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COLUMN

TOPATO通信改正後の『物納』制度の実態 5202号

ATO通信

5202号

2009年3月31日

阿藤 芳明

改正後の『物納』制度の実態

 『とりあえず物納』と言う言葉をご存じでしょうか。現行の物納制度に改正される以前の、相続税の納税戦略のことです。かつては納税に窮した場合、とりあえず物納の“申請だけ”をしておいて、時間をかせぐ事が可能でした。許可にも却下にも相当の時間が掛かっていたためです。
 今は違います。迅速そのもの。が、現実の物納にはこんな問題が…


1.改正で物納はこう変わった!

 現在の物納制度は、基本的には申請する時点、つまり相続税の申告期限である10ケ月以内に必要な整備をし、書類を提出しなければなりません。
 期限を延長することもできない訳ではありませんが延納金利(延納の利子税、以下同じ)が課されます。実務的には時間の掛かる確定測量や関係者との折衝があり、相続が開始されてからではとても間に合いません。入念な事前の準備が必要なのです。その替わり、許可も却下も原則的には3ケ月以内に結論が出る事になっています。


2.金銭納付を困難とする理由書

 相続税の納税だからと言って、常に物納が認められる訳ではありません。原則は金銭による一括納付、それができなければ延納で、それでも無理な場合に限って物納が認められます。そのため、物納申請に当たっては、その状況を示すため『金銭納付を困難とする理由書』と言う書類が用意されています。毎月の生活費、近い将来(現行は概ね1年)の支出予定等を記載し、文字通り金銭納付が困難である窮状を金額的な根拠を示して説明する事に。この書類自体は従来からあり、物納制度の改正で新たに登場した訳ではありません。ただ、従前は金額を記載するものの、証憑の添付までは求められていませんでした。従って、たとえ今現在は現金が多少あっても、近々息子が医学部へ進学予定、自宅の建替え予定あり等々現金が必要な旨の“作文”の余地が残されていたのです。


3.生活費は一人月額10万円

 ところが、改正後の書面は原則として総ての金額について、その根拠となる証憑を添付することが必要とされています。つまり、前述の“作文”の余地がなくなってしまったのです。更に決定的な相違は、生活費の計算です。多額な相続税を負担し、税金を納めようとする方々です。生活だってそれなりだろうとの想像くらい働くもの。
 しかし、現在の理由書では、何と生活費は一律に物納の申請者は月10万円、配偶者その他の親族は月45,000円と決められているのです。もっとも、固定資産税や庭の剪定費用等の維持管理が必要であれば、それは別途考慮して下さるそうではありますが…。いずれにせよ、この金額がお役所の方々の生活費の水準なのでしょうか。彼らをバカにするつもりはありませんが、相続税を負担する方の生活レベルをご理解頂いていないのは確かです。この金額で生活しろと決めつけられているので、勿論作文の余地は皆無です。


4.申請期間は慎重に!

 また、前述の通り、どうしても申請期限までに総ての書類を整備できない場合もあり得ます。その場合、一度の申請に付き最長3ケ月、合計で1年の延長ができる事になっています。但し、公定歩合に連動した延納金利が課され、現時点では約4%の高金利。
 問題はそれを覚悟し、例えば3ケ月の延長を提出した上で急いで整備をした場合です。全精力を傾けて努力をし、1週間でクリアーしたとしましょう。面白いことに、と言うより呆れたことに、何とこの場合でも3ケ月と申請してしまったので、金利負担は1週間ではなく3ケ月。サラ金だってここまで阿漕な事はしないはず。しかもこの3ケ月の間、彼らはその審査を放置しておくのです。何度も言うように、3ケ月と申請したからです。こう言う硬直的な物の考え方がお役所仕事の最たるもの。申請を出す段階でその期間を可能な限り短期にし、万一整備ができなければ、面倒でも何度も申請し直す覚悟が必要です。延長申請期間についてはとにもかくにも慎重に。


5.たまには粋な計らいも

 さて、必要書類に不備や不足がある場合、税務署から書類の訂正や追加の請求がなされます。この書面を『補完通知書』と言いますが、この通知が発行された場合には、20日以内に整備をすることが必要です。これについても20日以内が無理であれば最大3ケ月は延長可能です。
 先般も必要書類を提出の後、若干の不備や不足があった時の事です。結構細かなことをおっしゃるので、間違いがあってもと思い、書面で指示して貰う旨をお願いしました。『書面で出すのは構いませんよ。でも、そうすると補完通知扱いとなり、20日以内の整備が必要です。その間の延納金利も必要となります。口頭でのご説明なら補完扱いにしませんが…』。勿論口頭で承ることにしました。いつもいつも税務署の悪口を言ってはいけません。たまには税務署もこんな粋な計らいをしてくれるものなのです。

※執筆時点の法令に基づいております