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TOPATO通信良い人に出会えれば、評価は下がります! 5125号

ATO通信

5125号

2002年10月30日

高木 康裕

良い人に出会えれば、評価は下がります!

相続税の土地評価が、一般論としては路線価を基に行われることは、広く知られていることでしょう。しかし、路線価によらず鑑定評価を利用することもよくあること。そこで今回は、路線価評価の限界と、どんな時に鑑定を利用すべきか、実務の世界のご紹介です。


1.路線価は法律に非ず

 財産の評価は『時価』で行うこと、これは相続税法という法律です。しかし、路線価で行うべきとは規定していません。税務職員が遵守すべき、いわゆる社内規定である通達の中で、路線価が時価だと言っているに過ぎません。つまり、他に時価であることを立証できるものがあれば、当然それも認められ、鑑定もその手段の一つなのです。


2.路線価評価の限界

 路線価評価と言うより、正しくは財産評価基本通達と言うべきでしょう。財産の細かな評価方法の規定集が税務署には用意されています。その中で土地については、間口、奥行き、形状、接道状況等により評価額が増減される仕組みです。なかなか工夫はしてあるものの、個別事情によっては実態と合わないものがいくつかあるのが現実。その場合には、この評価通達を採用せず、鑑定を利用する方が得策なのです。いくつか具体例を挙げてみましょう。


①無道路地

 図Aの斜線部分土地イのように、道路に接してないような状況です。他人の土地を通らなければ、利用ができない土地が何と土地ロの6割以上の評価とされてしまうのです。道路に接していなければ、単独では建物も建てられないにもかかわらず、です。
 実際には売れもしない価額で評価され、税金まで課税されるのに、最大4割引で我慢すべきなのでしょうか?


②がけ地

 これは説明するまでもないでしょう。基本的には使えない、がけ地部分の面積割合やがけ地の向きにより、最小で53%評価。 がけ地部分はほとんど使えないのに、です。


③不整形地

 図Bのように使い難い変形した土地のこと。点線のような本来あるべき整形な土地を想定し、斜線の部分の割合により、これも頑張って60%評価。でもこんな土地、どうやって使ったらいいのでしょう?くどいようですが、評価されればそれに課税されるのです。


④接道義務を満たさない土地

 極め付けが図Cです。土地というのは最低2mは道路に接していないと、法律上、建物が建てられないのです。つまり、1.5mの接道状況では、利用価値はほとんどなく、売却できるとすれば、隣地の所有者くらいでしょうか?ところが税務署はこの実態を理解していません。1.5mなら、差額50㎝分を購入するのに必要な資金分を評価額から控除すれば済むと言うのです。何たる無知!差額50㎝分を必ず買えるかどうかも解らないのに… あまりに殺生です!


3.難しい”鑑定士”選び!

 上記のような状況なら、場合によっては鑑定評価で限りなくゼロに近い価額も夢ではありません。それが鑑定の魅力です。が、この鑑定士選びが難しい。ある事案で鑑定士A氏に相談したら評価通達と大差なく、鑑定士B氏は大幅に下がると!基より唯一無二の評価額など存在せず、鑑定の考え方も色々です。 また、鑑定に基づく申告に対しては税務署も鑑定を取り、その適否を判定です。迷った挙げ句、否認されるリスクを承知でB氏の鑑定で申告をし、事なきを得ました。もしも、A氏を信用して高い税金を払っていたら…人との出会いが人生の総て。そう言えば、医者、弁護士、そして税理士、みな然り。『あなたに出会えて良かった』と若い女性のみならず、総てのお客様から言われる事が筆者の願いです。

※執筆時点の法令に基づいております