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TOPATO通信個人名義か法人名義か? 5336号

ATO通信

5336号

2020年5月29日

阿藤 芳明

個人名義か法人名義か?

 世の中にはゴルフ会員権やレジャー施設を始め、様々な会員権があふれています。その中には個人名義も法人名義も色々です。入会に当たっては、どちらの名義でもよいものもあれば、個人または法人に限定しているものもあります。例えば個人会員限定となっている場合、それを法人の経費にすることは可能なのでしょうか。常識的には難しそうなのですが、工夫一つで個人でも法人でも…?今回はその辺のモヤモヤした税務の事情を検討してみましょう。


1.一身専属的なものは個人が原則!

 その個人の人柄や能力、資格等を判断基準にして入会を認めている組織は山ほどあるでしょう。卑近な例で恐縮ですが、私は税理士です。これは紛れもなく私個人に与えられた資格です。実は税理士として仕事をする場合、強制的に税理士会と言う組織に入会しなければなりません。そして、入会時の登録料は勿論の事、毎年この税理士会に高額(?)な年会費を支払わなければ、税理士の仕事をすることは許されないのです。
 この税理士と言う資格、あくまで個人の一身専属的なものなのです。ATOは税理士法人なので、複数の税理士が集まった組織ですが、各税理士は上記の年会費を上納しています。実際はATOが負担していますが、各税理士が個人の名前で税理士会に納めた会費、上納金は税理士法人の経費になるのでしょうか。


2.法人とは”擬制”の存在

 個人会員に対し、法人会員と言うものもありますが、こちらはあくまでも法人の資格で入会、登録するものです。その代表的なものとして、税務の世界には法人会と言う組織があります。文字通り個人の資格では入会できず、法人の集まりですが、個人事業者の集まりである青色申告会に似た組織とでも言えるでしょうか。
 この法人会員、名義は確かに法人ですが、例えば法人会の集まりに出席するのは個人である社長や専務でしょう。法人とは法律上”擬制”すると言う言い方をしますが、もともと自然人と同じように人格が認められているものなのです。


3.入会金、会費等についての税務の扱い

 さて、ゴルフ会員権や各種のレジャー施設の入会金や年会費等ですが、入会金は資産として計上。では、年会費やプレー代等は経費になるのでしょうか。ここは結構問題のある所で、個人の場合、事業の用に供する部分と個人の趣味嗜好の部分が判然としない事から、年会費については、経費算入はできません。但し、プレー代等については、業務遂行に明らかに必要な部分に限り必要経費と認められます。
 問題は、例えば個人会員に限定している団体へのそれらの支払いを、法人が行った場合です。結論から言うと、法人の経費とすることは可能です。但し、税務署への説明のためには、議事録なり、その事情を説明する資料を用意しておいた方が良いでしょう。つまり、本来は法人の営業活動のために入会し、活動しているのではあるけれど、その団体が個人会員を前提としているため、やむなく個人名で支払っている旨の説明を。


4.具体例を挙げると…

 具体例でお話ししましょう。例えば筆者の場合、前述の個人の税理士会費を法人で支払っています。これについては税理士法人として、特別な説明資料は作成していません。筆者の他にも、税理士法人には複数の税理士が所属していますし、そもそも税務署はその辺の事情をよく分かっているからです。
 しかし、筆者はその他にロータリークラブと言う親睦活動の団体にも所属しています。否、”親睦活動”などと言ったら、本来の理念に著しく逸脱しお叱りを受けそうです。ロータリアンの名誉のためにお断りをしておくと、『ロータリーは人道的な奉仕を行い、全ての職業において高度の道徳的水準を守ることを奨励し、世界においては、親善と平和の確立に寄与することを志向した、事業及び専門職務に携わる指導者が連携した団体である』と言うことになっていました。”親睦活動”など、根本理念を理解していない筆者の失言でした。


5.建前と本音

 さはさりながら、筆者の本音としては、ロータリーはまさしく親睦活動のための団体です。週に一度の例会があり、ランチを共にしながら雑談をし、時には夜のお付き合いも。また、場合によっては互いの業務に発展し、筆者も税理士法人として報酬を頂いたこともあります。逆に業務を発注したことも。ただ、それはたまたま親しい知り合いがロータリーにいたから、と言うそれだけの理由です。従って、請求書も領収書も法人名義で発行されます。このような状況があれば本来は個人会員限定のロータリーではありますが、その会費等を交際費と言う法人の経費にすることは可能なのです。なお、ロータリークラブやライオンズクラブは大きな組織なので、税務の取り扱いの細目を定めた通達にもその旨が謳われていますが、十分な注意が必要です。

※執筆時点の法令に基づいております