(1)昭和37年2月28日最高裁判決
義務者が国に対し次のような訴えを起こしました。 |
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イ
ロ
ハ |
義務者は、国の徴税事務に協力するために私有財産を侵され、これについて何の補償も受けていない(憲法29条「財産権」違反)。
源泉徴収制度は、サラリーマンと事業所得者とを差別し、また義務者と一般の国民とを差別している(憲法14条「法の下の平等」違反)。
源泉徴収制度は、義務者に強制労働を課すものであるから、憲法18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」に違反する。
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最高裁は、この主張に対し
・源泉徴収制度は、国の税収を確保し、徴税手続の簡便化、徴税費用と労力の節約に資することはもちろん、サラリーマンにとっても申告・納税の煩雑な事務から免れることができ、義務者も給与の支払の際に所得税を天引きし、翌月10日までに納付すれば良いのであるから、公共の福祉の要請に応えるものであると言わざるを得ないとして、義務者の主張を退けました。 |
(2)昭和60年3月27日最高裁判決
サラリーマンが国に対し、次のような理由により、所得税は憲法14条「法の下の平等」に違反していると主張しました。 |
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イ
ロ |
事業所得の必要経費について実額控除を認めているが、給与所得には認めていない。
給与所得の捕捉率が事業所得等の捕捉率より格段に高い。
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最高裁は、この主張に対し
・サラリーマンの数は膨大であり、必要経費の実額控除を認めると技術的、量的に対応が難しく、税務執上混乱を招くことが懸念される。このような弊害を防ぎ、租税の徴収を確実・的確かつ効率的に実現することは租税法の基本原則である。また、捕捉率の違いについては適正な税務行政により是正されるべきものとして、サラリーマンの主張を退けました。
なお、現所得税法では、確定申告により給与所得に特定の支出(6種類のみ)を条件付き(勤務先の証明が必要)で必要経費の実額控除を認めていますが、費目が限定的で手続きが煩雑なため利用者は少ないようです。 |