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え〜っと通信

30号

2003年10月1日

片岡 夕佳

税引き前の損金(経費)、税引き後のポケットマネー

生命保険は、単なる保障だけではなく、まとまったお金を貯める場合にも有効であることをご存知でしょうか。
 預金でお金を貯めようとする場合、税引き後のポケットマネーで貯めなければなりません。一方、もしあなたが法人のオーナーなら、生命保険を利用して、税引き前のお金で、法人の損金に計上しながらお金を貯めることができるのです。その中で、今回は、『長期平準定期保険』に的を絞ってその利用方法をご紹介します。


1.長期平準定期保険とは

 長期平準定期保険は、簡単に言うと定期保険の一種で、特に保険期間が長いものとでも言えるのでしょうか。定期保険は、支出時に全額損金となりますが、基本的に解約返戻金はなく、死亡しない限り、保険もおりません。そこで①全額損金にできる、しかも②途中解約すれば、返戻金が戻ってくる、という保障だけでなく、貯蓄機能も兼ね備えた節税商品として発展したのがこの保険です。
 残念ながら、解約返戻金は払込金額を下回りますが、保険料は損金に計上が可能です。そのため、節税効果を考慮すると、実質返戻率は100%を超えるという、お得な保険なのです。


2.長期平準定期保険の活用法

 『長期平準定期保険』は、特に「生前退職金」や「死亡退職金」の準備資金として活用されます。例えば、次のような契約形態で加入したケースで社長の退職金準備をするとどうなるのかを見てみましょう。
      契約形態: 契約者及び保険金受取人・・法人 被保険者・・社長
① 生前退職金
 この保険の解約返戻率がもっとも高くなるのは、契約内容・年齢・保険商品・保険会社によって異なりますが、契約してから20年から30年後が多いようです。一般論としては、退職予定年度に解約返戻率が一番高くなるように保険期間を設定し、退職金の原資とするのがお勧めです。ただ、解約返戻金は法人の収益となり、法人税等の課税対象となってしまいますので注意が必要です。そこで前述の退職金を支給することにより、費用も同時に計上でき、両者が相殺されて法人税等の課税を回避できるのです。
② 死亡退職金
 社長が死亡した場合には、法人が死亡保険金を受け取ります。死亡保険金は法人の収益になるので法人税等の課税対象となります。しかし、経営者の遺族に支払う死亡退職金を同時に費用計上できるため、ここでも両者が相殺され法人税等の課税を回避できます。
 一方、この死亡退職金を受け取った遺族の方は、税法上相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。しかし、死亡退職金には原則として「500万円×法定相続人数」の非課税枠が用意されているのです。個人で契約して受け取った保険金に対する生命保険の非課税枠の原則「500万円×法定相続人数」と併せて、何と法定相続人一人当たり、1000万円までが非課税になってしまうのです。


3.利用する際のポイント

 とは言うものの、受取保険金すべてを税法上も認められる退職金にできる訳ではありません。退職金を支給する場合、損金として認められる部分は、受取保険金の額とは何の関係もないからです。不相当に高額な部分は損金として認められず、法人税等の課税が待っているので、いずれにせよ、保険を利用すれば節税と同時に、経営者に万が一のことが起こった場合も安心です。企業の維持、存続、そして家族の相続税納税資金や生活保障に役立ててはいかがでしょうか。税引き後のポケットマネーではなく、税引き前の損金にできるお金を使って!

※執筆時点の法令に基づいております