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TOPATO通信個人でも電子申告をしてみたら… 5242号

ATO通信

5242号

2012年7月31日

阿藤 芳明

個人でも電子申告をしてみたら…

 “電子申告”なる用語、既にご存知の方も多い事だと思います。紙ベースの申告書を使用せず、データだけを送信して申告する方式のことです。
  我が事務所でも、法人税については昨年の春から既に実施しています。それを個人の所得税についても今年の確定申告から実施致しました。 その結果、私事ではありますが、こんなお問い合わせが税務署から…


1.電子申告に添付書類は不要です!

  電子申告の場合、従来は申告書に添付していた源泉徴収票や生命保険料控除の証明書、そして医療費控除のための領収書を提出する必要がないのです。現物を提出しないため、税務署はどうやってその内容を確認するのでしょうか。
 勿論、その内容は従来以上に詳細な記載が必要にはなっています。しかし、どれだけ詳細に記載したところで、その気になれば架空の医療費をでっち上げ、真実以上に多額の還付金を受け取る事も可能です。
 細かな税額を気にするより、事務の効率化、IT化を推進する事を目指しているのでしょうか。


2. 牽制球は用意されていますが

 性悪説の立場を取る税務署です。悪い輩がいることは先刻ご承知で、だからこそ税務調査が行われているのです。納税者の方を信用していますから、どうぞ原本の提出など気になさらずに電子申告をして下さいとは決して言わないのです。
  『国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令』と言う舌を噛みそうな、よくもまあこんな長たらしい名前の法律を作ったと感嘆するのですが、その第5条第3項にこんな事が規定されているのです。
  “……国税庁長官が定める添付書面等に記載されている事項又は記載すべき事項を入力するときは、税務署長等は、国税庁長官が定める期間、当該入力に係る事項の確認のために必要があるときは、当該添付書面等を提示又は提出させることができる。”
  つまり、税務署が怪しいと思った場合には、原本の確認をするぞ、その時のために保管はして下さい、と言う仕組みになっているのです。


3.よりによって、税理士を確認するとは!

 さて、当事務所も税理士法人です。確定申告時には沢山のお客様の申告書を作成、提出しました。
 しかし、この原稿執筆時点で上記の法律に基づく原本の提出を求められたケースは、ただの一件もありません。信頼できる(?)税理士法人が英知を結集し、複数の税理士がチェックをした上で申告書を作成しているのです。万に一つも架空の領収証や源泉徴収票を作成してまで不正な行為を働くとは思っていないのでしょう。
 が、しかし、です。その税理士法人の代表者である筆者に、『保管されている書類の提出のお願い』つまり、確定申告時に添付を省略した原本を提出せよ、と言う命令が下ったのです。
  私事で恐縮ですが、筆者は税理士法人からの給与のほか、公益法人の理事等も兼ねているため、僅少ではありますが給与があり、複数からの給与となって、確定申告が必要なのです。従って、(1)源泉徴収票(2)生命保険料控除の証明書(3)医療費の領収書等々の提出が求められたのです。
 給与が倍増した訳でもなく、毎年ほとんど内容も金額も変わらない申告をしており、税理士を生業にしている、この筆者を疑っているのです。


4.原本は返却もしますが…

 これらの書類、郵送すれば済む話ではあります。ご丁寧に返信用の封筒まで同封で、一応の誠意は感じられました。しかし、何とも腹立たしく、一言モノ申したく、直接税務署にお届けしたのです。前述の”提出のお願い”には書類の返却を希望する場合、それに応じる旨が記載されていました。
 税務署も職権で原本の提出を求めている事は、税理士として理解はしています。が、よりによって今まで何十年と真実の申告をしている実績もある、こんな真面目な税理士に提出を求めるとは何事だ、と一席ぶったのです。疑う根拠などない筈だ、と。これに対しては、無作為抽出で選んでいます、とだけの回答でした。


5.直ぐには返却できない?

 折角書類を持参したのです。その場で確認してもらい、書類の返却を求めると、直ぐにそれには応じられないと言うのです。筆者が持参したのは、源泉徴収票ほか全部でわずか数枚の書類です。数分で確認はできるはずなのですが、それができないとおっしゃる。怒り心頭に発して文句を言うと、第一部門統括官と言う個人課税部門の責任者のお出ましで、私を見るや『直ぐにやらせます!』
 待つこと数分、提出資料の返却と同時に”平成23年分所得税の確定申告書の申告内容の確認結果について”と言う書類を渡されました。税務調査で言う是認通知のようなものでしょう。これを作らなくてはならないために、直ぐには返却できないと言う事か。ああ、疲れた。筆者を疑うなら、もう電子申告に協力なんかしてやらないぞ!

※執筆時点の法令に基づいております