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TOPATO通信法定相続情報一覧図の実務ポイント! 5384号

ATO通信

5384号

2024年5月31日

執筆者:高木 康裕

法定相続情報一覧図の実務ポイント!

 相続手続きに必要な戸籍の取得ができたならば、次は法定相続情報一覧図を作成しましょう。この書類を作っておくことで様々な相続手続きがスムーズに行えるようになります。ただし、例外として全ての戸籍が揃わないケースでは利用ができないことになっています。

1. 法定相続情報一覧図を活用

 相続がおきると相続人や遺産額を確定して、不動産の名義変更や預貯金の解約などの様々な手続きをしなければなりません。被相続人が不動産を所有していたのであれば、相続を原因とする所有権の移転登記が必要です。令和6年4月1日からは、いよいよ相続登記の申請義務化がスタートしました。これからは、費用が生じるから、面倒だから、などと相続登記をしないで放置することができなくなります。登記まで忘れずにしっかりと手当てしましょう。これらの相続手続きを行う際には、戸籍や除籍・原戸籍などの書類の束を手続きごとにその都度提出しなくてはなりません。特に相続人が兄弟姉妹の場合など、関係者が多岐にわたると戸籍の枚数が物凄い量になることもあります。色々な窓口で何度も書類の束を出しては返却をしてもらう、この手間に時間が取られて煩わしいこと、これが相続手続きを億劫にさせる大きな理由の1つでしょう。
 そこで、みなさまは是非とも法定相続情報一覧図を活用しましょう。法定相続情報一覧図とは、戸籍の記載から判明する被相続人と法定相続人の情報をまとめた一覧図で、その内容が正しいと法務局が証明したものです。法務局がお墨付きを与えていますから、分厚い戸籍の束の代わりとして様々な相続手続きに利用できます。当然、銀行や証券会社の手続きにも用いることができます。そのため、これを作成しておくことが実務ではもはやスタンダードです。

2. 住所の記載は必須

 法定相続情報一覧図の作成は、相続人が一覧図を用意してそれを法務局に申出(申請)して証明してもらう流れなのですが、そのときは相続人の住所を必ず記載しましょう。実は、相続人の住所を一覧図に記載するのかどうかは任意事項なのですが、住所が無い書類では実務的にはまったく意味がありません。相続手続きを行うときは、相続人の住所確認がなされるのが一般的なため、これを考えれば至極当然のことです。相続人の住所記載をしないで法定相続情報一覧図を作成したものの、手続きの都度に住民票の写しなどの確認を求められて面倒なため、結局は作り直しをしたケースを見たことがあります。
 そもそもこの制度は、相続登記の促進のために創設された制度です。手続きのために必要となる相続人の住所情報は記載条件にしても良かったのではないかと思います。

3. 日本国籍を喪失していると使えない

 法定相続情報一覧図を作成するときは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍等を用意する必要があります。また、相続人の戸籍も必要です。したがって、日本国籍を有していない方がいるとこの制度は利用できません。例えば、国際結婚をして配偶者の国籍に帰化したため、日本国籍を喪失した相続人がいる場合があります。国際結婚をしても、日本国籍のままであれば戸籍があるので利用できるのですが、日本国籍を喪失しているとダメなのです。また、次のようなケースがありました。被相続人は国際結婚歴があり、その際に一時期だけ日本国籍を喪失していました。なぜ一時期なのかと言うと、その方は数年で離婚をしたため再度日本に帰化、日本国籍をまた取得していたのです。つまり、戸籍はあるものの途中に空白の時期があるため、出生から死亡までの連続性が無いわけです。結局、この相続手続きでは司法書士と相談して、他の相続人はいない旨の上申書を法務局へ提出することで相続登記を進めました。
 ちなみに、火災などにより戸籍等が滅失しているため謄本の交付を受けられないという場合がありますが、この場合はその旨の市町村長の証明書を添付すれば大丈夫です。国籍喪失とは異なります。

4. 海外居住者は在留証明が必要

 相続人は国際結婚をして海外に居住しているが日本国籍は保有している、この場合には法定相続情報一覧図が利用できます。ただし、海外居住をしている訳ですから国内に住所は無いため住民票を取得することができません。そのため、相続人の住所を記載したいのであれば在留証明を添付しないといけません。海外にいる相続人にお願いをして、総領事館などの在外公館で取得をしてもらう必要があるでしょう。国際郵便で書類を揃えなければならないため、時間的な余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。

5. 代理人による申出

 法務局へ申出ができる人は原則として相続人ですが、一定の資格者は代理人として手続きを行うことができます。税理士もこの代理人になれますので、手続きが面倒なときはご相談ください。戸籍取得から相続税申告まで一気通貫でお手伝いします。

※執筆時点の法令に基づいております