お役立ち情報
COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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25号
不良資産の活用法
バブル時代に収益物件として非常に価格の高い賃貸不動産をお買いになった方はたくさんいらっしゃると思います。たとえば、当時1億円で購入した物件、現在の時価は世に言う「半値7掛け2割引!」のものも・・・。借入金で購入した方は時価よりも借入金の残高が多く、利回りが悪いので売却しようとしても、借入れ(債務)が残るだけ。このような資産に手を焼いていませんか?
そこで、この不良資産を使って所得税、住民税の大幅な減少を図る方法があります。それは、同族法人にこの不良資産(簿価1億円賃貸マンション)を時価(3,000万円と仮定)で売却して7,000万円の譲渡損失を発生させる方法です。給与所得が1,000万円、不動産所得が700万円の人であれば、加減算をすると1,000万円+700万円-7,000万円=-5,300万円となります。譲渡した年の所得はマイナスのため所得税・住民税は0(ゼロ)!しかし、ここで一つ要注意点があります。この控除しきれなかった残額は青色申告届出書を提出していない方や他に所得のないサラリーマン等(白色申告と言う)は翌年以後に繰越ができません。単年度どまりの節税にしかならないのです。
しかし、青色申告者であれば、控除しきれなかった5,300万円の損失は3年間繰り越すことができます。他の所得に大幅な変動がなければ翌年以後3年間も所得税・住民税ともに0(ゼロ)!!下表で比較してみましょう。青色申告では通算で4年間も納税が全く無しになり、白色申告者とは4年間に何と1,731万円もの税額の差が生じるのです。青色申告恐るべし!また、青色申告者であれば、時価が購入価額より高く含み益のある資産を翌3年以内に譲渡すれば、譲渡所得と繰越損失で相殺が可能です。そのため単年度における多額の納税を回避することもでき、3年以内であれば、色々と策を練ることができるのです。
一方、同族法人では購入した資産の家賃収入発生によって利益が発生します。そこで、この利益を他の親族に役員報酬として支払うことにより所得の分散も図れます。所得分散の親族が子や孫であれば相続税の節税にもつながることになるのです。
以上の手法により、不良資産でも活用の仕方によっては負の財産から価値ある財産へと変貌します(あくまでも青色申告者のみの有効活用方法です)。この機会にご自身の資産の健康診断をしてみてはいかがですか!治療は勿論"ATO財産診療室(?)"です。2003年4月1日
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24号
地価下落の今だから、「無償返還の届出書」を活用しよう!?
社長の所有する土地の上に、法人が建物を建設したとしましょう。この場合には、借地人は法人で、地主である社長に対して地代を払うことになります。今回は、不況の折、この地代が高すぎて支払が困難になったA社を例にあげて、地価下落の今だからこそ利用できる改善策について考えることにしてみましょう。
1.最初はよかったけれども・・・バブル経済が弾けたとき、つまり地価が一番高かった時期のお話です。社長の所有する土地の上に、自分の会社(A社)名義で建物を建築しました。その際、A社は社長に対して、年間1,200万円の地代を支払うことにしました。当時、土地の価額が2億円だったので、土地の更地価額に対して年6%の地代ということになります。通常、一般的な地代の相場が年間400万円位だったので、約3倍に相当します。地代が資金繰りを圧迫するとはまったく考えていなかったのです。
2.高額な地代を支払う必要性?ところで、なぜこのように高額の地代を支払うことにしたのでしょうか。それは、法人の借地権利金の認定課税を避けるためだったのです。簡単に説明すると、通常、第三者の間では借地人は高額の権利金を支払って、地主と土地賃貸借契約を結ぶことになります。しかし、高額の権利金を支払わずに済ませてしまうことも、同族関係者間では実際に多いのです。ただし、その代わりに会社に対して支払わなくてよくなった権利金部分に対して、次の「3」で述べる対策を講じなければ、その受贈益に対して法人税が課税されてしまいます。
3.「相当の地代の届出書」と「無償返還の届出書」その対策は、大きく次の2つの方法があります。1つは、「相当の地代の届出書」を提出し、先程の更地価額に対して年6%の地代を支払う方法です。この方法は、土地価額の変動に応じ地代を改訂する方式もありますが、今回は改訂しないで据え置くことが前提です。この方式は、簡単にいうと権利金の分割払いみたいなものです。特徴としては、地価が右肩上がりのときに地代を据え置くことで、法人が権利金の支払い無しで借地権を手に入れることができます。一般に、自然発生借地権と呼ばれているものです。もう1つは、「無償返還の届出書」を提出し、将来、社長がその土地を使う必要が生じたときなどは、無償で返還する旨を税務署に届け出る方法です。この場合には、地価が変動しても借地権は発生しません。したがって、通常は一般的な地代を支払うことになります。
4.A社の現状A社は「据置き型の相当の地代方式」を選択しました。なぜなら、A社はまだまだ地価が上がるだろうと思っていたためです。しかし、長引く不況で会社は赤字となり、地代の支払が苦しい状況になってしまいました。社長の方は会社から実際の地代を受け取ることができなくなってしまったので、地代収入を未収のまま申告し、所得税を払い続ける結果となりました。社長は、まず会社の業績を向上させ、会社を資金繰り地獄から脱出させなければならないのに、自分の所得税のための資金の捻出まで考えなければならなくなったのです。地代の引き下げも考えましたが、途中で地代を引き下げると借地権の絡みで法人税が課税されるとの心配から、それを躊躇してきたのでした。
5.地価下落の今だからこそ!しかし、地価が下落し続ける限り、「相当の地代方式」では、自然発生借地権は発生しないのです。確かに、社長が考えたように「相当の地代方式」を採用し、地代を据え置いた場合には、途中で地代を減額すると先程の借地権に対する法人税の課税の問題が生じてきます。ところが、これは地価が上昇しているときの話なのです。ここで、もう一度A社の現状について考えてみましょう。A社が土地の賃貸借を開始したのは地価が一番高いときでした。ということは、その後地価が下落し続けたため、A社には借地権が生じていないことになります。それならば、「無償返還の届出書」を利用したらどうでしょうか。A社の場合、地代は年1,200万円から通常の地代である年400万円となり、3分の1の支払で済むのです。これで、会社の資金繰りは改善し、社長に対する所得税の問題も一気に解決です。地価下落の今だから使える「無償返還の届出書」。是非、ご検討ください!
2003年2月1日
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23号
固定資産税評価額の付されていない家屋の評価
今回は、統一的な評価方法を早急に定めなくてはいけない財産評価の一例をご紹介します。
家屋の評価は、財産基本通達89(家屋の評価)に基づき、当該家屋の固定資産税評価額に評価倍率(1.0倍)を乗じて計算した金額によって評価することとされています。
では、固定資産税評価額が付されていないうちに相続税の申告期限を迎えてしまった場合はどうなるのでしょう。例えば、新築家屋の完成・引渡しが平成14年2月で、相続開始が平成14年4月のようなケースです。相続税の申告期限は平成15年2月となりますが、申告期限までに平成15年1月1日の現況で付される固定資産税の賦課決定通知書は届いていないのです。
この場合、財産評価基本通達にその評価方法が明示されていないことから、財産評価基本通達5(評価方法の定めのない財産の評価)の定めにより評価します。つまり、この通達に評価方法の定めがない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価するというのです。
それを踏まえ、市販の財産評価の書物によると、固定資産税評価額の付されていない家屋の評価方法の順序は次のとおりとあります。①申告期限までの間に、その家屋の課税時期の状況に応じた固定資産税評価額が新たに付された場合には、その固定資産税評価額により評価する。②付近にある状況の類似した家屋の固定資産税評価額を基として、その付近家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額により評価する。③付近に現況の類似する家屋がないときは、その家屋の再建築価額から経過年数に応ずる償却費相当額を控除した価額の70%に相当する金額によって評価する。
さて、ここで問題となるのは、相続税申告時に①と②によることができなかったため、③の方法により評価し申告をした場合です。ある事案では、申告後に固定資産税の賦課決定通知書を確認すると、申告時の評価額と固定資産税の評価額に数千万円もの違いがあったのです。納税者は、更正の請求により相続税を減額したいと希望します。財産基本通達では固定資産税評価額により評価する、とありますから当然でしょう。しかし、税務署は、「正しい評価方法の一つにより評価していますので更正の請求は認められません」というのです。ここでは、財産評価の根底にある「時価」という議論や固定資産税評価額を決定する「市町村」の対応などは紙面の関係で省略しますが、あまりにも不合理としかいいようがありません。
増改築により固定資産税評価額が付されていないというのではなく、あと数ヶ月もすれば、固定資産税評価額が判明する新築の家屋です。新築した翌年の死亡にかかる場合と、同一年で死亡した場合の評価方法が異なるということは、納税者にとって課税の公平性を損なっているとしか判断せざるをえません。
更正の請求が認められないのであれば、予想固定資産税評価額を算出し、できるだけ低い評価で申告し、固定資産税評価額が付されたときに修正申告するなどの方法を検討しなくてはなりません。この場合に税務署は前述の順序に従い評価するよう指導、修正しょうようをするのでしょうか。早急に公平な課税のための統一的な評価方法及び救済方法を定めてもらいたものです。
2003年1月1日
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22号
平成15年度税制改正で土地税制はこう変わる!
今年も毎年恒例の税制改正大綱の発表がありました。
不動産取得税と登録免許税はゼロになるのでは?なんて期待をしていたのですが、そこまではいかないものの減税となりました。登録免許税については、時限立法ではなく半永久的に税率が下がります。
特別土地保有税、事業所税の改正と併せてご紹介します。
(1) 不動産登記に係る登録免許税現在、不動産登記に係る不動産価額の特例措置により、土地の登記にかかる課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1となっていました。残念ながら、この制度は平成15年3月31日をもって廃止となります。
この廃止に併せ、平成15年4月1日以後に受け付ける不動産登記に係る登録免許税については、税率が下がります(本法改正)。さらに、平成15年4月1日から平成18年3月31日までは、時限措置として本法改正後の半分の税率となります。
不動産の購入や贈与を考えている方、相続登記をいつ行うか考えている方は、平成15年4月1日前と後でどのくらい違うのか、気になるところでしょう。まとめると下記のとおりです。なお、赤字は増税、青字は減税です。全体的に少し下がった、という感じですが、何故か土地の遺贈・贈与は増税です。
建物については、平成15年は固定資産税評価額の評価替えの年ですので、課税標準額も下がり、さらに税率も下がります。売買は相手あってのものですので仕方がないかもしれませんが、相続登記は4月まで待った方がお得でしょう。死亡日と関係なく、登記申請をした日時点での税率が適用になるからです。
(2) 不動産取得税不動産取得税については、抜本的な改正はありません。
住宅の取得については、既に時限立法(平成16年6月30日まで)により税率が3%(4%⇒3%)とされていました。今回の改正で、商業地等、事務所・店舗等についても、平成15年4月1日から平成18年3月31日の間、税率が一律3%(現行4%)となります。
また、土地の課税標準を固定資産税評価額の2分の1とする特例は、平成17年12月31日まで延長されます。
(3) 特別土地保有税当分の間、特別土地保有税の課税は停止されます。
(4) 事業所税新増設に係る事業所税は、平成15年3月31日をもって廃止されます。
新増設に係る事業所税は、床面積2,000㎡を超える事業所用家屋を建築(増築も含みます)した建築主に課されます。税率は1㎡当たり6,000円です。例えば2,500㎡の事業所用ビルを建築した場合、1,500万円(2,500㎡×6,000円)もかかるのです。
建築主の方はなんとしてでも完成・引渡しを遅らせた方がお得です。ゼネコンの方に怒られそうですが・・・。
速報!平成15年度 『税制改正』
1.相続税・贈与税改正項目 改正内容 相続税・贈与税の最高税率の引き下げ 相続税・贈与税の最高税率を70%から50%に引き下げ、贈与税は年310万円まで税率10%へ!税率区分は以下の通りです 相続税 現行 税率 改正後 税率 平成15年1月1日以後の相続から適用 800万円
1600万円
3000万円
5000万円
1億円
2億円
4億円
20億円
20億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
25%
30%
40%
50%
60%
70%1000万円3000万円
5000万円
1億円
3億円
3億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
30%
40%
50%贈与 現行 税率 改正後 税率 平成15年1月1日以後の贈与から適用 150万円
200万円
250万円
350万円
450万円
600万円
800万円
1000万円
1500万円
2500万円
4000万円
1億円
1億円以下の金額
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
超の金額10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
50%
55%
60%
65%
70%200万円300万円400万円
600万円1000万円1000万円以下の金額〃〃
〃〃超の金額10%15%20%
30%40%50%改正項目 改正内容 相続時精算課税制度(仮称)の創設 相続・贈与の一体化措置により、従来制度の他、下記制度の選択が可能。相続時に贈与財産を相続財産として計算した相続税額から、支払済みの贈与税額を控除
・贈与の非課税枠は2500万円、非課税を超える部分は一律20%課税
・65歳以上の親から20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)への贈与
・資産の種類・回数・金額に制限なし
・相続財産と合算する贈与財産は贈与時の時価で評価
・本制度の選択を行う受贈者は、所轄の税務署長に所定の届出をする住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設 ①相続時精算課税制度について、住宅取得資金を贈与する場合に限り、非課税枠を3500万円とする
②住宅取得資金に係る相続時精算課税制度に限り、贈与者の年齢要件を撤廃
③平成15年1月1日から平成17年12月31日までの適用
④現行制度の非課税550万円は平成17年12月31日をもって廃止相続税額の2割加算対象者 養子となった孫(いわゆる孫養子)を追加、ただし、代襲相続人である者は除く 生命保険の権利評価の廃止 生命保険に関する権利の法定評価規定について、所要の経過措置を講じたうえ廃止、原則として個々の契約に係る解約返戻金の額を用いて評価 贈与税の更正等の期限 3年又は5年から6年へ延長
2. 個人所得税改正項目 改正内容 配偶者特別控除 平成16年分以後の所得税及び平成17年の住民税より廃止
3.金融・証券税制改正項目 改正内容 上場株式等に係る譲渡所得等 100万円特別控除の特例の廃止
平成15年1月1日以後5年間の譲渡に係る税率を10%(国税7%、地方税3%)へ(その後20%へ)
平成15年1月1日以降申告分離課税制度へ一本化配当課税 ①配当源泉分離課税(35%)の特例が平成15年3月31日をもって廃止
②平成15年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当についての申告不要の特例の適用上限廃止③平成15年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の配当等についての所得税の源泉徴収税率を20%(国税15%、地方税5%)へ 、ただし、平成15年4月1日から5年間は10%(国税7%、地方税3%)の優遇税率を適用
4.土地税制改正項目 改正内容 不動産流通・取得税 ①登録免許税
不動産登記に係る不動産価額の特例(土地の課税標準の2/3減額)は平成15年3月31日をもって廃止
上記に併せ、不動産登記に係る登録免許税の税率を抜本的に改正する
平成18年3月31日までの時限措置として、登録免許税の軽減措置を設ける②特別土地保有税
平成15年度以降、当分の間、特別土地保有税の課税を停止③不動産取得税
商業地・事務所・店舗等の税率を3%に引下げ(平成18年3月31日まで)
土地についての課税標準の特例(1/2)を3年間延長個人の土地譲渡益課税 土地・建物に係る長期譲渡所得の税率は26%(国20%、地方6%)で据え置き
5. 法人税改正項目 改正内容 中小企業税制 ①同族会社の留保金課税
自己資本(同族関係者からの借入金を含む)比率が50%以下の中小企業について、留保金課税を停止(平成15年4月1日から平成18年3月31日までに開始する事業年度) 現行の課税留保金額に対する税額の5%軽減措置を廃止②交際費
資本金1億円以下の中小法人(現行資本金5000万円以下)に対象範囲を拡大した上で、年400万円の定額控除額までの金額の損金不算入割合を20%から10%に引き下げ③少額減価償却資産の全額損金算入
中小企業が30万円未満(現行10万円未満)の減価償却資産を取得した場合、全額損金算入(平成15年4月1日~平成18年3月31日の間の取得)研究開発税制 ・中小企業技術基盤強化税制
試験研究費の12%が税額控除(3年間の時限措置として15%)ただし、法人税額の20%が限度IT投資促進税制 3年間の時限措置として、税額控除(10%)と特別償却(50%)の選択適用、対象はソフトウェアも含む、
資本金3億円以下の法人について、リース費用総額の60%について10%の税額控除(法人税額の20%を限度)
6.消費税改正項目 改正内容 事業者免税点制度 事業者免税点を課税売上高1000万円(現行3000万円)に引き下げ 簡易課税制度 適用上限を5000万円(現行2億円)に引き下げ 以上は平成16年4月1日以後に開始する課税期間から 2002年12月1日
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21号
あなたは「管理型」?それとも「所有型」?
今回は、『不動産管理会社』を設立する、というテーマでお話してみましょう。不動産管理会社とは言っても、ご自身がお持ちの不動産についてだけの仕事をする、いわゆる同族会社のことです。
不動産管理会社を設立することのメリットは、一言でいえば節税効果につながるということですが、さて、どのような節税効果があるのでしょう?
「管理型」と「所有型」一口に不動産管理会社と言っても、管理会社には「管理型」と「所有型」の2種類があります。「管理型」とは、土地建物の所有者は個人のままで法人が管理のみを行い、管理手数料を個人から法人が受けるという形態です。又は個人から同族法人が一括で賃借し、それを法人が第三者に転貸する形態を言います。一方「所有型」とは、土地は個人所有のままで建物だけを法人所有とし、法人自身が建物オーナーとして第三者に賃貸する形態です。
「所有型」をお勧めします!「管理型」では、管理手数料が経費となり、その部分が個人の所得から減少することに。「所有型」では法人が得た賃貸収入から役員報酬を他の親族に支払うことによって所得の分散を図ります。どちらも経費を増やしたり、所得を分散したりするわけですから節税効果はあります。しかし、これから法人設立を考えていらっしゃる方、「管理型」よりも「所有型」をお勧めします。
なぜなら「管理型」には問題点があるからです。それは個人が法人に支払う管理手数料です。以前は概ね賃貸収入又は法人一括貸の場合の転貸差額が20%までであれば税務上も問題がなかったのですが、昨今は税務署も厳しくなっています。実態としての管理業務があっての管理手数料と位置づけている傾向にあるようです。一方「所有型」を採用する場合、建物は法人が所有していますから「管理型」のように管理の実態ということで税務上お咎めがくることはありません。
借地権にご用心!「所有型」は、建物を個人から法人に売買する際、借地権という問題が発生します。言うまでもなく、法人が個人の土地の上に建物を建てられるのは、法人に借地権が存在するためです。地主である個人と借地人である法人との間で借地権設定にあたって、税務上法人は個人に権利金を支払わなくてはなりません。仮に権利金を支払わないと、個人から法人へ支払うべき権利金相当額を免除されたとしてその免除された金額に対する法人税が課税されてしまいます(これを権利金の認定課税といいます)。
権利金の認定課税を回避する方法はあるのでしょうか?実は、2通りあります。1つは相当の地代(更地価格の6%)を毎年支払う方法ですが、地価下落の続く今日ではあまり意味がないのでここでは詳述しません。もう1つは無償返還の届出書を税務署に提出する方法です。書面を提出するだけで前述の権利金の認定課税は回避できるのです。書面一枚で概ね土地の更地価格の6割~8割の権利金を支払わなくてすむのです。知っていると知らないとでは大きな違いですよね。
専門家の知恵を拝借すべし!個人の土地に法人の建物を建築することは、建物を新築する場合だけのことではありません。従来からお持ちの個人の建物を税負担なしに法人に移行する場合にも応用は可能です。ただし、法人税、相続税等すべてにかかわることなので、実行前には必ず専門家に相談されることをお勧めします。誌面の都合上すべてにわたって詳述できませんが、ご自分だけの判断ではつじつまが合わず、税務署からお目玉をくらい思わぬ税金を支払うことにもなりかねません。ここはやはり、「A.T.O」に相談でしょうか…。
2002年11月1日
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20号
土地の評価額は、遺産分割の方法次第!
土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価し、評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
市街地などにある宅地は、道路ごとに定められた1㎡あたりの標準価額をもとに、位置や形状による加算・減算の補正を行う路線価方式によって評価します。原則は、その路線価に面積を乗じて算出しますが、奥行による補正を行った上で、①間口の狭い宅地→間口狭小補正率②奥行が長すぎる宅地→奥行長大補正率③不整形な宅地→不整形地補正率(最高40%の減額)等の適用があります。今回は、遺産分割にあたって土地評価を下げる方法を考えてみました。
(1)相続人A・Bが50%ずつ共有にした場合450千円×0.98(奥行価格補正率)×600㎡=264,600千円…(イ)
普通住宅地区で奥行距離30m
∴奥行価格補正率0.98
(2)相続人A・Bが右記のように分割した場合A.450千円×1.00(奥行価格補正率)×247.5㎡=111,375千円
普通住宅地区で奥行距離15m
∴奥行価格補正率1.00B.450千円×0.98×0.85(不整形地補正率)×0.90(間口狭小補正率)×352.5㎡=118,921千円
かげ地割合247.5㎡÷600㎡≒0.41
普通住宅地区で面積352.5㎡ →地積区分A
∴不整形地補正率0.85
間口距離3.5mで間口狭小補正率0.90
A+B=230,296千円…(ロ)
(3)評価の引下げ額及び引下げ率(イ)-(ロ)=34,304千円…(ハ) (ハ)÷(イ)≒13%
(4)相続税額(AとBの取得金額を21億円とした場合)① 2,100,000千円×0.7(最高税率)-275,200千円=1,194,800千円
② {2,100,000千円-(ハ)}×0.7-275,200千円=1,170,787千円
③ ①-②=24,013千円
このように、合計すれば同じ面積でも、(2)の例では、Bの土地が、不動産的に評価が下がるため、分割の仕方ひとつで、かなり税額が減らせることになります。ただし、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」!1)宅地面積から判断して、著しく細長い形状になる。2)路線と接することがない。3)宅地の形状が三角形など不自然で、かつ、合理性がない、等の「不合理分割」にあたる場合には、全体を1画地の宅地として評価してから、各所有者に評価額を面積按分することになるので注意が必要です。何事も、ほどほどに!?2002年10月1日
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19号
相続税における債務控除と保証債務
相続税は、相続で取得した財産の価額(非課税財産を除く)から、負担した葬式費用・債務を差し引いた額を基礎として課税価格を算定し、計算されます。
ここでいう「債務」とは、相続税法14条1項により「確実と認められるものに限る」と規定されています。しかしながら、「確実に認められるもの」の意義については特段の定めはなく、各条項の解釈に委ねられているのが実情です。
債務として代表的なものとしては、銀行からの借入れ・未払いの固定資産税や所得税・借家人の方から預かっている敷金などがあります。これは、債務として問題の生じる余地はなく、正に「確実に認められる」債務です。
保証債務はどうでしょうか。たとえば、被相続人が旧友の頼みで、旧友の会社が借入れする際に、その債務の連帯保証人になったり、自分の土地にする抵当権の設定を承諾したりした場合です。
裁決例・裁判例では、保証債務は、原則として「確実と認められる」債務には該当しないとされています。しかしながら、相続開始時に主たる債務者が弁済不能に陥っている場合は別です。保証人や担保提供者が弁済しなければならないことが確実であり、主たる債務者に対し求償権を行使しても到底返還を受けられない場合には、「確実と認められる」債務に該当するものと解されています。
問題は、主たる債務者が返済不能の状態であり、求償権を行使しても無駄であるということを税務署に対し、いかに証明するかです。
まず、債務者が法人の場合は、返済が滞っており、かつ著しい債務超過の状態が相当期間続いていることを証明することが最低限必要です。倒産していれば確実でしょう。個人の場合も同様で、返済が滞っており、自己破産をしていないまでも資産が他にないことを証明することが必要です。これらの証明をするには、主たる債務者の協力なくしては不可能です。求償権を行使しても本当に無駄であるかは、主たる債務者自身しか分からないからです。もし、主たる債務者が協力的であれば、すべての財産・債務を検証することが可能ですが、一般的にはそんなに甘くはありません。つまり、相続人は求償権の行使が可能であるかないか分らないケースが多いのです。
相続が開始してから保証債務をしていたことが判明した場合は、遺族の方はいつ債権者から債務の履行を迫られるかという不安を抱えながら生活することになります。暫くして実際に返済を行なわなければならないこともあります。にもかかわらず、相続税を計算するに当たって、債務控除できないなんて・・・。
被相続人の恩に報いるため一生懸命返済を続け、完済される方も多いでしょう。しかし、保証人にだけはなってはいけないとの代々の家訓がある方もおられるとか。自分がいなくなってからも家族を不安にさせる行為であることは肝に銘じておきたいものです。
2002年9月1日
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18号
路線価と鑑定評価をうまく使い分けて申告を!
1 路線価が発表されました!
8月2日に国税庁から平成14年度の路線価が発表されました。
新聞報道等にもあるように前年に比べて、全国平均で6.5%の下落となっています。
10年連続の下落です。いったいどこまで下がり続けるのでしょうか。
都心回帰といわれるように、銀座や表参道など人気のある場所では、下落ではなく上昇しています。今後、ますます地域による二極分化が進むでしょう。
2 路線価は何のため相続税法では、財産は時価で評価すると定められています。
しかし、時価と言っても絶対的な算定基準などありません。
そこで、国税当局は時価を算出する一つの基準として財産評価基本通達を定め、その中で、土地は原則として路線価にて評価すると規定しています。
通達とは、国税庁長官から税務職員に対する指針のことをいいます。税務当局の取扱を統一するための決まりで、一般の会社で言う社内規定にあたります。そのため、納税者としては法令とは異なり、必ずしも従う必要はありません。
しかし、相続税・贈与税の実務では、土地は路線価によって評価するのが一般的となっています。
なぜかというと、路線価は上述のとおり税務職員にとっての時価であり、これに従っていれば当局と対峙することなく手続きがスムーズに流れるからです。
3 路線価ではなく鑑定評価という方法も上記の通達による評価と言っても、常に完璧な時価を示すものではあり得ません。
それぞれの土地には、その土地なりの個性もあり、この通達だけでは個別の事情はあまり考慮されないためです。
個別の事情を十分に考慮して、土地の時価を算出する方法として鑑定評価があります。路線価による評価に代えて、鑑定評価による金額を時価として申告する事も可能です。
4 鑑定評価にて申告鑑定評価を採用して相続の申告をしたケースをご紹介します。
Mさんは約2,100㎡の土地をお持ちでした。路線価での評価によると約4億円です。この土地は、線路の近くにあり土地が傾斜しているという状況でした。線路の近くにある土地は、騒音や振動の問題から住みたがる人が少ないものです。また、土地が傾斜しているため宅地にする場合、平らにするための整地・造成費用が必要です。売却する際のマイナス要因がいくつかあったのです。
しかし、財産評価基本通達では、騒音や土地が傾斜しているというマイナス要因は評価をする上であまり考慮されていません。
路線価による評価は、原則として利用単位ごとに路線価に面積をかけて算出します。しかし、このような広大な土地は単独で利用するのではなく、下記の図のように土地を分割して宅地として開発して利用することも多いでしょう。
開発する場合には、都市計画法によって道路や公園などの公共的施設を作らなくてはいけない、という制約を受けることになっています。そのため、公共的施設を作ると、利用できる面積が減ってしまい、宅地として売却できない部分は、売買金額の減額の要因となります。上記の要因を考慮した結果、鑑定の方が評価が低くなると考え、Mさんに鑑定評価をご提案しました。
鑑定の結果は約2億6,000万円です。この方の相続税の適用税率は50%でした。
路線価評価と鑑定評価の差額は約1億4,000万円ですので、その50%である 7,000万円の相続税を軽減することができたのです。鑑定費用を差し引いてもお釣りがきます。ただし、この鑑定評価も絶対的なものではありません。鑑定士によって評価する金額が違うことも、ままあることです。
鑑定の金額で申告しさえすれば税務署はすべてを認めるわけではありません。それなりのリスクを覚悟の上、適切な鑑定を行うことが肝要です。路線価と鑑定評価を上手に使い分ければ、相続税・贈与税の大いなる工夫も可能です。
2002年8月1日
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17号
組合せ方でまだまだ安くできます、譲渡税!
相続税の取得費加算の特例とは?
土地等を売却した場合、税金はその売却によって得られた利益に課税されます。言うまでもなく、この売却益は、売却代金から取得費や譲渡のための諸費用を控除して計算します。その中に、「相続税の取得費加算の特例」と言う取得費に相続税の一部を加算する特例があります。ただし、この特例は、その相続税の申告期限後3年以内の売却についてのみ適用されるため、売却の時期については注意が必要です。
それでは、相続税の一部の金額とはどのように計算するのでしょうか。土地等の場合について算式にすると、
相続税額×土地等の合計額/課税価格(債務控除前)=取得費加算額
となりますが、算式だけではわかりにくいので具体例でみてみましょう。土地A 40,000万円
土地B 50,000万円
現預金その他 10,000万円
債務・葬式費用 △30,000万円
課税価格(債務控除後)70,000万円 相続税額 20,000万円
(計算) 20,000万円×(40,000万円+50,000万円)/(70,000万円+30,000万円)=18,000万円
以上から、取得費加算額は18,000万円となります。
買換え特例との組み合わせ話は変わって、事業用に使用している土地等を売却して別の土地等に買換えようとしたときの特例です。これは、「特定事業用資産の買換えの特例」と呼ばれていて、取得する買換え物件の金額にもよりますが、売却代金以上の物件を購入した場合が節税効果は最大になります。簡単にいうと売却益のうち20%だけを課税。残る80%については次回その物件を売却したときに課税しようという特例です。しかし残念なことに、それでも売却益の20%の課税だけは免れません。
さて、ここからが本題です。この免れない20%の課税をなんとかできないものか、と知恵を絞ります。この特定事業用資産の買換えの特例に、上述した相続税の取得費加算の特例をプラスしてはどうでしょうか。先程の具体例を使ってみてみましょう。
相続により取得した土地A、Bのうち、土地Bを売却し、その売却代金で別の土地Cを購入します。ただし説明の便宜上、時価は相続税課税価格と同じとします。土地B(時価)50,000万円(10年超所有)
取得費 2,500万円 取得費加算額18,000万円
土地Cの購入額 50,000万円この例では、購入物件の金額が売却代金と同額であるため、特定事業用資産の買換えの特例を利用すると売却益(売却代金から取得費を控除した)の20%部分に課税されます。
(50,000万円-2,500万円)×20%=9,500万円
しかし、この免れない20%部分の課税9,500万円に、上述した取得費加算の特例が上乗せで適用できるのです。すると、取得費が取得費加算額の分だけさらに増えることになります。つまり、売却益の20%の課税部分から差し引くと取得費加算額の方が大きくなり、課税部分がなくなってしまうと言う訳です。
9,500万円-9,500万円(※)=0円
(※)18,000円>9,500万円 ∴9,500万円20%部分の課税はやむを得ない!と、諦めていた事業用資産の買換え特例も、相続財産なら100%買換えが可能なのです。
2002年7月1日
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16号
上場株式を見極める眼力で大儲け?
1.近頃の株主総会
毎年6月下旬になると、上場企業の株主総会の記事が新聞紙上を賑わせています。通常は、「荒れた株主総会!」というような見出しで、何かの事情で話題になった企業の株主総会の様子が取り上げられていますが、今年は少し様子が違っているようです。私が今年初めて新聞で目にした記事は、「株主総会は楽しく!」という見出しのものでした。その内容は、銀行との持合株式の解消にともない、個人株主を取り込み、長期安定株主作りを目的として、株主総会において個人株主に対して様々なサービスを行うというものです。例えば、ある大手芸能プロダクションは、日曜日に株主総会を開催、総会後の懇親会には若手タレントが参加、また、株主一人につき家族三人まで同伴可能などなど・・・・。
こんな記事を読むと、資金さえあればイメージのいい上場株式に投資するのも面白いのかなと思うのは私だけでしょうか。
2.今がお得な上場株式税務上においても、上場株式の譲渡等について次のような様々な改正が行われています。
ここで、私が目をつけたのは、平成17年です。
もし、平成14年中に1000万円を上場株式に投資したとします。これを平成17年まで、2年を超え所有し売却します。この場合、もし株価が2000万円に上昇していても、購入価格1000万円までの利益については非課税ですから、利益1000万円については無税でのまる儲けです。また、売却損が出た場合は、翌年以後3年間はその損を繰り越し、他の上場株式の譲渡益と相殺することができます。もし、平成14年において2000万円の購入をした場合は、購入価額1000万円部分は上記のようになり、残りの購入価額1000万円部分についての譲渡益についても、100万円までの特別控除、税率10%の有利な規定の適用が可能です。余裕資金があり、株価が上昇する見込みがある会社を見極める眼力があれば、今年中に投資すると平成17年には非課税規定で大儲けできる可能性があります。安全性を考えて眠ったままの預金をそのままにしておくか、または、ペイオフ対策として上場株式に勝負をかけてみるか、その判断は、なかなか難しいものですが・・・・。
2002年6月1日
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15号
所得税高額納税者公示 《長者番付》は回避できる!?
今年も毎年恒例の「長者番付」が、5月16日に発表されました。新聞やテレビで報道されたのは、全国上位100位まで。100位の方の税額は2億6千530万円。こんな税額は一生納付することはないから大丈夫、と思う方が大半でしょう。
しかし、発表されたのは上位100名だけではありません。所得税額1000万円を超える高額納税者は、5月16日から31日までの期間、税務署に氏名・住所・所得税額が掲示されます。これを<高額納税者の公示制度>といいます。この制度により、今年は全国で7万9838人が公示されました。 本来ならば高額な納税をすることは、名誉の証(?)。しかし、DMや勧誘の電話、寄附のお願いで追い回され、プライバシーの侵害、無用心極まりない制度と嫌がる方も多いようです。借金の保証人になっているなど、どうしても収入を公にしたくない事情がある人もいるはずです。公示を逃れる方法はないのでしょうか?
公示を回避する方法所得税の高額納税者の公示は、3月31日までに提出された申告書が対象です。言い換えれば、3月31日までは1000万円を超える税額の申告書を提出しなければ、公示は逃れられるのです。
対策1.4月1日以降に申告する
一番オーソドックスな考え方です。しかし、期限までに申告しなかったと言う理由で無申告加算税が本税の15%相当額(調査前なら5%)。納期限までに納税が無く、遅延利息的な性格の延滞税が、納付日までの計算で本税の14.6%(2ヶ月以内の期間なら2002年度は年4.1%)かかり、お勧めはできません。
対策2.修正申告を活用する
例えば、期限内に税額が1000万を超えないようなインチキな申告をし、4月1日以降に真実の修正申告書を提出する、という方法があります。ここで心配なのは、過少申告加算税(差額の10%または15%)・延滞税といったペナルティですが、税務署に指摘を受ける前なら過少申告加算税はかかりません。
また、納税だけは実際の納税額を3月15日までに納付する、と言う方法もあります。つまり、申告書に記載された納税額と異なる真実の税額を納付しておくのです。これなら、期限内に完納しているので延滞税はかかりません。税務署も申告書と納税額の付け合せを3月15日に全部完了するわけではありません。あっと言う間に4月1日です。4月1日を待って真実の申告を修正申告の形で提出すれば、何の問題もないのです。
対策3.取り敢えず買換え申請
今なら来年末までの期間限定で活用できる方策です。事業用資産の買換えを応用するのです。
原則として、土地、建物等固定資産を売却した場合には、売却益に対して税金がかかります。ただし、かわりの資産を購入する場合には、売却益の60~100%に対する課税を先送りにできる制度があります。この制度はたくさん種類がありますが、売る物件・買う物件・またその組み合わせ・・・要件が複雑です。
なかでも最も使い勝手のいいものが21号買換えといい、国内にある所有期間10年を超える事業用の土地等、建物又は構築物を売却し、国内にある事業用の土地等、建物、構築物、機械装置を購入すれば、最高で売却益の80%の税金を先送りにできます。売った年に買うのが原則ですが、申請書さえ提出すれば翌年まで購入をする期限が延長(事情が事情なら最長3年間延長可)されます。ただ、その場合には、「いつ頃・いくらぐらいで・何を購入する予定」かを、申請書に記載して申告期限内に税務署に提出しなければなりません。しかし予定はあくまでも予定。当然、購入できないこともあります。購入できなかった場合には、「やっぱり買えませんでした」として修正申告をします。この修正申告、修正の期限さえ守れば延滞税はかかりません。買う予定がなくても買う予定あり、と申請することで、ペナルティなしで納期限は1年延長。売却に係る税額80%カットで公示を逃れることができるかもしれません。逃れられなかったとしても公示される税額を少なくすることができます。ただこの制度、平成15年末で終了です。公示回避の視点からも、本当に名残惜しい制度です。もはや、この公示制度の存在価値はなく、一日も早く廃止とすべきだと思っているのは筆者だけでしょうか・・・
2002年5月1日
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14号
分割次第で意外な税金!
相続税はプラスの財産(現預金・土地など)からマイナスの財産(借入金など)を控除して残った財産に対して課税されます。一般的にマイナスの財産の方が多ければ相続税はかからないと認識されています。
確かにこの考え方は間違いとはいえませんが遺産分割の仕方によっては、マイナスの財産の方がプラスの財産より多いのに相続税が課税されてしまう事もあるので注意が必要です。
以下のようなケースがありました。
1 借金の方が多かった被相続人AさんとBさんの父親がなくなられた場合です。母親は既に亡くなっています。
父親の所有の資産は預貯金2億円と貸ビル(相続税評価額8億円、時価10億円)でした。
負債は借入金が12億円です。
2 遺産分割の仕方によっては税金が遺産分割協議に際し、Aさん、Bさんが話し合った結果、2つの案がでました。
税理士に相談したところ、その結果に2人は驚愕したのです。
①財産・債務とも均等に相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 5億 財産 5億
債務 6億 債務 6億
課税価格 △1億円→0 課税価格 △1億円→0
課税価格の合計額が0であるため、相続税はかかりません。② Aさんが貸ビルと借入金をBさんが預貯金を相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 12億 債務 0億
課税価格 △4億円→0 課税価格 2億円合計 0+2億円=2億円
注意すべきは、このケースではAさんのマイナス分とBさんのプラス分を相殺して、△4億
円 +2億円=△2億円→0とはならないことです。
つまり、『△4億円→0』が相続税の計算方法のミソなのです。
結果として課税価格の合計額が2億円となり、
何と、Bさんに約2,800万円の税金がかかってしまうのです。
3 債務は分割をしないで申告という方法も・・・あまり大きな声ではいえませんが実務的には、とっておきの手があります。
それは、債務を分割しないのです。
債務が分割されていない場合、相続税の計算上は法定相続分に従いAさん・Bさんそれぞ
れが債務を2分の1づつ 相続したものとします。
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 6億 債務 6億
課税価格 2億円 課税価格 △4億円合計 2億円+△4億円=△2億円となります。
上記2②のケースとは違い、債務が未分割の場合は、相続税法の規定(基本通達13-3)
によりAさんのプラスとBさんのマイナスを相殺できるのです。
その結果、相続税はかかりません。申告期限が過ぎても債務の分割が行われない場合どうなるのでしょう?
税務署は早く債務を分割するようになどと、債務の分割について介入してくることはありません。
納税者の自主性にまかせているのです。
特にこのケースのように、債務の方がプラスの財産より大きな場合、税務署は当初から相続税の課税対象としては見込んでいない事も多いのです。相続があった場合、プラスの財産の分け方ばかりに意識がいきがちですが、債務の分け方にも注意が必要です。
遺産分割の方法によっては、思わぬ税金が・・・・・2002年4月1日