298号
令和8年度税制改正の概要
令和7 年12 月19 日に令和8 年度の税制改正大綱が発表されました。今回は、税制改正の主要項目のうちインパクトの大きい内容についてご説明します。
1. 物価上昇局面における基礎控除・給与所得控除の拡充
令和6 年11 月の3 党合意や足元の厳しい物価高を踏まえ、時限的に給与所得者の「課税最低限」が178 万円(基礎控除104 万円+給与所得控除74 万円)まで引上げになります。令和7 年分の「課税最低限」は160 万円(基礎控除95 万円+給与所得控除65 万円)でしたが、恒久制度として「基礎控除」及び「給与所得控除の最低保障額」がそれぞれ4 万円引き上げられます。加えて、2 年間の時限措置として中所得者層(年収665 万円以下)については基礎控除が104 万円まで引き上げられ、また、給与所得控除の最低保証額を5 万円引き上げる特例が創設されます。

上記の改正を受けて扶養親族等の合計所得金額要件は下表のとおりになります。

2. 高額所得者への課税強化
令和7 年から課税が強化されている超富裕層への追加負担が更に引き上げられます。給与や不動産所得等は高額になるほど税率が上がる累進税率のため、最高で55.945%の課税がされています。一方、株式の売却益など金融資産に対する課税は一律20.315%の課税ですみます。このため、金融所得の割合が多い富裕層ほど実質的な税負担が低くなっているという指摘がされてきました。
この税負担の公平性を図る観点から、追加税負担を課す年間所得金額の目安を現行約30 億円から約6 億円へ引き下げることになります。基準所得金額から控除する特別控除額を3.3 億円→ 1.65 億円に引き下げ、税率を22.5%→ 30%に引き上げます。この改正は、令和9 年分以後の所得税から適用されます。譲渡益が概ね3.37 億円を超えるような長期保有の不動産の売却をお考えの方は、令和8 年中に譲渡される方が税負担の大きな上昇を避けられそうです。
3.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の廃止
教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置については、利用実態や格差固定化の懸念、教育無償化等の拡充、NISA の拡充等を踏まえ、令和8年3月末までの適用期限を延長せずに廃止となります。ただし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用することができます。
なお、一括贈与の非課税廃止後であっても、既存の贈与税制度により、扶養義務者が支払う通常必要と認められる生活費・教育費の資金交付を必要な都度行う場合には非課税とされていますので、必要な都度の贈与で代替可能です。
4.相続税等の財産評価の適正化
貸付用不動産の市場価格と路線価等による評価額との乖離を利用して相続税額等を大幅圧縮している事例が散見される中、納税者の予測可能性を確保しつつ、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から、貸付用不動産の評価方法について次の見直しを行うこととされます。
①被相続人又は贈与者が課税時期前5 年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、路線価等による評価ではなく、相続・贈与時における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとなります。
なお、通常の取引価額は、課税上の弊害がない限り、被相続人又は贈与者が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額の80%相当額によって評価できることとなります。
②不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている(いわゆる商品として小口化された)貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとなります。
この改正は、令和9年1月1日以後に相続・贈与により取得する財産の評価に適用されます。ただし、上記①の改正については、この改正が通達に定められる日までに、被相続人又は贈与者が同日の5年前から所有する土地に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用せず、路線価等による評価となります。
通達改正後における貸付用不動産は、相続直前の駆け込み取得による節税が困難となる他、純粋な資産運用等による取得・建築であっても既存の評価額と比べて大幅に上昇する可能性があります。具体的な評価方法など今後の動向を注視していく必要があります。
5.その他の主な税制改正項目
<所得税>
〇 住宅ローン控除の延長と拡充並びに縮小
中古住宅についての借入限度額引上げや子育て世帯の上乗せ措置適用・床面積要件緩和
〇 青色申告特別控除額の引上げと縮小(最大75万円控除・書面申告時や簡易簿記時の縮小及びゼロへ)
〇 こどもNISA創設(つみたて投資枠を0~17歳に拡充し、年間60万円・限度額600万円)
〇 特定暗号資産の金融課税化(総合課税→約20%の分離課税・損失の3年繰越控除可)
〇 防衛特別所得税1%の創設及び復興所得税の改正2.1%→1.1%へ引下げ
〇 ふるさと納税の控除限度額の見直し
給与収入が約1億円以上の高所得者等について令和9年以後の寄付から控除限度額の上限設定(193万円)
<資産税>
〇 事業用資産の買換え特例の見直し
令和11年3月31日まで3年延長(一部の船舶等除く)
市街地再開発の一定の区域での課税繰延割合が80%→60%へ
長期所有土地建物等→国内の土地建物等への買換え資産については、建物・付属設備・構築物を事務所等の特定施設とその施設の業務遂行に必要なものに限定
〇 不動産取得税の課税標準の床面積下限50㎡→40㎡
適用期限を令和13年3月31日まで5年延長
〇 固定資産税の免税点が家屋:20万円→30万円へ
償却資産:150万円→180万円へ 令和9年度以後より
<法人税>
〇 少額減価償却資産の上限(30万円未満→40万円未満へ)引上げと延長(令和11年3月31日まで)所得税も
<消費税>
〇 インボイス制度における経過措置の見直し
小規模個人事業者について2割特例→3割特例とし、令和9・10年実施
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れに係る経過措置の最終的な適用期限を2年延長(令和13年9月30日まで)
〇 非居住者に対して行う国内所在不動産に係る役務の提供等について
消費税の輸出免税の適用対象から除外
2026年2月16日
