お役立ち情報
COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
年度:
タイトル:
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13号
「ついに解禁となったペイオフ!」
4月1日、ついにペイオフが解禁しました。
いつもはお客様と確定申告時期にお会いすると話の中心はやはり「税金をいくら払わなくてはならないか」でしょうか。
しかし、今年はちょっと様子が違いました。「大手銀行なら大丈夫なのかしら?」「金が人気のようだけど・・・」「みなさんどうしてるの?」こんなペイオフの話題が多いこと多いこと。今回は決済性預金(普通預金や当座預金など)もペイオフの対象となった場合を税務面から考えてみました。
生活関連預金たとえば、確定申告により4,500万円の納税を口座振替で行うため、口座に5,000万円の預金をしていた場合を考えてみましょう。その金融機関が突然破綻した場合、口座は凍結されるため納税できません。納税資金は戻らず、翌年の確定申告でも税金が軽減されることはないのです。税務署からの延滞税の請求はさすがにないかもしれませんが・・・。
現在の税法では、金融機関が破綻して個人の預金が戻ってこなくても税務上何も救済されません。
所得税法では、雑損控除というものがあります。簡単にいうと納税者などが有する資産(棚卸資産や生活に通常必要でない資産などは除きます)について、災害・盗難・横領による損失が生じた場合には、一定の金額を所得から控除できるというものです。
しかしながら金融機関の破綻は、災害・盗難・横領には該当しませんので、雑損控除はできないのです。 個人からしてみれば、自分の預金が切り捨てられるわけですから、税金面で少しでも配慮してもらいたいと思う人も多いでしょう。せめて、雑損控除の対象にはしてもらいたいものです。
事業性の預金現在の税法では破綻前の金融機関に預けてある法人や個人事業の預金の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定は認められていません。つまり、金融機関が破綻するかもしれないというリスクを、取引先への売掛金等と同様な債権とは見てくれないのです。
もちろん、金融機関等が破綻(更生手続き開始の申し立て)した場合は、ペイオフとなった金額の50%、更生の認可等の決定があった場合は一定額を貸倒引当金に繰り入れることができます。
ところで、金融機関が破綻した場合、個人事業に使われている口座は損失として、経費となります。しかし、その個人の非事業用の口座の残高は当然、対象から除かれます。税務署は事業用と非事業用の口座をどのように区別するのでしょうか。正規の簿記の原則に従った帳簿書類を作成し、所得税の青色決算書の預金の残高に金融資産全額を記載すれば、もしかしたら・・・これまで論じられていませんでしたが、金融機関に預金することへのリスクをどう考えるか、相当数の金融機関の破綻があった場合、大きな問題となっていくことでしょう。
決済性預金の全額保護は平成15年3月末までです。それまでに我々預金者は格付け・自己資本比率などを自ら検討し、安全な金融機関を選ばなくてはなりません。さらに、ペイオフ対策とした金融商品も今後多く開発されてくると思われますので、分散投資を真剣に検討する時期にきています。2002年3月1日
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12号
税務職員の誤指導とその対応策について
昨年の6月22日に新規の法令解釈通達が発遣され、税務職員の誤指導により修正申告をした場合や更正処分を受けた場合の延滞税免除の取扱いが明らかになりました。しかし、本税についての納税義務はなくなりません。なにか対策はないものでしょうか?
1.国税庁の職員が書いた書籍についてちょっと大きな書店の税金関係のコーナーを見てみると、財団法人大蔵財務協会が発行した書籍が多数並んでいます。現役の税務職員が執筆をしていることから(例えば東京国税局法人税課長○○○○編)、実務家のあいだでは税務当局の見解と同一視されていました。しかし、これらの書籍は税務職員の個人的見解となっています。役職名が表示されていたため紛らわしいことから、最近は役職名を表示せず、直接個人名○○○○とだけ表示されているようです。くれぐれもこれらの書籍については、過信は禁物です。
2.国税庁が事前照会の回答文書をホームページで公開税務職員が書いた書籍が税務当局の公的見解に当たらないとしたら、税務の取扱いについて大きな問題がある場合、どのように対応したらよいのでしょうか。その一つの方法が、国税庁に対する事前照会です。昨年の4月に情報公開法が施行されました。その影響もあるのでしょう。国税庁が事前照会等に対し多数の納税者からの照会があると予想されるものについては、文書回答の内容を国税庁のホームページで公表することになりました。
現在ホームページ上で、土地信託に関する三井不動産㈱の回答例が公開されています。
3.事前照会に対する文書回答について税務職員に口頭での相談は、後に言った言わないの問題が生じる可能性があります。そこで、税務上の取扱いに関する事前照会に対して文書による回答を請求することができます。(手続きについては、税務署にパンフレットがございますので、そちらをご覧ください。また、国税庁のホームページにも掲載されています。)
最後に一言!税務の取扱いについては、信頼のできる税理士に相談するのが一番ですが、税務署に電話したり直接行ったりして相談することもあるかもしれません。文書による回答が一番安心できますが、手間や時間がかかるため相談は口頭になることも多いでしょう。せめて、その際は税務署に相談した日時、担当者名、相談内容についてできるだけ詳細に記録することをお勧めします。ところで、最近の税務調査は昔と比べて甘くなっているという話を聞いたことがあります。その原因の一つに、税制が年々複雑になっているため、その取扱いについての相談も年々増加し、税務職員がその対応に追われることから調査(準備)が手薄になるというものでした。税務の取扱いについての相談は、年々手厚くなってほしいものですが、いかがなものでしょうか……。
2002年1月1日
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11号
2001年 年末調整チェック
今年もまた年末調整の時期を迎えました。
給与所得の方にしか関係しないことですが、大企業では、毎年、年調事務に多額の予算を投入し、スピーディーな事務処理のために独自の書式を作成して人事部へON LINE申告、という対策をとったりと四苦八苦です。
とはいっても印鑑を押して書類保存、という作業を省くことはままなりません。
本年度も所得税の定率減税が実施されます。年末のささやかな楽しみのために、改正点と提出書類作成上の注意点をお知らせいたします。
改 正 点●第三分野の保険契約が 契約内容に応じて区分
入院により医療費が支払われる保険等については、損害保険会社と締結したものでも、生命保険料控除の対象となります。
7月1日以降保険期間開始のものについて適用されます。どちらに該当するのか、保険会社から送付される控除証明書の記載事項に注意して申告しましょう。
●小規模企業共済等掛金控除の対象に、個人型年金加入者掛金が追加
国民年金基金連合会の個人型年金掛金が小規模企業共済等掛金の範囲に追加されました。対象者は、厚生年金・適格退職年金等および確定拠出年金の対象になっていない企業の従業員の方で、10月1日以降適用されます。
申告書チェック年末調整の申告書類で毎年、間違えの多い点は次のとおりです。
● 扶養親族であるお子さんの社会保険料を負担されている場合は、本年中の支払金額を 申請して社会保険料控除を受けましょう。 共稼ぎのご夫婦が、大学生のお子さんの国民年金保険料を負担された場合は、どちらか所得の多いほうから控除しましょう。
● 社会保険料控除は本年中の実際の支払金額を申請しましょう。追納分も控除できます。
● 社会保険料を前納したら、すべて支払い年分に控除を受けます。
ちなみに国民年金保険料を毎月納付していたら、控除額は159,600円,1年分 前納していたら155,750円です。
● 支払金額が9,000円以下の場合、控除証明書がいらないのは一般の生命保険料の場合です。年金保険料や損害保険料の場合は、金額の多寡に係らず、添付が必要です。コピ ーではなく、原本を。
● 海外旅行に行く際、傷害保険に加入された方は、損害保険料控除を申請しましょう。コーヒー一杯分ぐらいは税金が戻ってくるかもしれません。
● ○○年金保険という名前の一般生命保険も多いものです。名称に惑わされることなく、区分して申告しましょう。
● すべて必要な情報は、控除証明書に記載されています。今年は一読しましょう。
● 控除証明書を紛失した場合は早めに再発行の依頼を。この時期、再発行ヘルプデスクを設置して対応する保険会社もあります。
やっぱり今年も最後はあの人か、と総務・人事関係者を悩ませ、ブラックリストに載らないように、関係書類のご提出はどうぞお早めに。2001年11月1日
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10号
通 達(通達の変更内容の予測性を含めて)を読む!
平成13年8月10日付で、税務当局(国税庁課税部長)から、生命保険協会による『がん保険(終身保障タイプ)及び医療保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて』の意見照会に対し、回答がありました(個別通達)。
※ 通達の種類は多くありますが、通常、私共に関係するものは、各税法の『基本通達』です。
税務当局より、常々、疑問が投げ掛けられていた商品であり、その商品内容の性質及び経緯等は以下のとおりです。
〔保険商品内容等〕商品はがん保険(終身保障タイプ)であり、その税務処理については、昭和50年10月6日付けの個別通達で、『支払保険料の損金経理可能額について、法人がその保険料をその払込みの都度、損金経理した場合には、その計算を認める』とされました。
このことより、一部の保険会社が、支払総保険料額を3年ないし5年以内に支払うという商品を発売しました。
その効果としては、保険期間と保険料の支払期間が過度に相違し、前払的部分が生じます。しかし、上記の通達により、損金経理が認められることから、①損金算入額が多くなり、②途中解約に伴う解約返戻金が多額となります。
その結果、この商品を利益調整の手段の一つとして、利用する法人が多く存在することとなりました。今回の変更通達により、個別通達の裏読み的な解釈の発想による節税(税金の繰延)がん保険商品を含め、一定計算式により算出された額が資産計上(逆に言えば、全額損金算入とはならない部分がある)とされる、こととなりました。
この通達の解釈、執行趣旨は、もっともであると思いますが、何と、その取扱適用日を平成13年9月1日以降にその保険に係る保険料の支払期日が到来するものから取り扱うことが明言されています。
単純に言えば、税務上、今まで損金経理していた額は否認の対象としないとされたのです。この商品について、変更前の個別通達から判断しても、その支払全額を損金経理すること自体が、税務当局に否認されるであろうことから、契約には警鐘を鳴らす税理士が多数いたと思います。
その結果が、過去に遡らない寛大な処置の通達の変更となりました。これでは、平成10年度の改正により、法人税率等の引下げとなる事業年度以前に契約(駆け込みの契約)をした法人は、はるかに効果的な税の繰延(又は永久的節税)ができたこととなります。まさに、やったもの勝ちの感が拭えません。
逆に言えば、契約を勧めなかった又は通達の変更内容を読めなかった税理士が悪いのか、これでは正義派の税理士には立つ瀬がありません。
一部の保険会社の圧力でもあったのか、と疑いなりたくもなります。『適正』、『公平な』課税の執行を常々口にし、少額な期間損益のズレにも、修正申告を押しつけてきた税務執行庁はどこへ行ってしまったのでしょうか?
税務行政が若干変わり始めました。
1 情報公開
従前は、業界団体からの意見照会に対しては回答を行なっていましたが、これら回答は、一般には公開されず、税務当局内部のみにおいて、個別通達(関係者以外には公表されない)として取り扱われていました。
しかし、これからは、下記の『事前照会手続き』を含め、原則として、照会内容とその回答が国税庁のホームページに掲載、公表されるようになりました。2 事前照会手続き
今回、紹介した通達は、業界団体からの意見照会に対してですが、業界団体以外の者からでも、一定の要件(範囲)に該当しますと、意見照会に対する回答を文書で得ることもできるようになりました。2001年10月1日
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9号
日本版リートで時代をリード!?
~不動産投資信託~1.不動産投資信託って何?
東京証券取引所で、新しく不動産投信市場が創設され、9月10日から取引がスタートしました。この不動産投資信託は一般的に"リート"(REIT=Real Estate Investment Trust)と呼ばれています。投資者から集めた資金75%以上を賃貸ビル等の不動産で運用し、その賃貸料等から生まれた運用益を分配金として投資者に支払われる金融商品です。 具体的な形態は以下のとおりです。
投資法人は不動産を保有するのみで、それ以外の業務は認められていないため、実際の運用等は投資信託委託会社が行います。
投資を検討する際、当然気になるのが配当です。不動産投信では、収益から必要経費等を除いた配当可能利益の90%超が配当されます。普通の株式の配当と比較して、なぜこんなに高配当率になるのでしょう。普通の会社では、法人税等が課税された後の利益の一部を株主に配当します。それに対し、不動産投信は、配当可能利益の90%超を投資者に配当することにより、法人税が免除される仕組みなのです。そのため、法人税課税を免れるためには、90%超配当しなければならないのです。
2.個人投資家の税務上の取り扱いは?出資の配当は、株式の配当と同様に、配当所得となります。従って、配当金が支払われる際、20%源泉徴収されているのも、10万円以下の少額配当の場合には申告不要制度が利用できるのも同じです。また、売却したときも同様で、売却代金の1.05%の課税で済ませる源泉分離課税も選択できます(平成15年3月末まで)。 ただし、配当控除、平成13年10月から施行される「申告分離課税の適用における長期所有上場株式等の譲渡所得に対する100万円特別控除制度」の適用はありません。
今回はREITの仕組みと税務上の取り扱いについてご紹介しました。現物の不動産そのものよりも購入しやすく売りやすい。また、国債よりもリスクは高いものの利回りが高くインフレに強いREIT。日本版REITで、株式市場・不動産市場が活性化することを期待します。
2001年9月1日
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8号
恐るべし小規模宅地!
適用面積が200㎡から240㎡に増え、ますますお得になった相続税の居住用の小規模宅地等の課税価格の計算の特例です。本日は、この規定を上手に利用して相続税評価額を激減させることができたAさんと、対策を十分にとらなかったBさんの事例をご紹介いたします。
東京都S区にお住まいの、AさんとBさんがいました。
ご両人とも、面積が240㎡更地価額3億円(借地権割合60%・借家権割合30%)の土地をお持ちで、その土地に6階建てのビルを建設しております。Aさんは、ビルを建てる際に顧問税理士に相談です。その結果、ビルの1フロアにご自分が住み、残りの5フロアを貸すようにアドバイスを受けました。なお、このビルは各階とも床面積は同一であるものと致します。この場合のAさんの相続税評価額は、下記のように、一部が自用地(自宅部分)、残りが貸家建付地です。
この貸家建付地、賃貸物件に係る評価減が適用できるもので、効果はご覧のとおりです。3億円×1/6+3億円×5/6×(1-60%×30%)=5,000万円+2億500万円=2億5,500万円(A)となります。
一方、Bさんは、すべてを貸家にした方が、一部を自宅にするよりも相続税評価額が低くなると思い、ビルの1階から6階まですべて貸しています。Bさんは、自宅部分は収益を生まないという考えから、少しでも多くの収入を得ようと目論んだのです。
さて、ビルの全部を賃貸すると土地はすべて貸家建付地として評価できることになります。その結果、Bさんの相続税評価額は、3億円×(1-60%×30%)=2億4,600万円(B)となります。
この時点では、確かにBさんの方が土地の評価額は低いのです。果たして、税理士のAさんに対するアドバイスは適切だったのでしょうか??
その後、ご両人ともに相続が発生しました。Aさんのように、1棟の建物の敷地等の一部が特定居住用宅地等(注)に該当する場合は、その全部が80%評価減の対象となり、適用面積も本年の改正で240㎡になるのです。
他方、Bさんは、敷地の全部が貸家建付地となるため、小規模宅地等の評価減の割合は50%となり、適用される面積は200㎡までとなっています。
以上により、小規模宅地等の評価減の適用後の土地の評価額は、
Aさんは2億5,500万円(A)×(1-80%)=5,100万円に
Bさんは2億4,600万円(B)×(1-50%)×5/6+2億4,600万円×1/6=1億4,350万円となりました。なんと、AさんとBさんとでは、同じ土地なのに約1億円評価額が違っています。住む場所の違いによって、大きな差が出てくるのです。
土地の有効活用をお考えの際は、事業計画のみでなく、相続をも視野にいれたプランニングがいかに大切であるか、お判り頂けたことと思います!(注)特定居住用宅地等
被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等を、被相続人の配偶者または一定の被相続人の親族が相続し、申告期限まで所有すると80%の評価減の適用が受けられます。
この適用を受けることができる土地等を特定居住用宅地等といいます。2001年8月1日
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7号
金庫株の解禁 実は中小企業のオーナーにとって大変な朗報です
金庫株とは企業が特定の目的を定めずに自社の発行した株式を取得・保有する制度です。
従来の商法ではストックオプションや消却などの場合を除き、自社株の取得を原則禁止していましたが、今回の商法の改正により、金庫株の取得が正式に認められました。
新聞紙上はもっぱら上場企業を対象にした内容の報道をしていますが、実は中小企業のオーナーにとっても非常に重要な商法改正なのです。
今回の改正では、
①定時株主総会の決議により、会社が買い受けるべき株式の種類・総数・取得価格の総額を定め、
②取得価格の総額を利益処分後の配当可能利益の範囲とすれば、
会社自身の資金で、会社の株式を、目的を定めることなく、購入できるようになったのです。
もちろん、この制度は全ての法人に適用されます。
つまり、これまで評価だけが高く、全く流動性がないため不良資産として考えられていたオーナー所有の未上場株式の流動化が、自分の会社の資金で図れるようになったのです。
しかしながら、喜んでばかりもいられません。実際に対策を実行するには検討すべき事項も多く、また、税法の取り扱いも複雑で、大きな落とし穴が待っている場合もあります。
みなし配当の問題や買い取り価格の決定など、ひとつ間違えば、予想をはるかに上回る税金が・・・たとえば、金庫株の買い取り価格。買い取り価格は、原則として法人税法上の時価となっています。では、法人税法上の時価とはどうやって求めればいいのでしょうか。また、自社株式の相続税評価の場合には認められている「法人税等相当額(42%)」の純資産価額からの控除も認められませし、中心的同族株主(同族で25%以上保有する場合等)が保有する株式の評価方法も違ってくるのです。商法の改正が認められたばかりなので、まだまだ不明な点も多いですが、対策には細心の注意を払わなくてはいけないのも事実です。
少しでもお役に立てれば幸甚です、転ばぬ先のATO・・・2001年7月1日
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6号
消費税にご用心!
1.知らぬ間に納税義務者?
不動産を所有する個人の方が、本人が気づかずに消費税の納税義務者となることがあります。個人が所有する賃貸用建物を譲渡する場合です。今まで、個人の確定申告で不動産所得の申告をしていた方が、その所有する賃貸用建物を譲渡した場合の消費税について、以下ご説明いたします。
2.個人が法人に建物を譲渡した場合税務の世界では、個人が不動産所得として申告している建物を譲渡した場合に、譲渡した建物代金に消費税が含まれているものと考えます。例えば、1,000万円の駐車場収入(消費税込)以外に消費税の対象となる収入がなく、売却代金が2,000万円を超える建物を譲渡した場合を考えてみましょう。建物の売却代金も消費税の対象となる収入となります。その結果、その譲渡した年の消費税の課税対象となる収入が3,000万円を超えることとなってしまいます。3,000万円を超えてしまう場合には、その翌々年に預かった消費税から支払った消費税の差額を納税しなければなりません。したがって、その翌々年に消費税の申告が必要となります。今までは、消費税の対象となる収入が3,000万円以下であったので消費税を納付する必要がなかったにもかかわらず、です。その対策として、消費税を納めなければならない年に、簡易課税という厳密な計算をしない方法を選択する方法があります。また、翌々年に店舗用建物を取得するなどの多額の設備投資の予定がある場合には、上記の簡易課税を選択しないで、建物分の消費税の一部を還付させる方法もあります。
3.税務署の目税務署では、建物の譲渡所得に対する所得税については、資産税部門が担当します。不動産所得に対する所得税については、所得税部門が担当します。そして、消費税については、両所得ともに所得税部門が担当となります。このため、譲渡に係る消費税について、チェックがあまく、消費税申告書が送られてこない、といったこともあるようです。
4.専門家を使って節税を!消費税の納税義務者になるかどうかは、事前に判断できます。専門家のアドバイスを守り、計画的に対策を進めることが重要でしょう。利益に対して課税される所得税などとは違って、案外軽視されがちな消費税です。しかし、対策のあるとなしとで意外と差が出るのも消費税なのです。
2001年6月19日
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5号
税務署と争うということ
1.税理士の知恵?
申告書を提出する前から、税務署の見解が納得できない場合があります。たとえば相続税申告における土地の評価です。税務署の公式見解である通達・路線価で評価した場合に1億円で評価される土地が、鑑定士・地元の不動産業者の評価では、7千万円、このような場合です。納税者側の評価である7千万円で申告をする場合には、税務調査が予想されます。7千万円が低すぎると認定されると、修正申告を慫慂(しょうよう)され、応じない場合には、更正処分となります。修正申告に応じた場合でも、更正処分になった場合でも、本税(足りなかった税額)のほか、加算税・延滞税が課税されます。
加算税・延滞税の課税を避けるため、当初の申告では税務署の評価(1億円)に基づいて申告書を作成・税額を納付し、その後に納税者の評価(7千万円)で申告し直す方法があります。一度払った税金を返してもらこのような方法を更正の請求といいます。
更正の請求が認められる場合には、税金が戻ってきます。仮に認められない場合でも、税務署の見解通りの当初申告が提出され、税金を払っているので、本税が戻らないだけで、加算税・延滞税の心配は不要です。余計なものを支払うことを避けるために、更正の請求という方法をとるのは、「税理士の知恵」ともいわれています。
2.立証責任税務署と納税者の見解の相違は、最終的には裁判所で決着します。裁判で勝つためには、自分の主張を立証しなければなりません。税務署が納税者の申告を否認する場合には、税務署側に立証責任があり、納税者が更正の請求を行う場合には、納税者に立証責任があるとするのが、裁判所の考え方です。
お金を貸した・返したというような事実の争いならば、立証責任が特に問題になることは、ありません。事実を主張する側が、立証責任を負うことが、道理にかなっています。
しかし、「この土地の評価額はいくら」だとかいう問題は、本来が白黒のつけられないグレ-な領域の問題です。税務の問題には、実にグレ-な問題が多いのです。
グレ-な問題での立証責任は、裁判の行方を決める重要な要素です。いずれの主張も裁判官を納得させることができなければ立証責任を負う側が敗れることになっています。
3.強気でゴー裁判まで行って勝てる税金訴訟は、ほんのわずかにすぎません。裁判まで考えることは無駄かもしれません。しかし、見解の相違で争うことがわかっているならば、当初申告で納税者の見解を主張することがベタ-です。税務署との交渉もスム-ズにいくことが多いのです。更正の請求という手法をとれば、弱気を見透かされて、結局は足元を見られることになります。
2001年5月1日
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4号
ついうっかり申告し忘れ、思わぬ附帯税が!
確定申告期限から1月近くが経ちます。税金を納めた方あるいは還付を受けた方それぞれいらっしゃると思います。
振替納税の方は所得税が4月18日に、消費税は4月26日に銀行口座から引き落とされます。残高をご確認ください。
今回は、税金を払わなかったり、少な過ぎたりしたらどうなるの?という疑問についてお答えします。
附帯税がかかります法定期限内に確定申告書を提出しなかった場合や修正申告書の提出、更正があった場合等には、本来払うべき税金に延滞税や加算税などの税金を合わせて納付しなければなりません。
本来支払うべき税金に合わせて納付しなければならない税金を附帯税といいます。
附帯税は大きく2つに分かれます。1つは払わなければならない税金をまったく払わなかったり、正しい金額を払わなかったときにいわゆるペナルティーとして課されるもの。もう1つは期限までに納付できなかったときに利息として課されるものです。附帯税には以下の6つのものがあります。
ペナルティーとして課されるもの①期限までに申告書を提出している場合
期限内に確定申告書を提出した後、税務調査や税務署の指導等により修正申告書を提出した場合、または更正によって追加税額が生じた場合に課されるものを過少申告加算税といいます。
課税割合 原則として追加される本税の10%
ただし、その追加税額のうち
期限内確定申告額又は50万円のいずれか多い金額を超える部分については
15%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)②期限までに申告書を提出していない場合
決算の作業が申告期限までに間に合わなかった場合やうっかり申告し忘れて期限までに確定申告書を提出できなかった場合にペナルティーとして課されるものを無申告加算税といいます。申告書を提出していないために税務調査を受け、申告書を提出した場合等に課されます。ただし、税務署から言われる前に自ら申告書を提出すれば課税割合が軽減されます。
課税割合 納付税額の15%(自主的に申告した場合は5%)
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)③源泉所得税を納めない場合
資金繰りの悪化が大半の理由になるでしょう。従業員から預かった給与などの源泉所得税を期限までに納めることができなかった場合に課されるものを不納付加算税といいます。
課税割合 納付税額の10%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)④悪質な税金逃れだと認められる場合
所得を故意に隠したり、相続の際不当に財産を隠していて税務調査でバレた場合等のペナルティーです。過少申告加算税などが課される場合に、仮装・隠ぺい等その手口が特に悪質だと税務署が認めたときは、その過少申告加算税などに代えて重加算税が課されます。
課税割合 過少申告加算税・不納付加算税に代わる場合 納付税額の35%
無申告加算税に代わる場合 納付税額の40%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)
利息として課されるもの⑤申告書は提出したが、納期限までに税金を納めない場合
申告書は期限までに提出しても、うっかり納めるのを忘れていた。あるいは資金不足で期限までに税金を納められなかった。こんな場合に課されるものを延滞税といい、まさに遅延利息です。
課税割合 年14.6%(ただし、納期限の翌日から2ヶ月間は年7.3%)
(年7.3%部分については現在の低金利を考慮して現在は年4.5%に軽減されて
おります)
(計算した金額が1,000円未満の場合は徴収されません)⑥税金が期限までに納められないので延納する場合
税金は期限までに現金で一括して納付するのが原則です。しかし相続により取得した財産が換金化しにくいものである場合は期限までに納付できないことがあります。
このように期限までに税金が納付できない場合には、延納届出書という書類を提出して税務署より延納の許可を受ける事ができます。延納の許可を受けた場合に本来の税金と合わせて納付するものを利子税といいます。課税割合 年7.3%(現在は年4.5%)
(計算した金額が1,000円未満の場合は徴収されません)⑤と⑥は遅延するのは同じでも、前もって申請すれば⑥の場合は利息が軽減されるのです。
このように、附帯税はかなり負担の重いものになります。
うっかり申告し忘れていることは無いでしょうか?今ならまだ間に合うかもしれません。2001年4月1日