令和7年度の税制改正では、相続税の物納制度に関して見直し予定があると、2025年2月号でお伝えをしたところです。この見直しに関して、国税庁からその詳細な内容が発表されました。そこには、税制改正大綱からは見えない内容が結構盛り込まれていたのです。
1. 改正された内容
大綱では、「物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しを行う」と記載されていました。
最後に等という表記があるのが曲者で、このほどその詳細が明らかになったのですが、物納許可限度額の具体的な内容は次の3点になります。
① 将来の収入金額の減少が確実であると見込まれる場合の計算方法の明確化
② 物納計算時の延納可能年数を、相続財産の種類や平均余命年数を考慮して計算
③ 延納期間終了後における生活費及び事業経費を加算
そもそも物納許可限度額は、現金による納付可能額、および延納による納付可能額を差し引いて計算しますので、その計算方法を見直したというわけです。ただ、これだけでは難しいですので、内容をひとつずつ確認することにしましょう。
2. ①年間の収入見込みの計算
延納を分かり易くいうと、国から税金相当の借入れをして分割払いをすることです。物納は、延納による分割払いをしても返済することが難しい場合に限って、相続財産そのもので代物弁済するようなものです。そのため、分割払いの良し悪しを見極めるために、まずは収入見込みを計算することから始まります。
ちなみに、この収入見込みは前年度の実績をもとに計算しますが、相続によって変動が見込まれるのであれば、それを加味する必要があります。例えば、相続財産から地代収入が発生するような場合には、その分を収入見込みに加算するという感じです。
この取扱いは従前から変わっていないのですが、相続による変動の加味をうっかり忘れているようなケースが多いのでは?と感じます。これを忘れていると、国税局の担当者から必ず指摘が入りますので要注意ポイントです。
今回の改正点は、延納期間中に収入金額の減少が確実であると見込まれる場合には、その減少内容を加味できることが明確化されました。確実とあるので、ある程度の客観性のある見込みが必要になるでしょう。
記載要領には、「収入金額の減少することを証する書類を提出してください」との記載があり、例示として定年退職等により収入が減少することが挙げられています。
このように、将来の収入減少が見込まれるようなときは、いままでよりも物納が使い易くなるわけです。
3. ②物納計算時の延納可能年数
延納によって納付可能な金額を計算する際の年数は、延納可能最長年数と平均余命年数のいずれか短い年数を用います。平均余命年数は、2025年2月号のエーティーオー通信のとおり完全生命表による年数を利用します。
新たな取扱いは、延納可能最長年数について相続財産の種類に応じた調整をすることになりました。不動産等は最長20年の延納、動産等は最長10年の延納と、期間が異なるためこれを財産割合で加重平均した期間を利用する感じです。
いままでは、不動産等の割合が75%以上あると延納年数は一律20年とされていたのですが、今後は動産等の年数も加味した20年以下の年数と、平均余命年数のいずれか短い年数になります。実情にあわせて、年数の見直しを図ったというわけです。
4. ③3か月分の生活費等を加算
今回の改正では、ちょっとしたおまけがありました。それが、延納期間終了後における生活費及び事業経費の加算です。いままでは、延納を判断するにあたり、当面の生活費として3か月分、当面の事業経費として1か月分の控除が可能でした。これが、今後は事業経費も同じく3か月分となりました。
そして物納ですが、延納後の生活費等に関する配慮はいままでありませんでしたが、新たに延納期間終了後における当面の生活費及び事業経費を見てくれるようになりました。延納と同じく、生活費等の3か月分を物納許可限度額に加算できるようになったのです。
たった3か月分だけの配慮ですから、そこまで多額にはならないでしょうが、面倒を見てくれる金額を多少増加してくれたのです。
5. 国税局とのやり取り
今回の改正は、令和7年4月1日以後の相続開始分からが対象です。細かな改正点ではありますが、延納や物納を考えている方にとっては、いままでよりは使い易くなったと言えるでしょう。
実際に延納や物納を申請すると、申請資料の計算が正しいのかどうか、細かなチェックが入りますがその多くが国税局扱いです。申告後も許可を受けるまでは、その対応に気を遣う必要があるのです。