お役立ち情報

COLUMN

TOPATO通信税務署の手打ち? 5208号

ATO通信

5208号

2009年9月30日

阿藤 芳明

税務署の手打ち?

 今までこの稿で何度か取り上げた『広大地』評価。この適否をめぐり、税務署の態度が迷走しています。今回は一度は駄目だと言って更正処分までしておきながら、こちらが本気だと知ると、態度を豹変。広大地の適否は良くも悪くも担当者次第のようで…。


1.事案の概要

 埼玉県の、とある税務署に相続税の申告をした時の事です。お客様は農家の地主さんで、郊外でもあることからお持ちの土地は総て広大なもの。そのどれもが相続税法で言うところの『広大地』に該当しそうなものばかりでした。外野からの情報も色々お持ちなのでしょう。相続人の方も、申告に当たってこちらから広大地のご説明をするまでも無く、先刻ご承知でした。図Aを含み自信のある3件についてだけ、想定される開発図面を添えて広大地として申告を行ったのです。


2. 土地の特徴

 ここで広大地を適用した土地の特徴を簡単にご説明しておきましょう。3件の内2件は2,000㎡を超え、他の1件も900㎡で周辺はいずれも住宅地です。鑑定士の力も借り、精緻な現地調査を終えて作成したのが図Aの図面なのです。ご覧頂ければお分かりの通り、極めて常識的、合理的で無理なものではありません。全体としてもこれなら綺麗な町並みを保てます。ただ、3件とも2方ないし3方を道路に囲まれていて、税務署に付け込まれる余地はあったのかも知れません。結論から言うと、図Bのような旗竿地にすれば、多少見かけは悪くても、道路を全く入れずに開発ができると言うのが税務署の主張です。このように開発道路が不要な土地は広大地に該当しないのです。


3.当初は1件否認で決着の兆し、が…

 そんな中、財産規模も大きいため想定どおりに税務調査です。当方も自信満々で臨んだ調査でした。が、広大地を3件も適用したのが気に食わなかったのか、遠慮がちに1件だ けを否認する形で修正申告のお勧めです。1件だけでも修正させて実績を作りたかったのでしょう。勿論ガンとしてはねつけました。そうこうしている内に担当者が転勤です。運悪く新任者は端から聞く耳持たず、1件どころか3件総て否認の態度です。理由を聞いても根拠は不明、図Bの区画割で対応できる、の一点張り。修正しなければ更正するだけと高飛車な態度です。取り付く島がないとはこのことでした。


4.異議申立ては?セレモニー〝?

 売られた喧嘩は買うのが江戸っ子、すぐさま〝異議申立て?です。が、これは更正処分をした税務署に対してするもの、担当官が変わりはするものの、所詮同じ穴のムジナです。結論が変わる事などほとんどなく一種のセレモニー、全く期待もしていませんでした。本当の戦いは、次の段階である『国税不服審判所』での審査請求だと腹をくくっていたのです。ところが何と初めから話し合いの様相、当方に擦り寄ってくるではありませんか。実は異議申立ての段階で、仮に広大地が適用できない場合でも、減価要因となる面大地としての鑑定書を添付し評価が下がる事を指摘しておいたのです。


5.メンツに拘る税務署の手口

 ないと判断したのではないでしょうか。更正処分は税務署長の名で行うものの、真に納得しないまま、現場責任者の勢いに押され判を押す事もあるもの。しかし、万一審判所で負けでもしたら、それこそ沽券にかかわります。そこで、増差が1/3に減額するものの、当初の申告と更正処分の額の間の鑑定価格で手打ちをしませんか、と言うお申し出です。矢尽き刀折れるまで戦う覚悟ではありましたが、お客様のご意向で戦いはここまで。但し、最後までメンツに拘るのが税務署です推測の域をでませんが、税務署もこんな根拠のない強引な更正では、不服審判所では勝て。当方の主張を一部認める形ではなく、一旦異議申立書を取り下げさせ、税務署の自主的判断で新たな更正という体裁。税金が戻れば、ま、良しとするか!

※執筆時点の法令に基づいております