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え〜っと通信

272号

2023年12月15日

野口 晋吾

電子帳簿保存制度について

令和6年1月1日以降、電子帳簿保存制度の対応が必要になる部分がありますので、今回は、この制度をご説明いたします。

1.電子帳簿保存制度とは

  電子帳簿保存制度とは、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とするものであり、各種制度を利用することで経理のデジタル化が図れます。また、メールへの添付など電子データでやり取りした請求書や領収書などの電子取引データは保存が義務化されます。
 つまり、この制度は、従来の紙保存からデータ保存に切り替えが可能になることで、経理のデジタル化を図り業務の効率アップができる制度ということができます。ただし、紙保存からデータ保存に切り替えるにはシステム整備をする必要があり時間や費用がかかりますので、費用に見合った効果が期待できない方は、各種制度を利用するのが難しい場合があります。そういう方は、少なくともデータでやり取りした電子取引データは消さずに保存しておかなければならないというものです。

2.電子帳簿保存制度における3つの保存制度

電子帳簿保存制度では、書類の種類、書類の受渡方法により、以下の3つに区分されています。

①電子帳簿等保存→会計ソフトで作成した帳簿、貸借対照表、損益計算書等を電子データで保存。
②スキャナ保存→取引先から受領した紙の請求書等を、スマホやスキャナで読み取った電子データ保存。
③電子取引データ保存→取引先と電子データでやり取りした請求書等を、その電子データで保存。

上記①及び②は、紙保存が可能であり、希望者のみが電子データで保存することができます。
上記③は、個人事業者・法人は令和6年1月1日以降の取引について対応する必要があります。下記3以降で、どのような対応が必要になるかをご説明いたします。

3.保存義務のある電子取引データ

メールやインターネットを介して電子データでやり取りしたもので、これまで紙でやり取りをしていた場合に保存が必要であった書類です。例えば、「注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など」に相当するものが対象です。あくまで電子データでやり取りをしたものが対象ですから、紙でやり取りしたものをデータ化しなければならない訳ではありません。
 なお、書類を受け取った場合だけでなく、書類を送った場合にも保存する必要があります。

4.原則的なデータ保存の方法

データ保存は、「改ざん防止の措置」、「日付・金額・取引先で検索できること」など一定の要件を満たすようにしなければなりません。
 なお、2年(期)前の売上高が5千万円以下の事業者の方は、税務調査の際に電子データをダウンロードできるようにしておくことを前提に、印刷した書面(紙)を日付ごとに整理した状態で提出できるようにしている場合には、電子データ保存時の検索要件は不要となります。
 いずれにしても、データ保存を電子帳簿保存制度のルールどおり行うためには、基本的にはシステム整備をする必要があり、市販のソフトウェア等を使うと費用もかかってしまいます。

5.猶予措置(例外的なデータ保存の方法)

個人事業主・中小企業などは、資金繰りや人手不足等の事情によりシステム整備が間に合わないこともあるため、一定の要件を全て満たすデータ保存をすることが難しい場合があります。そのため、猶予措置が設けられており、改ざん防止の措置や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができるようになりました。
 なお、猶予措置が認められるためには、税務調査の際に税務職員に対し電子データを印刷した書面を提出できるようにしており、かつ、電子取引データをダウンロードしてデータのコピーを提出できるようにしておかなければなりません。その上で、税務署長がやむを得ない理由があると認めた場合に猶予措置が適用されます。現状では、いったんシステム整備をしたのに検索機能などの要件を満たす保存をしていない場合は別として、税務署長が猶予措置を認めないという厳しい運用はされないものと考えられます。

6.まとめ

電子帳簿保存制度は、大企業のように処理件数が多く作業量が大幅に減少する場合、紙保存に膨大なスペースが必要な場合などは積極的な導入を検討すべきでしょう。しかし、不動産賃貸業などで処理件数がそんなに多くないという方は、急いでシステム整備をする必要はありません。調査の際に、以下の2つの対応ができるように、電子取引データを保存して頂ければと思います。

①電子取引データをダウンロードしてデータのコピーを提出できる。
②電子取引データを印刷した画面を提出できる。

なお、会計ソフトで作成した帳簿や紙で受領した請求書等について電子保存を検討される場合には、個別にご相談ください。

※執筆時点の法令に基づいております