5397号
金の売却、支払調書と確定申告
ここ最近、金価格の相場上昇が著しいです。つい数年前までは1グラム当たり数千円であった記憶があり、相場観としても1万円未満だったと思います。それが、いまや1万5千円を超えるまでになりました。相場はまだ上昇しそうな気配もありますが、金の売却で利益が生じたのであれば確定申告を忘れずに行いましょう。
1. 金売却時の支払調書
最近の金価格は上昇しており、相場がとても高くなっています。そのような背景もあり、相続によって金を取得した方など、金を保有している方の中には今のうちに売却をしようと考えている方もいると思います。
金の売却金額が200万円を超える場合、買取業者には支払調書を提出する義務が課せられており、税務署に売却した情報が通知される仕組みになっています。そこで、この支払調書の内容をもう少し確認してみましょう。
売却金額が200万円超という判定は、1回あたりの金額です。したがって、1回の売却金額が200万円以下の場合には支払調書は提出されません。例えば、150万円の売却取引が2回の場合には対象外です。
提出の対象範囲は金地金等であり、「金地金、白金地金(プラチナ地金)、金貨、白金貨(プラチナコイン)」の売却です。したがって、銀地金、貴金属製品やジュエリーなどは支払調書の提出対象外というわけです。
2. 支払調書の対象外であっても
税務署への支払調書の提出対象外であるからといって取引の内容が残らないだろうと考えるのは間違いです。
金などの取引内容をチェックしたいのは何も税務署だけではありません。宝石・貴金属等取扱業者は、犯罪収益移転防止法により、いわゆるマネーロンダリングやテロ資金供与等の防止対策として本人確認を行う必要があります。また、金地金等の売買を行っている業者は通常は古物営業法に基づく古物商や、質屋営業法に基づく質屋の登録業者のはずです。これらの業者は台帳を設けて取引内容を記録する義務がありますので、少額の売却であったとしても取引相手の氏名・住所などが記録されます。つまり、取引情報自体は買取業者側でしっかりと管理されており、税務署はその内容を確認することができるのです。
3. 譲渡所得が50万円超なら確定申告
金地金等の売却による利益は、所得税では総合課税の譲渡所得という区分に該当します。利益が生じた場合には、原則として確定申告を行って税金を納めなくてはなりません。この譲渡所得の計算は、金地金等の所有期間に応じて次のように計算します。
① 所有期間が5年以内の場合 売却金額 -(取得費+譲渡費用)- 最大50万円 = 課税される譲渡所得 |
② 所有期間が5年超の場合 ( 売却金額 -(取得費+譲渡費用)- 最大50万円 )×1/2 = 課税される譲渡所得 |
上記計算式のなかの「-最大50万円」は特別控除額といい、①と②あわせて差し引ける合計の年間額です。つまり、年間50万円超の利益が生じた場合には、課税所得が算出されるというわけです。逆に利益が50万円以下ならば確定申告をしなくても弊害はありません。また、所有期間が5年超の場合は課税対象額が1/2になっています。税負担面からいえば、5年超所有してから売却したほうがかなり有利といえます。
4. 金製品でも30万円超なら申告対象
金製品や貴金属などを売却した場合にはどうなるのでしょう。金相場が高騰していることから、これら金製品等の売却金額も相当高くなっているはずです。金地金等の売却ではないために支払調書の対象外、そのため確定申告は必要ないという噂を聞くことがありますが、それは正しくは間違いです。
生活用動産であったとしても、貴金属や宝石、書画、骨董などで1個または1組の価額が30万円を超えるものは譲渡所得の課税対象になっています。ただし、上記3の計算式で見たように50万円の特別控除枠がありますので、利益が50万円までであれば申告しなくても問題ありません。金地金の利益が40万円で貴金属の利益が20万円の場合には、利益が合計60万円となります。他の所得状況によっては、確定申告で税金を納める必要があるというのがルールです。
5. 取得費の確認が大事
税務署に支払調書が提出されるのか、それとも提出されないのか、自動的に情報収集される範囲は決まっています。ただし、提出対象外だからといって確定申告が必要でないとは限りません。金地金等や金製品等の売却では、どうしても売却金額そのものに目が行きがちです。
しかし、税金を考える上では利益である譲渡所得が生じるか否かがポイントなのです。相続で取得した金地金等であれば、いつ頃いくらで取得したものか、取得費は分かりますか?何も分からなければ売却金額の5%を取得費とするしかありませんが、ある程度の推測でも良いので調査をしたでしょうか。金地金等であれば刻印などで製造年を調べることができるため、取得費を推測する方法のひとつになります。売却時の取得費はいくらなのか、これを事前に把握しておくことが大事です。
2025年6月30日