個人年金保険の販売が大幅に伸びています。生保各社が2005年度中に扱った新規契約高は前年比2割アップの約10兆円となっています。その増加の大きな要因は変額年金保険の売れ行きの好調です。
そもそも変額年金保険(「投資型年金」という名前で売り出している金融機関もあります)は、少子高齢化や年金不安による自助努力の必要性から発生した商品ですが、保険や年金は税制上も優遇されていることから相続対策としても利用が可能です。そのしくみと効果的な利用方法をご説明したいと思います。
1.変額年金保険の基本的な仕組み
変額年金保険は、その機能により、運用期間と年金支払期間に大きく分けられます。運用期間は保険としての機能をもち、被保険者が死亡した場合には死亡給付金(死亡保険金)が支払われます。一方、運用期間の満了とともに年金支払期間となり、この期間では年金としての機能を持つことになります。この年金額が運用成績等によって変動するため、「変額」年金保険と呼ばれます。変額年金保険には一般的に下記のような特徴があります。
● | 保険料の支払方法は一時払が一般的で、医師の診断等が不要な場合もあります。 |
● | 死亡給付金は、一時払で支払った保険料の額は死亡給付金として全額保証されて、解約時点での積立金残高がそれ以上の場合には上乗せで支払われます。 |
● | 運用期間中の解約の場合には解約返戻金が支払われますが、これは解約時点での積立金残高を元に計算され、その解約が契約から7-10年以内であれば「解約控除」として解約返戻金が一部カットされます。 |
● | 運用期間中には保険関係費用や運用関係費用などの手数料が積立金残高から控除されます。年金支払期間中には年金管理費用がかかります。 |
● | 運用期間が満了すると、その時点の積立金残高が年金原資となり、これを元に年金が支払われます。 |
2.最近の変額年金保険の動向
「相続対策」を前面に押し出しているのは次の特徴をもつ変額年金保険です。
(1) 即時年金
即時年金とは、変額年金保険を契約したときから即時に年金として機能する保険です。年金としての機能に重点を置いた保険といえます。但し、実際には3ヶ月程度の据置期間は必要です。
(2) 遺族年金特約
遺族年金特約とは、運用期間中に相続が発生した場合に支払われる死亡給付金を年金形式で支払う特約です。この特約は、契約者が、相続発生前に付加しておきます。
3.効果的な利用方法
変額年金保険を相続対策とするには、「生命保険金の非課税枠」と「定期金に関する権利の評価」を利用する必要があります。
生命保険金の非課税枠とは、契約者が被相続人で被相続人の死亡を原因として支払われる生命保険金は、みなし相続財産として相続財産に加算されますが、その際に受取る人が相続人である場合には一定金額までは非課税とされる規定です。非課税額は500万円×相続人数です。
定期金に関する権利の評価とは、年金形式で支払われる財産(定期金)は、相続財産として評価される際に、支払総額ではなく、一定割合を控除した割引価額で評価される規定です。例えば10年確定年金であれば、年金支払総額の60%相当額で評価することになります。
上記の規定を実際の変額年金保険で生かすためには、下記の変額年金保険を選ぶ必要があります。
(1) 即時年金
運用期間を待たずして、年金支払期間に入るため、定期金に関する権利の評価の規定による効果をすぐ利用することができます。生命保険金の非課税枠は既に別の保険でカバーしていて、定期金としての節税効果のみを期待する方に向いています。
(2) 遺族年金特約
死亡給付金を年金形式でもらうことになりますので、生命保険金の非課税枠及び定期金に関する権利の評価による評価減の両方の効果が得られることになります。生命保険金の非課税枠をまだ利用できていない方や、納税資金はすでに確保しているため、保険金が年金形式の支払でも問題ない方に向いています。
変額年金保険はその方の財産の状況、現在の生命保険の加入状況、年齢、相続人となる方の状況等によって、そもそも変額年金保険に加入すべきか、またどういう保険に加入すべきか、大きく変わってきます。ご検討の際には専門家に必ずご相談下さい。