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COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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22号
平成15年度税制改正で土地税制はこう変わる!
今年も毎年恒例の税制改正大綱の発表がありました。
不動産取得税と登録免許税はゼロになるのでは?なんて期待をしていたのですが、そこまではいかないものの減税となりました。登録免許税については、時限立法ではなく半永久的に税率が下がります。
特別土地保有税、事業所税の改正と併せてご紹介します。
(1) 不動産登記に係る登録免許税現在、不動産登記に係る不動産価額の特例措置により、土地の登記にかかる課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1となっていました。残念ながら、この制度は平成15年3月31日をもって廃止となります。
この廃止に併せ、平成15年4月1日以後に受け付ける不動産登記に係る登録免許税については、税率が下がります(本法改正)。さらに、平成15年4月1日から平成18年3月31日までは、時限措置として本法改正後の半分の税率となります。
不動産の購入や贈与を考えている方、相続登記をいつ行うか考えている方は、平成15年4月1日前と後でどのくらい違うのか、気になるところでしょう。まとめると下記のとおりです。なお、赤字は増税、青字は減税です。全体的に少し下がった、という感じですが、何故か土地の遺贈・贈与は増税です。
建物については、平成15年は固定資産税評価額の評価替えの年ですので、課税標準額も下がり、さらに税率も下がります。売買は相手あってのものですので仕方がないかもしれませんが、相続登記は4月まで待った方がお得でしょう。死亡日と関係なく、登記申請をした日時点での税率が適用になるからです。
(2) 不動産取得税不動産取得税については、抜本的な改正はありません。
住宅の取得については、既に時限立法(平成16年6月30日まで)により税率が3%(4%⇒3%)とされていました。今回の改正で、商業地等、事務所・店舗等についても、平成15年4月1日から平成18年3月31日の間、税率が一律3%(現行4%)となります。
また、土地の課税標準を固定資産税評価額の2分の1とする特例は、平成17年12月31日まで延長されます。
(3) 特別土地保有税当分の間、特別土地保有税の課税は停止されます。
(4) 事業所税新増設に係る事業所税は、平成15年3月31日をもって廃止されます。
新増設に係る事業所税は、床面積2,000㎡を超える事業所用家屋を建築(増築も含みます)した建築主に課されます。税率は1㎡当たり6,000円です。例えば2,500㎡の事業所用ビルを建築した場合、1,500万円(2,500㎡×6,000円)もかかるのです。
建築主の方はなんとしてでも完成・引渡しを遅らせた方がお得です。ゼネコンの方に怒られそうですが・・・。
速報!平成15年度 『税制改正』
1.相続税・贈与税改正項目 改正内容 相続税・贈与税の最高税率の引き下げ 相続税・贈与税の最高税率を70%から50%に引き下げ、贈与税は年310万円まで税率10%へ!税率区分は以下の通りです 相続税 現行 税率 改正後 税率 平成15年1月1日以後の相続から適用 800万円
1600万円
3000万円
5000万円
1億円
2億円
4億円
20億円
20億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
25%
30%
40%
50%
60%
70%1000万円3000万円
5000万円
1億円
3億円
3億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
30%
40%
50%贈与 現行 税率 改正後 税率 平成15年1月1日以後の贈与から適用 150万円
200万円
250万円
350万円
450万円
600万円
800万円
1000万円
1500万円
2500万円
4000万円
1億円
1億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
50%
55%
60%
65%
70%200万円300万円400万円
600万円1000万円1000万円以下の金額〃〃
〃〃超の金額10%15%20%
30%40%50%改正項目 改正内容 相続時精算課税制度(仮称)の創設 相続・贈与の一体化措置により、従来制度の他、下記制度の選択が可能。相続時に贈与財産を相続財産として計算した相続税額から、支払済みの贈与税額を控除
・贈与の非課税枠は2500万円、非課税を超える部分は一律20%課税
・65歳以上の親から20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)への贈与
・資産の種類・回数・金額に制限なし
・相続財産と合算する贈与財産は贈与時の時価で評価
・本制度の選択を行う受贈者は、所轄の税務署長に所定の届出をする住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設 ①相続時精算課税制度について、住宅取得資金を贈与する場合に限り、非課税枠を3500万円とする
②住宅取得資金に係る相続時精算課税制度に限り、贈与者の年齢要件を撤廃
③平成15年1月1日から平成17年12月31日までの適用
④現行制度の非課税550万円は平成17年12月31日をもって廃止相続税額の2割加算対象者 養子となった孫(いわゆる孫養子)を追加、ただし、代襲相続人である者は除く 生命保険の権利評価の廃止 生命保険に関する権利の法定評価規定について、所要の経過措置を講じたうえ廃止、原則として個々の契約に係る解約返戻金の額を用いて評価 贈与税の更正等の期限 3年又は5年から6年へ延長
2. 個人所得税改正項目 改正内容 配偶者特別控除 平成16年分以後の所得税及び平成17年の住民税より廃止
3.金融・証券税制改正項目 改正内容 上場株式等に係る譲渡所得等 100万円特別控除の特例の廃止
平成15年1月1日以後5年間の譲渡に係る税率を10%(国税7%、地方税3%)へ(その後20%へ)
平成15年1月1日以降申告分離課税制度へ一本化配当課税 ①配当源泉分離課税(35%)の特例が平成15年3月31日をもって廃止
②平成15年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当についての申告不要の特例の適用上限廃止③平成15年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当等についての所得税の源泉徴収税率を20%(国税15%、地方税5%)へ 、ただし、平成15年4月1日から5年間は10%(国税7%、地方税3%)の優遇税率を適用
4.土地税制改正項目 改正内容 不動産流通・取得税 ①登録免許税
不動産登記に係る不動産価額の特例(土地の課税標準の2/3減額)は平成15年3月31日をもって廃止
上記に併せ、不動産登記に係る登録免許税の税率を抜本的に改正する
平成18年3月31日までの時限措置として、登録免許税の軽減措置を設ける②特別土地保有税
平成15年度以降、当分の間、特別土地保有税の課税を停止③不動産取得税
商業地・事務所・店舗等の税率を3%に引下げ(平成18年3月31日まで)
土地についての課税標準の特例(1/2)を3年間延長個人の土地譲渡益課税 土地・建物に係る長期譲渡所得の税率は26%(国20%、地方6%)で据え置き
5. 法人税改正項目 改正内容 中小企業税制 ①同族会社の留保金課税
自己資本(同族関係者からの借入金を含む)比率が50%以下の中小企業について、留保金課税を停止(平成15年4月1日から平成18年3月31日までに開始する事業年度) 現行の課税留保金額に対する税額の5%軽減措置を廃止②交際費
資本金1億円以下の中小法人(現行資本金5000万円以下)に対象範囲を拡大した上で、年400万円の定額控除額までの金額の損金不算入割合を20%から10%に引き下げ③少額減価償却資産の全額損金算入
中小企業が30万円未満(現行10万円未満)の減価償却資産を取得した場合、全額損金算入(平成15年4月1日~平成18年3月31日の間の取得)研究開発税制 ・中小企業技術基盤強化税制
試験研究費の12%が税額控除(3年間の時限措置として15%)ただし、法人税額の20%が限度IT投資促進税制 3年間の時限措置として、税額控除(10%)と特別償却(50%)の選択適用、対象はソフトウェアも含む、
資本金3億円以下の法人について、リース費用総額の60%について10%の税額控除(法人税額の20%を限度)
6.消費税改正項目 改正内容 事業者免税点制度 事業者免税点を課税売上高1000万円(現行3000万円)に引き下げ 簡易課税制度 適用上限を5000万円(現行2億円)に引き下げ 以上は平成16年4月1日以後に開始する課税期間から 2002年12月1日
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21号
あなたは「管理型」?それとも「所有型」?
今回は、『不動産管理会社』を設立する、というテーマでお話してみましょう。不動産管理会社とは言っても、ご自身がお持ちの不動産についてだけの仕事をする、いわゆる同族会社のことです。
不動産管理会社を設立することのメリットは、一言でいえば節税効果につながるということですが、さて、どのような節税効果があるのでしょう?
「管理型」と「所有型」一口に不動産管理会社と言っても、管理会社には「管理型」と「所有型」の2種類があります。「管理型」とは、土地建物の所有者は個人のままで法人が管理のみを行い、管理手数料を個人から法人が受けるという形態です。又は個人から同族法人が一括で賃借し、それを法人が第三者に転貸する形態を言います。一方「所有型」とは、土地は個人所有のままで建物だけを法人所有とし、法人自身が建物オーナーとして第三者に賃貸する形態です。
「所有型」をお勧めします!「管理型」では、管理手数料が経費となり、その部分が個人の所得から減少することに。「所有型」では法人が得た賃貸収入から役員報酬を他の親族に支払うことによって所得の分散を図ります。どちらも経費を増やしたり、所得を分散したりするわけですから節税効果はあります。しかし、これから法人設立を考えていらっしゃる方、「管理型」よりも「所有型」をお勧めします。
なぜなら「管理型」には問題点があるからです。それは個人が法人に支払う管理手数料です。以前は概ね賃貸収入又は法人一括貸の場合の転貸差額が20%までであれば税務上も問題がなかったのですが、昨今は税務署も厳しくなっています。実態としての管理業務があっての管理手数料と位置づけている傾向にあるようです。一方「所有型」を採用する場合、建物は法人が所有していますから「管理型」のように管理の実態ということで税務上お咎めがくることはありません。
借地権にご用心!「所有型」は、建物を個人から法人に売買する際、借地権という問題が発生します。言うまでもなく、法人が個人の土地の上に建物を建てられるのは、法人に借地権が存在するためです。地主である個人と借地人である法人との間で借地権設定にあたって、税務上法人は個人に権利金を支払わなくてはなりません。仮に権利金を支払わないと、個人から法人へ支払うべき権利金相当額を免除されたとしてその免除された金額に対する法人税が課税されてしまいます(これを権利金の認定課税といいます)。
権利金の認定課税を回避する方法はあるのでしょうか?実は、2通りあります。1つは相当の地代(更地価格の6%)を毎年支払う方法ですが、地価下落の続く今日ではあまり意味がないのでここでは詳述しません。もう1つは無償返還の届出書を税務署に提出する方法です。書面を提出するだけで前述の権利金の認定課税は回避できるのです。書面一枚で概ね土地の更地価格の6割~8割の権利金を支払わなくてすむのです。知っていると知らないとでは大きな違いですよね。
専門家の知恵を拝借すべし!個人の土地に法人の建物を建築することは、建物を新築する場合だけのことではありません。従来からお持ちの個人の建物を税負担なしに法人に移行する場合にも応用は可能です。ただし、法人税、相続税等すべてにかかわることなので、実行前には必ず専門家に相談されることをお勧めします。誌面の都合上すべてにわたって詳述できませんが、ご自分だけの判断ではつじつまが合わず、税務署からお目玉をくらい思わぬ税金を支払うことにもなりかねません。ここはやはり、「A.T.O」に相談でしょうか…。
2002年11月1日
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20号
土地の評価額は、遺産分割の方法次第!
土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価し、評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
市街地などにある宅地は、道路ごとに定められた1㎡あたりの標準価額をもとに、位置や形状による加算・減算の補正を行う路線価方式によって評価します。原則は、その路線価に面積を乗じて算出しますが、奥行による補正を行った上で、①間口の狭い宅地→間口狭小補正率②奥行が長すぎる宅地→奥行長大補正率③不整形な宅地→不整形地補正率(最高40%の減額)等の適用があります。今回は、遺産分割にあたって土地評価を下げる方法を考えてみました。
(1)相続人A・Bが50%ずつ共有にした場合450千円×0.98(奥行価格補正率)×600㎡=264,600千円…(イ)
普通住宅地区で奥行距離30m
∴奥行価格補正率0.98
(2)相続人A・Bが右記のように分割した場合A.450千円×1.00(奥行価格補正率)×247.5㎡=111,375千円
普通住宅地区で奥行距離15m
∴奥行価格補正率1.00B.450千円×0.98×0.85(不整形地補正率)×0.90(間口狭小補正率)×352.5㎡=118,921千円
かげ地割合247.5㎡÷600㎡≒0.41
普通住宅地区で面積352.5㎡ →地積区分A
∴不整形地補正率0.85
間口距離3.5mで間口狭小補正率0.90
A+B=230,296千円…(ロ)
(3)評価の引下げ額及び引下げ率(イ)-(ロ)=34,304千円…(ハ) (ハ)÷(イ)≒13%
(4)相続税額(AとBの取得金額を21億円とした場合)① 2,100,000千円×0.7(最高税率)-275,200千円=1,194,800千円
② {2,100,000千円-(ハ)}×0.7-275,200千円=1,170,787千円
③ ①-②=24,013千円
このように、合計すれば同じ面積でも、(2)の例では、Bの土地が、不動産的に評価が下がるため、分割の仕方ひとつで、かなり税額が減らせることになります。ただし、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」!1)宅地面積から判断して、著しく細長い形状になる。2)路線と接することがない。3)宅地の形状が三角形など不自然で、かつ、合理性がない、等の「不合理分割」にあたる場合には、全体を1画地の宅地として評価してから、各所有者に評価額を面積按分することになるので注意が必要です。何事も、ほどほどに!?2002年10月1日
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19号
相続税における債務控除と保証債務
相続税は、相続で取得した財産の価額(非課税財産を除く)から、負担した葬式費用・債務を差し引いた額を基礎として課税価格を算定し、計算されます。
ここでいう「債務」とは、相続税法14条1項により「確実と認められるものに限る」と規定されています。しかしながら、「確実に認められるもの」の意義については特段の定めはなく、各条項の解釈に委ねられているのが実情です。
債務として代表的なものとしては、銀行からの借入れ・未払いの固定資産税や所得税・借家人の方から預かっている敷金などがあります。これは、債務として問題の生じる余地はなく、正に「確実に認められる」債務です。
保証債務はどうでしょうか。たとえば、被相続人が旧友の頼みで、旧友の会社が借入れする際に、その債務の連帯保証人になったり、自分の土地にする抵当権の設定を承諾したりした場合です。
裁決例・裁判例では、保証債務は、原則として「確実と認められる」債務には該当しないとされています。しかしながら、相続開始時に主たる債務者が弁済不能に陥っている場合は別です。保証人や担保提供者が弁済しなければならないことが確実であり、主たる債務者に対し求償権を行使しても到底返還を受けられない場合には、「確実と認められる」債務に該当するものと解されています。
問題は、主たる債務者が返済不能の状態であり、求償権を行使しても無駄であるということを税務署に対し、いかに証明するかです。
まず、債務者が法人の場合は、返済が滞っており、かつ著しい債務超過の状態が相当期間続いていることを証明することが最低限必要です。倒産していれば確実でしょう。個人の場合も同様で、返済が滞っており、自己破産をしていないまでも資産が他にないことを証明することが必要です。これらの証明をするには、主たる債務者の協力なくしては不可能です。求償権を行使しても本当に無駄であるかは、主たる債務者自身しか分からないからです。もし、主たる債務者が協力的であれば、すべての財産・債務を検証することが可能ですが、一般的にはそんなに甘くはありません。つまり、相続人は求償権の行使が可能であるかないか分らないケースが多いのです。
相続が開始してから保証債務をしていたことが判明した場合は、遺族の方はいつ債権者から債務の履行を迫られるかという不安を抱えながら生活することになります。暫くして実際に返済を行なわなければならないこともあります。にもかかわらず、相続税を計算するに当たって、債務控除できないなんて・・・。
被相続人の恩に報いるため一生懸命返済を続け、完済される方も多いでしょう。しかし、保証人にだけはなってはいけないとの代々の家訓がある方もおられるとか。自分がいなくなってからも家族を不安にさせる行為であることは肝に銘じておきたいものです。
2002年9月1日
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18号
路線価と鑑定評価をうまく使い分けて申告を!
1 路線価が発表されました!
8月2日に国税庁から平成14年度の路線価が発表されました。
新聞報道等にもあるように前年に比べて、全国平均で6.5%の下落となっています。
10年連続の下落です。いったいどこまで下がり続けるのでしょうか。
都心回帰といわれるように、銀座や表参道など人気のある場所では、下落ではなく上昇しています。今後、ますます地域による二極分化が進むでしょう。
2 路線価は何のため相続税法では、財産は時価で評価すると定められています。
しかし、時価と言っても絶対的な算定基準などありません。
そこで、国税当局は時価を算出する一つの基準として財産評価基本通達を定め、その中で、土地は原則として路線価にて評価すると規定しています。
通達とは、国税庁長官から税務職員に対する指針のことをいいます。税務当局の取扱を統一するための決まりで、一般の会社で言う社内規定にあたります。そのため、納税者としては法令とは異なり、必ずしも従う必要はありません。
しかし、相続税・贈与税の実務では、土地は路線価によって評価するのが一般的となっています。
なぜかというと、路線価は上述のとおり税務職員にとっての時価であり、これに従っていれば当局と対峙することなく手続きがスムーズに流れるからです。
3 路線価ではなく鑑定評価という方法も上記の通達による評価と言っても、常に完璧な時価を示すものではあり得ません。
それぞれの土地には、その土地なりの個性もあり、この通達だけでは個別の事情はあまり考慮されないためです。
個別の事情を十分に考慮して、土地の時価を算出する方法として鑑定評価があります。路線価による評価に代えて、鑑定評価による金額を時価として申告する事も可能です。
4 鑑定評価にて申告鑑定評価を採用して相続の申告をしたケースをご紹介します。
Mさんは約2,100㎡の土地をお持ちでした。路線価での評価によると約4億円です。この土地は、線路の近くにあり土地が傾斜しているという状況でした。線路の近くにある土地は、騒音や振動の問題から住みたがる人が少ないものです。また、土地が傾斜しているため宅地にする場合、平らにするための整地・造成費用が必要です。売却する際のマイナス要因がいくつかあったのです。
しかし、財産評価基本通達では、騒音や土地が傾斜しているというマイナス要因は評価をする上であまり考慮されていません。
路線価による評価は、原則として利用単位ごとに路線価に面積をかけて算出します。しかし、このような広大な土地は単独で利用するのではなく、下記の図のように土地を分割して宅地として開発して利用することも多いでしょう。
開発する場合には、都市計画法によって道路や公園などの公共的施設を作らなくてはいけない、という制約を受けることになっています。そのため、公共的施設を作ると、利用できる面積が減ってしまい、宅地として売却できない部分は、売買金額の減額の要因となります。上記の要因を考慮した結果、鑑定の方が評価が低くなると考え、Mさんに鑑定評価をご提案しました。
鑑定の結果は約2億6,000万円です。この方の相続税の適用税率は50%でした。
路線価評価と鑑定評価の差額は約1億4,000万円ですので、その50%である 7,000万円の相続税を軽減することができたのです。鑑定費用を差し引いてもお釣りがきます。ただし、この鑑定評価も絶対的なものではありません。鑑定士によって評価する金額が違うことも、ままあることです。
鑑定の金額で申告しさえすれば税務署はすべてを認めるわけではありません。それなりのリスクを覚悟の上、適切な鑑定を行うことが肝要です。路線価と鑑定評価を上手に使い分ければ、相続税・贈与税の大いなる工夫も可能です。
2002年8月1日
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17号
組合せ方でまだまだ安くできます、譲渡税!
相続税の取得費加算の特例とは?
土地等を売却した場合、税金はその売却によって得られた利益に課税されます。言うまでもなく、この売却益は、売却代金から取得費や譲渡のための諸費用を控除して計算します。その中に、「相続税の取得費加算の特例」と言う取得費に相続税の一部を加算する特例があります。ただし、この特例は、その相続税の申告期限後3年以内の売却についてのみ適用されるため、売却の時期については注意が必要です。
それでは、相続税の一部の金額とはどのように計算するのでしょうか。土地等の場合について算式にすると、
相続税額×土地等の合計額/課税価格(債務控除前)=取得費加算額
となりますが、算式だけではわかりにくいので具体例でみてみましょう。土地A 40,000万円
土地B 50,000万円
現預金その他 10,000万円
債務・葬式費用 △30,000万円
課税価格(債務控除後)70,000万円 相続税額 20,000万円
(計算) 20,000万円×(40,000万円+50,000万円)/(70,000万円+30,000万円)=18,000万円
以上から、取得費加算額は18,000万円となります。
買換え特例との組み合わせ話は変わって、事業用に使用している土地等を売却して別の土地等に買換えようとしたときの特例です。これは、「特定事業用資産の買換えの特例」と呼ばれていて、取得する買換え物件の金額にもよりますが、売却代金以上の物件を購入した場合が節税効果は最大になります。簡単にいうと売却益のうち20%だけを課税。残る80%については次回その物件を売却したときに課税しようという特例です。しかし残念なことに、それでも売却益の20%の課税だけは免れません。
さて、ここからが本題です。この免れない20%の課税をなんとかできないものか、と知恵を絞ります。この特定事業用資産の買換えの特例に、上述した相続税の取得費加算の特例をプラスしてはどうでしょうか。先程の具体例を使ってみてみましょう。
相続により取得した土地A、Bのうち、土地Bを売却し、その売却代金で別の土地Cを購入します。ただし説明の便宜上、時価は相続税課税価格と同じとします。土地B(時価)50,000万円(10年超所有)
取得費 2,500万円 取得費加算額18,000万円
土地Cの購入額 50,000万円この例では、購入物件の金額が売却代金と同額であるため、特定事業用資産の買換えの特例を利用すると売却益(売却代金から取得費を控除した)の20%部分に課税されます。
(50,000万円-2,500万円)×20%=9,500万円
しかし、この免れない20%部分の課税9,500万円に、上述した取得費加算の特例が上乗せで適用できるのです。すると、取得費が取得費加算額の分だけさらに増えることになります。つまり、売却益の20%の課税部分から差し引くと取得費加算額の方が大きくなり、課税部分がなくなってしまうと言う訳です。
9,500万円-9,500万円(※)=0円
(※)18,000円>9,500万円 ∴9,500万円20%部分の課税はやむを得ない!と、諦めていた事業用資産の買換え特例も、相続財産なら100%買換えが可能なのです。
2002年7月1日
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16号
上場株式を見極める眼力で大儲け?
1.近頃の株主総会
毎年6月下旬になると、上場企業の株主総会の記事が新聞紙上を賑わせています。通常は、「荒れた株主総会!」というような見出しで、何かの事情で話題になった企業の株主総会の様子が取り上げられていますが、今年は少し様子が違っているようです。私が今年初めて新聞で目にした記事は、「株主総会は楽しく!」という見出しのものでした。その内容は、銀行との持合株式の解消にともない、個人株主を取り込み、長期安定株主作りを目的として、株主総会において個人株主に対して様々なサービスを行うというものです。例えば、ある大手芸能プロダクションは、日曜日に株主総会を開催、総会後の懇親会には若手タレントが参加、また、株主一人につき家族三人まで同伴可能などなど・・・・。
こんな記事を読むと、資金さえあればイメージのいい上場株式に投資するのも面白いのかなと思うのは私だけでしょうか。
2.今がお得な上場株式税務上においても、上場株式の譲渡等について次のような様々な改正が行われています。
ここで、私が目をつけたのは、平成17年です。
もし、平成14年中に1000万円を上場株式に投資したとします。これを平成17年まで、2年を超え所有し売却します。この場合、もし株価が2000万円に上昇していても、購入価格1000万円までの利益については非課税ですから、利益1000万円については無税でのまる儲けです。また、売却損が出た場合は、翌年以後3年間はその損を繰り越し、他の上場株式の譲渡益と相殺することができます。もし、平成14年において2000万円の購入をした場合は、購入価額1000万円部分は上記のようになり、残りの購入価額1000万円部分についての譲渡益についても、100万円までの特別控除、税率10%の有利な規定の適用が可能です。余裕資金があり、株価が上昇する見込みがある会社を見極める眼力があれば、今年中に投資すると平成17年には非課税規定で大儲けできる可能性があります。安全性を考えて眠ったままの預金をそのままにしておくか、または、ペイオフ対策として上場株式に勝負をかけてみるか、その判断は、なかなか難しいものですが・・・・。
2002年6月1日
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15号
所得税高額納税者公示 《長者番付》は回避できる!?
今年も毎年恒例の「長者番付」が、5月16日に発表されました。新聞やテレビで報道されたのは、全国上位100位まで。100位の方の税額は2億6千530万円。こんな税額は一生納付することはないから大丈夫、と思う方が大半でしょう。
しかし、発表されたのは上位100名だけではありません。所得税額1000万円を超える高額納税者は、5月16日から31日までの期間、税務署に氏名・住所・所得税額が掲示されます。これを<高額納税者の公示制度>といいます。この制度により、今年は全国で7万9838人が公示されました。 本来ならば高額な納税をすることは、名誉の証(?)。しかし、DMや勧誘の電話、寄附のお願いで追い回され、プライバシーの侵害、無用心極まりない制度と嫌がる方も多いようです。借金の保証人になっているなど、どうしても収入を公にしたくない事情がある人もいるはずです。公示を逃れる方法はないのでしょうか?
公示を回避する方法所得税の高額納税者の公示は、3月31日までに提出された申告書が対象です。言い換えれば、3月31日までは1000万円を超える税額の申告書を提出しなければ、公示は逃れられるのです。
対策1.4月1日以降に申告する
一番オーソドックスな考え方です。しかし、期限までに申告しなかったと言う理由で無申告加算税が本税の15%相当額(調査前なら5%)。納期限までに納税が無く、遅延利息的な性格の延滞税が、納付日までの計算で本税の14.6%(2ヶ月以内の期間なら2002年度は年4.1%)かかり、お勧めはできません。
対策2.修正申告を活用する
例えば、期限内に税額が1000万を超えないようなインチキな申告をし、4月1日以降に真実の修正申告書を提出する、という方法があります。ここで心配なのは、過少申告加算税(差額の10%または15%)・延滞税といったペナルティですが、税務署に指摘を受ける前なら過少申告加算税はかかりません。
また、納税だけは実際の納税額を3月15日までに納付する、と言う方法もあります。つまり、申告書に記載された納税額と異なる真実の税額を納付しておくのです。これなら、期限内に完納しているので延滞税はかかりません。税務署も申告書と納税額の付け合せを3月15日に全部完了するわけではありません。あっと言う間に4月1日です。4月1日を待って真実の申告を修正申告の形で提出すれば、何の問題もないのです。
対策3.取り敢えず買換え申請
今なら来年末までの期間限定で活用できる方策です。事業用資産の買換えを応用するのです。
原則として、土地、建物等固定資産を売却した場合には、売却益に対して税金がかかります。ただし、かわりの資産を購入する場合には、売却益の60~100%に対する課税を先送りにできる制度があります。この制度はたくさん種類がありますが、売る物件・買う物件・またその組み合わせ・・・要件が複雑です。
なかでも最も使い勝手のいいものが21号買換えといい、国内にある所有期間10年を超える事業用の土地等、建物又は構築物を売却し、国内にある事業用の土地等、建物、構築物、機械装置を購入すれば、最高で売却益の80%の税金を先送りにできます。売った年に買うのが原則ですが、申請書さえ提出すれば翌年まで購入をする期限が延長(事情が事情なら最長3年間延長可)されます。ただ、その場合には、「いつ頃・いくらぐらいで・何を購入する予定」かを、申請書に記載して申告期限内に税務署に提出しなければなりません。しかし予定はあくまでも予定。当然、購入できないこともあります。購入できなかった場合には、「やっぱり買えませんでした」として修正申告をします。この修正申告、修正の期限さえ守れば延滞税はかかりません。買う予定がなくても買う予定あり、と申請することで、ペナルティなしで納期限は1年延長。売却に係る税額80%カットで公示を逃れることができるかもしれません。逃れられなかったとしても公示される税額を少なくすることができます。ただこの制度、平成15年末で終了です。公示回避の視点からも、本当に名残惜しい制度です。もはや、この公示制度の存在価値はなく、一日も早く廃止とすべきだと思っているのは筆者だけでしょうか・・・
2002年5月1日
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14号
分割次第で意外な税金!
相続税はプラスの財産(現預金・土地など)からマイナスの財産(借入金など)を控除して残った財産に対して課税されます。一般的にマイナスの財産の方が多ければ相続税はかからないと認識されています。
確かにこの考え方は間違いとはいえませんが遺産分割の仕方によっては、マイナスの財産の方がプラスの財産より多いのに相続税が課税されてしまう事もあるので注意が必要です。
以下のようなケースがありました。
1 借金の方が多かった被相続人AさんとBさんの父親がなくなられた場合です。母親は既に亡くなっています。
父親の所有の資産は預貯金2億円と貸ビル(相続税評価額8億円、時価10億円)でした。
負債は借入金が12億円です。
2 遺産分割の仕方によっては税金が遺産分割協議に際し、Aさん、Bさんが話し合った結果、2つの案がでました。
税理士に相談したところ、その結果に2人は驚愕したのです。
①財産・債務とも均等に相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 5億 財産 5億
債務 6億 債務 6億
課税価格 △1億円→0 課税価格 △1億円→0
課税価格の合計額が0であるため、相続税はかかりません。② Aさんが貸ビルと借入金をBさんが預貯金を相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 12億 債務 0億
課税価格 △4億円→0 課税価格 2億円合計 0+2億円=2億円
注意すべきは、このケースではAさんのマイナス分とBさんのプラス分を相殺して、△4億
円 +2億円=△2億円→0とはならないことです。
つまり、『△4億円→0』が相続税の計算方法のミソなのです。
結果として課税価格の合計額が2億円となり、
何と、Bさんに約2,800万円の税金がかかってしまうのです。
3 債務は分割をしないで申告という方法も・・・あまり大きな声ではいえませんが実務的には、とっておきの手があります。
それは、債務を分割しないのです。
債務が分割されていない場合、相続税の計算上は法定相続分に従いAさん・Bさんそれぞ
れが債務を2分の1づつ 相続したものとします。
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 6億 債務 6億
課税価格 2億円 課税価格 △4億円合計 2億円+△4億円=△2億円となります。
上記2②のケースとは違い、債務が未分割の場合は、相続税法の規定(基本通達13-3)
によりAさんのプラスとBさんのマイナスを相殺できるのです。
その結果、相続税はかかりません。申告期限が過ぎても債務の分割が行われない場合どうなるのでしょう?
税務署は早く債務を分割するようになどと、債務の分割について介入してくることはありません。
納税者の自主性にまかせているのです。
特にこのケースのように、債務の方がプラスの財産より大きな場合、税務署は当初から相続税の課税対象としては見込んでいない事も多いのです。相続があった場合、プラスの財産の分け方ばかりに意識がいきがちですが、債務の分け方にも注意が必要です。
遺産分割の方法によっては、思わぬ税金が・・・・・2002年4月1日
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13号
「ついに解禁となったペイオフ!」
4月1日、ついにペイオフが解禁しました。
いつもはお客様と確定申告時期にお会いすると話の中心はやはり「税金をいくら払わなくてはならないか」でしょうか。
しかし、今年はちょっと様子が違いました。「大手銀行なら大丈夫なのかしら?」「金が人気のようだけど・・・」「みなさんどうしてるの?」こんなペイオフの話題が多いこと多いこと。今回は決済性預金(普通預金や当座預金など)もペイオフの対象となった場合を税務面から考えてみました。
生活関連預金たとえば、確定申告により4,500万円の納税を口座振替で行うため、口座に5,000万円の預金をしていた場合を考えてみましょう。その金融機関が突然破綻した場合、口座は凍結されるため納税できません。納税資金は戻らず、翌年の確定申告でも税金が軽減されることはないのです。税務署からの延滞税の請求はさすがにないかもしれませんが・・・。
現在の税法では、金融機関が破綻して個人の預金が戻ってこなくても税務上何も救済されません。
所得税法では、雑損控除というものがあります。簡単にいうと納税者などが有する資産(棚卸資産や生活に通常必要でない資産などは除きます)について、災害・盗難・横領による損失が生じた場合には、一定の金額を所得から控除できるというものです。
しかしながら金融機関の破綻は、災害・盗難・横領には該当しませんので、雑損控除はできないのです。 個人からしてみれば、自分の預金が切り捨てられるわけですから、税金面で少しでも配慮してもらいたいと思う人も多いでしょう。せめて、雑損控除の対象にはしてもらいたいものです。
事業性の預金現在の税法では破綻前の金融機関に預けてある法人や個人事業の預金の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定は認められていません。つまり、金融機関が破綻するかもしれないというリスクを、取引先への売掛金等と同様な債権とは見てくれないのです。
もちろん、金融機関等が破綻(更生手続き開始の申し立て)した場合は、ペイオフとなった金額の50%、更生の認可等の決定があった場合は一定額を貸倒引当金に繰り入れることができます。
ところで、金融機関が破綻した場合、個人事業に使われている口座は損失として、経費となります。しかし、その個人の非事業用の口座の残高は当然、対象から除かれます。税務署は事業用と非事業用の口座をどのように区別するのでしょうか。正規の簿記の原則に従った帳簿書類を作成し、所得税の青色決算書の預金の残高に金融資産全額を記載すれば、もしかしたら・・・これまで論じられていませんでしたが、金融機関に預金することへのリスクをどう考えるか、相当数の金融機関の破綻があった場合、大きな問題となっていくことでしょう。
決済性預金の全額保護は平成15年3月末までです。それまでに我々預金者は格付け・自己資本比率などを自ら検討し、安全な金融機関を選ばなくてはなりません。さらに、ペイオフ対策とした金融商品も今後多く開発されてくると思われますので、分散投資を真剣に検討する時期にきています。2002年3月1日
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12号
税務職員の誤指導とその対応策について
昨年の6月22日に新規の法令解釈通達が発遣され、税務職員の誤指導により修正申告をした場合や更正処分を受けた場合の延滞税免除の取扱いが明らかになりました。しかし、本税についての納税義務はなくなりません。なにか対策はないものでしょうか?
1.国税庁の職員が書いた書籍についてちょっと大きな書店の税金関係のコーナーを見てみると、財団法人大蔵財務協会が発行した書籍が多数並んでいます。現役の税務職員が執筆をしていることから(例えば東京国税局法人税課長○○○○編)、実務家のあいだでは税務当局の見解と同一視されていました。しかし、これらの書籍は税務職員の個人的見解となっています。役職名が表示されていたため紛らわしいことから、最近は役職名を表示せず、直接個人名○○○○とだけ表示されているようです。くれぐれもこれらの書籍については、過信は禁物です。
2.国税庁が事前照会の回答文書をホームページで公開税務職員が書いた書籍が税務当局の公的見解に当たらないとしたら、税務の取扱いについて大きな問題がある場合、どのように対応したらよいのでしょうか。その一つの方法が、国税庁に対する事前照会です。昨年の4月に情報公開法が施行されました。その影響もあるのでしょう。国税庁が事前照会等に対し多数の納税者からの照会があると予想されるものについては、文書回答の内容を国税庁のホームページで公表することになりました。
現在ホームページ上で、土地信託に関する三井不動産㈱の回答例が公開されています。
3.事前照会に対する文書回答について税務職員に口頭での相談は、後に言った言わないの問題が生じる可能性があります。そこで、税務上の取扱いに関する事前照会に対して文書による回答を請求することができます。(手続きについては、税務署にパンフレットがございますので、そちらをご覧ください。また、国税庁のホームページにも掲載されています。)
最後に一言!税務の取扱いについては、信頼のできる税理士に相談するのが一番ですが、税務署に電話したり直接行ったりして相談することもあるかもしれません。文書による回答が一番安心できますが、手間や時間がかかるため相談は口頭になることも多いでしょう。せめて、その際は税務署に相談した日時、担当者名、相談内容についてできるだけ詳細に記録することをお勧めします。ところで、最近の税務調査は昔と比べて甘くなっているという話を聞いたことがあります。その原因の一つに、税制が年々複雑になっているため、その取扱いについての相談も年々増加し、税務職員がその対応に追われることから調査(準備)が手薄になるというものでした。税務の取扱いについての相談は、年々手厚くなってほしいものですが、いかがなものでしょうか……。
2002年1月1日
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11号
2001年 年末調整チェック
今年もまた年末調整の時期を迎えました。
給与所得の方にしか関係しないことですが、大企業では、毎年、年調事務に多額の予算を投入し、スピーディーな事務処理のために独自の書式を作成して人事部へON LINE申告、という対策をとったりと四苦八苦です。
とはいっても印鑑を押して書類保存、という作業を省くことはままなりません。
本年度も所得税の定率減税が実施されます。年末のささやかな楽しみのために、改正点と提出書類作成上の注意点をお知らせいたします。
改 正 点●第三分野の保険契約が 契約内容に応じて区分
入院により医療費が支払われる保険等については、損害保険会社と締結したものでも、生命保険料控除の対象となります。
7月1日以降保険期間開始のものについて適用されます。どちらに該当するのか、保険会社から送付される控除証明書の記載事項に注意して申告しましょう。
●小規模企業共済等掛金控除の対象に、個人型年金加入者掛金が追加
国民年金基金連合会の個人型年金掛金が小規模企業共済等掛金の範囲に追加されました。対象者は、厚生年金・適格退職年金等および確定拠出年金の対象になっていない企業の従業員の方で、10月1日以降適用されます。
申告書チェック年末調整の申告書類で毎年、間違えの多い点は次のとおりです。
● 扶養親族であるお子さんの社会保険料を負担されている場合は、本年中の支払金額を 申請して社会保険料控除を受けましょう。 共稼ぎのご夫婦が、大学生のお子さんの国民年金保険料を負担された場合は、どちらか所得の多いほうから控除しましょう。
● 社会保険料控除は本年中の実際の支払金額を申請しましょう。追納分も控除できます。
● 社会保険料を前納したら、すべて支払い年分に控除を受けます。
ちなみに国民年金保険料を毎月納付していたら、控除額は159,600円,1年分 前納していたら155,750円です。
● 支払金額が9,000円以下の場合、控除証明書がいらないのは一般の生命保険料の場合です。年金保険料や損害保険料の場合は、金額の多寡に係らず、添付が必要です。コピ ーではなく、原本を。
● 海外旅行に行く際、傷害保険に加入された方は、損害保険料控除を申請しましょう。コーヒー一杯分ぐらいは税金が戻ってくるかもしれません。
● ○○年金保険という名前の一般生命保険も多いものです。名称に惑わされることなく、区分して申告しましょう。
● すべて必要な情報は、控除証明書に記載されています。今年は一読しましょう。
● 控除証明書を紛失した場合は早めに再発行の依頼を。この時期、再発行ヘルプデスクを設置して対応する保険会社もあります。
やっぱり今年も最後はあの人か、と総務・人事関係者を悩ませ、ブラックリストに載らないように、関係書類のご提出はどうぞお早めに。2001年11月1日