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TOPえ〜っと通信親子で建てる二世帯住宅 225号

え〜っと通信

225号

2020年1月15日

野口 晋吾

親子で建てる二世帯住宅

 親が所有する土地の上に子供が二世帯住宅を建築するときに、税務上の特例を適用できる場合があります。今回は、親から子供への財産の承継という視点から、親世帯部分と子世帯部分に分かれた二世帯住宅を建築した場合に、どのような特例を適用できる場合があるかについて、ご説明致します。


1.住宅取得資金の贈与の特例(贈与税)

 親から住宅取得資金の贈与を受けたときは、一定の金額まで贈与税が非課税になる「住宅取得資金の贈与の特例」(以下、「住宅資金贈与特例」という。)があります。
 一定の要件を満たし、この特例を適用できた場合に贈与税の非課税になる金額は、請負や売買等の契約締結日、住宅の性能ごとに異なり、以下の通りとなります。

 なお、要件のうちポイントとなるところは、住宅の登記簿上の床面積が、50平方メートル以上240平方メートル以下であることです。二世帯住宅の場合の床面積の判定は、登記方法により異なり、以下のように判定します。
(1)区分所有登記していない場合 → 建物全体の床面積の合計
(2)区分所有登記している場合  → 子世帯部分の床面積
 (1)の場合は、建物全体の床面積が240平方メートル以下であり、かつ、子世帯部分の面積が全体の床面積の2分の1以上となる必要があります。一方、(2)の場合は、区分所有登記の部分の面積となり、子世帯部分の床面積が240平方メートル以下であればよいことになります。
 また、この特例を適用できる贈与とは、あくまでも建築資金の贈与であるため、住宅ローンのみで建築し、その返済のための資金の贈与は、この特例の適用を受けることができませんので、ご注意ください。


2.住宅ローン控除との併用(所得税)

 建築資金の一部を親からの贈与を受け、不足分を銀行からの借入による場合は、「住宅資金贈与特例」の適用を受けつつ、「住宅ローン控除」の適用も受ける事ができます。
 親からの贈与を受けた金額と銀行からの借入金額が購入代金を超えてしまう場合には、超えてしまった金額は住宅ローン控除の対象とならないため、注意が必要です。


3.共働き夫婦が二人で適用を受ける(贈与税と所得税)

 共働きのご夫婦がご夫婦共有名義で建築するときに、それぞれの親から建築資金の贈与を受けた場合は、ご夫婦それぞれが「住宅資金贈与特例」の適用を受ける事ができます。
 また、建築資金の不足分をご夫婦それぞれが銀行からの借入により建築する場合は、上記2「住宅ローン控除」の適用を受ける事もできます。
 特例の適用を受ける金額は、それぞれの負担金額に応じて異なります。


4.住宅取得資金贈与は加算されるのか?(相続税)

 相続があった場合に、被相続人となった親からの暦年贈与のうち相続開始前3年以内の贈与は、贈与税が課税されていたか否かに関係なく相続税の課税価格に加算します。相続時精算課税の適用を受けた贈与の場合は、全てを加算します。
 しかし、「住宅資金贈与特例」により贈与税の非課税となった金額は、加算されません。そのため、非課税の適用を受けた金額については、税金がかからずに、親から子供へ承継されることになります。


5.小規模宅地等の特例の適用(相続税)

 「住宅資金贈与特例」の適用を受けた子供が、相続により、二世帯住宅の敷地となっていた330平方メートル以下の土地を相続することになりました。「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができる場合は、土地の評価額が330平方メートルまでは80%減額されることになりますが、二世帯住宅の場合は、登記方法により以下の部分が減額の対象となります。

  従って、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、区分所有登記していない方が、有利になります。
(1)区分所有登記していない場合  → 土地の全て
(2)区分所有登記している場合   → 被相続人と子が生計が一である場合のみ、子世帯部分に対応する部分の土地


6.まとめ

 「住宅資金贈与特例」を受ける場合の床面積の上限は240平方メートルですから、大きな二世帯住宅を建築する場合は、子世帯部分につき区分所有登記とする必要があります。
 一方、相続の際に「小規模宅地等の特例」の適用を受けるためには、区分所有登記は不利になります。
 親から子供への財産の承継として、どちらの特例を受けた方が有利になるのか、または、建築予定の二世帯住宅がどちらの特例も受けることができるのか、種々検討したうえで、二世帯住宅の登記方法を決定されると良いと思います。

※執筆時点の法令に基づいております