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ATO通信 5312号

"家なき子"はこう変わる!

    (2018年5月31日更新)   執筆者:阿藤 芳明

  “家なき子”はこう変わる!  "家なき子"と言うのをご存じでしょうか。と言ってもエクトル・マロの原作で、捨て子のレミが苦労を重ねる物語のことではありません。相続税において最も重要な特例の一つである『小規模宅地の評価減の特例』に登場する相続人の一人のことです。この特例の適用を受けるために、色々な工夫をする方が多かったためか、当局がこれに目を付けての改正がなされたのです。
 

 
   

1.居住用敷地に対して適用する場合の要件

 この特例はご自宅敷地や事業用の店舗・事務所等の敷地、さらにはアパート・マンションや駐車場等の貸付用の土地等がその対象となります。それぞれに面積の制限はありますが最大で80%も減額される、相続税において非常に重要な特例です。居住用の敷地についてこの特例を適用する場合、面積にして330㎡までが原則的な評価額の80%引きとなるもの。相続税の申告が必要な方に、ご自宅の土地・建物を所有されている方が多い事もありますが、数の上ではこの特例の中でご自宅敷地について適用されるケースが最も多いようです。さて、居住用の土地については、大きく(1)土地についての要件と、(2)それを相続する側の相続人の要件の2つの要件から成り立っています。(1)については、被相続人が所有していた土地のうち、ⅰ)被相続人、又はⅱ)被相続人と生計を一にすると言う言い方をしますが、いわゆるお財布が同じ相続人の居住用建物の敷地であること、がその条件です。問題はもう一つの相続人の要件です。誰が相続すれば適用を受けられるのかと言うことですが、(ア)配偶者(イ)被相続人と同居の親族、そして次が結構難題で、(ウ)上記(ア)も(イ)もいない場合に限って、いわゆる"家なき子"がその対象となります。"家なき子"とは、一言で言えば借家等住まいで持ち家に住んでいない親族のこと。それも親族本人のみならず、その配偶者を含んで相続の開始前3年以内に持ち家に住んでいない事が条件となっていました。


2.敢えて"家なき子"にする工夫

 非常に有利な特例のせいか、中には無理やりに適用しようと外見だけを繕っているケースも散見されます。例えばご夫婦単位で考えた場合、一般的にはご主人が先に亡くなることが多いのではないでしょうか。ご夫妻の最初の相続を一次相続と言う言い方をしますが、その場合には配偶者がご自宅敷地を相続すれば特例の適用があります。同居の親族が居れば、二次相続を考えてその方が相続すれば、一回飛ばしの相続でこの特例を適用できることにもなります。
 問題は配偶者も同居の親族もいない場合です。一次相続の時は配偶者の相続で適用ができたとしても、二次相続に当たっては、同居の親族が居なければ、(ウ)の家なき子に該当させるしかありません。しかし、その相続人が既に持ち家に住んでいれば、特例の適用ができないのです。
 そこで、そのような場合には苦し紛れに色々な事を考えて実行する方が多かったのです。例えば、法人を設立し建物だけをその法人に売却してしまうのです。そして賃借人として法人に家賃を支払っていれば、外見上は従来と同じ住まいに従前のとおり住み続けることも可能です。そうすると、仮に土地はそのまま保有していても、規定上は"持ち家"に住んでいなければよいので、家なき子として特例を受けられることになるからです。
 また、そもそも建物の相続税法上の評価額は、固定資産税の評価額を基に計算することになっています。この固定資産税評価額は、建築価格と比較してかなり低額になっています。個々の建物により若干の相違はありますが、概ね建築価格に対し鉄骨鉄筋系で60%程度、木造に至っては35%程度と言ってもよいでしょう。そこで、その相続人の子、つまり被相続人から見ると孫に対して建物だけの贈与を行っても、相応の贈与税で贈与ができる場合も多いのです。このような贈与によって、その相続人は実際の相続時には"家なき子"になれると言う仕組みです。


3."家なき子"を利用した節税封じの改正

 このような無理やりに"家なき子"を創出する対策を、課税当局は苦々しく思っていたようです。そこで、家なき子に対して、次のような改正をして規制を始めたのです。一つは従来相続人とその配偶者の持ち家に限定していたものを、対象者を拡大しました。3親等内の親族、関係する同族会社・一般社団法人等の有する家屋に相続開始前3年以内に居住していたものも適用させない、というもの。もう一つは、相続開始時に居住していた家屋を(相続前に)所有していた者を特例の対象から除外する規定で、これには何年前と言う期限がありません。これらの改正により、従来の同族会社への売却や親族への贈与によって、"家なき子"になる方策は完全に塞がれてしまいました。今後この特例を受けるためには、家を持たず他人の建物に借家住まいすることが強制されることになってしまったのです。一部経過措置もありますが上記改正は平成30年4月1日以降の相続について適用です。"家なき子"にはくれぐれもご注意を。
 
 
     
 

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