「課税売上割合に準ずる割合」により、消費税の控除税額を計算することができます。手続きとしては、土地売買をした年度の末日までに「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出して、同日の翌日以後1ヶ月を経過する日までにその承認を受ける必要があります。
(2)「課税売上割合に準ずる割合」とは
 課税売上割合に準ずる割合とは、次の(A)又は(B)の割合のいずれか低い割合とされています。
(A) 土地の売買があった前3年度の通算課税売上割合
(B) 土地の売買があった前年度の課税売上割合
 この制度の適用により、たまたま土地売買があり課税売上割合が減少しても、前年度以前の課税売上割合を用いて消費税の控除税額を計算できます。該当する場合は、是非活用したいところです。


4.最後に

 消費税を納める課税事業者で土地を売買する方は、まずは、どのような方法で消費税を計算しているか確認する必要があるでしょう。そのうえで、原則的な方法で計算している場合には、予想外に消費税の負担が増える可能性があるため税理士へ相談することをお勧めします。しかし、前記3の申請書は土地の売買のあった年度の末日までに税務署へ提出する必要があるため、年度末ギリギリで売買してそれから相談するのでは間に合わないかもしれません。これから土地の売買を予定している方でも、予定が分かった時点であらかじめ相談するようにしましょう。

2022年12月15日

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ATO通信

これからは相続時精算課税の活用次第!

 令和5年度の税制改正大綱では、贈与制度に関して面白い内容が発表されました。それは何と言っても、相続時精算課税制度に毎年110万円までの基礎控除枠が設定されることです。暦年課税制度は生前贈与加算が7年に延長されて使い勝手が悪くなりましたが、逆に相続時精算課税制度は使いようによっては節税の可能性を秘めたのです。

1. 相続時精算課税制度のおさらい

 相続時精算課税制度の活用を探るのであれば、まずはどのような人が利用できるのか復習をしておきましょう。

適用対象者
   贈与者・・60歳以上の父母又は祖父母など(住宅取得等資金贈与の場合は60歳未満可)
   受贈者・・18歳以上の子又は孫など
   ※上記年齢はいずれもその年1月1日現在で判定

 贈与する人と、受ける人、それぞれの条件を満たしていると、この制度を用いた贈与税申告を選択できるようになります。この制度を選択すると、贈与額が累計2500万円までは贈与税は生じませんが、超過すると一旦税率20%の贈与税が生じます。その後、相続時においては、この制度で贈与した全ての財産は相続財産に加算(持ち戻し)され、相続税の計算を通じて精算を行うことになります。
 相続時精算課税制度は、贈与する人ごとに選択するのですが、一番の問題点は一度利用してしまうと暦年課税制度による計算に戻ることができない点です。
 例えば、父からの贈与に相続時精算課税を選択したとします。そうすると、その後に行われる父からの贈与は、全て相続時精算課税制度に取り込まれます。暦年課税制度における110万円の基礎控除が利用できなくなります。
 つまり、生前贈与による財産の切り離しが一切できなくなるので、いままでは必ずしもお勧めできる制度ではなかったのです。

2. 相続時精算課税制度にも基礎控除枠

 令和5年度の税制改正では、新たに基礎控除枠が設けられることになりました。
 現行の相続時精算課税制度では、一旦選択をするとその後の贈与についてはどんな少額の贈与であったとしても、相続時には全てが持ち戻し対象です。極端に言えば1万円の贈与も加算されます。これではさすがに使い勝手が悪すぎます。そこで、令和6年1月1日以後からは、基礎控除枠年間110万円が新たに設定され、この分は加算対象外になります。一気に使い勝手が良くなるのです。

ポイント
  ・相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除。相続時は加算対象外のため、実質非課税。
  ・相続開始年や前年の贈与であっても加算対象外。

3. 相続間近は精算課税一択か?

 令和5年度の税制改正では、暦年課税制度の生前贈与加算の年数を現行3年から7年へ延長する内容も盛り込まれました。こちらも令和6年1月1日以後の贈与から適用予定です。今後は、相続開始前7年間に行った暦年贈与は相続時に加算(持ち戻し)されることになるのです。するとどうでしょう?相続時精算課税制度を選択していた方は相続開始前7年間の贈与は年間110万円まで(7年間で770万円)は加算対象外です。逆に、暦年課税制度は加算されます。相続開始前7年間に限って言えば、相続時精算課税制度の方が税負担的に有利になるのです。

4. 亡くなりそうなら相続時精算課税か

 相続開始7年前からは相続時精算課税の利用を検討しよう!そう思っても、いつ亡くなるかは誰も分かりません。有利になりそうなので選択しようとしても予想に賭けるしかないのです。そこで1つ、こんな考え方はいかがでしょう。
 厚生労働省が発表している統計データには生命表というものがあります。この表には、平均してあと何年生きられそうかという年数が平均余命として記載されています。最新の完全生命表を見てみると、平均余命は男性では84歳で7.09年、女性では88歳で6.91年になっています。つまり、この年齢の方は統計上の目安としての寿命はあと7年ということです。当然、もっと長生きをする方もおられますが、どのように考えますか?

5. 暦年課税も上手に活用

 相続時精算課税制度が使い易くなったといっても、年間110万円を超えて行った贈与は、その超える部分の全てが相続時に加算されます。一方、暦年課税制度であれば7年かかりますが、それを過ぎれば切り離すことができます。年間110万円にはこだわらず、相続税対策などのためにある程度まとまった金額の生前贈与を行いたいという方も多いことでしょう。そのような方は、早い段階から資産の移転を検討して、暦年課税のメリットを享受した贈与を検討・実行しましょう。

6. 贈与の事実はしっかりと

 相続税の調査では、それは生前贈与されたものか?それとも名義財産なのか?いつも問題になります。
 生前贈与を活用したいのであれば、贈与の事実はしっかりとしておくこと、この基本は絶対忘れないように!


 

2023年3月2日

法人設立するなら株式会社?合同会社?

 法人をうまく活用して今後は事業活動していこうと思うのであれば、まずは受け皿となる法人を設立しなければなりません。このとき、会社形態は何が良いのか?と考えることになります。現実的には、株式会社か合同会社のいずれかになりますが、どのように考えるのが良いのでしょうか。

1.大きな違い

 株式会社はご存知のとおり、資本(所有)と経営が分離されています。株主と役員は別々で考えることができるため、会社の所有者たる株主が役員になる必要はありません。つまり、株主に影響されることなく役員構成を設計できます。これに対し、合同会社はまったくの逆です。合同会社は、人と人との繋がりを重視する持分会社という位置付けのため、資本と経営の分離ができません。そのため、会社の出資者(社員と言います)が業務を執行します。社員や業務執行と言うと分かりづらいでしょうから、株主=役員の会社と考えて頂ければ結構です。重要なことは、役員に就任したいのであれば出資者にならなければいけないということです。
 この資本と経営の分離ができるか否か。これこそが大きな違いであり、とても重要なポイントです。なぜなら、同族経営の資産管理会社の場合には、株主と役員をセットで考えたくないことも多いからです。役員にして報酬を支払いたいが株主ではない、逆に株主ではあるが役員にはならない、このような設計が合同会社ではできません。

2.合同会社メリットのまやかし?

 小規模な会社では合同会社が良く薦められます。運営・費用面として次のメリットが挙げられるからでしょう。ただし、本当のところはどうなのでしょうか。机上ではなく、実務的な側面からしっかりと検証しましょう。
  (1) 設立費用が安い
    株式会社より約15万円弱安く抑えられます。
  (2) 役員の任期がない
    役員重任登記がないので、株式会社に比べて10年に一度数万円が浮きます。
  (3) 決算公告をしなくても良い
    小規模な株式会社は行っていないことが多いのでメリットになりません。
  (4) 経営の自由度が高い
    小規模な同族会社の場合、実務上は取り立ててメリットにはなりません。

 合同会社のメリットは、上記(1)と(2)の費用面が主な内容です。小規模な同族会社を前提とすれば(3)と(4)は実務的にはメリットになりません。そうすると、費用が多少安くなるという以外には株式会社より優れている点はあまり無いのです。それよりも、上記1の資本と経営の分離ができないことのデメリット?が大きいかもしれないのです。

3.合同会社の本来のメリット

 合同会社を選択する本来のメリットは次のことにあります。それは増資時の登録免許税を抑えられるということです。
  ◆株式会社が増資する場合
   増資額の最低1/2を資本金に計上する必要があります。その際、増加資本金×0.7%の登録免許
   税が課されます。
  ◆合同会社が増資する場合
   増資額のうち資本金に計上すべき金額のルールがありません。そのため、増資時に資本金自体
   を増やさないことも可能です。この場合には登録免許税が生じません。

4.具体的な活用方法

 増資時に資本金を計上しなくても良いということが合同会社を選択するメリットです。
 相続税の節税などのために、法人へ不動産や貸付金などを出資するようなことがあります。例えば、資本金1000万円の会社に2億円を出資するとしましょう。株式会社の場合は資本金が最低でも1億円増加するので登録免許税は70万円になります。このとき、法人税等の節税を考えると期末資本金は1億円以下にしなければならないので、増資と一緒に減資も行う必要があります。減資の手続きを行うと数十万円の費用が更に生じます。
 つまり、新設法人ではあるが数年後に増資の予定を考えているような場合は、合同会社を選択すると良いのかもしれません。反対にそのような予定が無いのであれば、役員構成を柔軟に設定・変更できる株式会社の方が運営上は良いのではないでしょうか。

5.最後は株式会社にしよう

 同族経営の資産管理会社であれば、いずれは資本と経営の分離をしたくなるはずです。相続税対策的にもその方が有利に働くことが多いです。したがって、数億円以上の多額の増資計画があるため合同会社を選択したのであれば、増資後その役目が終わった際には株式会社に組織変更すると良いでしょう。なお、組織変更の費用は数十万円ほど掛かります。株式会社を設立して増減資を行う費用と比べてどちらがお得か次第でしょう。株式会社へ変更すれば、役員は株主に縛られません。家族状況等に応じた役員構成が可能ですので、株式会社ならではのメリットを上手に活用しましょう!

2023年2月20日

遺言作成、公証人との対応実務

 エーティーオー通信で幾度となく取り上げ、お薦めをしてきた公正証書遺言。遺言を遺すのであれば公正証書がベストです。実際に作成したことがある方であれば、実務的にはどのような流れで作られるものなのか、多少なりともご存知かと思います。遺言作成の最終段階、このときには公証人の確認が入るのですが、この確認方法に関して最近ルールの統一化?が図られたようなのです。


1.公正証書遺言の作成方法

 公正証書遺言について民法では次のような流れで作成するようにと定められています。
  (1) 証人2名以上の立会いがあること
  (2) 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で告げること
  (3) その内容を公証人が筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、閲覧させる
  (4) そして、上記内容に間違いがないことを遺言者と証人が確認して、各自が署名押印する
 
 民法では証人は2名以上となっていますが、3名以上になることは実際にはありません。実務では、証人はあくまで2名で作成されることになっています。
 それでは、上記の流れを今一度確認してみましょう。公正証書遺言はその内容を遺言者が口頭で告げて、それを公証人が筆記して作成することになっています。民法ではそのようになっていますが、その場で公証人が本当に筆記をして作っているのでしょうか。それでは、実際の作成手順の流れをお話ししましょう。


2.本当のところ、実務上は

 まずはイメージしてみましょう。想像するとお分かりになるかと思いますが、遺言作成の当日に公証人が遺言内容を確認して、それから筆記作業を始めていたのでは時間ばかりが掛かってしまいます。とても現実的ではありません。それに、その場に書記官などが居なくてはそもそも文章化すること自体が難しいことでしょう。
 そのようなこともあり、実務上は公正証書遺言をあらかじめ作成しておいてから、上記(3)の手続きに望むことになっています。具体的には、事前に財産の詳細な内容や誰に承継させるのかということを文章で下書きなどして公証役場に伝えます。そうすると、公証人がその内容に沿った添削後の遺言案を作成してくれます。遺言者はこの案文を確認して、修正して欲しい箇所などがあればその内容を伝えて最終案を仕上げていくのです。そして、最終の公正証書遺言(案)が出来上がり、これで良いと確認してから公証役場に出向くのです。


3.公証人のヒアリングがルール化?

 作成当日、公証人は印刷しておいた公正証書遺言を遺言者と証人に手渡しします。この書面を読み上げることで、(3)の手続きが履行されるのです。それでは、(2)の手続きはどのようになされたのでしょうか。実はこの手続き、従前は公証人によって結構まちまちだったのです。遺言案のやり取りを通じて事前に内容確認が行われますから、これが(2)の手続きとして、当日は再度遺言者から細かな確認まではしないことがほとんどでした。特に士業などの専門家が関与する場合には、遺言者の代わりに公証人との間で細かなやり取りを行いますので、既に確認済みということもあったのでしょう。
 この手続きが、最近新たにルール化されたようなのです。今夏を過ぎたあたりからでしょうか。何件もの公正証書遺言の作成に立ち会って感じたのですが、公証人から次のことを必ず聞かれるようになったのです。
 〇氏名と生年月日を教えて下さい。
 〇今日作成する遺言について、どのような内容か話して頂けますか。
 
 何人もの公証人がまったく同じ質問をしてくるので、おそらく(2)の手続きの確認方法についてお達しでもあったのでしょう。
 今後は、簡単で結構ですので遺言者は遺言内容の概要を話せるように心構えをしておきましょう。急に聞かれて慌てることがないように!特に高齢の方は公証人に会う前に復習をしておくのが良いかもしれません。


4.付言ではなくて前文を活用!

 遺言には、本人の気持ちなどを記載することがあります。俗に付言事項と言われるものです。この付言事項、遺言に付け加えるという意味合いから遺言書の最後に記載されるのが一般的です。インターネットなどでも必ずと言って良いほどそのように説明されています。
 しかし、最後に付言として記載しなくてはならないというルールはどこにも無いのです。遺言書を作成するに至った想い、本人の気持ちを相続人に伝えるためのものです。財産の承継方法を細かに指定してから最後に言い訳のように述べるのと、遺言の最初に前文として述べておくのとでは、どちらが相続人に響くのか?考えればお分かりになりますよね。
 仔細は後にして、まずは気持ちを伝えることから始めるのが良いに決まっています。遺言者の気持ちは付言などではなく前文で述べる。もう1つの実務ポイントです。

2022年12月26日

賃貸建物の生前贈与のポイント!

 所得税や相続税の対策として、また効率的な管理・運営のため、個人所有の不動産を法人化することはとても効果的な手法です。しかし、家賃収入を次世代に移転できれば良いのだというのであれば、子どもなどへ単純に生前贈与するのが最も簡単です。この場合のポイントは何なのか、探ってみましょう。


1.家賃収入を移転する

 賃貸建物から生じる家賃収入、そして所得は当然に所有者に帰属します。ここで、所有者が親世代であれば、今後はもう家賃収入を得る必要は無いので子どもたちに早めに収入を移転したい、ということもあるでしょう。早く移転させたい、要は相続まで待てないというのであれば賃貸建物を生前贈与すれば良いのです。そうすれば自ずと家賃収入は贈与を受けた人に移ります。言うは易しですが、実際には贈与税の負担を考えなければなりません。贈与税の計算で用いる評価額は、相続税評価額と同じで賃貸建物であれば固定資産税評価額の70%です。贈与税のことを考えるのであれば、生前贈与に適している賃貸建物は、相続税評価額が比較的低いものになります。イメージ的には築年数がある程度経過した建物といった感じです。築年数は多少経過しているが、しっかりと稼いでいる物件であればベストです。ちなみに、外壁塗装などの大規模修繕が必要そうな建物は、贈与前に工事しておくのが良いでしょう。なぜなら、修繕をしたとしても、あくまで建物の維持管理費である以上は固定資産税評価額が変更されることはないからです。つまり、贈与する親が通常の大規模修繕を行っても相続税評価額は変わりません。その分お得に贈与できるということです。


2.地代は無償で良い

 家賃収入はあくまで賃貸建物から生じます。したがって、アパートなどであれば贈与対象は建物だけでOKです。アパート敷地まで贈与するとなると相続税評価額が大きくなってしまいます。目的は家賃収入の移転であるならば、建物だけを贈与すれば良いのです。そして、その敷地は相続時に建物の所有者が引き継げば問題ありません。遺言書を作成して土地の相続先を決めておけばスムーズに承継できることでしょう。この場合、建物の贈与後は土地と建物の所有者が異なりますが、個人間ですので地代は無償とする使用貸借契約で問題ありません。逆に地代の授受をしてしまうと借地権課税の問題が発生してしまいます。地代は無償にしておきましょう。
 マンションなどの敷地権付の区分所有建物は建物だけの贈与はできないため、贈与対象は土地建物一体です。
 贈与するのであれば、事前にマンションの相続税評価額を確認しておきましょう。


3.負担付贈与には注意

 賃貸建物の生前贈与を行うときには、非常に注意しなければならない点があります。それは、負担すべき債務を付けたままの贈与、いわゆる負担付贈与にしてはいけないということです。
 敷金・保証金や、借入金などの負担が付いたままであると、この負担付贈与に該当してしまいます。これに該当すると、賃貸建物を時価で評価しなくてはならなくなり、相続税評価額を利用して贈与することができなくなってしまうからです。そのため、このような場合には債務に相当する現金相当額を同時に贈与して、実質的な債務の負担を無くすようにしましょう。敷金・保証金であれば、その分の現金を渡してあげれば良いのです。ところが、借入金となるとそう簡単にはいきません。金額も大きくなるでしょうから現実的には現金精算はありえません。そのため、借入金が多額の場合には実務的には難しくなります。ちなみに、実質的な負担を引き継がせないようにと、当事者間では借入金相当の債権債務を別に認識すればテクニック的には可能でしょう。いずれにしても多額の借入金があると実務的には少し厄介なのです。


4.時価と相続税評価額の差が大きいと有利

 生前贈与をするのであれば、時価と相続税評価額の差異が大きい方が効果はあります。低い相続税評価額でより大きな物件を贈与できるのですから、通常は家賃収入の相対比率も高くなるはずです。なお、都心のマンションはこの差異が比較的大きくなる傾向が強いです。令和4年4月の最高裁判決のことを心配する方もいるでしょうが、判示では時価と相続税評価額の乖離が大きいことだけをもって否認することはできないとされています。今回の生前贈与は、その目的からすれば問題が生じることはないでしょう。なお、生前贈与をして3年を経過すれば相続税の計算に取り込まれることがなくなり、財産の切り離しが終了します。


5.法人化との選択

 贈与をすれば家賃収入を移転できます。しかし、移転したとしても贈与を受けた子どもに相応の給与収入があれば所得税対策にはなりません。税負担全体を考えるのであれば、移転する収入(所得)規模と受贈者の所得税負担も考慮する必要があります。
 単純に生前贈与を行うべきか、それとも法人化を選択すべきか、是非とも総合的に検討したうえで賢い選択をしましょう。

2022年11月30日

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今月の言葉

リベラリズムの行方

 20世紀世界は三回、全人類を巻き込んだ争闘を経験した。第一次、第二次世界大戦と米ソ冷戦がそれである。そしてその三回とも、勝者はリベラリズムを標榜する国々であった。この稿の筆者は、第一次、第二次世界大戦の頃にはまだ生を享けていなかったが、1989年11月のベルリンの壁崩壊とそれに伴う冷戦終結、自由主義陣営の勝利の瞬間は、鮮明に記憶している。東欧の多くの国々の市民が、社会主義専制政治の軛から解放されたその瞬間の、心からの歓喜に満ちた顔を忘れることは出来ない。そのとき、この稿の筆者は、20世紀の三回の試練を経て、自由主義と専制主義の優劣についての問題は、「ケリがついた」のだと思った。経済成長の途上で一時的な開発独裁などの政体を必要とする途上国があっても、経済発展が一定の水準に到達すれば、市民の側からの自然な欲求によって、自由主義的な政体に移行するだろうと予想したのである。

 ところが、21世紀に入って、勝利したはずのリベラリズムは、またも試練にさらされている。
 2019年、スウェーデンの調査機関VーDemは、世界の民主主義国・地域が87カ国であるのに対し、非民主主義国は92カ国となり、18年ぶりに非民主主義国が多数派になったという報告を発表したi。また、ロシア、中国を筆頭とする専制諸国ばかりではなく、トランプの米国、フランスやドイツの右派勢力など、リベラリズムの本家のはずの欧米諸国においても、自由を揺るがしかねない勢力が台頭し政権に近づいており、もはや「リベラル」は、少数派の代名詞に堕ちた感もある。

 20世紀の三度の試練を通じて確立されたはずの国際的なコモンセンス、たとえば武力による領土拡張の禁止、言論の自由と人権の保護などのリベラリズム的な価値について、21世紀の専制諸国はどう考えているのだろうか。ロシアは、第二次世界大戦後、旧ポーランド領の約半分をロシア領土とし、その代償に旧ドイツ領の東部のほぼ同面積を新生ポーランドに与えた。つまりロシアに関する限り、第二次世界大戦後の国境線の変更は、2700万人と言われる独ソ戦犠牲者の代償として当然の分け前であり、「武力による領土拡張の禁止」などという国際法的な原則など薬にしたくもないであろう。中国はと言えば、世界において近代社会が始まってからこの方、リベラリズムを標榜する欧米や日本に侵略を受けたことはあっても、リベラリズム的価値の恩恵を受けたことはない。リベラリズムの徳目なんぞは、中国を侵略した国々の、国内的な言い訳に過ぎず、そんな徳目を「コモンセンス」として自らの国作りの役に立てる筋合いはないと考えているのではないだろうか。つまり、20世紀の三度の試練を経て確立されたはずの、国際的なコモンセンスなるものは、残念ながらまだ「世界の常識」にはなり得ていないと考えざるを得ない。

 さらに、第一次世界大戦後のワイマール共和国が合法的な選挙によってナチズムを生んだのと似た様な現象が、21世紀の米、英、仏、独などのリベラリズム先進諸国において起きている事実をわれわれはどのように考えるべきだろうか。この稿の筆者の考えは、悲観的であり且つ楽観的である。

 すなわち、21世紀、リベラリズムに四度目の試練が来ることはあるかもしれない。だが最終的には「リベラルが勝つ」。その理由は、リベラリズム的な価値が国家や民族に基礎を置くものではなく、個人に基礎を置くものだからである。四度目の試練の後、世界はさらに近代国民国家を超えた枠組みを求めることであろう。そのときにこそ、1989年のあの日の人々の笑顔が、国家や民族の歓喜ではなく、市民個人の歓喜の姿であったことを思いたいのだ。

i 東洋経済オンライン 薬師寺克行 2021.06.30

2023年3月2日

慶喜恭順

 近世、近代日本史には三つの大きな「謎」がある。第一は、明智光秀は何故織田信長に叛いたのか。第二は、浅野内匠頭は何故吉良上野介に刃傷に及んだのか。そして第三は、徳川慶喜は何故軍事的に優位だったのに薩長(西軍)にひたすら恭順したのか。

 今月は、このうち第三の謎について書きたい。

 まず初めに、徳川慶喜という人物が幕府制度や将軍職にあまり魅力を感じておらず、天皇を頂点とする国家の下で、徳川氏の行政能力、経済力、軍事力などを背景に中枢の地位を得たいと思っていたであろうことを書く。これについては慶喜の生家である水戸徳川家の遠祖光圀が私淑していた明からの亡命学者朱舜水の影響を指摘したい。朱舜水は、清に滅ぼされた明の復興運動に幾度も挫折した後、日本に亡命してきたのだが、日本のありようを見て何故か感激してしまった。日本の歴史には放伐革命による王朝交代がなく、萬世一系の皇室というものが継続していたからである。そのことはとくに王朝の交代によって前王朝の遺臣となってしまった朱舜水の胸を打ち、「日本こそが中華の国だ」とすら思わせた。彼の思想的影響が水戸藩の代々に及び、当初は徳川幕府に忠節を尽くすことが、ひいては天皇(君)に対する忠義であるという見解であったものが、次第に後期水戸学になるにつれて、徳川幕府を脇に置いて、天皇に対する直接の忠義という考え方が出てきた。慶喜はまさにそのような思想的環境の中で育てられた。

 次に、慶喜が一方の主人公であった、十三代将軍家定の後継争い。この一橋派(慶喜を担ぐ)と南紀派(紀州藩主徳川慶福を担ぐ)の争いは、単なる幕府内の宮廷闘争ではなく、薩摩、越前など有力な列藩藩主と協議をしながら政治を進めるのか、あるいは従来通り譜代専制の幕閣が政治の主導権を握るのかという考え方のちがいがあったのである。つまり慶喜には、十四代将軍家茂(慶福のこと)の急死によってやむをえず征夷大将軍に就任する遙か前から、列藩協議による政治運営の構想があったことになる。そして孝明天皇の信頼が厚かった慶喜にとっては、この構想の中で自らが中心となって政治を進めていくことはけっして夢ではなかった。

 ところが、わずか半年後その孝明天皇までが急死してしまう(暗殺説もある)。やむをえず慶喜は、幕府と言うよりは徳川氏の軍事力を刷新強化し、政治の主導権を持ち続けようとする。これに最も脅威を感じたのが薩摩藩である。何故ならば、徳川主導であれ、後の明治政府であれ、新しく天皇の下で発足する国民国家日本には、早急に解決しなければならない課題があったからである。

 それは「廃藩置県」による中央集権化であった。そして慶喜主導で廃藩置県が為されると言うことは、おそらく薩摩の滅亡を意味する。長州、そして薩摩という軍事力で徳川氏と対抗しうる大藩は、武装を解除され、(実際に初期明治政府における徳川氏がそうであったように)完全に権力の中枢から排除されるだろう。ここから薩摩の一部藩士による挑発と武力倒幕という陰謀が開始されたのだとこの稿の筆者は考えている。その後大政奉還と倒幕の偽勅が同日に起きる話から、小御所会議のクーデター、薩摩の挑発、鳥羽伏見の戦いまでの経緯はよく知られるとおりである。慶喜はまんまと天皇の下での国家運営の主導権を「偽錦旗」を掲げる薩長に奪われてしまった。幕府というものに魅力を感じていなかった慶喜にとって、そのことは痛恨事ではあったが、それでも朝敵となって武力抵抗を続けるという選択肢はなかった。慶喜は恭順するしかなかったのである。

2022年12月12日

伯夷叔斉

紀元前1000年頃(といわれているが、定かではない)中国全体を支配していた殷(最近の考古学の成果から実在したことが確認されている)王朝は終焉を迎えようとしていた。第30代の王は紂王と言って、たいへんな暴君であったと言われるが、とりあえず本稿の主題ではない。

 その殷の中に孤竹国という小国があって、国を治める伯に、伯夷、仲馮、叔斉という三人の兄弟がいた。その当時の中国に、長子相続という習俗があったのかどうかは、これもよく分からないのだが、孤竹国の人々は、伯夷が後継者となるだろうと思っていたらしい。ところが、伯の愛情は末子の叔斉に注がれ、叔斉を後継とするようにと遺言して亡くなった。伯夷は、自分が孤竹国に居たのでは叔斉が後継者としてやりにくかろうと思って、国を去った。一方、叔斉の方も、伯夷を差し置いて後継者となることをよしとせず、自分も伯夷の後を追って孤竹国を出て行ってしまった。困った孤竹国の人々は、仕方がないので真ん中の仲馮を立てて後継者としたというお話し。父の遺言を尊重した伯夷は「孝」という徳目を重んじ、兄を差し置いて君主に立つことを肯わなかった叔斉は「長幼の序」という徳目を守ったと言うことになる。

 後世漢の時代の歴史家司馬遷が、この二人の伝説を「史記」の冒頭に掲げたのは、有名な話。さらに、本朝の徳川光圀(水戸黄門、事情があって兄を差し置いて水戸徳川家の後継者となった)が、自分のコンプレックスに重ね合わせて、伯夷叔斉の伝説に感応且つ感激してしまい、それが「史記」を真似て「大日本史」を編纂する端緒をつくったというのもよく知られている。

 さて、伯夷叔斉の話には後日談がある。孤竹国を出た二人は、流浪の末に周国の西伯昌が仁に厚い名君だという評判を聞いて、仕えようと周に向かった。しかし残念ながら彼らが周の首都に着いたときには昌はすでに亡くなっており、昌の後を継いだ子の発(後の武王)が、諸侯の支持を得て、殷の紂王に対する放伐革命に決起する直前であった。そこで伯夷叔斉の兄弟は、西伯発の馬の前に立ち塞がり、紂王にどのような暴虐や非行があっても臣下たるものは、これに背いて謀反を行ってはならず、あくまで君主を諫めることに徹するべきだと説得する。徳目としては「忠」を貫くことをよしとしたということになる。が、当時の事情を言えば、世論はすでに紂王の上にはなく、諸侯はこぞって西伯を立てて殷王朝を倒そうという勢いにあった。中国の歴史の中では、前王朝の天命が尽きれば、これに代わる者の上に天命が下って命が革まる(革命)ことになっており、発にしてみれば、伯夷叔斉の言は、タイミングを失した無用の止め立てとうつったかもしれない。

 発は諸侯を率いて殷王朝を倒し、周王朝の武王として中華に君臨することになった。伯夷叔斉の兄弟は、周(西伯の支配域ではなく、中華一帯)の粟米を食うことを潔しとせず、(比喩として周に仕えなかったということではなく、ほんとうに志の汚れた周で耕作されたものは口に入れないことにしたらしい)、首陽山というところにこもって、自生する蕨を採取して暮らしたが、やがて餓死した。

 彼らが餓死する直前に作ったとされる「采薇の歌」(蕨をとる歌)が残っている。紙数の関係で全て採録できないが、「暴ヲ以テ暴ニ易ヘソノ非ヲ知ラズ」と痛烈に武王の革命を批判している。

 司馬遷は、史記の冒頭にこの伯夷叔斉の物語を掲げ、「天道是か非か」、つまり中華民族が尊ぶ徳目を墨守したこの兄弟を置き去りにして、殷から周へと流れゆく歴史の大河(天道)が、果たして是であったのか、否であったのかを問い、以て自著「史記」全体のメインテーマとしている。

2022年11月1日

先輩後輩

 2021年8月24日夜、東京メトロ南北線白金高輪駅のエスカレーターで、通勤帰りの会社員が、尾行してきた男に、突然振り向きざまに硫酸を掛けられるという事件が起きた。犯人は被害者の大学サークルの先輩。それほど親しくはなかったようだが、要するところ被害者が「後輩のくせに先輩である自分にタメ口で話した」ことが犯行の動機らしい。犯人は、はじめ自分の学年年齢を明かさず後輩達と交わってフラットに話していたが、途中から「自分は先輩だ」と言い出し、後輩達が口のききかたを改めなかったために、深甚な恨みを抱いたのだとか。

 先輩はエライ。先輩がどんな人でも、後輩は先輩をたてなければならない、なんていう文化は、かなりの程度に日本特有のものではないかと思う。先輩というのは、あるコミュニティに時間的に以前から、長くいる人のことであるから、王侯貴族がエライ、お代官様がエライ、社長がエライ、党官僚がエライ等というのとはちょっと違うような気がする。

 戦前の帝国陸軍には「星の数より飯の数」ということわざがあって、古兵殿とかいう、長い期間軍隊の飯を食べてきた兵員は、制度上の分隊長、小隊長よりも隠然たる力を持っていた。帝国海軍では軍令承行令という規則が公式にあって、全海軍の兵科士官の序列が一律に決まっていた。軍令承行令は戦闘中の軍艦で艦長などが戦死した際に、次に指揮権を受け継ぐ者の順序を予め決めておくものであったが、この序列は、任官順、つまり先輩が後輩よりエライように出来ていた。(任官順が同じ時は兵学校の成績順)。これは実際に戦争が起きてみるとかなり不都合なもので、とくにハワイ攻撃の不徹底やミッドウェーの敗北で評価の低い南雲忠一提督が、なぜ帝国海軍虎の子の機動艦隊(第一航空艦隊)を率い、航空戦に識見が深く空母機動部隊生みの親であった小沢治三郎提督がなぜ水上部隊(南遣艦隊)の指揮官に回ったのかというような、戦争の帰趨を決めるような将官人事についても、「先輩が後輩よりエライ」原理が適用されてしまった。因みに米国の軍隊の人事は、もっと柔軟で、第一次世界大戦中、米陸軍の佐官級の若手の秀才ダグラス・マッカーサーが、あっという間に代将、少将と「戦時中だけの」将官に抜擢されたことはよく知られている。

 ついでに言えば、ある組織の中で先輩でも後輩でもない「同期」という存在は、組織の構成員がストレスを感じないで済む希少で大切な仲間であり、多少の出世の度合いが違っても一生「タメ口」で語り合う「同期の桜」となるのである。

 こうした日本の先輩後輩秩序はなぜ生じたのか。いくつか理由はあろうが、先ずは儒教による「長幼の序」の影響。兄弟に才能の優劣があっても、先に生まれてきた方が必ず家を継ぐというルール(承行令)によって、家督相続争いを避けようとした。農民の世界では、日々の農耕には才能の優劣はあまり影響しないので、年齢秩序が優先された。いまは後輩である若者も、いずれ年をとれば先輩になれるので、「先輩が後輩よりエライ」ムラ秩序は、理不尽なようで、意外と公平と言えないこともなかった。江戸時代の職人や商人の世界でも、駆け出し初めの十年くらいは先輩の言うことをご無理ごもっともと耐えて聞くことが「修行」であり、才能の発揮はあくまでも年季が明けた後のことであった。こうして見ると、先輩後輩秩序とは、労働市場に流動性がない社会を円滑に運営するための知恵であったことが分かる。日本の労働市場が、流動化の時代を迎えようとしている現代には、働き方改革と共に「先輩が後輩よりエライ」という秩序も見直すべきではないだろうか。

2022年10月1日

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