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TOPATO通信児童手当の見直しに騙されるな 5355号

ATO通信

5355号

2021年12月24日

高木 康裕

児童手当の見直しに騙されるな

 令和4年10月支給分から、児童手当の支給要件が改正されることはご存知でしょうか?中学校卒業前までの子どもを養育している場合、いままではどんなに所得があったとしても最低限として月額5000円の手当てが受けられました。これが、来年10月からは新たに所得制限がかかり、支給が0円になるケースが生じることになったのです。ただ、そもそもこの改正、何かがおかしいことに気づいていますか?


1.子ども手当の導入背景

 平成22年度の税制改正によって、平成23年分から扶養控除が改正されたのですが、内容は覚えていますでしょうか?23歳未満の子を扶養している場合の扶養控除は次のようになっていました。
 平成22年分まで(所得税の控除額、以下同じ)
 ・16歳未満・・・38万円控除
 ・16歳以上23歳未満・・・63万円控除
 
 つまり、義務教育後の高校生から大学生の間は教育費がかかるだろうということで、控除額が多くなっていました。
 ところが、平成23年からは子ども手当の支給と高校授業料の実質無償化という2つの政策(民主党政権時)が導入されることになりました。そこで、これに平仄を合わせるために23歳未満の扶養控除が次のように変更されたという訳です。
 平成23年分から現在まで
 ・16歳未満・・・0円(控除無し)
 ・16歳以上19歳未満・・・38万円控除
 ・19歳以上23歳未満・・・63万円控除
 
 つまり、中学生までは扶養控除を削減して子ども手当の支給で対応、高校生は高校授業料の実質無償化があるので控除を減額、大学生以上はいままでどおり、といった感じでしょうか。ちなみに、「子ども手当」はその後「児童手当」へと改変されています。


2.「控除から手当」の精神はどこへ?

 子ども手当や高校授業料の実質無償化の導入背景、それは「控除から手当(給付)へ」というものです。このあたりで当時を思い出した方も多いのではないでしょうか。そもそもの考え方は、高所得者ほど税効果によって負担軽減額が大きくなる扶養控除は制限する必要がある。代わりに、支援の必要な方に有利になるように、手当て支給型に切り替えるというものです。このような背景で導入されたのですから、支給額に差異はあったとしても、対象者全員に対して支給がなされなくてはおかしいのです。


3.政府の言葉に騙されるな

 今回の児童手当の改正ですが、おおよそ1200万円以上の年収がある親がいる家庭では、支給額を0円にするという内容です。いままではどんなに所得があっても最低月額5000円は支給されていました。したがって、単純に支出額を減らすための政策といったところでしょう。政府としては、社会保障費の財源確保のためだと言えば所得がある世帯からは文句が出ないだろう。だから、取り易いところから取ってしまえということです。
 マスコミなどの報道をみても、そもそもの導入背景からしたらおかしい!などの意見はまったくと言っていいほど見かけません。いかがなものなのでしょう。
 過去の経緯を踏まえれば、社会保障費の財源というキーワードをうまく使って騙したということは一目瞭然なのですが、、、


4.配偶者控除や基礎控除の改正もしかり

 最近は、所得控除関係の改正が頻繁に行われた結果、配偶者控除や基礎控除の利用にも所得制限があります。
 配偶者控除は、所得が900万円を超えると控除額が減少し、所得が1000万円超になると0円です。給与の高いサラリーマンは文句を言わないだろうからと、そこを狙い撃ちにした増税に見えて仕方がありません。
 基礎控除は、人として最低限の生活に必要なお金には税金を課税しない、という考え方によって設けられているものです。ところが、これも改正がなされてしまい、所得が2400万円を超えると控除額が減少し、2500万円超になると0円になります。もはや、税制の考え方や法律上の理念は無くなってしまったようです。
 また、なぜに2400万円から制限をしたのでしょう?もしや、法律をつくる側、つまり事務次官などの高官には影響が及ばないようにと、彼らのモデル給与を参考に設定したのではないか?と、悪意ながら疑ってしまいます。


5.取り易いところから取る

 最近の税制改正は、理論的なことはともかく、取り易いところから取るという安直な内容が多いような気がしてなりません。
 コロナ後の増税がとても心配な今日この頃です。ここはまさに、上手な節税を提案できるか否か、税理士の腕の見せ所。是非ともご相談を!

※執筆時点の法令に基づいております