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TOPATO通信亡くなった方の申告は誰がいつまでに? 5251号

ATO通信

5251号

2013年4月30日

阿藤 芳明

亡くなった方の申告は誰がいつまでに?

 個人にしろ法人にしろ、税金の申告と納税には必ず期限が設けられています。所得税は3月15日、法人税は決算後2ケ月と相場は決まっていますが、勿論例外もあります。本来申告すべき方が亡くなった場合です。所得税は御存じの方も多いでしょうが、今回は贈与税、相続税についても確認をしておきましょう。


1. 所得税は通称”準確”と言いますが…

 年の途中で亡くなったからと言って、その年の所得税が免除される訳では決してありません。亡くなってから4ケ月がその期限です。本来の2、3月に行う確定申告に準ずると言う意味で、一般には”準確”などと呼ばれています。年の前半でお亡くなりになると、初夏や秋にはその期限が到来しますので、のんびりしている訳にはいきません。逆に11月16日以降の場合は期限が3月15日以降になって、余裕があることにもなる訳です。ただ、年が明け確定申告の期限前に亡くなると、本来の前年分の他、その年の2~3ケ月分も併せ一緒に申告する事に。その亡くなった日から4ケ月ですので、大幅に期限は延長します。但し、2年分を一度に提出となってしまいます。


2.誰が亡くなった方の申告をすればいいのか?

 それでは誰がその亡くなった方の申告をすればいいのでしょう。言うまでもなく相続人です。しかし、亡くなった後で誰が納税義務と言う負の財産の責任を負うのか、直ぐには決まらない場合もあるでしょう。申告期限は待ったなしです。そこで、責任の帰属が決まるまでは民法の原則に戻り、とりあえず法定相続人が共同で責任分担。所得税の申告書に付表を添付し、相続人全員の印鑑を押す必要が生じます。そして、分割協議が整った時点で、特定の相続人がその債務を引き受ける事になるのです。
 他方、遺言が残されていれば作業は単純です。納税と言う債務を引き受ける方は決まっているため、被相続人とその方の名前を併記し、付表も省略、といとも簡単なのです。


3.贈与税の申告はどうなる?

 亡くなった方の申告は所得税だけではありません。贈与を受けた方がその申告前に亡くなってしまう事もあるでしょう。その場合には、亡くなった日から10ケ月以内にその相続人がその責務を全うしなければなりません。
 贈与税の場合も所得税と同様で、申告書に付表を添付し、法定相続人が共同で責任分担する事になります。贈与を受ける方の遺言書がある場合は極めて少ないでしょうが、遺言書があれば勿論納税の債務を引き受ける方が申告手続き一切を行うことになります。
 ただ、もともと贈与税の申告件数は所得税と比較して少数です。ただでさえ亡くなったことで慌てていて、贈与税の申告手続きにまで気持ちが廻らない事も多いでしょう。納税手続きは冷徹に事務的に期限が定められていますので、くれぐれもお忘れにならないよう注意が必要です。
 これは一般の方のみならず、税理士にとってもついうっかりしがちな事柄です。と言うより、決して日常頻繁に出てくる業務ではありません。贈与を受けた方が申告期限までに亡くなること自体、極めて異例な事態なのです。自戒の念も込めて注意をしたいものです。


4.相続税の相続人の相続人の場合には?

 相続税だって問題は結構複雑です。原則として相続税の申告期限は亡くなってから10ケ月です。その10ケ月の間に相続人の方が亡くなってしまったらどうなるのでしょう。分割協議を整え、その後に亡くなった場合には、代襲相続と言って、その方の相続人の方が単純にそれを引き継ぐことになります。ただ、代襲相続人が複数いる場合、単純に引き継ぐとは言っても、誰がどのように引き継ぐかはまた別の問題になります。直ぐに決まらなければ、とりあえず法定相続分での共有の状態。その後のお話合いで決着です。
  また、場合によっては、分割協議が整う前に亡くなってしまう事もあるでしょう。そうなると、代襲相続をした相続人が、その相続人に代わって分割協議にも参加する事に。これが結構問題で、年端もいかない若者ならば、叔父や叔母を相手にはたして丁々発止の交渉が、どれだけできるものかできないものか。


5.未成年者の場合は特別代理人

 その若者が未成年者の場合には、更に問題を複雑にします。未成年者は法律行為ができません。普通は親権者が特別代理人として、未成年者に代わって各種の手続きを行うことになります。が、代襲相続をした相続人が複数いる場合には、一人の親が複数の子全ての代理とはなれません。子の間での利害が相反するためです。親の他に特別代理人として信頼できる方を選任し、子の代わりに協議にも参加して貰うことになります。ただでさえ簡単にはまとまらないのが相続です。毎度毎度の結論ですが、”争族”を防止するのは先ず遺言、更に工夫をして”信託”の活用がお勧めです。

※執筆時点の法令に基づいております