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COLUMN

TOPATO通信節税って、そんなに悪いことですか?
-税制改正は、12月公表です-
5102号

ATO通信

5102号

2000年11月29日

高木 康裕

節税って、そんなに悪いことですか?
-税制改正は、12月公表です-

世に節税策と言われる方法は数々あります。が、それが横行すると直ぐにその封じ手が登場するのが昨今の状況です。するとまた裏の手が登場し、それに蓋で正にイタチゴッコ。ここで素朴な疑問です。節税って、当局が目くじらを立てる程、そんなに悪いことなのでしょうか?


1.節税封じは枚挙に暇無し!

かつてバブル華やかなりし頃、サラリーマンの投資用マンション取得が流行りました。借入利息や定率法の減価償却で不動産所得を赤字にし、給与と通算して税金を還付する節税策が脚光を浴びたのです。これを苦々しく思った当局は、土地取得に係る利息のために不動産所得が赤字になった場合、他の所得との通算を認めないと言う節税封じを打ち出しました。 また、このATO通信で何回かご紹介した不動産管理会社も目の敵です。同族の管理会社を設立し、管理料の名目で個人から費用を徴収。それを個人の不動産所得の費用にして節税をはかると共に、親族をその法人の役員にして、所得の分散を計ろうとするものです。 かつては収入の20%までは大目に見ていたものの、昨今は管理の実態がないことを理由に全額を否認する傾向にあります。 まだまだあります。中小企業のオーナーで相続税に悩む方のため、その会社の株価評価を下げる節税策です。資本金を1億円以上にすると評価計算上は大会社となり、有利な評価となっていたのです。そのため、闇雲に資本金を増額し、その適用を受ける工夫をしたものです。資本金を1億円以上にするだけなら、実務上それ程難しい事ではないからです。 また、簿価は低いものの時価が相当額に達する土地を持つ会社においては、その株式を現物出資して別会社形式の間接保有に。これにより、当時は評価が約半額になる仕組みがありました。この現物出資で半額評価を無制限に繰り返し、ほとんど0にしてしまうウルトラCもあったのです。これらは現在はほとんど機能せず、全て節税封じにあっています。


2.不動産M&Aも風前の灯火

今年も税制改正の季節がやってきました。12月上旬にはその概要が明らかになるはずです。その中で最もその動向が注目されているものが不動産M&Aの扱いです。これは法人所有の土地があり、会社を畳もうとする時に活用される方策です。法人が土地を売却し、残余の財産を株主に分配すれば会社は畳めます。しかし、この手続きは会社に法人税、財産の分配に所得税が課税され、個人株主の手残りは土地代金の3~4割程度。これを株式の状態で会社ごと売却すれば、株式売買については所得税の分離課税26%で完結です。が、当局はこれが面白くない。実態は株式売買でなく、不動産売買だと。だから26%の分離課税は許せない。やや専門的になりますが、その株式を買った会社はそのままでは目的の土地が商品になりません。その会社を合併すると共に、低かった土地の帳簿価額を時価まで引き上げる作業を行うのです。従来はこの引き上げ作業、実質的には課税を免れていたのですが、これを課税。つまり、不動産M&Aを取り締まろうと言うことなのです。来年の3月を以てこの手法も終了で、もはやこの節税策の寿命もあと僅か。


3.なぜ節税を考えるのか?

なぜ節税を考えるのか?答は簡単で、税に対する不公平感と重税感です。確かに節税策には反社会的なものがあるのも事実。しかし、何でもかんでも節税封じの一手だけでは、反税意識も芽生えようと言うものです。 中でも許し難いのは、ビール類似の発泡酒。麦芽の使用割合により、ビールでなく発泡酒にすることによる節税は、筆者に言わせれば節税のノーベル賞もの。脱税ではなく、ささやかな庶民の知恵に、お目こぼしあれ!

次号で来年の税制改正、ご報告予定です。

※執筆時点の法令に基づいております