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今月の言葉

2018年10月1日

アイスクリーム

 かねて、アイスクリームというのはどのようにしたら出来るか、ということを考えてきた。言葉の通りであれば、町でクリームというものを買ってきて、冷凍庫に入れたらできるような気がするのだが、どうもそういうものでもないらしい。その疑問が解けたのは、我が家の息子達が小学校3年生くらいの頃、北海道のとある湖畔の観光牧場に連れて行って、「手作りアイスクリーム体験」なるものにチャレンジさせたときである。観光牧場だから、その場に乳牛がいて、ふんだんに原乳が絞れる環境でのアイスクリーム作りである。レシピの詳しいものは、いろいろ「クックパッド」などに載っているので、そちらを参照いただきたいが、要するところ乳脂、砂糖、香料などを適量に混ぜてひたすら撹拌するのである。この撹拌(かき混ぜる)の際の手加減、撹拌時間の長さ、温度(この牧場ではボールを氷水の中につけながら、氷点下くらいの温度で撹拌させていた)が美味しいアイスクリームのこつであると思われる。アイスクリームとは、ただクリームを凍らせたものではなく、撹拌工程で、クリームの中に適度の空気を含ませ、ふわりとさせながら凍らせるものなのである。

 シャーベット(氷菓、あるいは、かき氷に近いものを含む)の歴史は、古い。天然氷に果汁などを混ぜてつくっていたらしい。アイスミルクは中国原産で、マルコポーロが欧州社会に持ち帰ったとの説がある。が、アイスクリームの歴史は意外に新しい。現在のアイスクリームに近いものを製するためには、二つの技術が必要だったからである。まず冷凍技術。こちらは16世紀の初め、パドヴァ大学で、水の中に硝石をいれると氷点下20度くらいまでの温度が得られることが発見され、以来ものを凍らせることが出来るようになった。その後、ホイップクリームやメレンゲを冷凍した菓子が開発されるようになった。さらに、19世紀半ば、米国の主婦が自動攪拌機を発明するに及んで、現代のアイスクリームとほぼ同じものが出来る様になったのだという。日本人が、アイスクリームを食したのは、まさにこの直後。日米修好通商条約批准書を携えて渡米した使節が、ホワイトハウスの晩餐会でアイスクリームを供されとても感銘を受けた記録があるとか。

 さて、以下、この稿の筆者が「世界で一番美味しいアイスクリーム」だと思っているものを紹介することに、紙数を使いたい。筆者は、英米はもちろん、イタリアのジェラート、フランスのグラースなど世界中のアイスクリームを食してきたが、北海道は中標津空港の近く、「ラ・レトリ」という店の店頭で売っているアイスクリームほど美味と思ったことはない。この店のアイスクリームは、ネットでも取り寄せることが出来るが、店頭で売っているジェラート風の空気のたっぷり入った、ふわっとしたアイスクリームがより美味なのである。ミルクの他に、カボチャ、コーン、よもぎ、サツマイモ、ゴマ、アーモンド、抹茶、チョコレート、コーヒーなど折々の風味も多彩である。店主は、「この味は中標津でしか出来ない」と頑固に「ここ一軒だけ」を守っている。おそらく、原材料の牛乳、気温、さらに撹拌時のこつを他の場所では維持できないことなどが理由なのであろう。読者には、ぜひ一度中標津に行かれて「ラ・レトリ」を訪ねられることをお勧めしたい。

アイスクリーム・ワールド > アイスクリームの歴史 > アイスクリームの歴史(世界編)(日本編)を参考にさせていただいた。
http://www.icecream-navi.net/history/history_world1.html
https://www.laiterie.co.jp/about/shop/