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TOPえ〜っと通信同族間における金銭の無利息貸付け 297号

え〜っと通信

297号

2026年1月15日

顧問税理士 秋山友宏

同族間における金銭の無利息貸付け

令和6年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに金利の引上げを行い、これにより日本は「金利のある世界」への転換を図ることになりました。日本銀行の金融機関に対する貸出利率の上昇は、税務において、別の意味でリスクが増加したように思われます。

 今回は、同族(親族)間で行われる無利息による金銭消費貸借(以下「無利息貸付け」という。)に関する税務について取り上げています。

1.同族会社の行為計算否認による利息収入の認定

 個人(株主等)が親族経営の法人(以下「同族会社」という。)に金銭の貸付けを行うとき、必ずしも営利を目的としないこともあって無利息とすることも多いのが実情です。この場合、貸主は利息を受けないのですから、収入を計上する必要はありません。

 しかし、その例外として、所得税には「同族会社の行為計算否認」の規定が設けられています。個人株主やその親族が同族会社へ無利息貸付けを行なったこと等により、その株主等の所得税の負担を不当に減少させたと税務署長が判断すると、貸主に対し利息収入を認定できることとされているのです。とはいえ、この規定が適用されるのは、極めて多額の無利息貸付けであり、それも無担保・無期限などの場合ですから、適用されるのはごく僅かのケースに限られます。なお、同族会社の経営状況の悪化により役員等が経営責任を果たすために行うなど、無利息とする合理的な理由があればこの規定が適用されることはありません。

 最近の事例では、同族会社が株式購入資金として銀行融資を受けた債務約23億円の返済資金として、役員である親族がその同族会社に対し無利息貸付けを行ったところ、当初の銀行融資の利率に準じた利率による利息収入を認定した課税処分を適法とした裁決があり(国税不服審判所令7.3.7裁決)、そのほかにも類似の裁決が2件あります。

 金利のある世界となり、今後は融資利率の引上げが予想され、それに伴い認定利息額が増大し、所得税負担の減少額とされる金額が増加することになります。利息を受け取っていないにもかかわらず課税される点、融資を業とする銀行と概ね同じ利率により認定利息が計算される点について、個人的には疑問が残りますが、東京高裁が同族会社への無利息貸付けについて利息を認定した課税処分を適法とした事例があり(東京高裁 平11.5.31判決)、今後も類似の課税処分が行われることが懸念されます。

2.親族間の無利息貸付けに伴う経済的利益

 上記1.は同族会社との取引でしたが、個人間の無利息貸付けは、どのように取り扱われるのでしょうか。

 親子間の場合、金銭の貸借が書面や口頭により行われたとしても、子は一向に返済せず、親も催促しない状況が継続すると、それは貸借という形式を採っていても、実質は贈与と判断されるリスクがあります。貸借であれば、まずは、返済をしている事実が必要です。

 個人間の無利息貸付けでは、貸主に利息収入が認定されることはありません。しかし、借主は、利息相当額の経済的利益を貸主から受けたことになり、贈与とみなされ贈与税の課税対象とされる場合があります。もっとも、贈与には年間110万円の非課税枠がありますから、受けた利益がその範囲内で、他に贈与を受けた財産と合計しても110万円以下であれば問題になることはありません。

 かなり前の話になりますが、父が子に対し事業資金として無利息貸付け(約1.25億円~3.49億円)を行ったところ、5年間で合計約6,317万円の贈与とされた事例がありました(国税不服審判所 平元.6.16裁決)。贈与額の計算に用いられた貸付利率ですが、無利息と取り決めていたことから、民法の法定利率(当時は年5%)が適用されました。現在(令和8年3月まで)の法定利率は年3%ですから、この裁決の考え方からしますと、例えば、1億円を無利息で貸し付けた場合、その3%の300万円の贈与とされる可能性があります。

3.知人間における金銭消費貸借のリスク

 友人、知人、親戚などから金銭の借用依頼を受けたため、相手側の事情を察して利息付きの金銭消費貸借契約を締結したとします。返済が順調であればよいのですが、滞ってしまうケースも多いように窺われます。

 利息は未収であっても雑所得として所得税の対象になります。貸主に相続が発生すると、貸付金の残額が相続財産として相続税の対象になることに加え、相続人にとっては、被相続人の知人等に対して返済を求めるという厄介な状況になります。返済が滞るということは資金的にも苦しい状況でしょうから、実質的な貸倒れとして相続財産に計上しなくてよいようにも思われますが、借主が破産宣言などを受けておらず、苦しいなりにも生活を継続していると、貸倒れは認められないことが多いのが実情です。知人等への金銭の貸付けは、将来を見据えた慎重な判断が求められます。

4.おわりに

 今回は、金銭の無利息貸付けを中心とした税務についてのお話でした。同族会社の行為計算否認規定が適用されるのは、極めて多額の無利息貸付けの場合ですが、親族間や知人間の金銭消費貸借については、税務上、問題となるケースが多いと思われますので、参考としていただければ幸いです。

※執筆時点の法令に基づいております