年が明け、今年はいよいよマイナンバーが開始されます。この制度、表向きは税と社会保障と災害対策に効果的だと言うことになっています。が、本当の目的は目こぼしのない税金と社会保険料の取立てです。とりわけ税務署は調査の手法まで変わってくることが予想されます。これからは内偵も反面調査も必要がなくなるかも知れません。机上のパソコンで取引総てが把握され……。
1.現状では贈与がばれるのは
まずは現状のお話から。親が子や孫へ贈与をします。現金はもちろんの事、贈与の意思をもって子や孫の預金口座へ振り込んでも、その時点で税務署にはバレません。子や孫がそのお金で不動産や高価な物でも購入しない限り足は付かず、一つ一つの銀行取引まで、税務署は把握していないからです。では、いつバレるのか?相続税の調査の時です。相続税の申告書を提出すると、税務署は被相続人のみならず、相続人等の預金の動きまで金融機関に照会します。
そこで、父から子への振り込みが判明し、贈与があったのでは?とのご質問となります。贈与税の申告があれば問題はありませんが、無申告だと慌てて心臓がドキ!でも、ここは
6年で時効なので双方に贈与の意思があった事を強弁すれば、お咎めがない事もしばしばです。6年経っておらず、単なる口座への移動なら次に述べる”名義預金”だと言われ相続財産として相続税が追徴に。
2.名義預金とは
ではここで、名義預金とは何かについてお話をしておきましょう。前述のように、親が子や孫名義の口座へお金を振り込んだとします。贈与と言うのは、贈与をする側の親と、貰う側の子や孫にあげましょう・貰いましょうと言う意思が双方にある場合に初めて成立する行為なのです。つまり、極端な場合、貰う側の子や孫にそのことが知らされていなければ、たとえ親が子や孫の名義で贈与税の申告までを勝手にしていた場合でも、贈与があった事にはならないのです。つまり、贈与税の申告だけでは、贈与があったことの証明にはならないと言うことなのです。
相続税の調査時には、双方に贈与の意思があったかどうかが問題です。子や孫に貰った認識がなければ、それは一方通行なのでお金が動いていないことになる訳です。つまり、子や孫の名義を借りただけの借用行為。預金そのものは親の物だとするのが名義預金なのです。これが株式であれば名義株式、同様の扱いです。但し、その時には既に被相続人はアチラの世界。双方に贈与の意思があったかどうかは税務署には分かりません。その時に相続人が『確かに贈与されました』と言えるかどうか、言ってみれば演技力の勝負になるのが実務なのです。
贈与税の申告期限から6年経っていれば”時効”を主張し無税、経っていなければ相続税と贈与税のどちらが得かその時に判断すればいいでしょう。
(影の声:先生、そこまで言っていいんですか?)
筆者も真面目な税理士です。資産家にとって、ほとんどの場合、数年に分け、更に子や孫の頭数を増やして贈与をすることは、簡単で確実な相続税対策になるはずです。目先で損をして(贈与税を払い)、後で相続税で得をした方が賢明です。
3.マイナンバー導入後は?
さて、話はマイナンバーに戻ります。制度の導入後も直ぐに激変はないでしょう。預金については一応平成30年からの導入ですが、直ぐに強制はされません。それから3年後を目途に実施したい意向なのです。現在、税務署は一つ一つの銀行に、それぞれ関係者の氏名を記載して照会し、書面での回答を待っています。とても時間がかかるのです。それが預金に強制された暁には、それこそ、その気になればリアルタイムで全口座の動きが手に取るように分かってしまいます。つまり、贈与税の疑いがあれば直ぐに質問され、申告漏れは大幅に減少することが予想されるのです。
4.証券口座なら安心か?
銀行が駄目なら証券会社に預けることを考える方も多いと思います。税務署はそんなあなたの心を見透かすように、ちゃんと備えをしています。平成27年の年末までに証券口座をお持ちの方は、平成30年の年末までに通知することになっています。平成28年からは口座の開設時に通知です。つまり、基本的には証券会社を使っても、その効果は銀行と同じと考えた方がいいでしょう。
5.これからの相続税対策
それでも税務署に余計な(?)税金を取られずに済む方法はあるのでしょうか。一つはタンス預金でしょう。これなら絶対バレませんが、火事と泥棒には勝てません。地震や津波も心配でしょう。そんな方にはいっそ核戦争にも耐えられる”核シェルター”でもお作り頂く事をお勧めします。
折角ここまで読んで頂いたのに、本当に恐縮です。結局、今後は真実の申告をするより他の方法はありません。もっとも、正直者が損をするような日本では、これからの展望はありませんぞ!