お役立ち情報

COLUMN

TOPえ〜っと通信相続空き家の3,000万円控除
~適用における留意点~
301号

え〜っと通信

301号

2026年5月15日

税理士 増田優樹

相続空き家の3,000万円控除
~適用における留意点~

 ご自身が居住していた自宅を売却した場合とは別に、ご自身は居住していなくとも相続した空き家を売却した場合には一定の要件を満たせば、譲渡所得の計算において最大3,000万円を控除することができます。今回はその相続空き家特例における留意点について事例を踏まえてご説明します。

1.制度の概要

 相続空き家特例は、平成28年の税制改正において、相続に伴う空き家を抑制し、地域住民の生活への悪影響を未然に防ぐという観点から創設されたものです。
 相続人は、被相続人が一人で住んでいた空き家とその敷地を相続し、被相続人の死亡した日以後3年を経過する年の12月31日までに譲渡をした場合、一定の条件を満たすと、空き家を譲渡して得た利益(売却代金-取得費-諸経費)から最大3,000万円を控除することができます。なお、令和6年1月1日以降の譲渡から空き家とその敷地を取得した相続人が3人以上の場合の控除額は、一人当たり2,000万円までとなりました。

2.主な適用要件

(1)空き家等の要件
 ①相続開始の直前において被相続人が居住していた家屋で、同居者がいなかったこと(詳細は後記3)。
 ②昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
 ③区分所有建物でないこと。
 ④売却までずっと空き家で敷地も未利用であったこと。
(2)売却等の要件
 ①相続が発生してから3年を経過する年の12月31日までに売却すること。
 ②令和9年12月31日までの間に売却すること。
 ③売却の時からその売却の日の翌年2月15日までの間に、空き家に耐震性がない場合には耐震
  リフォームをする又は取り壊して更地にすること。
 ④売却代金が1億円以下であること(詳細は後記4)。
 ⑤親族や同族会社への売却でないこと。
 ⑥相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(詳細は後記5)の適用を受けないこと。

3.被相続人が居住していた家屋であること

 被相続人が居住していた家屋は、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により、相続開始の直前において被相続人が居住していなかった場合には、老人ホーム等に入所する直前で判定します。

4.売却代金が1億円以下であること

 この特例の適用を受ける空き家と一体として利用していた敷地を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかは、相続の時からこの特例の適用を受けてその空き家を売却した日から3年を経過する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分を含めた売却代金により判定します。
 このため、相続の時から空き家を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であり、既にこの特例の適用を受けていた場合であっても、残りの部分を自己や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときは、修正申告と納税が必要となります。

5.取得費加算との選択適用

 相続又は遺贈により取得した土地、建物などの財産を相続開始後3年10ヶ月以内に売却した場合には、支払った相続税のうち売却した財産に対応する税額を取得費に加算(売却益から控除)できる取得費加算の特例があります。この特例と相続空き家特例は、両方を適用することはできず、どちらかの選択適用となります。どちらを適用するのか有利不利を事前に検討して申告する必要があります。

6.適用を受けられなかった裁決事例

(1)被相続人が居住していた家屋と認められなかった事例
 被相続人は、要介護4の認定を受け、一人では生活できない状態となりました。相続人である子は、介護サービスを受けるために、被相続人の住民票を従前より居住していた被相続人所有の家屋から子所有の家屋に異動しました。実際に、被相続人は、介護施設に入居するまでの数カ月間だけ、子の所有する家屋で子の介護を受けながら生活していた状況です。この場合、住民登録の日以降は、子の家屋で居住しており、介護施設に入居するまでの間に被相続人所有の家屋で居住していたとは認められなかったため、相続空き家特例の適用を受けられませんでした。
 子の居住する家屋での生活は、介護のための一時的なものとも考えられますが、適用要件は厳格に判断されますので、ご注意ください。
(2)空き家及びその敷地の両方を取得していない事例
 両親の住んでいる実家について、父の(一次)相続で母が建物を相続し、子が土地を相続しました。母の(二次)相続で子は建物を相続しました。この場合、母が一人で居住していた家屋を相続した子は、母の自宅であった空き家及びその敷地の両方を母から相続していないため、相続空き家特例の適用を受けられませんでした。
 相続空き家特例の適用を受けるためには、事前に将来的な利用方法を検討し、一次相続のときから計画的な取得が必要となりますので、ご注意ください。

7.最後に

 空き家特例は、税金を抑えることができるので上手に利用したいものです。しかし、多くの適用要件を満たす必要がありますので、しっかり要件を確認した上で計画的に活用することをおすすめします。

※執筆時点の法令に基づいております