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様々な問題と向き合いながら
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安心かつ効果的なご提案のもとに、
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それが、資産税の専門家である
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え〜っと通信

相続対策はお早めに!

 相続対策には、すぐに効果が出る対策と効果が出るまでに時間がかかる対策があります。すぐに効果が出る対策としては、例えば、生命保険への加入、相続人以外(孫など)への生前贈与、個人の不動産購入等があります。効果が出るまでに時間のかかる対策は、しっかり時間をかけて行うことで円滑・円満な相続につながるばかりでなく大きな節税効果が見込めます。今回は、効果が現れるまで時間がかかる相続対策に焦点を当てていきます。

1.小規模企業共済を使った死亡退職金非課税枠の活用

 相続税では、相続人が受け取る死亡退職金は500万円×法定相続人の数まで非課税枠があります。そこで、不動産賃貸業を営むAさんは退職金の非課税枠を利用して相続税の納税資金を残そうと考えました。小規模企業共済に加入し、支払う掛金を所得控除して毎年の所得税負担を減らし、一方で亡くなったときに相続人が積立金額を「死亡退職金」として受け取ることにしました。
 しかし、小規模企業共済は一括払いの生命保険への加入とは異なり、年間の積立金額に制限があります。1年あたりの積立金額は最大84万円のため、単純に考えると相続人が1人の場合でも非課税枠の500万円を積み立てるには単純計算で6年かかってしまいます。

2.生前贈与(暦年贈与)の活用

 生前贈与すれば、基本的に贈与した財産は相続税の計算から切り離しをされます。そこで、Aさんは相続税の負担軽減をしようと、相続税の税率よりも贈与税の税率が低くなるように毎年2人の子に年間510万円ずつ贈与していくことにしました。
 しかし、令和6年1月1日以降の贈与は、贈与財産を相続税に持戻計算する生前贈与加算の期間が7年に延長されており、相続人への贈与財産は7年経過するまで相続税の計算から切り離すことができません。

3.賃貸不動産の購入(小規模宅地等の特例適用)

(1)不動産を購入すると、その相続税評価額は、土地部分が路線価評価額、建物部分が固定資産税評価額を基に計算するため、一般的に購入金額より低くなります。その上で要件を満たせば、貸付事業用宅地等として一定の面積まで土地価額を5割引きできる小規模宅地等の特例が適用できます。資金に余裕のあるAさんは、近年の不動産市場の値上りや物件の利回りを考慮し、マンションを購入して賃貸を始めることにしました。その賃貸マンションの相続税評価額を計算してみると、購入金額の半分程度ですから、相続税の負担軽減対策ができました。
 しかし、貸付事業用宅地の小規模宅地等は、被相続人が相続開始前から3年以上継続して事業的規模(貸間やアパートなら概ね10室、貸家なら概ね5棟以上)で貸付事業を行っていた場合を除き、相続開始前3年以内に新たに貸し付けられた建物の敷地では適用できません。貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用するには3年以上貸付ける必要があります。
 

(2)3年以内に相続が開始する可能性を考え、マンション購入資金をAさんが経営する同族会社に出資し、同族会社でマンションを取得することにしました。
 しかし、同族会社の100%株主であるAさんの株式の相続税評価額の計算では、課税時期(相続・贈与)前3年以内に取得した土地・建物を相続税評価額ではなく、「通常の取引価額(時価)」で評価しなければなりません。つまり、購入金額そのもので評価しなければならないため、会社の株価が下がるのは、マンション購入から3年後となってしまいます。

4.法人設立

 原則として、個人で財産を所有するよりも、法人の株式を通じて財産を所有する方が相続税評価額は低くなります。そこで、不動産賃貸業を営むAさんは、所得税率が高く所得税の負担が大きいため所得税の負担軽減をしようと法人を設立し、その法人に賃貸物件を売却することにしました。なお、売却に当たっては、税務上の問題が生じないよう相続税評価額よりも高い「通常の取引価額(時価)」で取引を行うこととしました。Aさんの所得税は、法人に移転した分低く抑えることができました。
 しかし、法人の株価は、開業後3年未満の会社の場合、特定の評価会社として、純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)だけで株価を計算することになります。会社の株価が下がるのは、設立して3年経過後となってしまいます。

5.まとめ

 これまでの内容をまとめると次のようになります。

 このように相続税では、相続直前に安易な節税ができないよう規制されているものがあります。また、生前贈与や法人化などは、より長い期間行うほど効果が大きくなりますので早めに実施するほうが良いといえます。反面、相続対策は後戻りができないものが多いため、税務や法務に関する専門家としっかりと相談して計画を立てることが大切です。

2025年4月15日

生命保険を確認しませんか

 生命保険は、万一の際にまとまった金額の保険金を受け取れることはもちろん、税金面では相続税の非課税枠を利用することで節税対策になり、相続税の納税資金の確保に役立ちます。
 そんな目的で加入した生命保険ですが、相続税の対象として必ずしも思いどおりになるとは限りません。この機会にあなたの契約した生命保険の内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。

1.被保険者、保険料負担者、受取人の関係によって変わる税金の種類

 死亡保険金を受け取った場合は、①被保険者、②保険料の負担者、③保険金の受取人が誰かにより、相続税、贈与税、所得税のいずれかの対象になります。

(1) 相続税は、上記の表のように被保険者と保険料負担者が同一の場合です。
(2) 贈与税は、被保険者、保険料負担者、保険金の受取人がすべて異なる場合です。
(3) 所得税(一時所得又は雑所得)は、保険料負担者と保険金の受取人が同一の場合です。

2.相続税の死亡保険金の非課税

 被相続人が保険料を支払っていた死亡保険金は、相続税法上のみなし相続財産となり、受取人固有の財産として遺産分割の対象にはなりません。「相続人が受取人のとき」は法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があります。たとえば、法定相続人が3人の場合は、1,500万円まで死亡保険金を無税で受け取れるということになります。
 注意していただきたいのは、相続人以外の人が受取人の場合は非課税の適用がないということです。さらに、相続税額の2割加算という制度があるので、割増の相続税を支払うことになってしまいます。

3.契約上の受取人を変更したときの税金

 税金のことを考えると、生命保険の受取人を名義変更する方が良い場合もあるでしょう。変更する場合は贈与税がかかってしまうのでしょうか?
 生命保険の契約者や受取人の名義変更をしただけでは贈与税を課税されません。贈与税が課税されるのは、被保険者の死亡や保険期間の満期により、保険料を負担していない人が生命保険金を受け取った場合等に限られます。

4.相続後でも受取人は変更できる?

 夫が独身時代に加入した生命保険、結婚後も親を受取人とし、受取人を妻子に変更するのを忘れたまま相続が発生したとします。親が「残された妻子が受け取るべき」として保険金をそのまま妻子に渡しました。この場合はどのようになるのでしょうか?
 相続税法の規定からみれば、死亡保険金が親に支払われた時点で親に相続税、さらに親から妻子に死亡保険金を渡した時点で贈与税という二重の税金がかかってしまいます。しかも、親は相続人ではないので相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えません。
 しかし、実務上は、相続税の通達で、受取人の名義変更がされていなかったことに「やむを得ない事情があり、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することに相当な理由があるとき」は契約上の名義人ではなく実際に受け取った人を受取人として認めるとする取り扱いがあります。したがって、この救済策が認められれば、妻子が死亡保険金を相続により取得したものとみなして相続税の非課税枠をしっかり使うことができます。

5.まとめ

 上記4の相続税の救済策は、建前として「やむを得ない事情」があるとき限り適用されるものですから、受取人を便宜上指定したにすぎず、うっかり手続きを失念していたといえるようなとき以外でも認められるかどうかは微妙なところです。
 相続後に受取人を変更できるのは、契約上の受取人が同意しているなど、関係者の合意が必要です。親子仲が悪かったり、離婚した妻から現在の妻に名義変更し忘れていたときなどは相続後に受取人を変更するのが難しいケースといえます。
 そもそも生命保険金は、あらかじめ指定した「死亡保険金受取人」に必ず支払われますから、遺したい人に確実に遺すことができるものです。無用な親族間のトラブルを避けるためにも、生命保険加入後の環境の変化に合わせて定期的なチェックと必要な名義変更を忘れずに行う必要があるといえます。

2025年3月14日

令和7年度税制改正の概要

 令和6年12月20日に令和7年度の税制改正大綱が発表されました。今回は税制改正の主要項目のうち、特に注目すべき点をご説明します。

1.物価上昇局面における基礎控除等の改正

 給与収入103万円を超えると扶養控除等の対象とならず、所得税課税が発生するいわゆる「103万円の壁」について、「178万円を目指して引き上げる」旨の3党合意がなされました(自民・公明・国民民主)。しかし、税制改正大綱においては、以下に記載のとおり123万円への20万円(基礎控除10万円と給与所得控除の最低保証額の10万円)の引上げとされています。
(1) 基礎控除の引上げ
合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額が、次表のとおり10万円引き上げられます。しかし、合計所得金額が2,350万円を超える場合に変更はありません。

(2) 給与所得控除の最低保証額の引上げ
55万円の最低保証額が65万円に引き上げられます。ただし、給与収入190万円以上に変更はありません。

(3) 特定親族特別控除(仮称)の創設
 大学生年代の子のアルバイトにおける就業調整が行われていることに対処するため、特定親族特別控除(仮称)が創設されます。具体的には、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(配偶者及び青色事業専従者等を除く。)で控除対象扶養親族に該当しない者を有する場合には、その居住者の総所得金額等からその親族等の合計所得金額に応じ、次表の控除額が控除されます。

(4) 基礎控除の引上げ等に伴う所要の措置
 次の措置が講じられます。
 ① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件
   58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
 ② ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件
   58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
 ③ 勤労学生の合計所得金額要件
   85万円以下(現行:75万円以下)に引上げ
 ④ 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費算入額の最低保証額
   65万円(現行:55万円)に引上げ

(5) 実施時期等
 上記改正は、いずれも令和7年分以降の所得税から適用され、源泉徴収関係については、令和8年1月1日以降に支払われるべきものから適用されます。なお、基礎控除の引上げを含む上記の改正については、今後の国会での議論を経ることにより変更される可能性があります。

2.子育て世代に対する生命保険料控除の拡充

 令和8年分の所得税において、23歳未満の扶養親族を有する場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除の控除限度額が6万円(現行:4万円)に引き上げられます。ただし、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除を含めた合計適用限度額は、現行の12万円のままとされます。

3.確定拠出年金制度等の見直し

 次に掲げる確定拠出年金法の改正が行われた後も、現行の税制上の措置(拠出時の小規模企業共済等掛金控除等、給付時の公的年金課税又は退職所得課税)が適用されます。
① 企業型確定拠出年金(DC)におけるマッチング拠出について、企業型年金加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えることができないとする要件の廃止
② 個人事業主等のiDeCoの拠出限度額(国民年金基金を含む。)の7,000円の引上げ

→拠出限度額は月額7.5万円
③ 会社員等の企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の7,000円の引上げ

→拠出限度額は月額6.2万円(限度額に達するまでのiDeCoの加入限度額2万円の撤廃)
④ 年齢60歳以上70歳未満で現行のiDeCoに加入できない者のうち一定の要件を満たした者を新たにiDeCoの対象とする。

→拠出限度額は月額6.2万円

4.防衛力強化に係る財源確保

 防衛力強化の財源確保のための措置として、防衛特別法人税(仮称)が創設され、併せてたばこ税が見直されます。
(1) 防衛特別法人税(仮称)の創設
  令和8年4月以降開始する事業年度から、課税標準額となる法人税額(500万円控除後)に対し、税率4%が新たな付加税として課税されます。  
(2) たばこ税の課税方式及び税率
  加熱式たばこの課税方式が令和8年4月及び令和8年10月の2段階に分けて見直されます。また、たばこ税の税率は、令和9年4月、10年4月及び11年4月の3段階に分けて引き上げられます。

5.その他の主要な改正項目

2025年2月20日

高額所得に対する所得税負担の見直し~高額の不動産譲渡の際は注意しよう~

令和7年から新たに適用される所得税制に「極めて高い水準の所得に対する税負担の適正化措置」 があります。令和5年度の税制改正で創設され、今年の所得から適用されます。この制度の対象はどのような場合でしょうか。ずばり、株式や長期保有土地の譲渡益が非常に高額になる場合です。相続税の納税資金を捻出するため、これらの譲渡を行うとき、最終的な手取額のシミュレーションを行いますが、今後は、この制度を踏まえる必要があります。

1. 1億円の壁

給与所得や不動産所得のような総合課税の所得に対する所得税の税率は5%~45%とされており、所得が一定額を超えると、その超えた部分は高い税率で課税されます。一方、株式や長期保有土地の譲渡については、譲渡益の多寡にかかわらず一律15%の税率が適用されます。そのため、譲渡益が高額になると所得全体に占めるその譲渡益の割合が大きくなることもあって、次表のとおり、所得階級が1億円を超えると、所得税の負担割合(平均所得税額÷平均所得金額)が減少する結果となっています。“1億円の壁”と言われているのはこのことです。

2. 新たに導入される制度

新たに導入される制度の計算式は次のとおりです。①の金額が②の金額を上回る場合に限り、その差額分(①-②)の追加納付が必要になります。

①〔基準所得金額-3.3億円〕×22.5%
② 通常の所得税額(外国税額控除等の適用前)

①の算式は、3億3千万円を超える部分の所得は、最低22.5%の所得税負担が生じることを意味します。“基準所得金額”には、確定申告を行う所得に加え、特定口座のうち確定申告を省略(申告不要を選択)できる“源泉徴収選択口座”に係る所得などが含まれる点に注意が必要です。

3. 事例でみてみましょう

給与所得が500万円の会社員Aさんは、所得控除の合計額が200万円で、給与に係る所得税額は202,500円です(簡略化のため、復興特別所得税は考慮していない。以下同じ。)。この度、長期保有の土地を譲渡したところ、譲渡益は30億円でした。この場合の通常の所得税額(前記2.②の金額)は、次表⑧欄の450,202,500円になります。

次に、新たな制度による比較対象金額(前記2.①の金額)を求めますが、その金額は次表⑪欄の601,875,000円になります。この金額は、通常の所得税額(上記表⑧欄)を超えていますので、差額である151,672,500円(次表⑫欄)の追加納付が必要になります。そのため、土地の譲渡による手取額が、従前に比べ約1億5千万円も減少する結果になります。

4.追加納付が生じる譲渡益

前記3.の会社員Aさんの場合(総所得金額(給与所得)500万円、所得控除額200万円)、追加納付が発生する譲渡益はいくら位からになるのでしょうか。
 計算過程は省略しますが、追加納付税額は、土地の譲渡益20億円で約7,667万円、譲渡益10億円で約167万円となり、譲渡益が9億7,770万円以下であれば追加納付はありません。

5.超富裕層は“源泉徴収選択口座”に注意が必要

土地の譲渡益は確定申告が必要ですから、新制度の対象かどうかは申告書作成段階でチェックします。“基準所得金額”には、前記2.の“源泉徴収選択口座”に係る所得のほか、上場株式等に係る利子配当(源泉徴収の対象)も含まれます。源泉徴収選択口座の譲渡益や利子配当が非常に高額になる超富裕層の方は、この制度の対象かどうか確認が必要です。特定口座年間取引報告書、配当等の支払調書などの法定資料は、金融機関から税務署に提出されますので、税務署はその内容を確認して新制度適用の有無のチェックを行うと考えられます。

2025年1月15日

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ATO通信

白色申告のメリットはもはや無い

 収入規模が大きくないという理由で白色申告をしている方がまだ多くいるようです。不動産収入は相続で引き継いだマンション1部屋だけであり、帳簿作成は面倒なので白色申告にしているという方もいると思われます。理由が帳簿作成上の手間ということならばそれは勘違いです。白色申告であっても帳簿作成が必要なことをご存知ですか。

1. 白色でも帳簿が必要

 白色申告者で事業所得等の合計額が300万円以下の一定の人は、確かに以前は帳簿の記帳義務及び記録保存義務がありませんでした。零細な事業者にまで記帳義務を課すことの必要性や事務負担とのバランスを考慮して例外を定めていたのです。この取扱いがあったからなのか、白色申告であれば帳簿を作る必要は無いのでそのメリットを享受する!と考えている方が多いような気がします。
 しかし、平成26年1月1日からは、事業規模に関係がなく帳簿の作成義務があります。つまり、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている方は、その全員が帳簿を作成しなければならないのです。白色申告者だから作らなくても良い、とはなっていません。
 ちなみに、帳簿というと正規の簿記のルールに従って記帳して貸借対照表と損益計算書を作成しなくてはいけないのでは?と思いがちですが、そこまでは要求されていません。現金出納帳や固定資産台帳などの簡易な帳簿でも良いことになっています。

2. 帳簿が無いと罰則強化!

 ただ、そんなことを言われても青色申告は気持ち的にハードルが高いから白色申告にしよう。そして、帳簿作成は割愛してしまおうか?と考える方がいるかもしれません。そこで国税当局はこういう方に対しては厳しい罰則を設けました。事業者が売上げに関する帳簿を保存していないことや売上げの記載が不十分であったことが税務調査で把握され、帳簿に記載すべき事項について申告漏れが生じた場合には、過少申告加算税等を10%加重するというペナルティを置いたのです。この罰則規定は令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものからスタートしています。すでに令和5年分の確定申告から始まっているのです。

3. 青色申告を選択すべき?

 不動産所得に関して言えば、その規模に応じて事業と業務という区分けがされます。私は事業的規模ではないから良いのではと勘違いしがちですが、帳簿作成の義務は業務的規模の方であっても一緒です。
 そうすると、白色申告にしておくメリットはもはや無くなったと言っても過言ではないでしょう。どんな方であっても簡単な売上集計表や経費集計表は作成されているでしょうから、青色申告を選択することによる実質的な追加負担はあまり生じないはずです。

4. 青色申告でメリット享受

 青色申告を選択すれば、最低でも10万円の青色申告特別控除が受けられます。必要経費が単純に10万円アップするのですから使わない手はありません。この他にも、赤字が生じた場合には3年間の繰り越しが出来ることや、赤字を前年の所得に繰り戻して所得税の還付を受けることも可能です。白色申告で一番の大きな問題は赤字が繰り越せないことです。例えば、賃貸建物に大規模修繕工事が発生して多額の費用が計上されることもあるでしょう。このようなときは、大きな赤字になる可能性がとても高いですが、白色申告では赤字の繰り越しはできないことになっています。

5. 雑所得でも書類保存が必要

 不動産所得や事業所得などではなく雑所得となる業務を行っている場合で、前々年の収入金額が300万円を超える方は一定の書類を保存する必要があります。また、前々年の収入金額が1000万円を超えるような場合には、収支内訳書を確定申告書に添付しなければなりません。なお、ここでの判断基準は収入です。所得(利益)ではありませんので注意しましょう。このように、何らかの業務収入があるのであれば、帳簿の作成義務まではありませんが一定の書類を保存しなくてはなりません。
 また、雑所得の話題といえば、事業所得との区分についての取扱いです。雑所得の場合は赤字になったとしても給与所得などの他の所得とその赤字を通算することはできません。そこで、本来は雑所得とすべきものを事業所得で申告して赤字を通算、所得税の還付を受けているケースが結構見受けられました。そのため、事業所得かそれとも雑所得のいずれで申告すべきなのか、について国税当局の指針が令和4年に示されたのです。
 この取扱いを見ると、雑所得であっても帳簿作成は行っておくべきと思います。この取扱いの明確化ですが、今年の10月で公表されてからちょうど3年が経過します。事業所得で申告しているが経常的に赤字体質、いつもその赤字を損益通算しているような方は、申告内容によってはそろそろ目を付けられるかも知れません。赤字の理由を説明できるようにしておきましょう。

2025年4月30日

物納を利用して借地人になる?

 前回のエーティーオー通信では物納の話をしましたが、物納に関しては面白い利用の仕方もあります。物納許可を受けるとその財産は国の所有になりますが、物納後は国からその財産を借受ける手続きも可能です。このようにすれば物納後も引き続き利用ができるというわけです。

1.何を物納する?

 延納によっても相続税を納付することが困難であるとして物納申請ができる要件を満たしました。そうすると、次は物納する財産は何にするかを考えなくてはなりません。相続税に充当される金額、これを「収納価額」といいますが、この金額は物納財産の時価ではなく、相続税評価額で行うというルールがあります。したがって、相続税評価額よりも高く売却できる可能性があるならば、物納などせずに売却をした方が有利であり、手残りは多くなります。このようなことから、実務的には高く売却することが難しい貸地(いわゆる底地)を物納対象にすることが比較的多いのです。

2.底地を物納する

 貸地があればよいですが、無い場合やそれだけでは足りない場合はどうするのか?もし相続財産に貸地以外の土地があるならば、自ら底地を作って物納するのはいかがでしょう。例えば、相続財産として賃貸アパートの土地建物があるとします。このときに、賃貸アパートの土地の底地部分だけを物納に充てるのです。物納後は建物と借地権を所有することになるため、相続人は国へ地代を支払って土地を借受けることになります。すなわち、土地を所有しないで賃貸アパート経営をする借地人の立場になるわけです。こうすれば、地代の支払いは必要になりますが、物納後も賃貸アパート経営を継続して収入を得ることができます。なお、当然ですが物納対象はあくまで底地部分ですから収納価額は「相続税評価額×(1-借地権割合)」です。
 ちなみに、自宅の土地建物の底地部分だけを物納対象にすることもできますが、この場合には一定の要件をクリアする必要があります。

3.無償返還の底地

 被相続人は賃貸アパートの敷地である土地だけを所有しており、賃貸アパートは同族法人が所有しているケースも多いと思います。このようなときは、土地の無償返還に関する届出書を提出して同族法人は地代を支払っていることでしょう。この場合の土地の相続税評価額は、土地の自用地評価額の80%で評価されているはずです。そこで、この土地を物納すればこの80%相当が収納価額として相続税に充てられ、かつ同族法人は借地人として土地を借り続けられると思うかもしれません。しかし、この場合にはそうはなりません。物納することはできますが、国と同族法人の間で土地の無償返還に関する届出制度を継続することはできないため、この場合には底地の物納として取扱われることになります。つまり、先ほどと同じように収納価額は「相続税評価額×(1-借地権割合)」です。土地のうち底地部分だけが物納されることから、物納後は次のような権利関係になります。

4.物納で借地人になる

 このように、土地のうち底地部分だけを物納した場合には、相続人は新たに借地人となるのです。今までは土地そのものを所有していたことから違和感を抱く方もいそうですが、国へ地代を支払いさえすれば土地利用ができることに変わりはありません。日本では借地人の権利が非常に強いので、思ったよりも問題が無いと感じるかもしれません。また、何と言っても地主である土地所有者は国です。これは考えようによっては優良地主です。なぜなら、底地である土地を勝手に第三者に売却するようなことは行わないからです。貸地はその契約の性質等から、原則として競売などは行わず、売り払うのであれば土地を利用している借地権者に対して行うことになっているからです。知らないうちに地主が変わるようなことはありません。

5.買い戻しもできる

 底地物納をして借地人として利用をしてきたが、相続からだいぶ年月も経過して資力も回復したというのであれば、国から土地を買い戻すこともできます。ケースバイケースですが、物納もうまく活用すれば使い道が色々あるのです。

2025年3月31日

物納が使い易くなる?

 令和7年度の税制改正大綱では、相続税の物納制度に関する見直しが盛り込まれました。他の改正内容に比べればマイナー項目なのかあまり注目されていないようですが、これからは物納が使い易くなりそうです。

1. 物納をするには

 相続税は金銭で一括納付することが原則です。ただし、この納付が難しい場合には現預金による一部納付後の相続税について、延納や物納があるのはご承知の通りです。このうち延納については、以前にも何度か取り上げて述べてきましたが、その内容は最長20年間の元金均等の分割払い制度と思って頂ければ良いでしょう。そして、この延納によっても納付することが困難な場合に限って、物納が適用できることになっています。
つまり、物納を利用したいと思っていたとしても、延納を利用すれば相続税の全額を納付することが可能であると判断される場合には、そもそも物納申請すらできない取扱いになっているのです。

2. 収入があると物納は難しい

 延納によって全額納付が可能か、それとも延納でも難しいので物納を認めるかの判断基準はおおまかには次のようになります。
 まず、①物納を申請する方の今後の年間の収入見込みを計算します。そこから、②配偶者などの扶養者の人数に応じて定められている年間生活費、所得税や社会保険料の負担額、③事業に必要な経費を差し引いた金額を出します(①-②-③)。この金額を、国は1年間に税金に充てられる納付資力だと見なします。当然ですが、②に遊興費などは入りません。多少の金額調整は可能ですが、税金・社会保険料と必要経費を差し引いた後の稼ぎは全て納税のために使えるはずだという厳しい内容です。この金額に延納可能年数を掛けたものが、延納によって納付可能な金額となります。そして、相続税がこの延納可能額を超えるのであれば、その分に限りようやく物納ができるという流れです。
 一般的に物納を考える方は相続財産に占める不動産等の割合が高いため、延納可能年数は最長期間である20年になるでしょう。したがって、相続後の収入がある程度見込まれる場合は20年を掛けた金額が多額に上り、物納が認められないケースが多発します。これが、物納は難しいと言われる1つの要因です。

3. 延納可能年数の見直し

 このように物納が難しいのは、納付すべき相続税から先に延納可能額を差し引き、その残りについてだけ物納を認める計算方法になっているからです。しかし、よく考えてみましょう。延納は最長20年とされてはいるものの、その方が高齢であったとしたらどうでしょう。悲しいことですが、もしかしたら20年経過前に死亡してしまう可能性もあります。本人の死亡により延納できない期間があるのであれば、その分は計算年数を少なくしても良いはずです。そこで、令和7年の税制改正では延納可能年数に上限が設けられる予定です。
 具体的には、物納申請者の平均余命を延納可能年数の上限として、物納できるか否かの判断をすることになります。これからは、年齢によって物納可否が異なる結果になります。

4. 高齢だと物納しやすい?

 平均余命の年数は、厚生労働省が公表している完全生命表を用いると思われます。そこで、平均余命が20年を切るのは何歳なのか?調べてみました。

 男性は65歳を超えると、女性は71歳を超えると平均余命が20年を切るようです。是非とも物納を利用したい場合には、この年齢以上の相続人が物納予定財産を相続すれば、いままでよりも延納可能額が少なくなります。つまり、物納制度は使い易くなるのです。長寿の世の中、相続人が高齢なケースが増えています。物納をしたいのであれば、相続人の年齢までを考慮した遺産分割をする必要が生じるのでしょうか。

5. 物納は延納とセットで考える!

 物納は、延納とセットで考えなくてはならない制度だとお分かりになったと思います。相続税の納税については、延納・物納の助言もできる税理士にご相談を!

2025年2月28日

固定資産税は目を光らせている

 住宅用地については固定資産税と都市計画税が軽減されることは皆さまも良くご存知のことでしょう。固定資産税であれば課税標準が価格の1/6になるという住宅用地の特例のことです。実はこの特例の適用にあたって、最近急速に広がりをみせているレンタサイクル事業が影響を及ぼしてくるのです。

1. 住宅用地の特例をおさらい

 念のため、固定資産税と都市計画税の負担が軽減される「住宅用地の特例」の内容を復習しておきましょう。住宅用地は、小規模住宅用地と一般住宅用地の2つに分かれます。①小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/6になります。②一般住宅用地は住宅1戸当たり200㎡を超えて家屋の床面積の10倍までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/3になります。参考として軽減割合の詳細を下表に記載しました。なお、あくまでも住宅用家屋の敷地として利用している部分だけが対象です。

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地住宅1戸につき200㎡まで価格×1/6価格×1/3
一般住宅用地家屋の床面積の10倍まで(小規模住宅用地以外)価格×1/3価格×2/3

※課税標準とは、税額を計算するための基になる金額です。

 ここでのポイントは、小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡が設定されているということです。したがって、アパートなど1棟に複数戸数がある建物の場合は、(戸数×200㎡)までという計算になるため、通常は敷地の全てが小規模住宅用地に該当します。

2. レンタサイクルの敷地はダメ

 最近、都内を中心にレンタサイクルなどのサービスが急速に広がりを見せています。特に、水色の車体の電動キックボードを街中で良く見かけませんか?これは、LUUP(ループ)という電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスであり、とても有名なのではないでしょうか。試しにLUUPが配置されている東京都内のステーションをインターネット上の地図で見てみると、都内23区を中心に物凄いことになっています。至るところにあるという感じです。これらのレンタサイクルなどですが、一般的には建物と道路の間の空きスペースを利用して設置されているようです。このスペース、テナントビルの横であればそもそも非住宅用地なので影響はありません。ところが、アパート敷地横のちょっとした空間に設置されていたとしたらどうでしょう。実はこの場合、その部分はもはや住宅の敷地として利用されていないことから非住宅用地として取扱われてしまうのです。つまり、レンタサイクルなどのシェアリング事業部分の土地は住宅用地の特例対象地から外れ、固定資産税と都市計画税の負担が増加します。
 土地の面積としてはそこまで広くなく、ほんの数㎡~数十㎡であったとしてもこの影響はまったく寝耳に水だ!という方が多いのではないでしょうか。東京都主税局はこの調査に力を入れているようで、見つけ次第に是正する旨のお尋ね文書を郵送しています。したがって、固定資産税等の負担が増えることを見越して設置場所の賃料を設定しないと本来はダメなのです。なお、運営会社もこの問題は把握しているようですので、もしも非住宅用地になってしまうのであれば設置料の見直しができるか相談をすると良いでしょう。この他にも、カーシェアリング用地として自宅敷地の一部を貸付けしているような場合も同じ理屈で非住宅用地になります。
 固定資産税の担当者は、住宅地を中心に設置場所をインターネットで調べたうえで、現地を確認すれば一目瞭然ということです。

3. 私道は要注意

 道路の用に供されている一定の土地は、固定資産税と都市計画税が非課税になります。いわゆる私道に対する取扱いです。これについても注意が必要です。道路部分に利用上の制約がある場合には、非課税要件に合致しないとして非課税が取消され、課税される恐れがあります。自分が所有する土地だから良いだろうと、私道部分にはみ出た形状でレンタサイクルなどを設置してしまうと非課税が取消されてしまうのです。私道部分にプランターなどが置いてあったとしても、これらは多めに見てくれていたようですが、レンタサイクルなどの設置場所はダメです。土地の貸付けという収益事業を行っていることからして厳しい運用がなされます。

4. 償却資産税も注意

 事業の用に供している減価償却資産は償却資産税(固定資産税)の対象です。おそらく、今後は太陽光設備の申告が漏れていないかどうかのお尋ねが増えるのではないでしょうか。東京都などでは2025年4月から太陽光パネルの設置義務化がスタートします。原則、大手ハウスメーカーの新築住宅はこの縛りを受けることになります。つまり、新築の賃貸住宅であれば太陽光設備の申告が無いとおかしい訳です。固定資産税の課税漏れが無いかどうかは様々な角度からチェックされるのです。

2025年1月31日

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今月の言葉

アメリカの大義(続)

アメリカ合衆国は子供たちに、どのように民主主義を刷り込んでいるかという話である。

 この稿の筆者が生まれた日に、合衆国では大統領選挙があり、共和党のドワイト・アイゼンハワーが民主党のアドレイ・スチーブンソンを破り、大統領に当選した。アイゼンハワーはそれから2期8年務めた。次に共和党リチャード・ニクソン副大統領対民主党のジョン・F・ケネディマサチューセツ州選出上院議員が戦った1960年の大統領選挙の際、筆者は合衆国インディアナ州の公立小学校の2年生であった。

 アメリカの公立小学校の教室では、児童たちによる大統領選挙の模擬投票がある。担任の先生が、共和・民主の正副大統領選挙候補者の応援演説をする児童を教室の中から募って本格的な討論をさせるのだが、当時この学校の家庭では共和党支持が多く、ニクソンとヘンリー・ロッジJR.共和党副大統領候補の応援者は容易に決まった。民主党もテキサス出身の児童がリンドン・ジョンソン副大統領候補の応援に立つことになり、だれも手を挙げなかったのはケネディひとり。すると担任はなぜか日本から来た筆者にケネディの応援演説を指名したのである。数日の余裕を与えられて筆者は、同じ大学構内の住宅に住む日本人の博士課程のお兄さんの所に、応援演説の知恵を借りに行った。その内容は「ニクソンは次に金門・馬祖両島が攻撃を受けたら、米国は直ちに国共内戦に軍事介入すると言っているが、ケネディはより慎重だ。自分の国日本は台湾の隣にあり、第三次世界大戦につながる衝突は避けてほしいのでケネディを応援したい」といったものだったように記憶している。現代の台湾情勢を思うにつけても、忘れがたい思い出である。

 ちなみに教室の模擬選挙では共和党が圧勝したが、大人たちの大統領選挙では民主党の辛勝だったのは周知のとおりである。さて、上記の経験を通じて筆者が言いたいのは、日本の教室では公職選挙の模擬投票を実名で、しかも各党の主張を生で戦わせることなどまずない。それは日本の教員も教育委員会も、大人たちの政治に忖度してしまうからなのだろうが、民主主義の本場の国では、そんな忖度などしないということなのだ。

 さて、話は少し変わるが、この1960年は南北戦争開戦百年にあたり、教室や家庭ではその話で盛り上がった記憶もある。こちらのほうもインディアナ州が北軍側であったこともあり、学校は南部への忖度なしで「北軍が正しい」と教えていたような気がする。実際には教室には黒人の児童一人と東洋人の筆者が一人いるだけであとはみな白人の児童ばかり。しかも黒人の児童は子供たちの間ではいじめにあったりはしなかったが、保護者たちの間ではやや差別的扱いを受けていた(たとえば彼の誕生会の送迎にあたり、親の迎えの車は黒人居住区の中には入らない)記憶もある。だが、教室内ではともかく「リンカーンは黒人奴隷を解放した偉い大統領」ということになっていた。筆者はといえば、当時南北戦争への認識は「戦争ごっこ」の域を出ず、家庭内のトレイや北軍の兵隊人形、砲車の玩具などを動員して、ミシシッピ川に浮かんだ北軍側のモニター砲艦を模擬して遊んでいた記憶があるくらいである。しかし、「ゲティスバーグの演説」というのはなんとなく耳に残っていて、帰国後いずれかの頃に「人民の人民による人民のための政治」というのが民主主義の本質であると教えられ「そうかあれがそうだったのか」と、気が付いた次第である。

2025年4月30日

アメリカの大義

 I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.

私はアメリカ合衆国国旗と、それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家である共和国に、忠誠を誓います


 この稿の筆者が、客船氷川丸に乗ってアメリカ合衆国に渡ったのは、1959年の夏。小学校1年生の2学期が始まる頃であった。父はフルブライト奨学金のシニアスカラー(学生ではなく、日本人の若手の学者を米国に招聘する)で中西部の大学に赴任。私たち家族は父の後についての渡米で、大学の家族寮暮らし。筆者はと言えば、英語など一言も知らずに地元の公立の小学校に入学することになって、毎朝唱えさせられたのが、上記「合衆国旗への忠誠の誓い」であった。
 日本の公立学校とは違い、各教室の黒板の横には必ず星条旗が立っていて、子供達は朝その旗に正対して右手を胸に当て、先生の音頭の下「アイプレジョリージェンスムニャムニャア・・」という意味不明の呪文を称えるわけである。いくら小学校1年生だと言っても、筆者だってその儀式が、米国民が国家に忠誠を誓っているらしいことくらいはよくわかる。なので、自分は日本人だから、この呪文は称えなくてもよいのかと思っていたら、担任の先生から、「あんたもやるんだよ」と言われて、有無を言わさず儀式に加わることとなった。察するところ、担任の先生に悪意があったわけではなく、米国は移民の国で、各種の民族がさまざまな手続きや枠組みで合衆国の地にやってきているわけであるから、合衆国にやってきて、その地で生活している者は広い意味ではみんな合衆国民というわけで、国旗への忠誠を誓っても別に違和感はなかったのであろう。あるいは、当時は未だ第二次世界大戦が終わって十年と少ししか経っていない頃で、クラスの子供達みんなが戦勝国アメリカの国民である中で、筆者一人敗戦国日本の国民として肩身の狭い思いをさせてはかわいそうだという思いやりがあったのかもしれない。あるいは、アメリカ人には「何でもアメリカが一番」というややお節介がましい思い込みがあるので、敗戦国のアジア人種の子供にも、米国民らしき待遇を用意してあげるのが、彼らの善意の表れであると思ってしまうようなところがあったのかもしれない。
 ともあれ、この稿の筆者は、毎朝右手を胸に当て、日本人としてかすかな抵抗を感じながらも、星条旗に正対して「アイプレジョリージェンスムニャムニャア・・」と称えていたわけである。それと同時に、わずか十数年前の戦争でアメリカ合衆国(だけでなく、連合国側が)いかなる大義を持ってわれわれ枢軸側と闘い、そして勝利したかといったような理想も自然と会得し、身についていった。それは、言論や信仰の自由とともに、国家の制度に三権分立や民主主義という権力抑制装置(小学校低学年ではよくわからなかったが)を持ち、さらに「国際紛争において、力による現状変更をしない」という理想であったりもした。今日でも筆者は、上記のような大義は、たとえば日本が「大東亜共栄圏」とともに掲げたアジアの民の白色人種からの解放などというレイシズム的な理想に比較しても魅力のあるもの、そのために生命を賭すべきものであると思っている。
 最後に蛇足となるが、日本国憲法の前文を日本語で読むと(当然原作者は米国人なので)、憲法にふさわしくない悪文であるとする意見があるが、この稿の筆者はこれの英文を読んで、涙が出るほどの名文だと思っている。これも「アメリカの大義」をあらわす文章の一つだからなのだろうか。

2025年3月31日

褌と腰巻

先ず、江戸時代の中頃くらいまで、布というものは今よりはるかに貴重品であったことを書きたい。現代に住む私たちのように、毎年ユニクロあたりで新品の服を買って着るなどという贅沢は許されず、庶民は概ね古着屋で買った二、三着の服で一年を過ごしたようだ。それでも江戸時代になってからは、絹や木綿の布を着物に使う習慣が普及したが、それ以前は着物に用いる布は主として麻であった。その麻の時代に人々はどのような下着を用いていたのか、ということに興味があって、いろいろ調べてみたのだが、どうも正確な知識を提供してくれるサイトが見つからない。以下は、この稿の筆者の想像も交えて、おそらくこうであっただろうという記事と受け取っていただきたい。
 絹や木綿が普及する江戸時代まで、日本では明確に下着と言えるものはなかった。男性について言えば、長めの麻の布を腰の周りにぐるぐる巻きにして、それ一枚でパンツとズボンの両方の役割を果たした。女性について言えば、都会では一種の腰巻布を用いる場合もあったが、田舎ではそもそも上衣と下衣の区別はなく、かつ陰部を隠す、あるいは陰部を守るような布の存在はなかったと考えてよいのではないか。男女いずれも「ノーパン」がスタンダードな習俗であったようだ。
 さて、木綿の普及と共に、男性では六尺褌、女性では腰巻布という明確に下着の概念を持ったものが用いられるようになった。このうち、六尺褌について言えば、普及の始まりが江戸時代初期、全国の小中学校で用いられなくなったのが東京オリンピック後の1960年代と、首尾が比較的はっきりしている。日本文化の中で、ちょうどこの時期と一致するものに「武士道」というものがあって、この稿の筆者の頭の中では、六尺褌はなんとなく武士道の象徴のような位置を占めている。もちろん六尺褌の用途は武士に限らず広いものがあって、現在でもお祭りの神輿担ぎの折などには、六尺をキリリと締めた若い衆の姿を見ることが出来るし、一部私立学校の海浜学校や海辺の漁師さんなど海にかかわる人が、安全(溺れたときに船の上から救助しやすい、あるいは鱶避け)のために六尺褌を着用することは今日でも行われている。一方、明治の終わり頃徴兵制の日本陸軍の支給品としてより簡易な越中褌(三尺ほどの晒し布の片辺に紐がついているだけの褌)が採用されたことから、六尺褌に有力なライバルが生まれることとなった。たしかに軍服というものは洋装であるから、袴の中で嵩張る六尺褌よりも、ズボンの下でハンドリングが簡便な越中褌の方がより便利であったのであろう。「緊褌一番」を尊ぶ武士道精神の象徴が六尺褌であったとすれば、越中褌は徴兵制下の国民軍の象徴であったということも出来るのではないか。
 次に、女性の腰巻について稿を遷したい。腰巻も、はじめは下着ではなく、夏季に上半身部分を省略し下半身部分のみを紐で腰に巻いた衣装であった。が、後に肌に直接触れる布である「湯文字」も、腰巻の類とされるようになった。1932年12月日本橋白木屋において歳末商戦のさなかに火災が発生し、従業員など14名が犠牲となった。その後の記者会見で白木屋幹部が、犠牲者が多く出たのは女性従業員が、下着として腰巻しか身につけておらず、上階から飛び降りるのを躊躇したためではないかとして、今後はズロース着用を推奨すると述べたことから、ズロース、パンティなど洋式の下着を和装の下に着けることが普及したらしい。が、犠牲者は飛び降りることを躊躇したのではなく、煙に追われて窓から飛び降り、犠牲となったのが真実のようである。白木屋が洋式下着普及のために、上記のような伝説を広めたとするうがった見方もある。

2025年2月28日

学校

 学校というものの歴史は古いが、学校教育制度というものが出来て全国津々浦々に学校が配置されるようになった(これを普通教育制度と言ったりもする)のは、概ね近代国民国家の成立と期を一にしている。たとえばヨーロッパ中世の封建制の下では、学校のオーナーは君主か教会なのであって庶民も含めてどこでも誰でもが学べる場所ではなかった。英国革命、フランス革命などを経て国民国家が形成されるに及んで、全国的且つ衆庶も対象とする、学校制度が整備されるようになったのである。初等中等の学校制度の下では、国民の識字率の向上が図られると共に、四則演算や地理、歴史、自然に関する知識など基礎的な学力が等しく国民に授けられた。我が国ではこれらの学力を「読み書き算盤」と言ったりする。こうした基礎的な学力は、先ず男子にあっては国民を徴兵し、兵士として一律に軍に動員し、あるいは平時の工場労働者として勤労にあたらせるための標準的な能力であったし、女子においても、男子が兵営に動員された後に、家庭ではなく社会の隅々で男子の代わりの役割を果たすために必要なものであった。つまり学校制度下で授けられる知識能力は、なべて国民一律同型の「標準的」なものである必要があった。個々人が多様な能力をそれぞれに伸ばしたのでは、上記のシナリオは成立しなかったことを明記しておきたい。
 しかし一方で、あらゆる階層の国民に等しく基礎学力を授けるという営みには、きわめて啓蒙的な意味もあった。それまで社会的な知識を持たない故に、不当な労働に縛り付けられていた男子や、家庭において男性である父や夫に縛られてきた女性に、社会と自分との関係を見る目を開かせたのも学校が与えてくれる基礎学力であったと言える。この時代の学校を描いた様々の小説を読むと、貧しい家庭の子弟に知識を授けて自覚を促す教師の話というのが多くみられるのは、こうした学校制度の啓蒙的な意味に起因している。(山本有三「路傍の石」など)
 さらに、学校は単なる知識を授与する場であるだけではなく、人格を涵養したり(アミーチス「クオレ・愛の学校」)、あるいは国民としての愛国心を訴求(ド-ディエ「最後の授業」)したりする場でもあった。我が国においては、学校は地域コミュニティーの重要な機関の一つであって、村の諸行事には、村長とならんで小学校長、郵便局長、警察署長が列座するのが通例であった。また、校歌、制帽、部活動などをつうじて、学校は、生徒の将来における兵営や工場のモデル(祖型)としての役割も果たしていたのである。
 さて、この稿の筆者は、こうした学校の、国民一律同型の「標準的」な知識授受の機能(今日で言えば、学習指導要領に基づいた標準的な学力の養成)が、インターネットやAIの普及による「知の爆発」(学ぶべき知識の総量が爆発的に拡散する)によって無意味なものとなり、現代においては、従来の学校教育とは別の形の知へのアプローチが求められていることを述べたい。現在求められているのは、学校で知識そのものを授受するのではなく、真偽定かならぬ様々な情報に満ちあふれているインターネット社会の中で、どのように正しい知識に行き着くことが出来るか、その方法を学ぶことである。もちろん、その方法を学ぶために、ある種の知識の授受をモデルとした知へのアプローチの実習や演習というものは必要であろう。が、学ぶべきは知への接近の方法であって、個々人は会得した方法に基づいてそれぞれの知の世界を形成するのが、現代における新しい学校のあり方ではないかと思うのである。

2024年12月27日

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