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TOP今月の言葉未来の学校 その2 2021年11月

今月の言葉

2021年11月1日

未来の学校 その2

 未来の学校では、始業式の日に、学校が各学業科目のDVDをくれる。その中身は、1回55分ずつのコンテンツが、学習指導要領で決まっている授業時間数の約半分入っている。生徒はそれを学校が決めた時間割に沿って、毎日50分×3本見ることが推奨されている。DVDの中には体育、美術、音楽も少しだけあるが、実技は学校の授業の中でやることになっているので、掲載時間数はほかの科目より少ない。また、DVDコンテンツの中には一定回数ごとのテストをゲーム感覚で楽しめるようなものもある。生徒は、DVDを、自宅のテレビ、デスクトップパソコンなどで見ることを推奨されているが、そうした道具を持たない生徒や、自宅が勉強するのに適さない環境にある場合のために、一定数のブースが学校にあり、生徒はそのブースでDVDを再生することが出来る。もちろんDVDだけでなく、スマホやタブレット端末などを使って、ネットからコンテンツをダウンロードすることも可能だ。

 さて、未来の学校では、生徒は午前・午後二部制で登校する。学習指導要領で決まっている授業時間数の残りの半分が、対面の授業時間だ。だが、対面の授業時間では、DVDの内容のおさらいなどはあまりしない。普通の授業時間は、基本的に「知性の涵養」のための時間なのだ。DVDで生徒が見たコンテンツを前提あるいは契機として、生徒が調べて発表したり、話し合ったりするのを、現場の教員がリードしながら授業を進める。野外観察、フィールドワーク、実験、体育、音楽、美術などの実技など、生徒が体や手を動かすコンテンツもたくさんある。

 未来の学校では、宿題をあまり出さない。が、対面の授業の中では、時折レポートを書いたり、作品を創るなどの課題が出され、レポートなどはネットワークを通じて提出することも出来る。

 しかし、現場の教員と生徒とのふれ合いは、授業時間にとどまらない。先生は、生徒が親以外で接するもっとも身近な大人であることが多く、先生は生徒が今持っている興味や悩みを聞き、適切な助言をするために、過去よりも多くの時間を費やさなければならない。そのために、動画が「知識の伝達」を肩代わりしてくれる分、カウンセリングやコンサルテーションの会話時間、言わば生徒とふれあい会話する時間を多くとることが求められる。一方、未来の学校では、生徒を学校の中に閉じ込めて、しつけ、遊び、健康の維持、社会性を身につけさせること、友達作りなどをすべて担ってきた過去の学校に比較すると、やや学業寄りのポジションにシフトする。生徒は学校の外でも、同世代の友人を作る。一つの大きな変化は、学校から部活動が全廃されたことだろう。スポーツ関係の部、音楽演劇などのクラブなどは、存在するが、すべて学校管理ではなく、地域のNPO法人が運営している。指導者は教員ではなく、地域のNPO法人に所属する元スポーツ選手や、元教員であったりする。スポーツの練習場などは、いくつかの学校のグラウンドをNPO法人が借りて、A校はサッカー、B校は野球などと配分し、生徒は放課後隣の学校に練習しに行くこともままある。その反面、従来選手が少なくて学校になかったスポーツ部(たとえばゴルフ部や弓道部、空手部)、文科系の珍しい部(たとえば天文部とかジャズバンドとかミュージカル部、囲碁部、将棋部)なども地域全体でNPO法人が、生徒達の多様な興味に合わせて提供してくれる。こうなったのは少子化が契機だが、定年後元気な人々に地域サークルの指導者として活躍の場を与えるという理由でもある。

 さて、あなたが生徒だったら、そんな未来の学校へ行ってみたいですか?