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え〜っと通信

299号

2026年3月16日

税理士 野口晋吾

未分割の相続税申告

 相続税は、申告期限までに遺産分割がまとまらないと、いろいろと不利なことがあります。未分割の相続税申告について考えて行きたいと思います。

1.未分割時における相続税の計算方法

 相続税の計算は、はじめに相続や遺贈等で取得した財産を基に算定した各人の課税価格の合計額から相続税の総額を計算し、次にその相続税の総額を各人の課税価格に応じて割り振って、各人ごとの相続税が決まります。未分割の場合の相続税は、各人が法定相続分の割合で相続財産を取得したものとして申告・納税をしなければなりません。
 また、相続税の計算上、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の特例」は、対象財産が分割されていることが要件とされていますので、未分割のままでは一旦使えません。したがって、未分割での相続税申告では、分割後よりも多くの相続税の総額を支払う必要があります。いわば仮計算の状態での申告をすることになります。

2.期限までに申告しないとペナルティがあります

 このように相続財産が未分割であっても、課税価格の合計額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を越える場合には、相続税の申告・納税を行う必要があります。申告期限は分割の有無に係わらず相続開始から10カ月以内です。仮に、相続人間で遺産分割に争いがあり、財産管理している相続人から被相続人の相続財産の内容を教えてもらえないような場合であっても、申告しないまま申告・納税期限を過ぎると最終的には無申告加算税と延滞税がかかりますので、ご注意ください。

3.「申告期限後3年以内の分割見込書」

 遺産分割がまとまったときに「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の特例」の適用を受けるためには、未分割による相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります。
 なお、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出した場合において、裁判で遺産分割が争われているなどのやむを得ない事情があるために、申告期限後3年を経過する日までに分割できないときは「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、申告期限から3年2カ月以内に税務署に提出する必要があります。

4.延納の活用

 未分割の場合は相続財産が誰のものになるかが決まっていない共有状態ですから、基本的に預金の解約や不動産を売ることができないことに加え、担保を提供してお金を借りることもできません。相続税は一括納付が原則ですが、相続人の手持ちだけでは納税資金を用意できないと、滞納期間中は延滞税の対象となるほか、滞納が続くと税務署による差押えが開始されるおそれがあります。
 そのような場合には、延滞税よりも低い利率の利子税はかかりますが、一定の要件を満たすことにより延納とすること(年賦で納めること)ができます。この延納の許可を受けるには、①相続税が10万を超えていること、②金銭で納付することが困難であること、③延納税額に相当する担保を提供すること、④一定の期日までに延納申請書と担保提供関係書類を税務署に提出することが要件となります。
 基本的に未分割のままでは相続財産を担保提供できませんので、相続財産を全部分割することはできなくとも、一部を分割し、納税資金に充てる又は担保提供することも、相続税の納税資金を確保するための一つの有効な手法です。

5.遺産分割がまとまったら

 遺産分割がまとまったら、その分割内容に基づき「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の特例」を適用して各人の相続税額を計算します。その結果、仮計算状態の当初申告における相続税額が多過ぎる方は還付を受けるための「更正の請求」、不足しており追加納税しなければならない方は「修正申告」をすることができます。
 遺産分割を原因とする更正の請求は、原則として分割が確定してから4か月以内に行う必要があります。遺産の一部分割の場合でも同様ですから、段階的に分割する場合には一部分割が確定した都度4か月以内に更正の請求をしなければなりません。期限を過ぎてしまうと還付を受けることができなくなってしまいますので、ご注意ください。
 当然ですが、遺産分割の結果、相続人の1人が還付のための更正の請求をした場合には、当初申告における納税額に不足が生じる方は税務署から修正申告書の提出を求められます。
 なお、遺産分割を原因とする更正の請求であっても、「配偶者の税額軽減」を受けるためのものは、①分割確定から4か月以内と②相続税申告書の提出期限から5年を経過する日とのいずれか遅い日まで更正の請求をすることができます。

6.まとめ

 未分割の相続税申告は、当初申告で特例の適用を受けることができないため、相続税の総額が大きくなりますから、納税資金の用意をすることが大変です。納税資金を用意するため相続財産を売却する際、分割が遅れたために譲渡所得の特例を受けることができないケースもありますので、ご注意ください。未分割の相続税申告は手続きが煩雑で困ることが多いですが、相続人の方に不利になることがないように、無事に遺産分割がまとまることを願っています。

※執筆時点の法令に基づいております