お役立ち情報

COLUMN

TOPATO通信電子申告には、絶対反対です! 5114号

ATO通信

5114号

2001年11月29日

高木 康裕

電子申告には、絶対反対です!

当社もついにやられました。コンピューターウイルスです。風邪のウイルスとは大違い、被害甚大です。このATO通信も今や大半がメール送信のため、多くの方にご迷惑をお掛けしました。恥ずかしながら、その顛末をお知らせします。


1.新手の愉快犯?

筆者の乏しいコンピューター知識でも、コンピューターウイルスの存在自体は理解しております。メールに送られてきた内容に、付属の添付ファイルがあり、それを開くと、さあ大変!データが破壊されたり、正常に機能しなくなったり、本物のウイルスの如く、コンピューターを蝕んでいくのです。だから、怪しげなメールは開かないのがこの世界の鉄則なのです。
当社がやられたのは、もっと手の込んだもの。敢えて内容を開かなくても、プレビューと言うメールの立ち上げ画面にしただけです。登録済みの当社の顧客リスト(アドレス帳)に載っている総ての方に、当社に送付されてきたメールが送信、転送されてしまうのです。そして、それをご覧になった方のコンピューターから更にその方の登録済みの総ての顧客に同メールが…こうして、ねずみ算式に爆発的な勢いで同じメールが世の中に出回ってしまうのです。
幸い、このメール、データの破壊等の実害はなかったようで、迷惑だけが被害でした。但し、当社のお詫びのメールが更なるご迷惑をお掛けしました。送信方法の不備から、お客様のアドレスを公表する結果となってしまったのです。
この場を借りて、改めてお詫び申しあげます。


2.不十分な危機管理

無防備だった当社、当日は1日中その対応に追われ、大パニックでした。正に犯人の思うつぼ。
ここから何を学ぶべきなのでしょう?先ずは、現状分析。当社のコンピューター環境を把握し、現状での問題点を認識することです。その上で今回の様な事態を予想し、何らかの予防策を打つべきなのです。そして、万一事態が生じた場合、どのような手順で何をすべきか、をマニュアル化しておかなければならないのです。 正直な話、当社にはいわゆる危機管理の認識が薄かったのです。現代を生きる企業としては、その点では失格の烙印を押されても、甘受しなければならないでしょう。
これを教訓に、大いに危機管理体制の充実を図るつもりです。


3.もうすぐ、電子申告の時代です!

今やコンピューター無しの生活など考えられない状況です。当社でも、出勤して最初の作業はコンピューターの電源を入れることから始まります。当社ですら、ソロバンのできる人間などごく僅か。
日常業務の何から何まで、コンピューターを駆使して作業をするのが大前提。こんな時代を反映してか、アメリカでは既に紙を使わない電子申告が始まっています。件数的にはまだそれ程ではないにせよ、確実に増加し、将来的には総てが電子申告になりそうな勢いです。
我が国でもご多分に漏れず、電子申告の導入が予定されています。メリットとして、国税当局は①税務署に行かなくても、自宅やオフィスから24時間、年中無休で申告が可能②企業では既に経理の電子化が進んでおり、申告までの一連の作業がインターネットの活用により、ペーパーレス化でコスト低減につながる。を謳い文句にしております。実際に昨年末から麹町署、及び練馬東署の2署において所得税、法人税、消費税の実験が行われています。それを踏まえて平成15年度から運用開始すべく準備中とのこと。
が、しかし。本当にそれまでにネット上の安全性は確保できるのでしょうか?個人や会社の申告内容が何者かにより、流出してしまう可能性はないのでしょうか?そして何より、ウイルス対策は万全なのでしょうか?筆者は今回の経験から、大いに疑問を感じています。はっきり言って、電子申告には反対です。そう言えば、原子力発電だって、我が国のは絶対に安全、なんてかつてはどなたかが言ってました。
ただ、時代の流れは否が応でも電子化でしょう。
署名捺印なんて、そんな言葉自体無くなってしまうかも知れません。でも、何となく寂しい気もします。メールで『愛してる』に対し、相手の名を書くまでもなく“返信”をクリックして『私もよ!』では色気がありません。熱い熱い思いが筆の乱れになる肉筆の手紙にこだわるのは、筆者だけでしょうか。

※執筆時点の法令に基づいております