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TOPえ〜っと通信平成29年度税制改正 190号

え〜っと通信

190号

2017年2月20日

金井 悠深恵

平成29年度税制改正

 平成28年12月8日に平成29年度の税制改正大綱が発表され、同年12月22日に閣議決定されました。今回は、税制改正の主要項目についてご説明します。


1.積立NISAの創設

  家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するため、積立NISAが創設されます。非課税口座内の配当等および譲渡益は非課税となり、譲渡損についてはなかったものとされる点は現行NISAと同じですが、投資対象は一定の公募等株式投資信託に限られます。現行NISAとの比較は、下記のとおりです。

なお、積立NISAと現行NISAは、いずれか選択適用となります。
適用時期:平成30年1月1日~平成49年12月31日


2.相続税・贈与税の納税義務の見直し

 国外財産の租税回避スキームを封じるため、日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、見直しがなされます。現行では、被相続人および相続人・受遺者のいずれもが相続開始前5年以内に日本国内に住所を有したことがない場合、国外財産は相続税の課税対象外でしたが、この期間が10年以内に延長されます。贈与税の納税義務についても、同様です。
適用時期:平成29年4月1日以後の相続・遺贈・贈与


3.居住用超高層建築物に係る課税の見直し

 居住用超高層建築物、いわゆるタワーマンションの固定資産税および不動産取得税に係る課税について見直しがなされます。現行は、床面積が同じであれば、階層の差異による評価額および税額の差はありませんが、今後は、最近の取引価格の傾向を踏まえ、1階を100とし、階が1を増すごとに10/39(≒0.256)ずつ床面積が加算され、税額が上がることになります。これにより、1階の税額を100とすると、40階の税額は110になります。
 なお、今回は固定資産税および不動産取得税の税額の見直しですが、今後、相続税評価額も連動して見直される可能性があります。
適用時期:平成30年度から新たに課税される居住用超高層建築物の固定資産税および不動産所得税


4.取引相場のない株式の評価の見直し

 取引相場のない株式について、より実態に即した評価となるよう見直されます。取引相場のない株式の評価に用いる類似業種比準方式は、類似業種の上場企業のア株価、イ配当、ウ利益、エ純資産を基に計算します。アは、課税時期の属する月以前3ヶ月の各月の株価および前年平均株価からの選択ですが、改正後は課税時期の属する月以前2年平均が加わります。また、イ~エは類似する上場株式の連結決算を反映した数字となります。さらに、イ:ウ:エの比重は1:3:1の割合で計算し、利益の比重を高くしていますが、改正後は1:1:1と均等になります。
適用時期:平成29年1月1日以降の相続等により取得する株式の評価


5.広大地評価の見直し

 現行の広大地の評価は、「面積」に比例的に減額する方法をとっています。そのため、広大地の形状によっては、それを加味した取引価格と相続税評価額とが乖離する事例が多発しています。この状況を是正するため、今回の改正で、各土地の個性に応じ、「面積」「形状」に基づく評価方法に見直されることになります。
適用時期:平成30年以降の相続等により取得した広大地の評価


6.法人税の中小企業向け特例の適用要件の見直し

 資本金が1億円以下の中小企業には、所得800万円以下の部分について摘要される軽減税率をさらに15%まで下げたり、30万円未満の少額減価償却資産を事業共用時に一時に損金に算入できる等の特例があります。しかし、財政基盤が脆弱とは認められない大企業が、資本金を1億円以下に下げるだけで特例の適用を受けることは、財政基盤の弱い中小企業を支援するという本来の趣旨にそぐわないため、適用を受けるための要件に、過去3年間の課税所得の平均が15億円以下であることが加わります。
適用時期:平成31年4月1日以降開始事業年度


その他の主な改正項目

 その他の改正案のうち主要な項目は次表のとおりです。

※執筆時点の法令に基づいております