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COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
年度:
タイトル:
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76号
減価償却制度の改正について
1.残存簿価1円まで償却できるようになりました
平成19年度税制改正の目玉として減価償却制度の改正がありました。従来の税法における日本の減価償却制度では取得価額の95%までしか償却できませんでした。アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・韓国いずれの国も100%(ドイツは1ユーロまで)減価償却をすることが出来ます。日本もやっと他の先進国と肩を並べたことになります。
このことが国際競争力を高めることになります。例えばトヨタ自動車が1億円の機械を取得し自動車を作ったとします。日本では95%までしか償却できませんから、9500万円しか費用に計上できません。でもアメリカのゼネラルモータースは1億円全部を費用に計上することが出来ます。500万円は除却か売却するまで費用化できないのです。税率を50%とするとトヨタは250万円の税金を支払いGMは税金を1円も支払わないということです。このように技術力とは関係なく減価償却の制度の違いにより日本の会社は不利な状態にあったのです。
2. さて、新しい減価償却制度とは?新しい減価償却の制度では残存簿価1円まで償却できます。しかし平成19年4月1日以降取得の減価償却資産と、その前日の3月31日以前取得の資産とでは取り扱いが違います。
どこが違うのかと言うと、平成19年4月1日以降取得の資産の減価償却は初めから5%を含めて毎年の償却費を計算します。例えば取得価額1000円の資産で耐用年数5年、償却方法は定額法のものを考えてみます。イメージとしては下の図のように毎年200円ずつ費用となり5年で1円残ります。
一方、平成19年3月31日以前取得のものは従来どおり5%を残すように減価償却費を計算し、残存価額5%となった後これを5年間で均等に償却することになります。従って残存簿価1円まで償却するには11年もかかってしまいます。

改正後、確かに1円を残して償却できるようになりましたが、これでは平成19年3月31日以前取得のものについては恩恵を実感することは難しいかもしれません。
3.それでは簿価売買!エーティーオー財産相談室ではかねてより法人所有による不動産賃貸業をお勧めしてまいりました。個人で不動産賃貸業を営んでいる方が、賃貸建物を帳簿価額(簿価)で法人へ譲渡するスキームです。所得税の負担が分散できる他、結果的には相続税対策にもなるという優れもの。これによれば、譲渡先の法人では新しい償却方法で償却することが可能です。例えば以下のような例では法人に譲渡した方が3年早く残存簿価1円に達します。早く費用化する事が出来るということです。冒頭の話に戻れば簿価売買によって相続対策はおろか、国際競争力までもが高まるということになります。


帳簿価額による賃貸建物の法人への譲渡は減価償却以外にもメリットがたくさんあります。ぜひ一度ご検討ください。
2007年9月15日
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75号
郵政改革と相続税の特例への影響
相続税の計算にあたって非常に大きな影響を及ぼす「小規模宅地等の特例」というものがあります。この特例は、相続税評価額が最大で80%引きになる可能性があるもので、例えば1億円の評価額であったとしても課税ベースでは2千万円になる場合があるのです。
今回は、今年の話題でもある10月1日の日本郵政公社の解散と郵政民営化が、この特例にも影響を及ぼしている事柄をお伝えいたします。
特例の一つである国営事業用宅地等の特例相続や遺贈により取得した財産のうち、被相続人等の居住の用や事業の用に供されていた宅地等があった場合、これらの宅地等は相続人等の生活基盤の維持において重要な財産であるといえます。そこで、このような事情に配慮するために相続税の負担の軽減を図る制度が用意されており、この制度を一般的には「小規模宅地等の特例」といいます。
この小規模宅地等の特例には、その宅地等の用途に応じて複数の種類が用意されているのですが、その一つに国営事業用宅地等の特例というものがあります。
国営事業用宅地等の特例の内容は?相続財産である宅地等のうち、特定郵便局である建物の敷地の用に供されているもので、
① 宅地等の取得者に被相続人の親族がいること。 ② ①の親族から相続開始後5年以上、その宅地等を特定郵便局の用に供するために借り受ける見込みであると日本郵政公社が証明していること。 上記2つの要件を満たしている場合には、宅地等の地積のうち400㎡までの部分について相続税評価額を80%減にできます。
したがって、対象となる地積が400㎡以下であれば相続税の課税対象は20%のみとなるわけです。
平成19年10月1日以降の取り扱い平成19年10月1日以降は、日本郵政公社が解散してしまうことから国営事業用宅地等の特例は廃止されてしまいます。したがって、上記特例は適用できなくなるのです。ただし、土地を貸している側からすれば賃貸先が日本郵政公社から郵便局株式会社へ変更しただけであり、非常に酷ともいえるのではないでしょうか。
そこで、郵政民営化法には特別な取り扱いが盛り込まれており、次の要件を満たした場合には、宅地等の地積のうち400㎡までの部分について相続税評価額を80%減にできるように配慮がなされました。① 郵政民営化法の施行日前から日本郵政公社に貸し付けていた宅地等であり、当該賃貸借契約を承継した郵便局株式会社に引き続き貸し付けているもの。 ② 郵便局会社が相続開始後5年以上、その宅地等を引き続き借り受け、郵便局舎の用に供することについて証明していること。 ③ この特別な取り扱いを既に受けたことがないこと。
注意点上述の郵政民営化後における取り扱いを利用すれば、実質的には従前と同じ効果を得ることが可能ですが、いままでとは異なる重要な注意点があります。
それは、① 平成19年10月1日以降に新たに郵便局会社と締結した契約は含まれないこと、 ② 上述の特別な取り扱い③に記載のとおり、この取り扱いは1回限り・1代限りの相続に限られること、 です。
つまり、あくまでも従前からのものに対する救済措置であり、それは1回だけという限定的な取り扱いのため注意が必要です。これからは、郵政事業は公の機関ではなく、民間企業が実施することになります。一昔前に民営化された国鉄は、JRとして大きな変化を遂げています。これからの郵政事業に関して、税法の取り扱いも含め、今後も一層目を離せないでしょう。
2007年8月15日
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74号
相続税申告の前に、 まず“準確”
個人の確定申告といえば、毎年2月16日から3月15日までの間に行う恒例行事です。この確定申告、生きている人のみが対象とは限りません。年の中途で亡くなった方についても申告は必要です。この申告を準確定申告、通称“準確”といいます。今回はこの準確定申告なるものについてお話します。
1.準確定申告とは次に掲げる場合に該当するときは、その相続人は、その相続開始があったことを知った日の翌日から4月以内に、被相続人の所得について、確定申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。
① 確定申告をしなければならない人が、その年の翌年の1月1日から3月15日までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合 ② 年の中途で死亡した人が、その死亡した年分の所得税について確定申告書を提出しなければならない場合 例えば、平成19年6月1日に死亡した人は、平成19年の1月1日から6月1日までの所得を計算し、申告をしなければならない人に該当する場合には、平成19年10月1日までに確定申告書を提出し、納税をしなければなりません。これが上記②の例です。しかし、平成19年2月1日に死亡した人についてはどうでしょう。この人については、まず、平成18年分の所得税について確定申告書を提出する必要があります。通常提出期限は3月15日ですが、上記①に該当することから、相続開始があったことを知った日の翌日から4月以内、つまり、平成19年6月1日までに申告書を提出し、納税をしなければなりません。そして更に、平成19年1月1日から2月1日までの所得税について確定申告書を提出し、納税をしなければなりません。つまり、平成18年分の申告書はその提出期限が伸びて、平成19年分の準確定申告書と同時に提出することができるのです。
2.申告書作成上の留意点通常の確定申告と基本的には同様ですが、次のような点に気をつける必要があります。
① 医療費控除については、死亡の日までに支払ったものが対象となります。死亡後に支払った医療費については、相続税を計算する上での債務控除の対象となります。 ② 社会保険料、生命保険料などについても、死亡の日までに支払ったものが対象となります。死亡後に支払ったものについては、①と同様に債務控除の対象となります。 ③ 配偶者控除や扶養控除についても死亡の日の現況により、その対象者の見積り所得金額が一定額以下であれば対象となります。 ④ その他、経費の未払があれば必要経費に計上するとともに相続税では債務控除の対象とし、未収金があれば収入金額に計上するとともに相続税では債権として財産に計上する必要があります。 しかもこの準確定申告書、各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄などを記載した書類を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の所轄税務署に提出するとともに納税をしなければなりません。相続人が多ければ、署名押印だけでも一仕事です。
3.その他の留意点被相続人については準確定申告書を提出すれば終わりです。しかしながら、相続人の手続きについてはどうでしょう。新たに不動産所得等が発生する場合には事業開始の届出書の提出、青色申告の適用を受ける場合には青色申告承認申請書の提出、減価償却資産について定率法の適用を受けたい場合には償却方法の届出書の提出、と、いろいろと手続きが必要です。被相続人の所得の内容によっては、相続人は消費税の納税義務者になってしまい、原則課税がいいのか簡易課税がいいのか検討が必要、などという場合もあるかもしれません。
相続税申告と密接に関係してくるこの準確定申告、作成、提出が遅くなれば、当然相続税の申告にも影響してきます。財産の評価に時間をとられてしまい、遺産分割協議に十分時間がかけられなかった、などという状況になるやもしれません。ゆとりをもった遺産分割協議のためにも準確定申告はお早めに。2007年7月13日
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73号
離婚時の税金 ~財産分与時~
最近連日連夜ワイドショーをにぎわせている話題として、「離婚時の年金分割制度スタート」があります。従来は離婚した場合、妻(専業主婦)は自己の僅かな基礎年金部分しか受給出来ませんでした。しかし、2007年4月以降の離婚から、過去の婚姻期間に遡って、その間に納めた厚生年金保険料に相応する年金受給権を最大50%まで夫婦で分割することが出来ることになったのです。長年我慢をしてきた妻たちが、この変革をきっかけに「熟年離婚」へ踏み切る勢いです。そこで、今回は離婚した時にかかる税金について説明したいと思います。
財産分与とは協議離婚した場合は、夫婦の一方は、相手方に対し財産分与を請求することが出来ます(民法768条)
一般的には、その趣旨として、① 夫婦が婚姻中に協力して蓄積した財産の清算 ② 離婚後の生活扶養 ③ 慰謝料 などが挙げられます。
財産分与時の税金 ~分与した側~土地や建物などの譲渡資産が財産分与の対象となった場合には、分与した人に譲渡所得税の課税がなされます。離婚に伴う財産分与は財産処分の一形態であり、分与時における分与財産の価額に相当する額の分与義務が消滅することから、譲渡所得の課税関係が生じます。
譲渡所得は、売却した不動産の収入金額から取得費・譲渡費用を差し引いた金額となります。
収入金額は、分与した時の土地や建物の時価額となります。分与した側は、財産を分けるだけでなく、税金もかかってくるのです。
居住用財産の譲渡の特例は使える?通常、居住用の家屋とその敷地を財産分与するケースが多くみられます。となると、居住用財産の譲渡の特例等(軽減税率等)が適用できるかどうかが節税のポイントとなります。離婚する前に、分与してしまうと身内に対する譲渡となってしまい、適用除外となってしまいますが(除籍手続き前の譲渡の場合でも一定の場合には特例の適用が認められます)、離婚後における譲渡であれば、他人への譲渡となり居住用財産の特例の適用を受けることができます。まず、居住用財産の譲渡利益から3,000万円を控除することが出来るのです。更に所有期間が10年超(分与した年の1月1日時点での判定)であれば、一定の場合には、その所得の6,000万円までは所得税10%(通常15%)住民税4%(通常5%)の低い税率が適用されます。
財産分与時の税金 ~分与された側~一方、財産を分与された側には通常贈与税は課税されません。しかし、次のような場合には、その財産は贈与により取得した財産として贈与税が課税されます。
① 財産の分与として取得した財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお不当に多すぎると認められる場合 ② 離婚を手段として贈与税や相続税を免れようとするためのものである場合 つい最近の多額の慰謝料といえば、元NBAスーパースターのマイケル・ジョーダンの150億円を越える金額が話題となりました。アメリカの税法ではこの慰謝料に対して日本の贈与税に似た税金がかかるのか、ついつい気になってしまいます。
以上、離婚時の一般的な税金について述べてきましたが、渡す側には税金がかかり、もらう側には通常税金がかからないというのは、ちょっと世の渡す側(特に男性諸氏)には納得のいかない話かもしれません。しかし、現在の日本の税制ではこのようになっているのが実情です。
冷め切った夫婦生活に見切りをつけて、半分の年金受給権と財産分与をもらって生前に清算するか、伴侶が亡くなるまで我慢を重ね、相続財産として半分をもらうかはご自分の判断次第です。2007年6月15日
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72号
早くも制度緩和 「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」
昨年度の税制改正で突然現れ、今年度の税制改正で早くも制度が緩和となった「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」。平成18年4月1日以後開始事業年度から適用となったこの新しい法律による申告が、いよいよ本格的に始まりました。今回は、改正の内容と用語の定義解説を交え、申告前の注意事項を整理しておきたいと思います。
1.制度の概要表1のような一般的な親族経営の同族会社(特殊支配同族会社)が、会社の業務を取り仕切る役員、つまり社長に対して支給する給与の額のうち、給与所得控除額に相当する部分の金額(表2)は会社の経費として認めない(損金不算入)、というのがこの制度の概要です。

ただし、その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(基準期間)の、税務上の会社の利益と社長に支給した給与などを基礎として計算した金額の平均額(基準所得金額)等が一定の金額以下となる事業年度については、この規定の適用はありません(表3)。

2.第一段階:特殊支配同族会社に該当するか否かの判定小規模な親族経営の同族会社は前記表1のように、ほぼ特殊支配同族会社に該当することになります。該当からはずれるため、①株式等を他人に11%持ってもらう、②他人の常勤役員を親族役員より多くする、等の方策を検討した会社も多かったのではないでしょうか。
①については、「社長や会社の意思と同一内容の議決権を行使することに同意している者の議決権はその社長や会社が持っているものとみなす」という規定の解釈をめぐって、親しい取引先などに株式持ち合いを頼んでも無駄なのでは、という憶測を呼んでいました。
ところが、最近国税庁が公表した質疑応答事例によれば、社長や会社と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、社長らの意思と同じ議決権を行使することに同意している者とはならない、ということが明らかにされました。これにより、特殊支配同族会社でなくなるために株式持ち合いが有効となる可能性が高くなり、注目を集めています。
3.第二段階:適用除外となる基準所得金額の判定-条件が緩和に判定基準である年800万円という金額が、今年度の税制改正により施行後わずか1年で、平成19年4月以降開始する事業年度から倍の1,600万円に緩和されました。ただし、平成18年4月1日から平成19年3月31日までに開始した事業年度については、基準所得金額が800万円のままですからご注意ください。

上記会社の場合、今回19年4月期の申告では、判定基準はまだ800万円のため適用となり、230万円もの金額が会社の課税所得に加算されてしまいます。しかし、業績、給与支給額ともまったく同じでも、今年度改正により翌期は適用をはずれることに。制度自体は残りますが、この緩和により、検討中の対策が不要となる会社も多くなると思われることは、ひとまず朗報でしょう。
4.実態が重要視される損金不算入の対象となる給与を受け取る「業務主宰役員」とは、会社の経営に最も中心的に関わっている役員一人をいいます。代表取締役や社長が該当するのが一般的ですが、必ずしも肩書きのみにより判定するのではなく、どのように経営に関わっているのかという実質が重要なポイントとなってきます。なお、損金不算入額を減らすことを目的に、業績とは無関係に社長の給与を大幅に下げるなど、実態とはかけ離れた役員給与の設定を行ったりすることは当然のことながら認められるものではありません。ご注意ください。
2007年5月15日
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71号
共有物の分割は慎重に!
遺産分割の時に深い考えもなく、何となく土地を共有にしてしまうこともあるでしょう。ひとたび共有にした土地をその後分割する場合は十分な注意が必要です。面積を基準にして共有持分に応じて分割すればよいと考える方がいらっしゃると思います。しかし、面積を基準にすると土地の形状、道路付けその他の事情により、それぞれの土地の時価の割合が共有持分の割合と等しくならない場合がほとんどです。この場合税務上どのような問題が生ずるのでしょうか。安易な分割をすると思っても見ない税金が課せられることも・・・
1.民法例えば、図1のように甲乙がそれぞれ2分の1の持分で共有の土地を、それぞれの持分に応じて分割したとします。
民法上は、A地にある乙の持分とB地にある甲の持分を交換したものと考えられています。
2.持分に応ずる分割所得税法上交換は譲渡に含まれますので、土地の交換による譲渡所得につき、所得税が課されます。
しかし、持分に応ずる図1のような分割(現物分割といいます。)は、その資産全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部に集約されただけに過ぎません。資産の譲渡(交換)による現実の収入があったといえるだけの経済的実態がないと考えられます。この考え方に基づき、所得税法基本通達33-1の6(共有地の分割)では、持分に応ずる現物分割があったときは、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。共有物の分割が持分に応じていれば、申告も不要です。
持分に応ずるとは、その趣旨から分割後のそれぞれの土地の価格の比が共有持分の割合におおむね等しいことであると考えられます。
3.持分に応じていない場合(1) 所得税
例えば、図2のように分割により価格差が生じる場合には、共有物の分割が持分に応じて いないため、原則として譲渡所得税が課されます。但し、一定の要件を満たす土地の交換は、 交換の特例(所得税法第58条)により課税されませんので、共有物の分割が持分に応じていなくても課税されない場合があります。
(2) 贈与税
個人間において対価を伴う取引により土地を取得した場合、対価の額が時価に比して著 しく低いときには、時価と取引価格との差額につき贈与税が課税されます。
図2のような分割が行われた場合、乙は甲から時価との差額の二分の一について贈与を 受けたものとみなされる場合があります。所得税の交換の特例の適用により譲渡所得税が 課税されない場合でも、分割後の土地に価額差が生じれば、贈与税が課税されてしまうのです。
4.分割する時は慎重に!以上のように、共有物の分割が持分に応じていれば税務上の問題はありません。持分に応じていない場合には、譲渡所得税及び贈与税の問題が生じます。土地を分割するときは、分割後のそれぞれの土地の時価の比に注意をすることです。安易な分割をすると、思っても見ない税金が課されてしまうかもしれません。
また、共有物の分割については、上記以外にも税務上の取り扱いが考えられますので慎重な対応が必要です。2007年4月13日
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70号
平成19年度の税制改正
昨年12月14日に自民党税制改正大綱・12月19日には財務省より平成19年度税制改正の大綱が発表されました。これに基づき税制改正が行われます。
今回の税制改正は税率など重要な部分は先送りし、会社法の施行・信託法の改正・税源移譲など制度の変更に税制を合わせるための改正が中心でした。
1.平成19年度税制改正大綱より主な項目をご紹介いたします。

2.重要な点の詳細上記のうち特に重要と思われる点について、ご説明いたします。
(1)減価償却制度
国際競争力を強化するため、主要国の中では日本においてのみ設けられている償却可能限度額(95%)を撤廃することになりました。
(2)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額の特例
地方への税源移譲により中低所得者は、所得税(国税)が減少し住民税(地方税)が増えることになりました。そのため今までのローン控除の計算ではせっかくの税額控除額を所得税から引ききれないことになってしまいます。それを防ぐために少ない税額控除をより長い期間にわたり受けることを選択できるようになりました。
(3)長期保有土地等に係る買換え特例
この特例は適用期間の延長があるのか無いのか昨年末ぎりぎりまで不明であったため、気を揉んだかたも多かったと思います。ひとまず平成20年末まで延長となりました。しかし自民党税制改革大綱の検討事項に他の買換え特例制度とのバランスにも配慮しながら見直しについて検討すると書かれておりますので次の延長があるかどうか、またやきもきすることになりそうです。(4)国税の納付手続
この改正により国民年金保険料や自動車税のように国税もコンビニエンスストアで納付することができるようになりそうです。
3.まとめ平成19年度の税制改正による国税の一般会計分税収は4,080億円の減少と試算されています。次年度は消費税の増税をやらなければならないでしょう。今年度の改正は企業にやさしく個人に厳しいといわれていますが、消費税増税となると益々末端消費者の税負担は重くなります。個人が豊かになってこそ美しい国と言えるのですけど...
2007年3月15日
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69号
市街地農地の宅地造成費と国税局長の定め
相続財産等を評価する場合、財産評価基本通達という税務職員向けの評価に係るルールがあります。通常は我々もこのルールに沿って計算することが多いのですが、この中に国税局長の定めというものを用いて評価する調整事項があります。この国税局長の定めは、通達自体の改正がなされなくても評価方法に影響を及ぼす事項です。借地権割合や借家権割合もその定めの一つですが、今回は市街地農地についてご紹介いたします。
市街地農地の評価方法市街地農地の評価額は、その農地が宅地であるとした場合の価額から、宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額を控除して算定する宅地比準方式が採用されています。したがって、宅地としての評価額から宅地造成費相当額を控除しているに過ぎず、農地といえども市街地農地に関しては、土地の評価額が大きく算出される傾向になっています。
国税局長の定め財産評価基本通達では、国税局長の定める金額をもとに宅地造成費を計算することとされているため、国税局長の鶴の一声で評価額が大きく変わることがあります。
この宅地造成費の計算が、東京国税局管内では平成17年分と平成18年分とで次のように改正されています。(各国税局管内によって異なります。)
なお、この定める金額はいままでは路線価の発表と同時に、8月に公表されています。
大きな改正点は傾斜地の宅地造成費に関する変更です。平成17年分は「傾斜度3度以下」の区分が存在していますが、平成18年分ではこれが削除されています。傾斜度が3度以下の土地に関して平成17年分までは、たとえ平坦地であったとしても傾斜地としての宅地造成費を利用することが可能な場合がありました。
そのため、平坦地でも1㎡当たり6,000円という金額を宅地造成費として控除することが可能であり、平坦地の宅地造成費の金額を用いることにより多くの宅地造成費を計算することもできたのです。しかし、平成18年分からはその取り扱いが削除され、結果として平坦地の市街地農地などの評価額は増加したといえるでしょう。
今後の対応財産評価基本通達に基づいた平坦地の宅地造成費の金額は、ケースによっても異なりますが、農地に関しては大幅に減少したのではないでしょうか。
しかし、この宅地造成費はあくまでも通達によって計算される一つの金額でしかありません。今後は、業者などから整地費用等の見積もりを入手し宅地造成費を計算することも方法の一つと考えられます。ただ、実際の申告にあたっては宅地造成費の取り扱いに関して、業者見積もりがそのまま課税庁に認められるか否かは説得力次第であり、税理士の腕も試されます。
またこの際、市街地農地の有効活用を図ることを考えてもよいかも知れません。例えば、賃貸マンションなどを建設すれば土地の評価額を下げることができるでしょう。平成18年10月には、財産評価基本通達自体の改正が行われ、平成19年1月1日以後に相続等が発生した場合の取り扱いが一部改正されました。しかしながら、上述のとおり国税局長の定めの変更によっても評価額が異なることもありますので、8月の路線価発表までは予断を許しません。
2007年2月15日
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68号
固定資産の交換の特例
~共有関係の解消で過去の遺産分割の後始末を親の財産は子供達が皆平等に。お金は均等に分けて土地や建物は子供達で皆平等に共有にしよう。一見平等に見えますが、上策とはいえません。将来のトラブルが予感できます。いざ建て替えだ、いざ売却だ、となると意思の統一は難しくなります。ましてや孫の代になるともう他人です。意思の統一は一層難しくなります。そんな状況に陥って初めて、こんな遺産分割にするんじゃなかった・・・などという話はよく聞く話です。
しかしながら、共有にしてしまったものは仕方がありません。その共有関係は売買なり贈与なり交換なりで解消されますが、無策のままで単独所有にしてしまいますと税金という思わぬコストがかかってしまいます。そこで今回は、交換は交換でも税務上の交換を利用して共有関係を解消しようというお話です。
1.交換の特例とは交換は税務上、所有する資産を一旦売却し、その後資産取得したと考えられるため、通常税金が課されます。しかしながら、一定の要件を満たす交換に限り、譲渡がなかったものとみなされ、税金がかかりません。この交換の特例は、不動産の持分でも適用があります。100%所有の不動産同士でないと駄目、なんて話はありません。
したがって、上記の要件を満たす交換を利用して共有関係を解消していく方法を考えていくこととなります。
2.共有不動産が複数あるときは・・・例1) 子A、Bが土地甲乙を持分1/2ずつ所有しているとします。土地甲の時価は4億円、土地乙の時価は2億円、Bは他にも土地丙を所有しており、その時価は1億円とします。
そこで下記の方法を考えます。
① 土地乙のBの持分(全体の1/2)と土地甲のAの持分1/2のうち1/2(全体の1/4)を交換
② 土地丙のBの持分(全体)と土地甲のAの持分1/2のうち1/2(全体の1/4)を交換結果、土地甲はBが100%を所有する土地に、土地乙丙はAが100%所有する土地となり、共有関係が解消されます。

こんなケースも考えられます。
例2) 子A、B、Cが土地甲乙丙を持分1/3ずつ所有しているとします。土地の時価はいずれも等しいとします。
そこで下記の方法を考えます。
① 土地甲のBの持分(全体の1/3)と土地乙のAの持分(全体の1/3)を交換
② 土地乙のCの持分(全体の1/3)と土地丙のBの持分(全体の1/3)を交換
③ 土地甲のCの持分(全体の1/3)と土地丙のAの持分(全体の1/3)を交換
結果、土地甲はAが100%を所有する土地に、土地乙はBが100%所有する土地に、土地丙はCが100%所有する土地となり、共有関係が解消されます。
3.共有物の分割という手もありますが・・・共有関係を解消するだけであれば、共有物の分割という方法もあります。しかしながら、①元々の不動産が狭小である場合、共有物の分割をしてしまうと土地が小さすぎて有効活用が難しい②共有不動産が複数ある場合、一箇所だけ分割しても根本の解決にならないし、所有不動産が点在し、管理が煩わしい、などという問題が考えられます。したがって、共有物の分割だけでは解決しきれない場合・整理不動産が複数ある場合には、共有物の分割も利用しつつ持分の交換を駆使すれば、短期間にまとめて共有関係が解消できるかもしれません。
4.最善の解決方法?何よりの解決方法は、そもそも共有にしないことです。仲のよい兄弟と言えども、です。そのためには、生前から誰がどこの不動産を相続するのか検討しておくことです。相続人の数だけ不動産がない・収益不動産の収益にばらつきがある、等の問題があるのであれば、事前に別の不動産に組み替えてもよいでしょう。また、相続人に周知する意味も込めて遺言書を準備することも有効な手段の一つです。相続税の申告は相続開始の日から10ヶ月後までです。財産の分割方法の検討は今すぐ開始できますし、時間の制限もありません。時間をかけすぎてまずいということはありません。所有不動産の把握と分割方法の検討、この機会に始めてみませんか。
2007年1月15日
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67号
新物納制度のチェックポイント
平成18年度の税制改正で、物納制度について大改革が行われました!今まで曖昧だった物納不適格財産が明確化され、手続きについても審査期間の法定化等に伴い、迅速化・明確化が図られました。今回は、特に注意したい点についてピックアップしてみました。
物納審査期間のスピードアップ今まで物納申請から収納まで通常2~3年、場合によっては10年を超えるような期間がかかっていましたが、18年4月1日以後相続開始分については審査が最短(原則)で3ヶ月、最長でも9ヶ月以内に「許可・却下」の回答が出ることになりました。6ヶ月の審査期間が必要とされるときは、①物納財産が多数ある場合、②物納財産が遠方に所在し、確認調査等に時間を要する場合、③財産の性質、形状等の特徴により管理処分不適格財産に該当するか否かの審査、収納価額の算定等に相当期間を要する場合となります。9ヶ月を要するときは、風水害等の自然災害により、物納財産の確認調査等が事実上不能な期間が継続するなど、特殊のケースの場合となります。
物納条件整備は相続前に万全に!税務官庁による審査がスピードアップされる代わりに、物納申請者の対応は物納条件整備等について今までのように物納申請をしてから、という訳にはいかなくなりました。原則として、物納申請時点で全ての必要な書類を提出しなければなりません!例えば、土地を物納する場合には、隣地との境界確認書・道路確認書・境界上の構築物(万年塀等)の所有者の報告書等を生前に完了しておかなければなりません。お隣と仲が悪い場合は、一時休戦?してでもこれらの作業は今から進めていくべきです。例外として、山林の物納申請では地積測量図は不要であるとも明言されました。山林も決して物納できない訳ではありません。
金銭納付困難要件の明確化今まで相続財産だけで金銭納付することを困難とする金額を計算していましたが、これからは相続人固有の特定の財産まで計算対象に含まれることが明らかになりました!更に、曖昧な臨時的な支出等について、想像力豊かな作文だけでよかったものが、証拠書類を添付しなければならなくなりました。これらによって、延納や物納が許可される限度額が厳格に計算されることとなり、納税者にとっては厳しい状況になりました。
物納許可後も利子税が・・・改正によって納税者にとって最も痛いのが利子税の負担です!これまではどんなに物納まで時間がかかろうともまったくかかりませんでした。しかし、期限内現金一括納付者と同等の扱いが出来ないとの趣旨から、原則として納期限の翌日から(審査事務期間は除く)延納と同様の金利が必要になります。ここで注意したいのは、物納許可後の移転登記手続き完了までの期間に対しても利子税が発生する点です。具体的には以下の5つの期間に対する利子税が発生します。
① 物納関係書類の提出を延長した場合の延長期間
② 書類や記載不備に関する補完通知の日~補完期限又は書類提出日
③ 収納のための措置通知の日~措置完了届出日
④ 物納許可~所有権移転手続きの完了に7日超かかった場合の超過期間
⑤ 物納許可取消の場合の許可日の翌日~許可取消日
延納から物納への切り替え・・・特定物納とは今回新しく追加された制度として、特定物納があります。延納許可者が、申告期限から10年以内であれば資力の状況の変化等により、その者の申請により物納に変更することが可能になりました。通常の物納と異なる点は、特定物納にかかる財産の収納価額が、その特定物納にかかる申請時の価額となります。こちらの新制度については、延納者の救済措置の感じが強く対応には慎重をきたすと思います。
以上、みてきたように今回の物納制度改正は納税者にとって審査の迅速化を除いて厳しい改正になりました。相続開始前までに物納申請要件の整備を万全に整えなければならなくなり、また延納同様に利子税が発生します。相続が何時発生するかはわかりません。準備を怠ると困るのは相続人あなたです。これからは早めの準備が何よりも重要な相続税対策になりそうです。2006年12月15日
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66号
相続の承認・放棄のための「熟慮期間」
相続が起きた場合、財産の承継の問題が発生します。この場合、税金の心配よりもなによりも、何を遺して亡くなったのかということをきちんと把握するのが第一歩です。ところが、調べ始めてみると思いのほか厄介な問題が見つかることもあります。思ったより預金は少なかった。逆に多額の借金が残っていた。土地はいったいいくらの価値があるのか。果たして借金を返せるのか・・・・。
最終的な相続財産はプラスなのかマイナスなのか見当がつかない。こうした事態に、まず自己の安全性を考えて「相続の放棄」という制度を思い浮かべる方も多いと思います。そこで今回は、放棄についてじっくり熟慮してみることにしました。
1. じっくり考えることができる期間は3ヶ月民法では、亡くなった方(被相続人)の財産を承継するか放棄するかについて、相続人自らが選択できることになっています。
一般的に「相続する」ということは『単純承認』と言われることを指します。相続人は被相続人のすべての財産と債務を無条件、無制限に承継することになります。民法ではこれについての手続き等は規定していませんので、相続の放棄や限定承認の手続きをしない場合には、単純承認をしたものとみなされます。
この放棄や限定承認の手続きができるのは、相続人が相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内と定められています。通常は被相続人の死亡の日から3ヶ月以内と考えてください。
2.熟慮期間内に調査と手続きが必要実に慌ただしい期間であるこの3ヶ月の間に、相続財産を調査して債務超過になっているのかどうかを確認するのです。そのうえで、手続きをとる必要があるのか、判断しなければなりません。この期間のことを「熟慮期間(考慮期間)」と呼んでいます。文字通り、承認でよいのか、放棄したほうがいいのかを、じっくり考えるための期間です。原則としてこの期間を過ぎてしまうと、相続放棄も限定承認もできないことになります。
相続の放棄は、放棄をしたい相続人ごとに、家庭裁判所に対して所定の書面をもって申述をするという手続きによってはじめて、法的な効力が生じます。生前に念書を書き、書面を作成して放棄の意思表示をしていても、何の効力もありません。
一方、限定承認は、相続人の全員で、家庭裁判所に対して所定の書面に財産目録等の書類を添えて申述しなければなりません。
ところで、限定承認を行った場合には、特別な税務上の手続が必要となりますのでご注意ください。相続財産が土地など譲渡所得の基因となる資産であれば、相続開始の日に被相続人から相続人に財産が時価で譲渡されたものとみなされますので、被相続人の譲渡所得を含めた申告(死亡後4ヶ月以内に行ういわゆる準確定申告)が必要となるからです。
3.熟慮期間は延長ができることもとはいえ、相続財産の内容が多額で複雑な構成だったり、借金についての明確な資料が発見できなかったりすると、とても3ヶ月では足りないこともあるでしょう。こうした場合には、3ヶ月であきらめることはありません。特別の事情がある場合には、家庭裁判所に熟慮期間の延長(伸長)を請求することができるのです。
申立て後、家庭裁判所でその申立てを相当と認めた審判を受ければ、熟慮期間は伸長されます。伸長期間は、申立てに拘束されず、具体的事案に応じて相続財産の調査等のために必要と認められる期間を判断して裁判所の裁量によって定められることになっています。
4.申立てには相当の理由が必要こんな事例もありました。相続が開始したのは4月、多額の借入金の存在が明らかではあったのですが、相続財産のほとんどが個々に実測も行われていない貸宅地だったのです。このケースでは、その宅地の貸付先が膨大な数であること、8月の今年度の路線価発表の後でなければその資産の正確な金額を把握することができないことなどを理由として10月まで、3ヶ月間の期間伸長を請求し、実際に期間伸長の審判を受けることができました。
ただし、申立ては原則として当初の熟慮期間である3ヶ月間のうちに行わなければなりません。また、単なる決断猶予のためだけではない、相当の理由が必要です。実務的にはこの判断も難しく、こうしたケースに該当しそうな場合には、とにかく早い段階からの専門家との連携がなによりも大切になってきます。2006年11月15日
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65号
相続税に係る配偶者の税額軽減制度の活用方法
相続税には配偶者の税額軽減制度と言うものがあります。相続後、配偶者の老後の生活保障等を考慮し税負担を軽減する制度です。そのポイントは、配偶者が法定相続分以上の財産を取得すれば、配偶者の税額軽減制度を最大に活かすことができ、その結果全体の相続税額が減少するというものです。果たして、父の相続の次に母の相続が待ち構えている場合はどうでしょうか。父の相続の時に相続税額が少なくて済めば良いという安易な考えで母が取得する財産の額を決めてしまうと、実はとんでもないことになってしまうというのが今回のお話です。
1. 相続税に係る配偶者の税額軽減制度の概要と具体例(1)概要
配偶者の税額軽減制度とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際にもらった正味の財産額(課税価格)が、次の金額のうちどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。
① 1億6千万円
② 配偶者の法定相続分相当額
(計算方法)
配偶者の税額軽減額=相続税の総額×AとBのうち少ない方/課税価格の合計額
A=上記①と②のうち多い方
B=配偶者の実際取得額注意点として、この特例の対象となる財産には、仮装又は隠ぺいされていた財産は含まれません。また、相続税の申告期限までに分割されていない財産も税額軽減の対象となりません。但し、未分割財産について申告期限から3年以内に分割された場合等一定の場合には、税額軽減の対象となります。
(2)具体例
例えば、次の場合、配偶者が取得する財産の額に応じて配偶者の税額軽減額及び納付税額は次表の通りとなります。
法定相続人:配偶者、子2人(成人) 正味の財産額:1,000,000千円
相続税の総額(配偶者の税額軽減前):333,000千円 >
この表から配偶者が財産の2分の1以上を取得すれば、最高に税額が軽減されることが解ります。
2.2次相続は?さて、父の相続の後、母の相続つまり2次相続が控えている場合、1次の父の相続で配偶者が取得した財産の割合に応じて2次相続の相続税額はどのようになるのでしょうか。
当然のことながら、1次相続で財産を多く取得すればするほど、2次相続の相続税額が多くなります。もちろん財産を費消(浪費?!)してしまえばこの限りではありません。
3. トータルでの税負担を考えた分割を!1次及び2次トータルでの税負担は、どうなるのでしょうか。

仮に配偶者が1次相続以前から自己が所有していた財産が無いものとし、1次相続から2年後に2次相続が発生したものとして計算すると表の通りとなります。
今回の条件では、1次相続において配偶者が3、子が7の割合で財産を取得した場合が、1次及び2次の合計で一番税負担が少ないという結果となっています。すなわち、1次相続で配偶者の税額軽減を最大限に使わなくても1次及び2次のトータルでは税負担が一番少なくて済むのです。
以上のことから、遺産分割或いは遺言書の作成については、2次相続までを考えて分割する必要があることが解ります。税額が少なくて済むからと1次相続で配偶者の税額軽減を最大限に使うと2次相続で負担が増大しトータルで損をしてしまう可能性があるのです。
但し、配偶者に固有の財産がどのくらいあるのか、1次相続の財産の額、法定相続人の数、小規模宅地等の評価減の特例の対象物件の有無等、条件が違えば結果は異なりますので、遺産分割或いは遺言書の作成の際には、十分に検討することをお勧めいたします。しかし、税法は毎年変わるもの、特に来年度には相続税の増税が盛んに議論されている昨今です。更に地価の変動やインフレ・デフレの影響等、思い通りに行かないのが世の常なのかもしれません。2006年10月16日