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え〜っと通信

タイミングで変わる相続財産
~売買契約中に相続が発生したら~

 土地は、路線価から計算する相続税評価額よりも高い金額で売買されることが多くあります。
 土地の売買契約を締結した後、残代金決済と引渡しが完了する前、土地名義が売主のまま相続が発生したとします。この場合、相続税はどのようになるのか。事例にあてはめて被相続人が売主のケースと、買主のケースに分けてご説明します。

1.事例

被相続人が、土地を相続税評価額の2倍の金額で売買契約を締結し、手付金3,000万円を受け渡した段階で相続が発生したとします。
・土地の相続税評価額…1億5,000万円
・売買代金…3億円
・手付金…3,000万円
・残代金…2億7,000万円
なお、残代金決済と引き渡しが完了していないため、土地名義は売主のままです。

2.被相続人が売主のケース

(1) 相続税の取扱い
 売主の相続財産は、売買契約に基づく譲渡金額のうち相続開始時における未収金(=残代金)になります。
 事例では、相続財産は土地(1億5,000万円)ではなく未収金(2億7,000万円)です。他に被相続人が受取済みの手付金3,000万円も相続財産になります。このケースでは、売買契約締結のタイミングで相続財産が1億5,000万円増えることとなります。

(2) 考え方
 土地名義が被相続人のままなのに、相続財産を土地として路線価評価できないのはなぜでしょうか。
 売主に相続が発生した場合、売買契約中の土地は、名義が被相続人のまま所有権が残っていても、相続人は残代金を受け取るのと引き換えに土地を買主に引き渡さなければなりません。相続税では、売買契約中の土地が主に残代金を確保するためのものだから、相続財産の種類を土地として路線価評価するのではなく、未収金(債権)とすべきと考えられています。


(3) 小規模宅地の特例適用について
 居住の用や事業の用に供されていた土地に適用される小規模宅地等の特例は、土地等の売買契約中に相続が発生した場合、相続財産が未収金になるため原則として適用することができません。

3.被相続人が買主の場合

被相続人が買主だった場合の相続財産はどのように考えればよいでしょうか。


(1) 相続税の取扱い
 買主の相続財産は、原則として、売買契約に係る土地の引渡請求権という債権となり、その財産取得者の負担すべき債務が相続開始時における未払金になります。つまり、純財産は、引渡請求権と未払金との差額になります。
 例外として、買主は、所有権移転の有無にかかわらず、売買契約中の土地を相続財産として路線価評価して申告することも認められています。申告する相続財産の選択の仕方で大きな差が生じますので、ご注意ください。
(原則)
事例では、相続財産は引渡請求権3億円であり、未払金が2億7,000万円になります。差額の3,000万円が純財産になります。
(例外)

事例では、相続財産は土地1億5,000万円であり、未払金が2億7,000万円になります。差額の1億2,000万円が純債務になります。


(2) 小規模宅地の特例適用について
 相続財産を土地として申告する場合、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用することができます。

4.売買契約のタイミングは慎重に

 相続直前に土地を譲渡すると、売主の相続財産が土地から譲渡代金に変わるため、相続財産が膨らむケースが多くあります。売買契約中の相続でも、上記のように膨らむことがあり得ます。土地の売買は高額になり易いので、売買契約締結に当たっては、資金需要や使い道を考えた上で慎重にタイミングを検討することが必要と考えます。被相続人が土地の売買契約を締結中であった場合は、必ず税理士にお伝えください。

2023年5月15日

非上場株式を譲渡したときの税金について

 同族会社の後継者以外の方にとって、相続財産の中で換金が難しく扱いに困りがちな財産とは?その一つが同族会社の非上場株式です。通常、株式は相続財産として配偶者や子供に引き継がれます。後継者は会社の株式が相続により分散すると買い取りや贈与でまとめる必要が出てきます。また、後継者以外の方にとっては相続したものの、相続税等の税金がかかるだけの財産になってしまうことも少なくありません。手放したい場合はその会社の後継者か、その会社自身に引き取ってもらう必要があります。そこで今回は非上場株式を発行会社に売却した場合にかかる税金をご説明させていただきます。

1.非上場株式の譲渡の概要

 前提として、創業以来資本関係に変動はなく、資本金や利益剰余金が十分にあり株主は親族で占められている非上場の同族会社で考えます。
 最初に通常の株式の売却を考えます。一般に株式の譲渡は、収入金額から取得費(取得時の金銭等の払込み金額)と譲渡費用を控除した残額に対して、約20%(所得税・住民税)の税率を適用します。親族で引き継いでいる非上場株式は、相続や贈与で移転していることが多いので、実務的には出資金額が取得費となる事が多いです。
 次に個人の株主が、発行元の同族会社に時価で売却するケースを考えます。この場合は、出資金額に対応する部分とそれを超える部分で取り扱いが変わります。
 出資金額に対応する部分は、会社は同額を資本金等から取り崩して支払い、出資した金銭の払戻しになりますので、課税関係は生じません。一方、出資金額を超える部分については、所得税法上、会社からの配当とみなされるため、配当所得(みなし配当課税)として扱われます。非上場株式の配当所得は総合課税となるため、最大で約55%(所得税・住民税)の税率が適用されます。

同族会社への売却の課税関係をまとめると下の図のようになります。

2.みなし配当が適用されない特例

 相続等により取得した株式については、株式の分散化を防ぐ趣旨から、次の特例が設けられています。
 「相続開始の翌日」から「相続税の申告期限から3年経過日」までに一定の要件を充足して発行会社へ譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されません。すべて通常の株式の売却と同じように譲渡所得として約20%の税金が課され、課税関係が終了することになります。また、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例も適用できます。他の所得との兼ね合いもありますが、保有する希望のない非上場株式については、相続直後に発行会社に売却をすると税負担の面で有利になることがあります。

3.譲渡時の課税関係の注意点

 株式を時価ではなく、無償又は著しく低い価額で発行会社へ譲渡した場合はどうなるのでしょうか。


(1)売主個人の課税関係
   まず売主個人の譲渡の課税関係を考えますと、会社から受け取る金額が時価の2分の1未満の場合 

  は、所得税法上、低額譲渡の規定が適用され、時価で譲渡したものとみなされます。
  したがって、割安でも良いからと時価の2分の1を下回る金額で譲渡すると、次のようになります。

 【例】

  時価10,000万円(出資金相当額1,000万円)の株式を4,000万円で譲渡した場合、

  4,000万円-1,000万円=3,000万円」(配当所得・総合課税)となります。
  更に時価で譲渡したものとみなされるため、

  「(10,000万円-3,000万円)-1,000万円=6,000万円」が株式の譲渡所得として税金が計算されます。


  この様に場合によっては高い税金を支払うことになりかねませんので注意が必要です。


(2)既存株主の課税関係
   会社が時価より低額(無償含む)で株式を買取ることで、既存株主は出資持分の増加という利益 

  を享受することとなります。この場合は、既存株主にも課税関係が生じます。

 【例】

  株式の時価総額10,000万円(発行済株式5株、一株当たり株価2,000万円)の株式のうち、1株を同族会社が無償で取得した場合、

  既存株主の株価は、10,000万円÷(5株-1株)=2,500万円となります。


  無償取得前後で株価が500万円増加し、出資持分も増加しています。売主以外の既存株主が一人の会社の場合は、500万円×4株=2,000万円の経済的

  利益をその既存株主が得ることになり、この利益に対して贈与税がかかります。

4.補足

 一般に第三者が相手の取引であれば合意した価額が時価とみなされます。しかし、同族会社との取引においては、市場が形成されていないため、国税庁の通達を基に算定した株価を税務上の時価とみなして税金を計算します。
 株式に関する税制は非常に複雑であり、今回の事例の様に単純なものだけではないため、ご興味がある方は是非弊社にご相談下さい。

2023年4月14日

幼児への贈与は大丈夫?

 相続税の節税として、贈与を活用するのは世間の常識となっています。税制改正により、令和6年1月1日以後の贈与から相続開始前の贈与加算が段階的に7年に延長されるため、節税のための贈与はより早く行うのが効果的です。
 子や孫が生まれてから、贈与税(暦年贈与)の基礎控除110万円を活用すれば、18歳で成人するまでの間、無税で約2千万円を渡すことができます。そこで、幼児への贈与についてご説明します。

1.贈与が成立するには

 贈与は、無償(タダ)で資産を移転する契約をいいます。贈与の効力が生じるのは、贈与者が自分の財産を無償で相手方にあげることを伝え、もらう人が承知した場合です。つまり、あげる人ともらう人の双方の合意があってはじめて贈与が成立します。

2.税務署が認めない贈与は

 税務署が認めない贈与は、贈与が成立していない場合です。たとえば、親が子の名義で作った預金の場合、以下のような理由から、その預金は親子間で「あげる」「もらう」の合意がなく贈与が成立していないと判断されると、名義が子であっても親のものと判定されます。このような預金を「名義預金」といいます。
 ・通帳、カード、印鑑を贈与者(親)が管理している。
 ・子がその預金の存在を知らない。

3.幼児への贈与は大丈夫?

 幼児は、贈与が成立するための意思表示や財産管理ができないから、贈与が成立しないのではという疑問が生じます。
 結論から言えば、幼児に対する贈与はできます。なぜなら、未成年者の場合、親権者が法定代理人となるからです(民法824条)。つまり、両親が、幼児である子に代わって贈与を承諾し、子が受けた贈与財産として管理していけばよいのです。

4.贈与契約書は必要なの?

 贈与は口頭でも成立するので、身内で贈与契約書を作るのは堅苦しく感じます。しかし、将来の親族間トラブル防止や税務署に「名義預金」といわれないよう贈与契約書を作ることは重要です。たとえば、相続が発生したとき、幼児が大きな金額の預金を持っていると、税務調査を受ける可能性が高くなります。そんなときに、贈与契約書があれば、贈与成立を証明するため非常に有効です。署名押印のある贈与契約書を作成した上で、契約通りに財産が移っていれば、特殊な事情がない限り、贈与契約は成立しているとみます(民訴228条④)。税務署が、その贈与を成立していないとひっくり返すことはまず無理です。

5.口座振込をお勧めします

 贈与契約書は作ったけれども、実際には契約通り財産を移していない場合などは、税務署から契約の真実性を疑われ、贈与が成立していないと指摘される恐れがあります。そのような意味では、記録が残らない現金で贈与するよりも記録の残る口座振込で贈与するほうが間違いありません。

6.贈与税の申告や納税はどうするの?

 贈与税(暦年贈与)は、1年間に基礎控除額110万円を越える財産の贈与を受けた場合に申告が必要になります。贈与を受けた人が幼児であっても申告・納税をしなければなりません。実際には、親権者が代理人として申告と納税の手続きを行うことになります。
 この場合の贈与税は、贈与を受けた幼児の負担となることにご注意ください。税金の支払いであっても、負担者が違えば贈与税の対象になってしまいます。

7.贈与を受けた子が成人したら

 名義人である子が預金の存在を知らないまま、通帳を管理していた両親が亡くなってしまうと、贈与は成立していないとみられ、その預金は管理していた両親の相続財産になってしまいます。遅くとも子が成人するまでには、預金の存在を伝えて管理方法を親子で話し合いましょう。

8.まとめ

 幼児への贈与はできます。しかし、せっかく子のためにコツコツ貯めてきたお金が、子の財産とは認められず、贈与税や相続税といった税金の対象となっては苦労が水の泡になってしまいます。
 贈与契約書の作成や親権者としての財産管理方法など、不安やお悩みのことがあれば、当事務所にご相談ください。

2023年3月16日

令和5年度税制改正の概要

令和4年12月16日に令和5年度の税制改正大綱が発表されました。今回は税制改正の主要項目のうち、特に注目すべき点をご説明します。

1.暦年課税における相続開始前贈与加算の見直し

  資産移転の時期に対する中立性を高めていく観点から、相続財産に加算される贈与の期間につい  
 て、令和6年1月1日以後の贈与から次の見直しが行われます。

(1) 加算期間の延長相続財産へ加算される贈与は、相続開始前7年間(現行3年間)に延長されます。
※1 令和9年1月以降、加算期間は順次延長
※2 加算期間が7年間となるのは令和13年1月以降
(2) 延長期間の加算額調整   延長される4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、総額100万円まで相続財産に加算しないこととされます。

2.相続時精算課税制度の見直し

(1) 110万円の基礎控除の導入
 令和6年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税より、相続時精算課税で受け
 た贈与は、暦年課税の基礎控除110万円とは別途、毎年110万円まで非課税とされます。
 ※1 暦年課税分と合わせると基礎控除は最大220万円
 ※2 複数の特定贈与者から贈与を受けた場合は、110万円を各贈与額に応じ按分


(2) 土地建物が災害で被害を受けた場合の再評価の導入
 令和6年1月1日以後に生じる災害により、相続時精算課税で贈与を受けた土地建物が、一定以上の被
 害を受けた場合は、相続時において評価額を再計算することができるようになります。

3.特定の事業用資産の買換えの見直しと延長

 既成市街地等の内から外への買換え(1号買換え)が適用対象から除外されます。また、コロナ禍
からの経済社会活動の回復を確かなものとし、土地の有効活用による投資促進と不動産市場の活性化
のため、長期(10年超)所有の土地建物等からの買換え(4号買換え)は、譲渡益の課税繰延割合を下
記の通り見直した上で、適用期限が3年間(令和8年3月31日まで)延長されます。
  ・地方から東京23区への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換え 70%から60%に引き下げ
  ・東京23区から地方への本店又は主たる事務所の移転を伴う買換え 80%から90%に引き上げ

4.相続空き家に係る譲渡所得の特別控除の拡充・延長

 令和6年1月1日以後の譲渡から、次の見直しを行った上で、適用期限が4年間(令和9年12月31日まで)延長されます。
 (1) 適用要件の見直し

  ①家屋の耐震リフォーム又は②家屋の取壊しは、売主にて行う必要がありますが、売主の負担感が 

  強いこともあり、譲渡年の翌年2月15日までに①又は②の要件を満たせば良いこととされます。


 (2) 特別控除額の見直し

  相続人等による共有の場合、現行は、1人当たり3,000万円まで控除できますが、相続人等が3名以 

  上の場合は、2,000万円までが限度とされます。

5.適格請求書等(インボイス)保存方式にかかる見直し

(1) 消費税の納税額についての負担軽減措置
  免税事業者が適格請求書発行事業者の登録をした場合の負担軽減を図るため、令和5年10月1日から
 令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となった
 こと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者となった場合には、申告時の選択によ
 り納付税額を売上に対する消費税の2割とすることができるようになります。


(2) 1万円未満の課税仕入れに係る経過措置
  インボイス制度における仕入税額控除の適用にあたっては、金額の多寡にかかわらず、原則として取
 引の相手先からインボイスを取得・保存する必要があり、事務負担の増加が懸念されていました。そこ
 で、基準期間(2期前)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(前期の上半期)における課税売
 上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において
 行う課税仕入れについて、支払対価の額が1万円未満である場合には、インボイスの保存がなくとも一
 定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認めることとされます。

6.極めて高い水準にある高所得者層に対する負担の適正化

 税負担の公平の観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化を図るため、令和7年分所得税より、次の②が①を上回る場合に限り、差額分を申告納税する新たな措置が設けられます。
 ① 通常の所得税額※1
 ②(合計所得金額※2-3.3億円)×22.5%
 ※1 分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除の控除前の所得税額
 ※2 確定申告を要しない配当所得等の特例及び上場株式等の譲渡による所得の特例を適用しな
    いで計算した合計所得金額(源泉分離課税及び非課税の所得は含まない。)

7.その他の主要な改正項目

2023年3月2日

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ATO通信

贈与税が大変!申告前なら取消し可能

  相続税対策のことを考えて、子どもへ財産を贈与することはよくあります。自分ではお得と思って実行した贈与ですが、翌年に贈与税の申告を行おうと計算をしてみたところ、勘違いがあったのか贈与税が相当多額になってしまったらどうしますか?今からでも贈与を取り消すことはできるのでしょうか。

1. 原則的な取扱い

 生前贈与を行うのであれば、当然のことですが後々の相続税の負担より贈与税の方がお得にならなければ意味がありません。賃貸建物などの収益財産を贈与するので贈与税はある程度高くても構わない、ということがあるかもしれませんが、通常は贈与税の方が高くつくのであれば行うメリットはありません。
 そうは言うものの誰であっても間違えはあります。贈与を行った後になって勘違いや思い違いに気付いた、はたまた試算してみたところ贈与税が想定より多額になってしまったので考え直したい、ということもあるでしょう。このようなときは、贈与を取り消して無かったことにしたいと思いますが、税務上は認められるのでしょうか。
 残念ながら、原則的な取扱いでは贈与税を課税することになっています。それは、個人間で無償による財産の移転があったときは贈与があったものとして贈与税を課税するルールになっているためです。事後に取消したかどうかなどとは関係なく、まずは贈与の事実があったのであれば課税するのが税務署の考え方です。贈与を取り消しさえすれば良いという単純な問題ではありません。
 しかし、全てのケースについて杓子定規に贈与税を課税するのも酷な話です。そのため、一定の場合には贈与税を課さなくても良いという取扱いが用意されています。

2. 3月15日までに取消しすれば実務上はOK

 税務署としては、贈与の取消しや合意解除をやみくもに認めてしまうことが問題なのです。贈与税の申告納税をしたものの、1年後に贈与の取消しを行ったからやっぱり税金を返して欲しいと言われてしまっては困ります。
 そこで、そのようにならない下記の4つの要件を満たす場合には、贈与の取消し等を税務上も特別に認めて課税しなくても良いことになっています。
 1.取消し又は解除が贈与税の申告期限までに行われており、名義を戻す等の手続きを行っている
 2.贈与財産を処分しておらず、担保目的などにもされていない
 3.贈与された財産として所得税等の申告や届出をしていない
 4.受贈者は贈与財産からの賃料収入や配当収入などの法定果実を受領していない、受領したのであれば贈与者へ返却している

 ここでのポイントは、贈与税の申告期限である翌年の3月15日までに取消しや合意解除をするのであれば税務署は認めるということです。逆に3月15日を過ぎると、たとえ取消し等をしたとしても贈与税が課されます。考え直しは翌年の申告期限までだということです。

3. 登録免許税や不動産取得税は戻らない

 贈与財産が不動産であれば登録免許税や不動産取得税がかかります。贈与の取消しを行ったときにはこれらの税金はどうなるのでしょう。
 結論からいえば、このような流通税と呼ばれる税金は、たとえ取消しを行ったとしても課税されることになっています。どんな理由であれ、所有権が一度は移転したのは事実だからです。したがって、所有権移転に伴う登録免許税は返ってきません。また、不動産取得税も同様に課税されます。
 ただし、親族間贈与であれば、不動産取得税を一定の要件のもとで課税しないという特例的な取扱いを置いている県もあります。不動産取得税は念のため確認をした方が良いでしょう。なお、取消しや合意解除を贈与税の申告期限までに行う必要があるのは同じです。リミットは翌年の3月15日までと思いましょう。

4. いっそ相続時精算課税にするか?

 税務署は申告期限までに贈与の取消しをするのであればその理由は問いませんが、贈与税が多額になりそうなので暦年課税による贈与を一旦見直ししたい。これが理由としては一番多いのではないでしょうか。税負担のことで悩んでいるのであれば、いっそ2500万円までの特別控除枠がある相続時精算課税を検討するのはどうでしょう。令和6年からは制度が改正されて110万円までの非課税枠が新たに設けられます。今までは使い勝手が悪かった制度ですが、これからは利用価値が見出せます。
 登録免許税や不動産取得税が課税されるのであれば、贈与の取消しはせずに精算課税贈与に鞍替えしたらどうなるのか?今一度考えるのも良いかもしれません。
 いずれにせよ、判断には相続税と贈与税のシミュレーションが必要になります。しっかりと準備をしておけば、どんなことにも対応ができるのです。

2023年5月31日

相続人以外が分割協議に絡むと厄介

 遺言が無ければ、相続人全員で遺産分割協議を行って具体的な分け方を決めます。この遺産分割協議、当事者である相続人が行うものですが、相続人以外の方が意見を述べはじめることがあります。上手くまとまれば良いのですが、当事者以外が関わると紛糾することが多いのも事実です。

1. 遺産分割は誰がする

 遺産分割協議は、相続人本人が自らの考えで行うものです。民法には法定相続分という割合が定められてはいるものの、相続人が合意をすれば必ずしも法定相続分にこだわる必要はありません。したがって、法定相続分より多い財産を取得したとしても、反対に少なかったとしても問題は生じません。法定相続分で無ければダメなのだと思っている方もいるようですが、相続人の合意が尊重されるのです。
 家族には様々な事情や考え方があることでしょう。血の通った人間ですから、色々な気持ち・想いがあります。法定相続分にこだわり過ぎずに話し合いを行う、これが遺産分割協議の本来あるべき姿だと思います。

2. 代理人が登場するとどうなる?

 相続人が未成年である場合や、判断能力が無いなどの事情があると、本人に代わり代理人が手続きを行うことになります。相続人が未成年の場合は法定代理人である親、いわゆる親権者が手続きを行います。しかし、その親権者も相続人になっている場合があり、この場合は利益が相反する関係になることから、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。また、相続人が成年被後見人である場合には、原則として成年後見人が手続きを行います。
 遺産分割協議での代理人
   未成年・・・親権者または特別代理人
   成年被後見人・・・成年後見人

 実はこの法律上で定められた代理人が厄介です。
 特別代理人や成年後見人は、法律上の権利である法定相続分を最低限満たすような遺産分割をしなければなりません。代理人が勝手に本人の利益を害するようなことはできないからです。当然なことではありますが、融通がまったく効かず、法定相続分を主張する立場になります。ある意味仕方ないのですが、もう少し調整ができないものかと思ってしまいます。

3. 問題となるのは相続人以外が登場するケース

 分割協議は難しいからなど理由は様々でしょうが、相続人に代わって本人の配偶者や、子などが代理人のように振る舞うことがあります。あくまで相談相手としてアドバイスを行う程度であれば良いのですが、本人に代わって話をするようになると、揉め出してまとまらなくなることが往々にしてあります。
 さきほどの代理人のケースとは違うので、必ずしも法定相続分に縛られる必要はありません。しかし、現実にはそうではなくなります。遺産分割では損をしないように守らなければならない!という感情が芽生えるのです。そして、これが相続人の気持ちよりも優先しがちになります。そうすると、遺産分割では法定相続分を死守する、これありきの話し合いになります。
 多少損をしても円満に仲良く相続しようという考えからは遠ざかり、紛糾しがちになります。相続人自身の気持ちはある程度で良いと思っていたかもしれません。ところが、まずは法定相続分をしっかり主張すべきという論点に置き換わるのです。話し合いに相続人以外が登場すべきでは無いでしょう。

4. 弁護士が登場すると

 相続人間での話し合いができないと、弁護士が代理人として登場します。相続人の1人に代理人弁護士がつけば、他の相続人も弁護士に依頼せざるを得なくなります。これまで円満な親族関係にあった間柄でも、これをきっかけとして今までの良好な関係を維持することは難しくなることがほとんどです。
 また、当然ですが弁護士費用が発生します。場合によっては、弁護士費用を差し引いた後の財産手残りを考えると、弁護士に依頼しない方が良かったのでは無いか?と思うようなこともあり得ます。
 全てが丸く収まることばかりでは無いので致し方ないのですが、費用的には弁護士を入れないのが一番です。

5. 未分割だと税金上はとても損

 相続人以外が分割協議に絡むと、話し合いに時間が掛かることが多くなります。このような場合でも相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。未分割だからと申告期限が延びるわけではありません。この未分割状態の申告ですが、税金上は大きな不利益が生じますので特に注意が必要です。
 配偶者は、法定相続分又は1億6千万円までの相続財産であれば相続税が生じない税額軽減制度があります。また、ご自宅や事業用の土地を評価減できる小規模宅地等の特例というものがあります。これらの特例は遺産分割が終わっていることが要件のため、一旦余計な相続税を納める必要があります。その後、遺産分割が整えば更正の請求で税金を取り戻すことは可能ですが、税理士に依頼すれば別途の報酬が生じます。権利主張するだけでは無く、ゆずる点も踏まえて相続人同士で話し合いを行う。これが円満相続のポイントなのでしょう。

2023年4月28日

相続放棄に注意!遺留分が変わるかも?

 相続人ではあるものの、遺産の状況次第によっては相続放棄を考えたい方もいます。借入債務が心配だ、煩わしい相続手続きから離脱したいなど、その理由は様々でしょう。
 でも、ちょっと待ってください。相続放棄は自分のことだけではなく、他の相続人へ大きな影響を及ぼすことはご存知ですか?

1. 相続放棄の効果

 相続人が相続放棄をすると、その相続人は当初から相続人では無かったことになります。その相続人は、そもそも最初から存在していなかったのだと考えると分かりやすくなります。そのため、相続放棄の影響により相続人となるべき対象者が変わってしまうことがあるので注意です。
 それでは、誰が相続人となり得るのかを確認します。被相続人の配偶者は必ず相続人です。配偶者以外の方は、①子、②親、③兄弟姉妹の順番で相続人になります。
下図の親族関係図で整理してみます。

・その1 原則
      ⇒相続人(法定相続分)は、配偶者(1/2)、子1(1/4)、子2(1/4)

・その2 子1が相続放棄
      子1は存在しなかったことになるので、子は子2のみとしてカウントします。
      ⇒相続人(法定相続分)は、配偶者(1/2)、子2(1/2)

・その3 子1及び子2が相続放棄
      第1順位の子がいないため第2順位を考えますが、父母は既に他界しているため第3順位の兄が相続人になります。
      ⇒相続人(法定相続分)は、配偶者(3/4)、兄(1/4)

 配偶者以外は第1順位から考えていき、先順位の人がいなければ次順位が相続人になります。自分が相続放棄したからそれで終わりではないのがミソです。したがって、相続放棄をすると、兄弟姉妹が相続人に浮上する可能性だってある!ということです。

2. 遺留分にも影響する!

 相続放棄をすると、相続人が変わる可能性があるという点は理解されたかと思います。ただし、注意すべき点はこれだけでは無いのです。法定相続分が変わってしまうことにより、それが遺留分に影響を及ぼす方がよっぽど重要かもしれません。
 先のその2のケースは、一見すると何も問題が無いように思えますが、被相続人が次の遺言書を遺していたとします。「配偶者に全ての財産を相続させる」
 配偶者と子1は円満な仲ですが、子2とは険悪な関係で、子2からは遺留分侵害額請求がなされるとします。
 ここで子1が、相続争いに一切巻き込まれたくないとして相続放棄をするとどうなるでしょう。子2の相続分が増加(1/4→1/2)して、結果は遺留分も増加してしまうのです。(遺留分1/8→1/4)
 子2は棚ぼた的に権利が増え、子1の行為は相続争いに油を注ぐような結果になってしまいました。子1は何もしなければ良かった?のかもしれません。

3. こんなケースがあった

 相続人は、長男、長女、次女の3名でした。被相続人と長男は生前とても仲が悪かったこともあり、「ほとんどの財産は長女へ相続させる」、という内容の遺言書を遺していました。次女は遺言内容に異論はありませんが、長男と何らかの話し合いが生じる可能性を排除したいため、相続放棄を望んだのです。しかし、次女が放棄をしてしまうと、長男の遺留分が増加してしまうことに気付きました。長女に迷惑を掛けることになるからと、仕方なく相続放棄を諦めたのでした。

4. 影響を見極めよう

 相続放棄をすると法定相続分や遺留分に影響を及ぼしますが、相続税ではどうでしょう。結論は、相続税の総額の計算には影響を及ぼしません。税法では、相続放棄をした方がいてもその放棄は無かったものとして、相続人の数や基礎控除の計算をします。相続放棄により相続人数が変わってしまう、相続税の総額が増減してしまう、のでは公平性が保てないからです。このように相続税では大きな影響が生じないからといって、安易に相続放棄を行うのは考え物です。他の相続人はどうなるのか?自分が引き金を引いたがために争いが助長されてしまった!とならないように、しっかりとその影響を見極めることが肝要です。

2023年3月31日

これからは相続時精算課税の活用次第!

 令和5年度の税制改正大綱では、贈与制度に関して面白い内容が発表されました。それは何と言っても、相続時精算課税制度に毎年110万円までの基礎控除枠が設定されることです。暦年課税制度は生前贈与加算が7年に延長されて使い勝手が悪くなりましたが、逆に相続時精算課税制度は使いようによっては節税の可能性を秘めたのです。

1. 相続時精算課税制度のおさらい

 相続時精算課税制度の活用を探るのであれば、まずはどのような人が利用できるのか復習をしておきましょう。

適用対象者
   贈与者・・60歳以上の父母又は祖父母など(住宅取得等資金贈与の場合は60歳未満可)
   受贈者・・18歳以上の子又は孫など
   ※上記年齢はいずれもその年1月1日現在で判定

 贈与する人と、受ける人、それぞれの条件を満たしていると、この制度を用いた贈与税申告を選択できるようになります。この制度を選択すると、贈与額が累計2500万円までは贈与税は生じませんが、超過すると一旦税率20%の贈与税が生じます。その後、相続時においては、この制度で贈与した全ての財産は相続財産に加算(持ち戻し)され、相続税の計算を通じて精算を行うことになります。
 相続時精算課税制度は、贈与する人ごとに選択するのですが、一番の問題点は一度利用してしまうと暦年課税制度による計算に戻ることができない点です。
 例えば、父からの贈与に相続時精算課税を選択したとします。そうすると、その後に行われる父からの贈与は、全て相続時精算課税制度に取り込まれます。暦年課税制度における110万円の基礎控除が利用できなくなります。
 つまり、生前贈与による財産の切り離しが一切できなくなるので、いままでは必ずしもお勧めできる制度ではなかったのです。

2. 相続時精算課税制度にも基礎控除枠

 令和5年度の税制改正では、新たに基礎控除枠が設けられることになりました。
 現行の相続時精算課税制度では、一旦選択をするとその後の贈与についてはどんな少額の贈与であったとしても、相続時には全てが持ち戻し対象です。極端に言えば1万円の贈与も加算されます。これではさすがに使い勝手が悪すぎます。そこで、令和6年1月1日以後からは、基礎控除枠年間110万円が新たに設定され、この分は加算対象外になります。一気に使い勝手が良くなるのです。

ポイント
  ・相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除。相続時は加算対象外のため、実質非課税。
  ・相続開始年や前年の贈与であっても加算対象外。

3. 相続間近は精算課税一択か?

 令和5年度の税制改正では、暦年課税制度の生前贈与加算の年数を現行3年から7年へ延長する内容も盛り込まれました。こちらも令和6年1月1日以後の贈与から適用予定です。今後は、相続開始前7年間に行った暦年贈与は相続時に加算(持ち戻し)されることになるのです。するとどうでしょう?相続時精算課税制度を選択していた方は相続開始前7年間の贈与は年間110万円まで(7年間で770万円)は加算対象外です。逆に、暦年課税制度は加算されます。相続開始前7年間に限って言えば、相続時精算課税制度の方が税負担的に有利になるのです。

4. 亡くなりそうなら相続時精算課税か

 相続開始7年前からは相続時精算課税の利用を検討しよう!そう思っても、いつ亡くなるかは誰も分かりません。有利になりそうなので選択しようとしても予想に賭けるしかないのです。そこで1つ、こんな考え方はいかがでしょう。
 厚生労働省が発表している統計データには生命表というものがあります。この表には、平均してあと何年生きられそうかという年数が平均余命として記載されています。最新の完全生命表を見てみると、平均余命は男性では84歳で7.09年、女性では88歳で6.91年になっています。つまり、この年齢の方は統計上の目安としての寿命はあと7年ということです。当然、もっと長生きをする方もおられますが、どのように考えますか?

5. 暦年課税も上手に活用

 相続時精算課税制度が使い易くなったといっても、年間110万円を超えて行った贈与は、その超える部分の全てが相続時に加算されます。一方、暦年課税制度であれば7年かかりますが、それを過ぎれば切り離すことができます。年間110万円にはこだわらず、相続税対策などのためにある程度まとまった金額の生前贈与を行いたいという方も多いことでしょう。そのような方は、早い段階から資産の移転を検討して、暦年課税のメリットを享受した贈与を検討・実行しましょう。

6. 贈与の事実はしっかりと

 相続税の調査では、それは生前贈与されたものか?それとも名義財産なのか?いつも問題になります。
 生前贈与を活用したいのであれば、贈与の事実はしっかりとしておくこと、この基本は絶対忘れないように!


 

2023年3月2日

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今月の言葉

ニンニク

  古来我が国では鱗茎を食用とする臭いの強いネギ属の植物を総称して蒜(ひる)と呼んだ。蒜には大蒜、小蒜、野蒜・・などの種類があって、ニンニクはその中の一種である、大蒜にあたるという。日本の中世、仏教では、ニンニクの強精作用が煩悩を刺激して修行に害を為すということから、ニラ、ネギ等とともに五辛の一つとして僧の食用が禁じられた。大蒜のことをニンニクと呼んだ語源は、あらゆる苦難や屈辱に耐え忍ぶという意味の「忍辱」という仏教用語から来ているとのこと。が、実際には、つらい修行の最中に、精力を補完するために密かにニンニクを口にして、栄養不足をしのいだ修行僧もいたのだとか。
 ニンニクの原産地は中央アジアらしい。紀元前三千年以上昔、既にエジプトで栽培されていたことが分かっている。現存する最古の医学書「エーベルス・パピルス」には薬としても記載されている。ⅰ 我が国でも8世紀頃にはニンニクには、大陸から伝播していたとみられる。ニンニクには、効能と臭いという二つの面があるが、1709年(宝永7年)に刊行された貝原益軒編「大和本草」巻之五 草之一 菜蔬類では、「悪臭甚だしくとも効能が多いので人家に欠くべからざるもの」とされている。
 ニンニクの効能について、以下「にんにくのことがなんでもわかる」と称する「にんにく大辞典」ⅱ というサイトを引用しながら述べることにする。このサイトによれば、ニンニクには血圧低下、風邪の治療、精力向上、食欲増進、疲労回復、不眠や焦燥の解消などのほかに、癌、心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、脚気、腰痛、神経痛、糖尿病、冷え性、痔疾、水虫等々の諸病の予防や抑制の効果があるのだとか。もうこうなってしまえば、ニンニクは万病に効きますと言っているようなものである。
 そのニンニクの効能の内、殺菌効果の中心を成すものは、アリシンという成分である。が、アリシンは、ニンニクそのものに含まれているわけではない。1951年にスイスのノーベル賞科学者・ストールとシーベックが、細胞内に蓄えられている無臭のアリインという成分と維管束にある酵素アリイナーゼが反応することで、はじめてにおい成分アリシンができることを発見した。要するところ、ニンニクをおろし金でおろしたり、包丁で刻んだりして、さらにそれが酸素に触れると、アリインやアリイナーゼが反応して、アリシンが出来るという訳なのだ。このアリシンは、ニンニクが傷つけられることによって外部に対して防御機能を発揮する殺菌効果の素であるのと同時に、ニンニクのあの強烈な臭みの素でもある。お茶の類や青汁に含まれるカテキンはこの臭みを消す効果がある。またアリシンは、蛋白質と結合しやすいため、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品も消臭効果がある。
 さて、ニンニクと言えばその臭み故に、魔物を退散させる効果があるとされてきた。西洋社会では、先ず吸血鬼ドラキュラがもっとも忌むものがニンニクであり、ドラキュラ退散を願う者は、軒端にニンニクをつるして置いたとされている。さらに、西洋の子供達は、なくし物をしたとき「ニンニク、ニンニク」というまじないを唱えるのだそうだ。これは失せ物を隠していた魔女が、ニンニクの臭みで退散し失せ物を返してくれるからだとか。我が国では、「古事記」に登場する日本武尊が、信濃峠だかで悪霊に襲われて、噛んでいた蒜を投げつけて退散させたという言い伝えもある。
 ニンニクは西洋では、特に肉料理の味を調えるのに用いられてきた。我が国でははじめ薬として用いられてきたが、江戸も後期に進むにつれて猪、鹿などを鍋で煮て食べる肉食習慣が普及し、ニンニクを食材に用いる様になってきた由である。

ⅰ Wikipedea にんにく
ⅱ https://www.229dic.com/

2023年5月31日

若衆宿(続)

 前号に続き、若衆宿の話である。先月は、若衆宿、娘宿が江戸時代から続いた村落共同体の青少年の夜学制度であり、儒教道徳に基づく武士階級の青少年教育とは異なるコンセプトで並行して存在したこと、その内実は農事を中心とした職業訓練と共に、若者に自治の中で世間知を身につけさせるようなものであったこと、その世間知の中には性教育や夜這いの要素などもあったことなどを述べた。今号では、これらの制度の負の側面、とくに男性の若衆宿における「いじめ」の問題について述べたい。前号でも引用した朝日新聞主催司馬遼太郎没後10年シンポジウム「街道をゆく」の世界の中で、山折哲雄が司馬遼太郎の思索として次のようなことを述べている。ⅰ
 ● 若者宿で生活する間は、若者の間に、絶対の平等主義が貫かれていた。
  一方でその平等主義、若者宿のおきてを破る者は、徹底的に村八分的な制裁を受けたこと。
 ● 「菜の花の沖」の中で司馬は、高田屋嘉兵衛が幼時に若者宿で執拗ないじめに遭い、その中からの 脱出を通じて創造的なエネルギーを開花させていったことを書いている。
 ● 司馬はそのようないじめの体質は、近代化後の帝国陸軍の中に強く残り、戦後の官僚組織や体育会系の中にも潜在することも指摘している。
 つまり、村落共同体の範囲での身分差や能力差は、若衆宿(若者宿と同義)に所属する限りでの平等主義の中では問題とされず、(おそらく唯一の従属関係の基準は「先輩後輩」関係であったろう)、たとえば高田屋嘉兵衛のごとく異能を持つ者はかえって執拗ないじめの対象とされてしまうということなのであろう。この稿の筆者は、村落共同体にこのような「いじめ文化」が育った理由は、農耕を中心とする閉じられた系としての村落では、複雑な階層を持つ指揮命令系統や、能力ある者による新技術の開発などは殆ど不要で、集団に所属する者全員による同調圧力の生成こそが主要な課題であったからだと考えている。司馬遼太郎によれば、東アジアでも中国大陸や朝鮮半島にはこのような文化の種子はなく、日本にもしこの文化が伝播したものであるとすれば、南方島嶼からではないかとされている。が、南洋にこのようないじめ文化、あるいは少なくとも若衆宿の例があるか否かは示されていない。
 ともあれ、近代化後の日本は、下士官兵のレベルでは、村落共同体における若衆宿の伝統と文化をそのまま引き継ぎ、その基盤の上に概ね初等教育を施された人員を徴兵し、そして士官以上のレベルでは儒教的武士文化を背景に持ち、中等レベルの普通教育と専門的な技術教育を施された人材を以て帝国陸軍を建設した。陸軍は一見すると複雑な階層構造と指揮命令系統をもつ近代組織のようであったが、基礎的な歩兵の単位(内務班)まで分解すると、そこに存在するのは「星の数よりメシの数」の「先輩後輩」秩序であり、命令一下全員が同じ行動をとる「同調圧力文化」ではなかったかと思えるのである。
 最後に現代の学校における「いじめ」の理由について、上記との関係で述べたい。今日の教育制度における「偏差値文化」は、一見すると日本中の同学年者を同一の基準で序列化するものだから、上記の平等主義と相容れない様に見える。が、基準が全国同一であるという点において実は平等主義と通底している。そこには真の意味での「個性」という概念がない。そしてなんらかの顕著な「個性」を持つ者こそが、今日も学校という若衆宿で「いじめ」の対象とされているのではないか。

ⅰ 司馬遼太郎没後10年シンポジウム 「街道をゆく」の世界【基調講演】山折哲雄氏
  http://www.asahi.com/sympo/060512/02.html

2023年4月28日

若衆宿

 本欄で幾度か、思春期の子供達の教育制度に触れてきた。この稿の筆者の主張は、要約して言えば、学校という一つの秩序に青少年の全生活を預けるべきではないということにある。中学校、高校はすべからく知識と教養を授ける府とし、スポーツ、音楽等現在部活動に委ねられている分野は、地域の倶楽部制にして、少年少女が家庭も含めて複数の教育の場面を持つようにすべきだというのがその内容である。理由は、少年少女が流動し変化する社会の中で、自立した個人として育ってほしいからである。
 そうした視野を持ちつつ、前近代のとくにムラ社会において今日の学校の役割を果たしていた、若衆(若者)宿、娘宿について、今月は取り上げていきたい。まず二つの前提を記しておく。江戸時代の後半くらいを考えてみると、村落共同体と武士社会では、青少年教育のあり方が根本的に違っていた。武士は幼少期から儒教の素読などを学んだ後、藩校など近代の学校に近い教育機関で文武を学び、成長すると概ね身分秩序の中で、自分の家にふさわしい勤務に就いた。(次、三男は養子の口探しに励んだ)一方、村社会では、寺子屋というようなものはあったが、現在の中等教育の年代に入ると、昼間は男女ともに農作業周りの労働に従事した。彼ら彼女らにとって中等教育らしいものは夜間、これから紹介する、若衆宿や娘宿で行われる夜語りの中で授けられた。(武士階級でみられた若衆宿の例は、薩摩郷中などきわめて稀だという)
 もう一つ、大切なことは男女間の道徳も、武士と庶民では全く異なっていたことである。武士の世界では、「男女七歳にして席を同じうせず」という儒教道徳が徹底していて、とくに嫁入り前の女性は、正月や冠婚葬祭は別として、年中家にこもりきりで、他家や他身分の男性とは話すことはおろか顔さえ見せなかった。一方ムラの世界では、男女の関係は比較的おおらかで、若衆宿と娘宿の交流が、夜這いに発展したり、ムラの若い衆の初体験を、村内のやや年増の未亡人が司ったりした。つまり、教育と性道徳二つにおいて、武士と庶民では全く違う世界が並行していたということなのだ。
 さて、若衆宿では昼の仕事と夕食を終えた若者達が集まり、時として酒を飲み、彼らだけの自治の世界の中で、先輩から世間知や農事を学んだ。『しごきがある。共同労働がある。山火事が起きたら火を消す。津波、洪水が起きれば救難の仕事に当たる。村が襲われれば、それをはねのける軍事的な役割も果たす。~中略~若者宿のおきてを破る者は、徹底的に村八分的な制裁を受ける・・・』ⅰ一方娘宿はというと『特定の民家や納屋を娘宿とし、夕食をすませると娘たちが集合して、縄をなったり、草履を作ったり、裁縫などの夜なべ仕事をした。~中略~宿を提供した家の主人や主婦が宿親として娘をしつけ、配偶者選びの助言者にもなった。~中略~さらに、ヨバイといい、若者が夜分娘宿に行き、意中の娘の寝床に入り、もし気持ちが受け入れられれば婚姻関係が成立するというものもあった。この場合のヨバイとは、俗に言われるような、男性が女性の寝床に忍び込んで情交を結ぶというものとは違った。若者は自分の親にヨバイの相手を相談し、宿親や娘も承知したオープンな配偶者探しの手段であった。しかし、全く夜遊び的なヨバイもなくはなかったらしい。』ⅱ
 これら庶民の夜の中等教育の世界は、明治になって近代国家建設と共に、「貞操観念がない」とされ、上から統制される青年団と処女会(!)に再編された。青年団は立派な兵士を生むための機関に、処女会は銃後の女性を育てる機関となっていったのだ。

ⅰ 司馬遼太郎没後10年シンポジウム 「街道をゆく」の世界【基調講演】山折哲雄氏
  http://www.asahi.com/sympo/060512/02.html
ⅱ 青年団の活動で消滅-若者の男女交際の場「娘宿」三重県環境生活部文化振興課県史編さん班
  https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/rekishi/kenshi/asp/hakken2/detail.asp?record=399

2023年3月31日

リベラリズムの行方

 20世紀世界は三回、全人類を巻き込んだ争闘を経験した。第一次、第二次世界大戦と米ソ冷戦がそれである。そしてその三回とも、勝者はリベラリズムを標榜する国々であった。この稿の筆者は、第一次、第二次世界大戦の頃にはまだ生を享けていなかったが、1989年11月のベルリンの壁崩壊とそれに伴う冷戦終結、自由主義陣営の勝利の瞬間は、鮮明に記憶している。東欧の多くの国々の市民が、社会主義専制政治の軛から解放されたその瞬間の、心からの歓喜に満ちた顔を忘れることは出来ない。そのとき、この稿の筆者は、20世紀の三回の試練を経て、自由主義と専制主義の優劣についての問題は、「ケリがついた」のだと思った。経済成長の途上で一時的な開発独裁などの政体を必要とする途上国があっても、経済発展が一定の水準に到達すれば、市民の側からの自然な欲求によって、自由主義的な政体に移行するだろうと予想したのである。

 ところが、21世紀に入って、勝利したはずのリベラリズムは、またも試練にさらされている。
 2019年、スウェーデンの調査機関VーDemは、世界の民主主義国・地域が87カ国であるのに対し、非民主主義国は92カ国となり、18年ぶりに非民主主義国が多数派になったという報告を発表したi。また、ロシア、中国を筆頭とする専制諸国ばかりではなく、トランプの米国、フランスやドイツの右派勢力など、リベラリズムの本家のはずの欧米諸国においても、自由を揺るがしかねない勢力が台頭し政権に近づいており、もはや「リベラル」は、少数派の代名詞に堕ちた感もある。

 20世紀の三度の試練を通じて確立されたはずの国際的なコモンセンス、たとえば武力による領土拡張の禁止、言論の自由と人権の保護などのリベラリズム的な価値について、21世紀の専制諸国はどう考えているのだろうか。ロシアは、第二次世界大戦後、旧ポーランド領の約半分をロシア領土とし、その代償に旧ドイツ領の東部のほぼ同面積を新生ポーランドに与えた。つまりロシアに関する限り、第二次世界大戦後の国境線の変更は、2700万人と言われる独ソ戦犠牲者の代償として当然の分け前であり、「武力による領土拡張の禁止」などという国際法的な原則など薬にしたくもないであろう。中国はと言えば、世界において近代社会が始まってからこの方、リベラリズムを標榜する欧米や日本に侵略を受けたことはあっても、リベラリズム的価値の恩恵を受けたことはない。リベラリズムの徳目なんぞは、中国を侵略した国々の、国内的な言い訳に過ぎず、そんな徳目を「コモンセンス」として自らの国作りの役に立てる筋合いはないと考えているのではないだろうか。つまり、20世紀の三度の試練を経て確立されたはずの、国際的なコモンセンスなるものは、残念ながらまだ「世界の常識」にはなり得ていないと考えざるを得ない。

 さらに、第一次世界大戦後のワイマール共和国が合法的な選挙によってナチズムを生んだのと似た様な現象が、21世紀の米、英、仏、独などのリベラリズム先進諸国において起きている事実をわれわれはどのように考えるべきだろうか。この稿の筆者の考えは、悲観的であり且つ楽観的である。

 すなわち、21世紀、リベラリズムに四度目の試練が来ることはあるかもしれない。だが最終的には「リベラルが勝つ」。その理由は、リベラリズム的な価値が国家や民族に基礎を置くものではなく、個人に基礎を置くものだからである。四度目の試練の後、世界はさらに近代国民国家を超えた枠組みを求めることであろう。そのときにこそ、1989年のあの日の人々の笑顔が、国家や民族の歓喜ではなく、市民個人の歓喜の姿であったことを思いたいのだ。

i 東洋経済オンライン 薬師寺克行 2021.06.30

2023年3月2日

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