今年も毎年恒例の「長者番付」が、5月16日に発表されました。新聞やテレビで報道されたのは、全国上位100位まで。100位の方の税額は2億6千530万円。こんな税額は一生納付することはないから大丈夫、と思う方が大半でしょう。
しかし、発表されたのは上位100名だけではありません。所得税額1000万円を超える高額納税者は、5月16日から31日までの期間、税務署に氏名・住所・所得税額が掲示されます。これを<高額納税者の公示制度>といいます。この制度により、今年は全国で7万9838人が公示されました。 本来ならば高額な納税をすることは、名誉の証(?)。しかし、DMや勧誘の電話、寄附のお願いで追い回され、プライバシーの侵害、無用心極まりない制度と嫌がる方も多いようです。借金の保証人になっているなど、どうしても収入を公にしたくない事情がある人もいるはずです。公示を逃れる方法はないのでしょうか?
公示を回避する方法
所得税の高額納税者の公示は、3月31日までに提出された申告書が対象です。言い換えれば、3月31日までは1000万円を超える税額の申告書を提出しなければ、公示は逃れられるのです。
対策1.4月1日以降に申告する
一番オーソドックスな考え方です。しかし、期限までに申告しなかったと言う理由で無申告加算税が本税の15%相当額(調査前なら5%)。納期限までに納税が無く、遅延利息的な性格の延滞税が、納付日までの計算で本税の14.6%(2ヶ月以内の期間なら2002年度は年4.1%)かかり、お勧めはできません。
対策2.修正申告を活用する
例えば、期限内に税額が1000万を超えないようなインチキな申告をし、4月1日以降に真実の修正申告書を提出する、という方法があります。ここで心配なのは、過少申告加算税(差額の10%または15%)・延滞税といったペナルティですが、税務署に指摘を受ける前なら過少申告加算税はかかりません。
また、納税だけは実際の納税額を3月15日までに納付する、と言う方法もあります。つまり、申告書に記載された納税額と異なる真実の税額を納付しておくのです。これなら、期限内に完納しているので延滞税はかかりません。税務署も申告書と納税額の付け合せを3月15日に全部完了するわけではありません。あっと言う間に4月1日です。4月1日を待って真実の申告を修正申告の形で提出すれば、何の問題もないのです。
対策3.取り敢えず買換え申請
今なら来年末までの期間限定で活用できる方策です。事業用資産の買換えを応用するのです。
原則として、土地、建物等固定資産を売却した場合には、売却益に対して税金がかかります。ただし、かわりの資産を購入する場合には、売却益の60~100%に対する課税を先送りにできる制度があります。この制度はたくさん種類がありますが、売る物件・買う物件・またその組み合わせ・・・要件が複雑です。
なかでも最も使い勝手のいいものが21号買換えといい、国内にある所有期間10年を超える事業用の土地等、建物又は構築物を売却し、国内にある事業用の土地等、建物、構築物、機械装置を購入すれば、最高で売却益の80%の税金を先送りにできます。売った年に買うのが原則ですが、申請書さえ提出すれば翌年まで購入をする期限が延長(事情が事情なら最長3年間延長可)されます。ただ、その場合には、「いつ頃・いくらぐらいで・何を購入する予定」かを、申請書に記載して申告期限内に税務署に提出しなければなりません。しかし予定はあくまでも予定。当然、購入できないこともあります。購入できなかった場合には、「やっぱり買えませんでした」として修正申告をします。この修正申告、修正の期限さえ守れば延滞税はかかりません。買う予定がなくても買う予定あり、と申請することで、ペナルティなしで納期限は1年延長。売却に係る税額80%カットで公示を逃れることができるかもしれません。逃れられなかったとしても公示される税額を少なくすることができます。ただこの制度、平成15年末で終了です。公示回避の視点からも、本当に名残惜しい制度です。
もはや、この公示制度の存在価値はなく、一日も早く廃止とすべきだと思っているのは筆者だけでしょうか・・・