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COLUMN

TOPATO通信高級車の購入方法 5293号

ATO通信

5293号

2016年10月31日

阿藤 芳明

高級車の購入方法

 フェラーリ、ベントレーにランボルギーニ、車にあまり興味のない方も名前だけはお聞きになったことがあるのではないでしょうか。高級名車の数々です。昨今、若者の車離れが著しいようですが、私共のお客様には車好きの方も多いようです。 
 さて、これ程の車ではなくても、ン千万もの高級車を買う場合、個人、法人、誰の名義で買うのが節税になるのでしょう。そりゃ経費になるから法人だろう、と簡単に決めつけてはいけません。


1.基本的には法人名義

 確かに所得税と法人税、二者択一で考えれば言うまでもなく法人です。個人名義で車を買っても減価償却費、ガソリン代、駐車料等の全額が必要経費にはなりません。小売業や製造業を個人事業として行う場合、必ず問われるのはその事業にどの程度その車を活用しているか、です。個人的な買い物やレジャーにも車を利用するだろう、その分は経費としては認めないぞ、と言うのが税務署の考え方。税務署はそもそも性悪説の考え方で固まっています。そのため所得税においては、業務以外に個人的にも車を使っているだろうと疑ってかかるのです。その分は家事費として必要経費性を認めない方向なのです。もっとも、正確にその使用割合なんて誰にも分かりません。適宜の割合を決算書に記載しておけば、それ以上の追及をそれほど心配する必要はないでしょう。
 それに対し同じことをしても、法人は総ての業務が法人の業務と言う前提です。実際には中小企業の場合、社長が友人とのゴルフに車を使用することだってある筈です。従って100%をその事業に利用している訳ではないでしょうが、これについては税務署も程度問題。理論的には甚だおかしいのですが、私的利用も常識の範囲内であれば税務署もこれを否認はしないのです。法人が100%業務に利用していると申告した内容を否認するためには、基本的にはその反証は税務署がしなければなりません。が、これも結構難しいので、お目こぼしも期待できる場合が多いのです。


2.個人の不動産所得では望み薄!

 法人に比べ個人は経費化が難しいと申しました。前述のお話は小売業や製造業の場合なのですが、これが不動産所得になると事態はさらに深刻です。結論から言えば、車の関係費用はほとんど経費として認められません。何故かと言うと、家賃や地代を得るために何で車が必要なのかを問われるためです。これに対し、例えば現場の見回りに行くのに車を使用すると答えれば、月に何度その現場に行くかとなるでしょう。月に1回と答えたら総額の1/30だけは経費と認めましょうと言うことになるのです。
 税務署の考え方として、不動産所得は不労所得。額に汗をしないでお金を稼ぐことをあまり快くは思っていないのです。そのためか不動産所得に対しては、とりわけ厳しい見方をするような気がします。と言うことで、基本的には法人名義での取得が有利と考えて間違いないでしょう。


3.相続直前の車購入は?

 92歳のおじいちゃんがいます。勿論ご高齢のため車の運転はしません。車椅子ではありませんが足も不自由です。相続を控え孫のために、3,000万円のベンツをプレゼントすることを考えました。お墓にお金は持っていけません。元気なうちに家族を喜ばせてこそお金も生きるのです。しかし、こんな高額な車を買ってやれば、文字どおり贈与税の餌食です。およそ1,000万円の贈与税がかかります。それならと言うことでおじいちゃん名義で購入したらどうでしょう?今では運転もできないし、実質的に使用しているのは20歳の孫。税務署はその実態から見て孫への贈与だと言うのでしょうか。
 これに対し、例えばこんな風に応えたらどうでしょう。『確かに私は年寄りなので運転はできません。大抵孫にやってもらっています。でも、この孫は大変なおじいちゃん孝行で、病院に行く時は必ずこの車で送り迎え。買い物や旅行にもこの車で連れて行ってもらっています。近頃の若者にしては、本当に偉いでしょ?』こう言われて税務署は、そんなのウソだと言えるでしょうか。運転はしなくても購入資金の出所はおじいちゃんです。だから名義はおじいちゃん。車の名義人が必ず運転しなければいけないルールはありません。税務の世界では事実認定と言うのですが、真実の姿と言うか、実態で判断をすることになります。実際的には上記のような事実もなく、孫がただ単に遊びに使っていれば、贈与だと言われても仕方がないでしょう。また、税務署だって本気になれば、毎日の見張りまではしなくても、病院までの走行距離や買い物の頻度等から否認する可能性もなくはありません。そこは法人名義の車を社長が友人とのゴルフに使用するのと同じで程度問題。
3,000万円のベンツも耐用年数は6年。直ぐに償却が総て終了します。相続直前の購入で相当程度の評価も落ち可愛い孫に喜ばれる秘策、検討の余地はあるのかも知れません。

※執筆時点の法令に基づいております