相続税を金銭で一括納付することができないため、物納を選択する場合もあるでしょう。物納が許可された時はいままでの苦労もあり、これで終わったと肩の荷が下りるかも知れません。しかし、税の世界では気の抜きすぎは禁物。物納後にも税の軽減が受けられる制度が用意されています。
1.固定資産税・都市計画税の減免
相続税の納税は金銭で一時に納付することが原則ですが、それができない場合には延納・物納という納付方法があることはご承知の通りです。 今回は、相続税納税のために土地(固定資産)を物納した場合を例として説明いたします。
様々な書類を用意した上での税務署への物納申請、その後の財務局による現地調査や細かな指摘事項もクリアし晴れて物納許可が下りました。確かに物納手続きはこれで一段落となりますが、忘れずに固定資産税・都市計画税(以下、「固定資産税等」といいます)の減免申請を行って下さい。
本来、固定資産税等はその年の1月1日時点で所有していたのであれば、その全額を納める必要があります。しかし、減免申請をすることにより、その年度分の固定資産税等のうち物納後の税負担の免除を受けることができる場合があるのです。
例えば東京都23区では、固定資産が相続税法の規定により物納された場合、減免申請した日以後の固定資産税等を減免する取り扱いがあります。なお、この取り扱いは条例で定める事項であるため、各市町村によって対応が若干異なります。そのため、減免可能か否かは物納した土地が所在する場所ごとに調べる必要がありますので注意して下さい。
2.減免される固定資産税等の額
固定資産税等の減免はあくまでも申請を行った場合の取り扱いですので、申請書を提出することが必要です。 実際に減免される固定資産税等の具体的な金額は、各市町村により詳細が異なりますが、おおよそ次の1又は2の取り扱いとなっています。
減免対象税額については
1 減免申請日以降の納期限分を減免
2 物納(収納)された時以降の納期限分を減免(※東京都23区は1の取り扱い)
固定資産税等の前納分については
1 前納分(一括納付分)は減免対象外(還付をしない)
2 前納分(一括納付分)も減免対象(還付がされる)(※東京都23区は2の取り扱い)
いずれにせよ減免を最大限に受けたい場合には、物納対象としている固定資産は、
ことにより減免税額を多くすることが可能になるのです。
なお、固定資産税等を前納している場合には減免がなされないものだと認識されている方もいるようです。しかし、上記のように前納されていたとしても、減免のうえ税額還付を行う市町村もありますので思い込みには注意です。
3.条件付き物納許可後の更正の請求
物納許可後に相続税の評価額を減額することが可能な場合もあります。
土地の物納では許可にあたり条件が付されることがあります。実務的には、土地を更地で物納する場合、物納許可後に土壌汚染や地下埋設物等の存在が判明した時は除去をしなければならないという条件が付けられます。
万一、物納許可後に土壌汚染等が発見された場合には除去の履行を求められることになります。(履行をしなかった場合には物納許可が取り消されます。)
このような場合には、既に申告した相続税について更正の請求を行い、土壌汚染等に係る土地であったとして評価額を減額し、税金を取り戻すことが可能です。
4.手続きは自己責任
固定資産税等の減免申請や相続税の更正の請求は、その手続きはいずれも本人が行うものです。したがって、市町村や税務署の方から親切に言ってくれることは絶対にありません。
つまり、確定申告と同様あくまでも自己責任なのです。後の祭りとならぬよう忘れずにメリットを享受するようにしましょう。