Vol. 40で従業員持株会を利用して株価を引下げる方法をご紹介させていただきました。今回は、中小企業投資育成会社を利用して株価を引下げる方法をご紹介させていただきます。
1. 中小企業投資育成会社とは
聞きなれない方がほとんどだと思います。中小企業投資育成会社とは、「中小企業投資育成会社法」という法律に基づいて、企業の成長・安定化と社会貢献を目的に設立された株式会社で、日本には3社あります。この投資育成会社の事業内容は大きく分けて2つ。1つは、創成期にある企業に投資し、公開を目指し、キャピタルゲインを狙うもの。もう1つは、増資引受けまたは金庫株の買取により株主となり、安定した配当収入を狙うものです。 後段の安定収入を狙う方の事業が、事業承継対策をしたいと思っているオーナー企業に利用することができます。
2. 株価引下げ効果
オーナー企業K社のG会長が保有する株式は、10,000株(発行済み株式20,000株、資本金1千万円)。これら株式はすべて相続発生時には、純資産価額方式と呼ばれる方法で算定した株価で算定されるとします。この時のG会長が所有する株式の相続税評価額は1株100,000円、株式全体で10億円となります。
この時、相続税率の適用区分が50%であれば、単純に計算すると、5億円もの相続税が必要、ということになります。自社の株式はたくさん持っていても、納税資金は十分にない。それが事業承継時の最大の悩みです。非公開株式では、簡単には物納することもできません。
ところが、第三者割当増資で投資育成会社が株式を引受ける場合の株式発行価額は、投資育成評価額と呼ばれる方法で算定します。この投資育成評価額は株式の額面金額(現在は商法改正で額面は撤廃されていますが)もしくはそれにかなり近い価額になる場合がほとんどです。その結果発行済株式全体の株価が薄まり、オーナー所有株式の相続税評価額が引き下げられるのです。
3. 具体例
投資育成評価額は次の計算式で求めることができます。
評価算式= (1株あたり予想純利益×配当性向※)/期待利回り ※配当性向=配当金/当期純利益 |
K社の場合、例年1株あたり50円の配当を行っていました。また期待利回りは10%であったとします(期待利回りは企業の安定性、成長性などから8~12%の範囲内で決定されることになっています)。そして予想純利益は当期純利益に等しかったと仮定すると、1株あたりのK社の投資育成評価額は500円となります。
500円で10,000株増資したとします。純資産は5百万円増加し20億5百万円、株式は30,000株となるのですから、新たな純資産価額方式による評価額は20億5百万円/30,000株=66,833円となります。G会長の相続財産は1株当たり33,167円減少し、株式全体で3億3千万円減少、相続税額で1億6千万円の節税となるのです。
4. やっぱり心配なのは外部株主がはいってくること・・・
そう思われるオーナーの方が大半だと思います。でも大丈夫です。中小企業投資育成会社は配当収入がもらえればよいのですから、利益がたくさん出ているのに、不当に低い配当性向だったり、本業を営業譲渡しようとしたりしなければ、特に議決権を行使して経営に口を出してくることはないといわれています。
株の評価が高く、安定した配当をできる会社をお持ちのオーナーの方は一考されてはいかがでしょうか。