住宅用地については固定資産税と都市計画税が軽減されることは皆さまも良くご存知のことでしょう。固定資産税であれば課税標準が価格の1/6になるという住宅用地の特例のことです。実はこの特例の適用にあたって、最近急速に広がりをみせているレンタサイクル事業が影響を及ぼしてくるのです。
1. 住宅用地の特例をおさらい
念のため、固定資産税と都市計画税の負担が軽減される「住宅用地の特例」の内容を復習しておきましょう。住宅用地は、小規模住宅用地と一般住宅用地の2つに分かれます。①小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/6になります。②一般住宅用地は住宅1戸当たり200㎡を超えて家屋の床面積の10倍までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/3になります。参考として軽減割合の詳細を下表に記載しました。なお、あくまでも住宅用家屋の敷地として利用している部分だけが対象です。
区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡まで | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 家屋の床面積の10倍まで(小規模住宅用地以外) | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
※課税標準とは、税額を計算するための基になる金額です。
ここでのポイントは、小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡が設定されているということです。したがって、アパートなど1棟に複数戸数がある建物の場合は、(戸数×200㎡)までという計算になるため、通常は敷地の全てが小規模住宅用地に該当します。
2. レンタサイクルの敷地はダメ
最近、都内を中心にレンタサイクルなどのサービスが急速に広がりを見せています。特に、水色の車体の電動キックボードを街中で良く見かけませんか?これは、LUUP(ループ)という電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスであり、とても有名なのではないでしょうか。試しにLUUPが配置されている東京都内のステーションをインターネット上の地図で見てみると、都内23区を中心に物凄いことになっています。至るところにあるという感じです。これらのレンタサイクルなどですが、一般的には建物と道路の間の空きスペースを利用して設置されているようです。このスペース、テナントビルの横であればそもそも非住宅用地なので影響はありません。ところが、アパート敷地横のちょっとした空間に設置されていたとしたらどうでしょう。実はこの場合、その部分はもはや住宅の敷地として利用されていないことから非住宅用地として取扱われてしまうのです。つまり、レンタサイクルなどのシェアリング事業部分の土地は住宅用地の特例対象地から外れ、固定資産税と都市計画税の負担が増加します。
土地の面積としてはそこまで広くなく、ほんの数㎡~数十㎡であったとしてもこの影響はまったく寝耳に水だ!という方が多いのではないでしょうか。東京都主税局はこの調査に力を入れているようで、見つけ次第に是正する旨のお尋ね文書を郵送しています。したがって、固定資産税等の負担が増えることを見越して設置場所の賃料を設定しないと本来はダメなのです。なお、運営会社もこの問題は把握しているようですので、もしも非住宅用地になってしまうのであれば設置料の見直しができるか相談をすると良いでしょう。この他にも、カーシェアリング用地として自宅敷地の一部を貸付けしているような場合も同じ理屈で非住宅用地になります。
固定資産税の担当者は、住宅地を中心に設置場所をインターネットで調べたうえで、現地を確認すれば一目瞭然ということです。
3. 私道は要注意
道路の用に供されている一定の土地は、固定資産税と都市計画税が非課税になります。いわゆる私道に対する取扱いです。これについても注意が必要です。道路部分に利用上の制約がある場合には、非課税要件に合致しないとして非課税が取消され、課税される恐れがあります。自分が所有する土地だから良いだろうと、私道部分にはみ出た形状でレンタサイクルなどを設置してしまうと非課税が取消されてしまうのです。私道部分にプランターなどが置いてあったとしても、これらは多めに見てくれていたようですが、レンタサイクルなどの設置場所はダメです。土地の貸付けという収益事業を行っていることからして厳しい運用がなされます。
4. 償却資産税も注意
事業の用に供している減価償却資産は償却資産税(固定資産税)の対象です。おそらく、今後は太陽光設備の申告が漏れていないかどうかのお尋ねが増えるのではないでしょうか。東京都などでは2025年4月から太陽光パネルの設置義務化がスタートします。原則、大手ハウスメーカーの新築住宅はこの縛りを受けることになります。つまり、新築の賃貸住宅であれば太陽光設備の申告が無いとおかしい訳です。固定資産税の課税漏れが無いかどうかは様々な角度からチェックされるのです。