5283号
税務調査はいつ来るのか?
税務調査の手続きに係る税法の改正等で、税務署は手間がかかるようになり、昨今の調査件数は大幅減少。納税者にとっては嬉しい話です。が、申告書を提出した以上、それでも避けられないのが税務調査。では、どの時点で調査事案は選定され、実際に我が社、我が家に来るのはいつ頃なのでしょう。気になる調査の時期について考えてみました。もちろん、署に依って若干状況は異なるため、あくまで一般論としてご理解下さい。
1.所得税は5月の連休明けから
話を申告件数が税目の中で最多の所得税から始めましょう。今やコンピューター全盛の時代です。電子申告をせず紙の申告書で申告しても、それが直ちに国税庁自慢のKSKシステムで入力、管理。3月15日の確定申告が終了すると、間髪を入れずにデータの確認が可能です。既に入手済みの様々な個人に係る調査資料と突き合わせ、数年間の申告状況の対比から、怪しげな事案をピックアップ。
ただ、昨今はデータに頼り過ぎ、脱税の匂いを嗅ぎ分けて選定する職人気質はなくなっています。5月の連休明けには調査を開始する一方、簡易な計算誤りや税法の適用誤りは、修正申告を勧めて是正させます。7月10日前後の恒例の人事異動を前に、ほぼその年に調査すべき事案を選定。異動後は直ぐに本格的に調査を開始し、一般部門は年末までが調査の最盛期です。大口・困難事案を担当する特別国税調査官(通称、特官)はその後も確定申告時期以外はずっと調査を継続ですが。
2.法人税は6月に粗選定、年中調査
個人と異なり、法人は会社によって決算、申告時期が異なります。従って、1年中が調査の時期。ただ、そうは言うものの、調査件数が減ったため、とにもかくにも確実な件数を確保する必要があるのです。そのため調査事案と件数を異動前にある程度選定し、予定しておきます。粗選定とでも言えるでしょうか。その上で、従来通り毎月上がってくる決算・申告書を精査し、追加、差し替え等を行っていくのです。
さて、かつては異動前の6月に1年分を概ね選定しておき、決算期と無関係に調査が行われることは原則としてはありませんでした。選定は毎月行われていたのです。申告書を提出すると、申告審理と言って申告書上の誤りや、計算誤りをチェックし、調査部門に渡るのが約1~2ケ月後。調査部門はその中から毎月調査事案を選定し、調査に着手すると言うやり方だったのです。この方法では何が問題かと言うと、決算月によって調査が実施される時期が概ね決まってしまうことでした。前述の日程でいけば、申告から2~3ヶ月後が調査時期になるでしょうか。一見するとこのこと自体に問題は無いように思われます。
しかし、調査実績が調査官の勤務評定に結びつく事が問題なのです。勤務評定は毎年3月末までの勤務成績で行われます。現実にはそれ程単純ではないのですが、とりわけ法人課税部門の場合、調査で実績を残せば評定も良くなると調査官達は思っているのです。そのため3月末までの調査は必死。逆に4~6月は件数合わせの消化試合、気楽なものです。つまり、逆算をして会社が4~6月に調査が行われるような決算期にしておけば、調査官は本気モードにならずに済んだ???
3.相続税は遅れ気味?
ご存じのとおり、相続税の申告期限は原則的には亡くなってから10ケ月。人によって異なります。申告書が提出されれば、まず初めに行うことは金融機関に対しての残高や普通預金の動き等の照会です。被相続人だけではありません。相続人も含まれるため、いわゆる名義預金と言われる名義は家族名義でも、被相続人のものと想定される預金探しをするのです。この回答が金融機関から返って来るまでは、絶対に税務署は動きません。
回答がきても、その都度一つ一つ選定作業を行っていたのでは効率が良くありません。ある程度の目星は着けておきながらも、7月の異動前に一気に選定、異動後には直ちに調査に着手できる態勢を整えます。若干の準備もあるでしょうが、8月から11月いっぱいは相続税の調査を予定しなければなりません。つまり、もし8月に申告書を提出しても、その年の内に調査があることは通常はないのです。この例なら翌年の8月から11月となっていました。しかし、冒頭にも述べたように、今は調査手続きに時間がかかるせいでしょうか。さらに1年後の8月から11月になるケースも多くなっています。文字どおり、天災は忘れた頃にやって来ます。
しかし、これは一般的な方の相続の場合です。個人課税部門にも法人課税部門にもありますが、相続税を扱う資産課税部門の特官。ここは大口・困難事案を扱う部署です。資産家、富裕層の方々はここで管理されています。亡くなる前から目を付けられていますので、選定段階から注目され、調査も確定申告期間を除き、いつやって来ても不思議はありません。資産家の宿命とは言え、税務署は富裕層であるあなたを狙っています!
2015年12月24日