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え〜っと通信

203号

2018年3月15日

平松 敦之

余命わずかな場合にも可能な相続税対策

 相続税対策はなるべく早いうちに着手するのが理想です。不動産を活用した節税対策などは効果が大きい反面、意思決定等に時間を要します。しかし、ある日突然医師からがんなどで余命宣告を受けた場合や高齢になり病気がちになって初めて「相続税対策をしていない!」と慌てるケースが多いのです。今回は、余命が僅かな場合でも有効な対策をピックアップしました。


1.遺言書の作成

 相続税増税による相続税の負担が懸念される一方、「終活」にも注目が集まり「遺言」への関心が高まってきています。遺言作成について、「我が家は円満だから遺言は必要ない」、「家族が自由にわけてくれればいい」、あるいは「遺言を残したらこどもに見捨てられるのでは」などの理由から躊躇される方が多いようです。しかし、相続をきっかけに残された家族同士が争う「争続」となるのは相続の準備が不十分であった場合に多く見受けられます。「遺言」は万能ではありませんが、ご自身の家族への思いをかたちとして残し、争いを未然に防ぐことは重要です。遺言書の作成は以下の場合には特に有効です!
・配偶者と兄弟姉妹のみが相続人となっている
・子のなかで特別に財産を与えたい者がいる
・生前お世話になった第三者などに財産を譲りたい
・先妻の子と後妻の子がいる
 なお、「遺言書の作成」は、相続専門の税理士の助言を受けることが重要です。現状をお伺いし、家族への思い、遺留分などのバランスを取りながら、また2次相続における相続税負担も見据えた遺産分割案の提案ができるからです。


2.生命保険の活用

  生命保険金には相続税の非課税枠があります。「500万円×法定相続人の数」までの金額であれば相続税はかかりません。例えば法定相続人が妻と長男、長女の場合、【500万円×3人=1,500万円】までは非課税となります。税率40%の場合、単に現預金で持っているより1,500万円×40%で600万円の税負担の軽減となります。また、生命保険金は納税資金にもなりますから、まだ非課税枠を活用しきれていない場合は生命保険契約を検討したいところです!ところで高齢で余命が僅かな方でも入れる保険商品はあるのでしょうか? 保険料を一括で支払うタイプの「一時払個人年金保険」はどうでしょうか。高齢や病気等の理由で一般の生命保険契約が難しい場合でもこの保険であれば健康診断なし、かつ80代でも加入できる商品があるようです。なお、実際に保険商品を選ぶ際にも相続専門の税理士にお声をかけていただくのがベストです(超低金利政策の影響等で保険商品の販売休停止、税制改正などの可能性もあります)。


3.教育資金の一括贈与

  亡くなられる直前に「相続人」に対して生前贈与を行っても相続税対策にはなりません。原則、相続開始前3年以内の贈与は、相続財産に持ち戻して相続税の計算をするためです。「孫」や「娘の夫」など相続人以外の方への贈与は持ち戻しの必要はなく年間110万円までの非課税枠も活用でき、それなりの効果はあります。もっと大きな財産を無税で贈与できる「教育資金の一括贈与」はいかがでしょうか。
(1)制度の概要
 ポイントは以下の3点です。

(a)30歳未満の子または孫が、父母または祖父母から教育資金に充てるための費用の一括贈与を受けた場合、1,500万円まで贈与税が非課税となる。
(b)金融機関に専用の口座を開設し、教育費として使用した領収書等を提出する必要がある。
(c)30歳に到達する日までに使いきれなかった場合、残額に対し贈与税が課税される。

 教育資金として贈与された1,500万円のうち500万円までは学校以外の学習塾や習い事にも充てられます。

(2)メリット
(a)受贈者1人あたりにつき1,500万円の非課税枠があり、孫等が多い場合は節税効果が高い。
例えば孫が4人の場合6,000万円まで非課税
(b)贈与者が死亡した場合においても、残額について相続税は課税されない(最初から相続税と切り離すことができ、死亡直前でも有効!)。
(c)単なる節税効果だけでなく子孫の能力向上に大きく貢献できる。

 金融機関の手続きなど多少の手間はかかりますが、「生きたお金の使い道」として利用価値は大きいのです!二度と戻らない幼少時代の教育投資は重要です。将来、財産が奪われる可能性はゼロとは言い切れませんが、「学んだこと」は決して奪われません!習い事で思わぬ才能の発見があるかもしれませんね。


4.最後に・・・

 上記以外にも相続直前にできる対策はまだあります。大切な家族に少しでも財産を多く残すためには、「もう手遅れだろう」とあきらめず、まずは簡単にできることから始めましょう!

※執筆時点の法令に基づいております