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COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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146号
消費税率引上げ迫る!
~不動産賃貸業で押さえておくべきポイントは~皆様ご存知のように、平成26年4月1日から国税と地方税を合わせた消費税率が、現在の5%から、8%に引上げられる見込みです。この引上げに対応して、一定の要件を満たす取引については、引上げ日以降に行われるものであっても改正前の5%の税率が適用される「経過措置」が講じられることになっています。また、経過措置の対象とならない取引では、契約内容により引上げ日前後で損益に影響が出ることもあります。そこで、特に不動産賃貸業に関して、税率引上げ前に押さえておきたいポイントを整理しておきましょう。
1.新規物件の建築は請負契約の締結日がポイント経過措置の代表的なものが、アパート建築工事等の請負契約です。
適用される消費税率は原則として、いつ、資産の譲渡、貸付、役務の提供を行ったのか、受けたのか、ということで判断します。建築工事の場合は、工事が完成し引渡しを受けた時をもって判断します。平成26年4月1日以降に完成し引渡しを受けるものは8%となるのが原則です。
ところが、請負契約の締結が平成25年9月30日までに行われたものは、完成引渡しが引上げ日以降いつになろうとも、5%の税率を適用するというのが経過措置です。
なお、平成25年10月1日以後にこの契約について追加工事等で増額された場合には、増額部分の金額は、経過措置の対象外となりますのでご注意ください。
また、立退きの難航等やむを得ない事情が生じて工事の着工が引上げ日後になることも想定されます。しかし、経過措置では着工日は一切関係ありません。9月30日までに契約したものであれば、適用されることになります。注意が必要なのは、平成26年3月に完成引渡しという条件で、平成25年10月1日以後に請負契約を締結したような場合です。工事の遅れで引渡しが4月にずれ込んでしまうと、残念ながら適用税率は8%となってしまいます。
この経過措置については、請負会社から発行される請求書等に適用を受けた旨の記載がなされることになります。
2.賃貸借契約の経過措置は賃貸借契約についても、契約の内容が次の「ア及びイ」又は「ア及びウ」の場合には、経過措置の対象です。対象となると、平成25年9月30日までに契約したものについては、平成26年4月1日以後の期間に対応する賃料であっても税率が5%となります。
ア 資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること
イ 貸主が事情の変更その他の理由によりこの対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
ウ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと並びに支払われる対価の額が一定の水準であること
「消費税率の改正があった場合には改正後の税率による」旨の条項はイに該当しません。しかし、この条項に基づいて平成26年4月1日以後の期間に係る賃貸料を実際に変更した場合には、その変更後の賃料は8%が適用されます。
なお、昨今の賃貸借契約書ではトラブル防止のため「賃料が経済事情の変動、公租公課の増額等により不相当となったときは、賃貸人は契約期間中であっても賃料の増額請求できる」旨の条項を設けていることが一般的なようです。この条項があればイの要件に合っていないことになります。
また、原則として期間中の解約はできなくても条件付きでできる旨の特約条項があればウの要件を満たしません。
このように賃貸借契約の場合は、現実的には経過措置の対象となる場合は少ないと思われますが、いずれにしても事前に契約書の内容のご確認が必要です。
3.既存契約書の内容確認・見直しを経過措置の対象とならない取引については、契約書で消費税等についてどのように表記しているかにより、平成26年4月1日以降の損益に影響が出てきます。注意が必要なのは、消費税等について「税込」とし、区分して表示をしていないケースです。なお、消費税等について免税事業者であれば影響はありません。
契約書が「100,000円(税込)」と総額表示の場合で見てみましょう。当方が受け取る賃料の本体価格は、4月1日以降減少します。当方が他社に管理業務等を委託している場合では、4月1日以降の経費が減少することになります。既存の契約書で賃料変更可能な条項を設けていれば、例えば「金○○○円(消費税等別。消費税率が変更された場合には、変更後の率による。)」という内容に変更をする、などの検討が必要です。
また、消費税率は平成27年10月1日からは10%となることも予定されています。この機会に、賃貸借契約書や業務委託契約書の内容を確認し、賃料の見直しや契約条項の変更が必要かどうか、お早めに検討を行っておいて下さい。2013年6月14日
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145号
適正申告が一番!!
うっかりミスでも重い負担!!国税庁の発表によると、平成23年7月から平成24年6月の間における相続税の実地調査は、平成21年中及び平成22年中に発生した相続を中心に13,787件、このうち申告漏れ等のごまかしがあった件数は11,159件で、その割合は約8割に達しています。
調査で誤りを指摘された場合、通常は修正申告書を提出することになります。その際は、相続税の本税以外にも余計な税金を納めることになってしまいますので注意が必要です。上記発表によると、調査1件当たり平均500万円超の税額を追加で課税されているそうです。このような大変な事態にならないために納税には真面目に取り組み、又、信頼できる税理士に依頼することが一番重要となります。
1.税務上のペナルティー税務調査で申告漏れが見つかると、相続税の本税(以下「追加税額」という)のほか延滞税と過少申告加算税又は重加算税が課されます。
(1)延滞税の計算方法
ア 延滞税は、言わば遅延利息です。申告期限から本税を完納した日までの期間に応じて計算します。延滞税の割合は毎年変動しますが、平成25年は年4.3%です。なお、税制改正により、平成26年から年3%程度となります。また、この割合は納期限から2ヶ月経過後は年14.6%(平成26年からは年9.3%程度)に跳ね上がります。
修正申告を行う場合は、修正申告日が追加税額の納期限となり、修正申告日から2ヶ月までは年4.3%。しかし、2ヶ月を超えると年14.6%の割合が適用されます。
イ 修正申告は調査に伴い行うことが多く、税務調査の時期により、延滞税の額に大きな差が生じることになります。そのため、税務署の調査がいつ行われるかによって、延滞税の額に影響がないように特例が設けられています。この特例とは、法定申告期限から1年経過後に修正申告をした場合、その1年後の日から修正申告日までの期間について、延滞税の計算が免除されるというものです。ただし、仮装や隠ぺいがあり重加算税が課されるようなケースは適用されません。この免除特例が適用されたとしても、修正申告日から延滞税の計算は再びスタートし、2ヶ月経過すると年14.6%の割合が適用される点は上記①と同じです。
(2)加算税の計算方法
適正でない申告をしたことに対する罰金的なものが加算税です。後述する悪質な申告に課税される重加算税もありますが、通常は過少申告加算税のケースが多いでしょう。この場合は、追加税額に10%の税率を乗じます。ただし、追加税額が当初申告税額(50万円以下の場合は50万円)を超えるような場合は、その超える部分については更に5%が割増されます。また、隠ぺいや仮装があったとされると、過少申告加算税に代えて重加算税が課されます。税率は一律35%です。
2.ケーススタディー過少申告加算税か重加算税かで、最終的に納付することになる税額にどの程度の差が生じるか見てみましょう。ケース1は、相続人も認識のない財産の申告漏れが調査で指摘されたとき、ケース2は、財産の隠匿や架空債務の計上(重加算税対象)が調査で指摘されたときです。
「前提条件」
・申告期限(平成22年4月30日)に相続税1,000万円を納付。
・調査があり3年後の平成25年4月30日に修正申告書を提出。
・追加税額2,000万円を平成25年10月31日に納付。
「ケース1」延滞税は、追加税額2,000万円に対し、下図ケース1のAとBの期間について年4.3%が適用され、Cの期間について年14.6%が適用されます。過少申告加算税は、追加税額2,000万円に対して10%ですが、当初申告税額1,000万円を超える部分の1,000万円については5%(50万円)が加算されます。 「ケース2」延滞税は、追加税額2,000万円に対し、下図ケース2のAの期間について年4.3%が適用され(免除特例は適用されない)、Bの期間について年14.6%が適用されます。重加算税は、追加税額2,000万円に対して35%が適用されます。この結果、延滞税と加算税の額は次表のとおりになります。
ペナルティーの額を比較していただければ、仮装や隠ぺいをすると後で痛い目にあうことは明らかです。また、修正申告書は、年14.6%の割合が適用されないよう納税資金を準備した上で提出することが重要です。
3.本税と延滞税どっちを先に払う?修正申告をして、相続税2,000万円・延滞税100万円を納付しなければならないのに、すぐに払える資金が100万円しかないとします。この場合は、相続税と延滞税のどちらを先に払えばいいのでしょう?相続税本税が減らなければ、延滞税が増え続け、困ったことになります。結論は、相続税から納付し、完納後に延滞税を納付すれば良いのです。延滞税に対して延滞税は課税されないためです。
2013年5月15日
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144号
平成25年度税制改正
~平成25年度税制改正大綱より~例年より1か月以上遅れた1月24日、税制改正大綱が発表され、同月29日に閣議決定されました。大綱の内容は国会で可決、成立した後、適用される予定です。年末の総選挙と年度末との兼ね合いで、駆け込みでの大綱作成となりましたが、ここ数年ではある程度大きな改正になりました。以下、今年の大綱に盛り込まれた事項について説明させていただきます。
1.【相続税・贈与税・所得税】税率構造最高税率が上がりました。また、贈与税については2つの税率構造ができました。
(平成27年1月1日以後)
2.【相続税】基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人の数に引き下げられます。現行では亡くなった方の4%に相続税が課されていますが、この改正により6%に上昇すると見込まれています。この影響は都市部に持ち家をご所有の方に集中するため、次の改正が盛り込まれました。
(平成27年1月1日以後)
3.【相続税】小規模宅地等の減額特例被相続人が事業や居住の用に供していた土地の評価額を引き下げる特例です。この特例のうち、居住用宅地等部分について適用面積が拡充、適用要件が緩和されます。
適用面積:240㎡→330㎡
特定事業用宅地等と併用する場合それぞれの限度面積まで完全併用することができるようになります。(平成27年1月1日以後)
適用要件
(1)一棟の二世帯住宅で建物内を行き来できない場合も敷地全体について特例の適用が可能となります。
(2)被相続人が老人ホームに入所された場合でも以下の要件を満たす場合には特例の適用が可能となります。
・被相続人に介護が必要なため入所したものであること
・家屋が貸付け等の用途に供されていないこと (平成26年1月1日以後)
4.【贈与税】教育資金の一括贈与現行の制度でも教育資金の贈与は非課税です。但し必要な都度贈与する必要があります。今回の改正は一度に多額の資金を非課税で贈与することができるというものです。30歳未満の受贈者の教育資金として、直系尊属が金銭等を金融機関に信託等として支出した場合に適用されます。上限は受贈者1人につき1,500万円(学校等以外は500万円)です。
教育資金に充てられたことを証明するため、領収書等を金融機関等に提出する必要があります。
なお、30歳になった際に残額がある場合、その時点で贈与があったものとして贈与税が課税されます。
(平成25年4月1日から平成27年12月31日まで)
5.【所得税】日本版ISA現在、上場株式等の譲渡益等については軽減税率が適用されています(所得税7%、住民税3%)。平成26年以後原則に戻り、所得税15%、住民税5%となります。
個人による資産運用を促進させるための特例でしたが、あまり効果が無かったため、新たな対策として日本版ISAが平成26年から10年間適用されます。
上場株式等への投資のうち、毎年100万円までが非課税枠となります。この非課税枠内の上場株式等から生じる配当や譲渡益が非課税となります。保有期間は最長5年間です。非課税となる投資額は最大500万円(毎年100万円×5年間)となります。
5年間の保有期間終了時に、非課税枠を移管し、非課税のまま保有し続けることもできます。
配当や譲渡益が生じる場合は有用ですが、譲渡損失は生じなかったものとして、損益通算の対象となりません。
この制度の基となったイギリスでは広く利用されているため、当初設定されていた期限が無くなり、恒久化されました。日本でも利用状況によっては恒久化、対象商品や非課税枠の拡充、対象年齢の引き下げ等が期待されます。
6.その他今回取り上げることができなかった改正案のうち主要な項目は、次表のとおりです。
2013年4月15日
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143号
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例が見直しに?
~会計検査院から優遇制度に物言いが~相続税の課税対象となった相続財産を売却する場合、相続税に加え、売却益である譲渡所得金額に対し所得税が課されます。但し、譲渡所得金額の計算過程で、納めた相続税を差し引いてもらえる優遇制度があります。
相続税納付のために相続財産を売却するような場合、納税者にとって大変有難いものですが、昨年10月19日、会計検査院から制度の内容を見直すよう指摘がありました。
1.制度の趣旨と概要「取得費加算の特例」と呼ばれているこの制度は、税負担を軽減する目的で昭和45年に創設されました。
譲渡所得金額の計算上、収入金額から控除する「取得費」に納付した相続税のうち一定額(以下、「取得費加算額」という。)を加算する仕組みになっています。つまり、取得費加算額が大きければ大きいほど、譲渡所得金額は小さくなり、所得税も少なくなります。
但し、取得費加算額には上限が有り、譲渡所得金額が零になるところで打ち止めです。また、適用を受けられるのは、相続開始から3年10か月以内の売却に限られます。
2.平成5年改正で土地等の譲渡に大盤振る舞い昭和45年の特例創設当時、取得費加算額は土地等とそれ以外の財産を区別することなく、「譲渡した相続財産に対応する相続税額」に限られていました。
その後、平成5年の税制改正で、土地等に係る取得費加算額が大幅拡大。「相続した全ての土地等に対応する相続税相当額」とされました。上記の算式の分子の下線部分が「全ての土地等の価額」となります。
これにより、例えば下のA・B・Cという3つの土地を相続し、そのうちのAだけを譲渡したような場合(※)、Aの譲渡所得の金額の計算上、譲渡していないB・Cに対応する相続税までも取得費に加算できることとなったのです。
3.平成5年改正の背景平成5年の改正は、バブル期の地価高騰を抑制するための土地課税強化により、土地譲渡税の負担が重くなり過ぎたことに配慮して行われました。
しかし、実際には別の事情もあったようです。
改正当時、バブル崩壊により地価は下落し土地取引も停滞。相続税評価額が実勢価格を上回る逆転現象が起き、物納が激増。その一方で国側は、収納した土地の売却処分が進まず頭を痛めていました。
何としても物納から現金納付へシフトさせたい。大胆な優遇措置の本音はそこにあったと思われます。
4.会計検査院の指摘今回、会計検査院は、平成5年改正で拡大された土地等に係る取得費加算額の適用範囲を見直すよう意見表示しました。
それによると、特例適用者のうち、譲渡していない土地等に対応する相続税の加算割合が著しく高い人が約半数。このうちの5人に1人は、譲渡所得税の負担が生じていません。また、平成5年改正により増加した取得費加算額は786億円。その結果、減少した所得税は118億円と試算されました。つまり、土地等を多く相続された方の中に、所得税が著しく軽減されている方がいることを問題視したのです。
また、当時30%であった譲渡所得税率(国税)は15%まで引き下げられ、物納件数も激減。状況が様変わりした現在、この土地等の特例の見直しは必然というわけです。
5.土地等の特例が無くなると・・・それでは、土地等の特例が有る場合と無い場合とではどの位の差が出るのでしょうか?上記2の例(※)で検証してみました。
この場合、土地等の特例が無いと、取得費加算額は約5千万円少なくなり、税額では約1千万円もの負担増となります。
6.特例の行方は?平成25年度の税制改正大綱では、取得費加算の特例の改正は見送られました。しかし油断は禁物!会計検査院の指摘後、数年以内に改正された制度は数多くあります。今後の動きが気になるところです。
2013年3月15日
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142号
物納が終わっても税の軽減があります!
~物納後に忘れがちな固定資産税の減免申請等~相続税を金銭で一括納付することができないため、物納を選択する場合もあるでしょう。物納が許可された時はいままでの苦労もあり、これで終わったと肩の荷が下りるかも知れません。しかし、税の世界では気の抜きすぎは禁物。物納後にも税の軽減が受けられる制度が用意されています。
1.固定資産税・都市計画税の減免相続税の納税は金銭で一時に納付することが原則ですが、それができない場合には延納・物納という納付方法があることはご承知の通りです。 今回は、相続税納税のために土地(固定資産)を物納した場合を例として説明いたします。
様々な書類を用意した上での税務署への物納申請、その後の財務局による現地調査や細かな指摘事項もクリアし晴れて物納許可が下りました。確かに物納手続きはこれで一段落となりますが、忘れずに固定資産税・都市計画税(以下、「固定資産税等」といいます)の減免申請を行って下さい。
本来、固定資産税等はその年の1月1日時点で所有していたのであれば、その全額を納める必要があります。しかし、減免申請をすることにより、その年度分の固定資産税等のうち物納後の税負担の免除を受けることができる場合があるのです。
例えば東京都23区では、固定資産が相続税法の規定により物納された場合、減免申請した日以後の固定資産税等を減免する取り扱いがあります。なお、この取り扱いは条例で定める事項であるため、各市町村によって対応が若干異なります。そのため、減免可能か否かは物納した土地が所在する場所ごとに調べる必要がありますので注意して下さい。
2.減免される固定資産税等の額固定資産税等の減免はあくまでも申請を行った場合の取り扱いですので、申請書を提出することが必要です。 実際に減免される固定資産税等の具体的な金額は、各市町村により詳細が異なりますが、おおよそ次の1又は2の取り扱いとなっています。
減免対象税額については
1 減免申請日以降の納期限分を減免
2 物納(収納)された時以降の納期限分を減免(※東京都23区は1の取り扱い)
固定資産税等の前納分については1 前納分(一括納付分)は減免対象外(還付をしない)
2 前納分(一括納付分)も減免対象(還付がされる)(※東京都23区は2の取り扱い)いずれにせよ減免を最大限に受けたい場合には、物納対象としている固定資産は、
ことにより減免税額を多くすることが可能になるのです。
なお、固定資産税等を前納している場合には減免がなされないものだと認識されている方もいるようです。しかし、上記のように前納されていたとしても、減免のうえ税額還付を行う市町村もありますので思い込みには注意です。
3.条件付き物納許可後の更正の請求物納許可後に相続税の評価額を減額することが可能な場合もあります。
土地の物納では許可にあたり条件が付されることがあります。実務的には、土地を更地で物納する場合、物納許可後に土壌汚染や地下埋設物等の存在が判明した時は除去をしなければならないという条件が付けられます。
万一、物納許可後に土壌汚染等が発見された場合には除去の履行を求められることになります。(履行をしなかった場合には物納許可が取り消されます。)
このような場合には、既に申告した相続税について更正の請求を行い、土壌汚染等に係る土地であったとして評価額を減額し、税金を取り戻すことが可能です。
4.手続きは自己責任固定資産税等の減免申請や相続税の更正の請求は、その手続きはいずれも本人が行うものです。したがって、市町村や税務署の方から親切に言ってくれることは絶対にありません。
つまり、確定申告と同様あくまでも自己責任なのです。後の祭りとならぬよう忘れずにメリットを享受するようにしましょう。2013年2月15日
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141号
税金いろいろ○×クイズ
~税金豆知識をお届けします!~今回は趣向を変えて、税についての○×クイズです。答えを隠しながらお読みください。正解数は自己申告です。開業20周年を記念して、全問正解の方にはATOから素敵な賞品が…!?詳細は最後に発表させていただきます。では、問1~問4まで、○か×でお答えください!
1.保険金について問1 死亡保険金が支払われる際、未払いの剰余金(配当金)、払戻しを受ける前納保険料の額を上乗せした金額を保険金受取人が取得する場合があります。上乗せ額は契約時の保険金ではないので、相続税の課税財産ではありません。正しいと思われますか?
答1 × これらの金額は保険約款等の規定に基づいて受け取るものであり、経済的実質は保険金と同じと考えられています。つまり、相続等により取得したものとみなされる保険金に含まれます。そこで、契約時の保険金額に、未払いの配当金等を含めて相続税の申告をする必要があります。
そのため、配当金等の額を早めに確定させなければなりません。また、保険金の受取額を相続税の支払いに充てる場合もあります。手続きは落ち着いてから・・・とついつい後回しにしてしまうことも多いようですが、申告期限は情け容赦なく到来します。いずれにしても早めの手続きをお願い致します。
2.国民健康保険からの葬祭費について問2 国民健康保険に加入していた被相続人の死亡により支払われるものとして葬祭費があります。葬祭費は相続が発生したことを原因として受け取るものなので、相続税の課税財産になります。正しいと思われますか?
答2 × 葬祭費は保険給付のひとつで、被相続人の死亡により支給されます。国民健康保険法において保険給付については「租税その他の公課の禁止」が規定されています。つまり葬祭費には相続税は課されません。
また、国民年金基金から支給される死亡一時金についても国民年金法に「公課の禁止」が規定されています。そのため葬祭費と同様に相続税は課されません。
税法の知識だけではなく、様々な法令の知識を駆使して相続税の税額を計算する必要があります。
3.消費税の納税義務者について問3 私たちの生活と切り離せない税金として消費税があります。私たち消費者が負担している税金を事業者が国に納付することが一般的なため、負担者以外の者が納付する「間接税」に区分されます。しかし、一般消費者が国に直接納付することもあります。正しいと思われますか?
答3 ○ 消費税の納税義務者は国内取引の場合事業者です。ただし、輸入取引の場合はサラリーマンでも専業主婦の方でも納税義務者となります。
海外旅行からの帰国時、飛行機の中で縦長の紙(「携帯品・別送品申告書」)を記載されたことがあると思います。何気なく記載している紙ですが、申告書を作成されているのです。この申告書に記載された品名、数量、金額等が、旅行者の免税範囲を超えると消費税を納付することになります。
(注)消費税以外の関税等の申告も同時に行っています。
4.源泉所得税について<ラスト問題>問4 源泉税は役員報酬、給与又は弁護士等の報酬を支払った際に関係してくる税金です。しかし、不動産売買時にも源泉税の徴収、納付義務が生じる場合があります。正しいと思われますか?
答4 ○ 非居住者の方から不動産を購入した場合、原則として購入された方(代金支払者)に源泉税の徴収、納付義務が発生します。
購入した者は、購入対価の10%(平成25年から10.21%)に相当する源泉税を控除した残額を非居住者に支払い、その後、源泉税を納付します。
役員報酬等の支給により生じる通常の源泉税について「納期の特例」(半年に1度の納付)を適用されている方はご注意ください。非居住者から不動産を購入したことにより生じた源泉税は、特例と関係なく、翌月10日までに納付しなくてはなりません。
本来は非居住者が譲渡にかかる所得税を確定申告することで課税が終了します。しかし、非居住者と言うこともあり、課税モレを防ぐためにこのような仕組みとなっています。
5.結果発表!お疲れ様でした!いかがでしたか?全問正解の方はいらっしゃいましたか?問4は普段の生活とはあまり馴染みがないので、難しかったのではないでしょうか?そのような難問を正解され、みごと全問正解された方、おめでとうございます!なんと豪華海外旅行の権利のみを獲得です!!
ただし、費用のご負担はお願いいたします。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。2013年1月15日
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140号
住宅購入のための資金贈与が最大1,310万円まで無税に
~住宅取得資金等贈与の非課税制度を活用しよう~いよいよ子供がマイホームを購入することになったが、親として子供の独立を応援したい…。そんな方に是非活用して頂きたい制度があります。
1.住宅取得資金贈与の非課税制度父母、祖父母などのいわゆる直系尊属からの贈与により取得した住宅取得資金(住宅の取得又は住宅の増改築のための資金)については、一定の要件を満たせば、次の表の金額まで非課税となります。
さらに基礎控除の110万円を合わせると、平成25年中の贈与であれば、最大1,310万円(1,200万円+110万円)まで無税でお子様への贈与が可能となります。
2.対象となる人は?(1)贈与する側
・直系尊属(父母、祖父母)であること
・養親は含まれますが、配偶者の直系尊属は対象外です。
(2)贈与を受ける側(特定受贈者)
・国内に居住していること(海外に居住していても、日本国籍を有し、一定の場合は認められます。)
・その年1月1日において20歳以上であること
・その年分の合計所得金額が2,000万円以下であること
3.どんな住宅が対象になるの?・受贈者の居住用家屋(国内に所在)であること
・家屋の床面積のうち、2分の1以上が居住用であること(店舗併用住宅の場合は注意が必要です)
・登記簿上の床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること(共有の場合は全体で、区分所有の場合は区分所有部分で判断します)
中古等の既存の住宅の場合、増改築等の場合も一定の条件を満たせば対象になります。
4.適用を受けるためには・・・贈与を受けた年の翌年3月15日(贈与税の申告期限)までに、その資金で住宅を取得等し、居住している必要があります。もし諸事情により居住できていない場合であっても、遅滞なく居住する見込みであることが確実であれば認められます。また、受贈者の戸籍謄本、住民票の写しなど、要件を満たすことを証明するための書類を添付し、贈与税の期限内申告をしなければなりません。
5.二世帯住宅の場合も適用を受けられるの?どのような所有形態によるかで変わります。
・全体を父と子で共有した場合
上記3.(2)、(3)の床面積の判定は、全体で判定することになります。従って、父の居住部分、子の居住部分を合わせた全体の床面積の合計を50平方メートル~240平方メートルの範囲内におさめる必要があります。また、店舗併用住宅では、居住用部分が全体のうち2分の1以上でなければいけません。なお、ここでの注意しなければならない点は、共有の持分が、資金贈与を考慮した後の負担割合と同じである必要があります。もし相違すると、差額部分は贈与税の対象となってしまうからです。
・父と子で区分所有した場合
区分所有の場合の床面積の判定は、それぞれの区分ごとに行います。従って、子の専有部分が50平方メートル~240平方メートルの範囲内であれば適用できます。なお、一体の家屋を区分所有として登記するためには、原則として、それぞれの部分が明確に区分されており、独立性がある必要があります。区分所有による登記ができるかどうか事前に土地家屋調査士にアドバイスを受けることをお勧め致します。
6.相続時精算課税制度との併用も可相続時精算課税制度と合わせて、適用を受けることもできます。この場合、相続時精算課税の特別控除2,500万円と合わせて、平成25年であれば、最大3,700万円(1,200万円+2,500万円)まで無税で贈与を行うことができます。ただし、非課税の1,200万円を超える部分は、相続時に相続財産として精算されるので、注意が必要です。相続時精算課税制度は、特定贈与者の年齢が65歳以上であることが要件となりますが、この住宅取得資金に係る制度は、65歳未満でも相続時精算課税の適用を受けられます。
このように、子を想う親御さんにとってはかなり魅力的な制度です。筆者の私も、今回はこの原稿を是非父に読ませたいと思っています。2012年12月14日
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139号
相続放棄をした人に、生命保険金???
~受取の是非と相続税申告について~母が生前、放蕩三昧をしてきた次男の尻拭いをし、まとまった資金を生前に何度も贈与してきたことから、母の死後、次男には相続放棄をしてもらった。他の相続人(長男と長女)が、これでやれやれ(関わらなくても済む)と思っていたところ、次男を受取人とした多額の生命保険金(以下「死亡保険金」と言います。)が出てきた。次男は、この死亡保険金を受け取ることが出来るのでしょうか。他の相続人はこれを阻止できるのでしょうか。相続税の計算上、気になる点も併せてまとめてみました。
1.相続放棄とは相続放棄とは、被相続人の預貯金や不動産などのプラスの遺産だけでなく、借金などの債務も含めた全ての遺産を相続しないこととするものです。原則として、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
相続の放棄をすると、民法上「初めから相続人でなかったものとして」みなされます。従って、相続放棄をした人には代襲相続は発生せず、遺産は残りの相続人(長男・長女)のみで分割すればよいことになります。つまり、相続放棄をした人=次男は遺産分割協議には参加できないのです。
2.死亡保険金の受取人生命保険契約をする場合、通常、死亡保険金の受取人を指定します。受取人が指定されている場合、遺産分割の対象にはなりませんから、遺産分割協議書への記載の必要もありません。従って、次男は他の相続人の許可も必要なく受取が可能なのです!
3.相続税は?では、この「死亡保険金」の税金はどうなるのでしょうか。被相続人が保険料を負担している場合は、相続税の対象となります。死亡保険金は、民法上の相続財産とはいえない場合もあり、相続税では、相続により取得したものとみなして課税しています。相続放棄をした人は、相続人ではないため、遺贈により取得したものとみなして課税されます。いずれにしても、次男は「遺贈」で取得した相続税分を納税する必要があります。
4.「相続」した場合との違いは・・・具体的に、相続税を計算する場合に相続放棄をした人がいるとき、非課税規定の適用を受けられません。相続人1人当たり500万円の非課税規定は、相続人であることが条件であるからです。例えば、死亡保険金1,500万円(受取人次男=相続放棄)、相続人2人(長男・長女)の場合は、非課税枠はありません。一方、同じ死亡保険金1,500万円でも、受取人が相続人である長男や長女であれば、法定相続人が3人となるため非課税枠は1,500万円(500万円×3人)となります。(法定相続人については「5」参照)
ちなみに、退職金の1人当たり500万円の非課税規定も相続放棄した人は同様に適用が受けられません。
5.相続放棄した場合でも・・・一方、相続放棄をした人が「遺贈」で取得しても「相続」の場合と変わらない点もいくつかあります。
まず、第一の点は、遺産に係る基礎控除を相続放棄をした人も適用できることです。
基礎控除は、≪5,000万円+1,000万円×法定相続人の数≫となります。「法定相続人」とは、民法に規定する相続人をいいます。相続の放棄をした人がいても、相続の放棄をしなかったものとした場合の相続人の数とされているからです。この事例ですと、法定相続人は、長男・長女・次男の3人ですので、8,000万円(5,000万円+1,000万円×3人)となります。
第二の点としては、配偶者に対する相続税額の軽減規定を適用できることです。
これは、配偶者が法定相続分又は1.6億円のどちらか大きい方までは相続税がかから配偶者が法定相続分又は1.6億円のどちらか大きい方までは相続税がかからない制度です。配偶者が相続を放棄した場合であっても、当該配偶者が遺贈により取得した財産があるときは、この軽減規定の適用があります。
第三の点としては、相続放棄をしても相続税の2割加算がないことです。
相続税の2割加算とは、相続や遺贈によって財産を取得した人が、その被相続人の「一親等の血族及び配偶者以外」である場合に、その人の相続税額にその相続税額の2割を加算することです。この事例の次男は、相続放棄はしていますが、「一親等の血族」ですから2割加算の対象者から除外されることになります。
6.思わぬ生命保険金以上のように、次男が相続放棄をしてもその次男が受取人の「死亡保険金」がある場合は、次男以外は受け取れず、他の相続人も対抗は出来ません。しかも、その「死亡保険金」は相続税の課税対象となることから、全体の相続税にも影響が出てきます。多額の死亡保険金が相続財産に加わると、相続税率が上がり(累進税率の為)、相続税が増えることになります。他の相続人にとっては、相続から排除したつもりが思わぬ落とし穴になりかねないのです。
かなり昔にかけた保険契約には、この事例のような思わぬ(誰も気づかぬ)保険金がある場合も十分あり得ます。保険金受取人までチェックするなど保険内容を吟味して、一通り財産を事前に調べておくことも一つの相続対策かもしれません。2012年11月15日
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138号
自主再建中のゴルフクラブ会員権を譲渡した場合の取扱いが変更に
ここ数年来、税制改正で次こそゴルフ会員権の譲渡損と他の所得との損益通算は廃止されるのでは、と噂されてきましたが、平成24年現在、損益通算は可能です。バブル時代に購入したゴルフ会員権については、売却できたとしても購入時の金額を大幅に下回る金額でしか取引されていないのが昨今の実情ですから、損益通算はせめてもの救い、というところでしょうか。
そんな中、国税庁のホームページで、ゴルフ会員権を譲渡した場合の取得費について、従来の取扱いを一部変更するということと併せて、その取扱いが明文化されました。
1.従来の取扱いこの8月に行われた今回の取扱い変更は、6月に確定した東京高裁の判決に基づくものです。譲渡の収入金額から差し引く取得費として従来認めていなかったものを、認めることとするというもので、私たちに有利となる変更です。
対象となるのは、預託金会員制のゴルフ会員権で、破たんしたゴルフ場経営会社が会社更生法に基づく更生計画等により、ゴルフ場の営業は続けながら自主再建を目指している、というケースのものについてです。
このような会社のゴルフ会員権について、更生手続等で預託金の全部が切り捨てられた場合には、更生手続きの前後では会員権が資産として同じものではなくなった、という考え方から、全額切り捨てとなった預託金はもちろん、更生手続き前の会員権取得のために支払った入会金も取得費とは認めない、というのが従来の取扱いでした。
このような会員権は、入会当時は高額の預託金や入会金が必要な会員制であったとしても、預託金切り捨てによって、プレー権程度の価値の非常に低い価格でしか取引されないこととなってしまいました。そして、新たにそのプレー権のみの会員権を、切り捨て時の時価で取得したものとされてしまいました。つまり、売却したとしても、事実上、損失は生じなかったのです。
2.これからの取扱い今後の取扱いは、次のようになります。
預託金会員制ゴルフ会員権が、会社更生法に基づく更生計画による更生手続等によって預託金の全額を切り捨てられたことにより、優先的施設利用権(いわゆるプレー権。以下同じ)のみのゴルフ会員権となったときであっても、次のような状況があって、そのプレー権は更生手続等の前後で変更なく存続し同じものとして認められる場合には、譲渡した際の収入金額から控除する取得費は、更生手続等前の預託金ゴルフ会員権を取得したときのプレー権部分に相当する金額、つまり入会金相当額とします。全額切り捨てられた預託金部分は従来どおり控除できません。(1) 会社更生計画等の内容から、更生手続等の前後で会員の選択等にかかわらず、プレー権が変更なく存続することが明示的に定められていること (2) 更生手続等でプレー権のみの会員権となるときに、新たに入会金の支払いがなく、かつ、年会費等納入義務を約束する新たな入会手続きが執られていないこと なお、預託金の一部のみが切り捨てられたものは、従来どおりで変更はありません。切り捨てが10%でも90%でも切り捨てられた金額は認識せず、取得価額から減額しないものとします。つまり、取得費は、購入時に支払った預託金100%と入会金相当額の全額となります。
いずれにしても、更生手続き前後で会員としてなんら変わりない地位を有し続けているかということがポイントになります。
3.取扱いの変更は過去にも遡及今回の取扱いの変更は、過去分にも遡及します。判決等により取扱いが変わったものについては、後発的事由による更正の請求という手続きを取ります。ただし、申告期限から5年以内のものに限られます。
平成23年分は通常の更正の請求期間内であるため申告期限の翌日である平成24年3月16日から5年間、平成19年分から平成22年分についてはこの取扱いの変更を知った日から2ヶ月以内に、更正の請求を行う必要があります。この期間内の申告で、該当する譲渡を変更前の取扱いで申告された方は、早急に手続きが必要です。
4.譲渡損失の損益通算ゴルフ会員権の譲渡は「譲渡所得」なのですが、これに対する税金の計算方法は、土地建物等の分離課税の譲渡とは違います。給与や不動産といった他の所得と合計して税額を計算します。これを「総合課税の譲渡所得(以下、総合譲渡)」といいます。
また、不動産の譲渡による損失は他の所得とは通算することができませんが、総合譲渡の計算で生じた損失は、給与所得等から差し引くことができます。
もちろん、総合譲渡となる他の資産の譲渡益との通算も可能です。例えば金の譲渡も総合譲渡として計算します。金価格の上昇で利益の出る売却をなさる方が多くなっているようですので、こうした益との通算ができます。
取扱いの変更により、該当するケースでは取得費が多く計上できることとなり、残念なことではありますがその分損失も多くなります。預託金全額切り捨てのゴルフ会員権について処分をもうあきらめていた方、要件を満たしていれば、悔しいけれど売却することにより、少し税金という形で取り戻せるかもしれません。2012年10月15日
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137号
小規模企業共済を活用しよう!!
~所得税対策、相続税対策にかなりお奨めです~預貯金をしてもほとんど利息のつかないこのご時世、安全で、利回りが高く、有利な税制が設けられている小規模企業共済は、所得税、相続税対策としてお薦めです。
1.制度の概要小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度で、小規模企業の個人事業主等の廃業、会社等の解散、第一線を退いたときの生活の安定又は事業の再建等を図る資金をあらかじめ準備しておくためのものです。小規模企業者の相互扶助の精神に基づき、自らの拠出による共済制度を確立することによって、小規模企業者の福祉の増進と小規模企業の振興に寄与することを目的としています。
2.加入資格小規模企業共済には加入資格があります。名称のごとく大規模な事業を営む者は加入資格がなく、小規模な事業を営む個人事業主(共同経営者を含みます。)又は会社の役員に限られます。規模の判定は、従業員の数により行い業種により異なります。例えば、不動産業を営む場合は、常時使用する従業員の数が20名以下となっています。
3.預金するなら加入しよう同制度を運営する中小企業基盤整備機構は独立行政法人ですので、民間の銀行よりも破綻する確率は低く安全です。しかも、将来の共済金は、次表のとおり掛金元本をわることなく、利息相当部分は預金の数倍となっており、長く加入するほど共済金が多くなります。(任意で解約した場合や規約に違反した場合等は掛金元本を割ることがあります。)
4.所得税対策(1)所得控除
掛金は税法上、全額を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できます。掛金は月額1,000円から70,000円の範囲内(500円単位)で自由に選べますので、資金繰りと相談しながら無理なく支払いができます。所得税等の軽減の効果としては、以下の表のとおりとなります。例えば、月額7万円の掛金を支払うと年額84万円になります。課税所得が2,000万円の方であれば、実質84万円の貯金をすることにより、所得税及び住民税が42万円も軽減されることになります。(2)退職所得控除
共済事由や受取方法により、課税関係は異なりますが、65歳以上の方で15年以上加入した場合、または事業を廃止した場合で共済金を一括受領するときは、退職所得として所得税が課税されることになります。本来は掛金元本の払戻しであり、利息相当部分だけが課税対象と考えられますが、掛金はすでに所得控除しているので二重の控除はできません。本来、全額課税対象と考えられますが、退職所得扱いのため、退職所得控除(例えば、勤続年数が10年の場合は400万円、25年の場合は1,150万円となります。)が適用され、2分の1課税と優遇されています。
・退職所得の計算方法
(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得※小規模企業共済の場合、組合員であった期間となります。(1年未満の端数切上げ)
5.相続税対策生前、共済金を受取ることなく亡くなり、相続人が共済金を受け取った場合は、「退職手当金等」として相続財産となります。この退職手当金等には、親族間の生活協同関係に配慮して非課税規定が設けられており、例えば、相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合、「500万円に法定相続人の数(3人)を乗じた金額」の1,500万円までが非課税となります。
個人事業主には、退職金というものがありませんし、資金繰りの都合上死亡退職金を支払えない場合も多いかと思われますので、小規模企業共済によりこの非課税制度を利用して、納税資金の準備等として有効に活用して頂きたいです。2012年9月14日
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136号
老人ホーム入所と小規模宅地等の減額特例の適用
~「生活の拠点」は”自宅”それとも”老人ホーム”?~自宅の敷地についての「小規模宅地等の減額特例」。適用できれば80%の減額です。240平方メートル部分までという面積制限はありますが、例えば1億円評価の土地が2,000万円になります。適用できるか否かで相続税額に大きな差が生じることが多いのです。
ところで、老人ホーム入所後に死亡した場合、自宅の敷地についてこの減額特例を適用できるのでしょうか。
1.自宅の敷地への減額特例の適用居住用宅地についての小規模宅地等の減額特例は、『居住の用に供されていた宅地等』について適用されます。具体的には、「生活の拠点」といえる建物の敷地がその対象です。老人ホームに入所していたとしても「生活の拠点」が自宅にあると言えるのであれば、自宅敷地についてこの減額特例が適用できることになります。
いずれの建物に「生活の拠点」があるかは、日常生活の状況、建物への入居目的、建物の構造及び設備の状況などの事実を総合勘案して判定することとされています。
2.事例の設定(自宅が"空家"となる場合)今回は、次の条件設定での検討とします。
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・被相続人は、介護を受けるため介護用老人ホーム(終身利用権取得)に入所し、退所することなく死亡。
被相続人の配偶者は既に死亡しており、老人ホーム入所後、自宅は空家のまま。
自宅とその敷地は、別居の子(3年超の期間、賃貸住宅に居住)が相続し、相続税の申告期限まで保有。
3.4つの判定要素判定要素は次の4項目です。「生活の拠点」が自宅にあるとして、その敷地について減額特例の適用を受けるには、原則、4項目の全てをクリアする必要があります。
ア 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所したこと。 イ 被相続人がいつでも生活できるよう自宅の維持管理が行われていたこと。 ウ 入所後あらたに自宅を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。 エ 被相続人又はその親族が、老人ホームの所有権あるいは終身利用権を取得していないこと。
4.判定要素はどのような意味があるか(1)介護の必要性(判定要素ア)
介護を受ける目的で老人ホームに入所されるケースのほか、介護の必要がなくても、将来のことを考え入所されるケースもあると思います。後者(介護の必要なし)の場合、老人ホーム入所時に「生活の拠点」が自宅から老人ホームに移転したことになり、自宅の敷地は、『被相続人の居住の用に供されていた宅地等』に該当しないことになります。このことは、亡くなる直前に要介護状態になったとしても結論が変わるものではありません。あくまでも入所時の状況で判定します。
(2)自宅の維持管理状況(判定要素イ及びウ)
「自宅」=「生活の拠点」といえるためには、いつでも住める状態(起居可能)であること、すなわち、親族等によって維持管理がなされていることが必要です。自宅に戻る見込みはないと考え、寝具などの生活用品を処分したり、自宅を賃貸に供したりしたような場合には、その時点で「生活の拠点」といえないことになります。
(3)終身利用権等を取得していないこと(判定要素エ)
まず、入院のケースを考えてみましょう。病気のため入院し、退院することなく死亡した場合です。入院は治療のためで、病気が治癒すれば自宅に戻ることは明らかです。そうすると、入院はあくまで「一時的」なもので、病院に「生活の拠点」を移したことになりません。なお、ここで言う「一時的」なものかどうかは、入院期間の長短という時間的なものではなく、入院の必要がなくなれば自宅に戻る状況と言えるかどうかで判定されます。
介護の必要があり介護用老人ホームに入所した場合も同様です。介護の必要がなくなれば、自宅に戻ると言えるのであれば、その入所は「一時的」なものとなります。この点、老人ホームの終身利用権等の取得という事実は、「一時的」なものかどうかの判定において、大きなマイナス要因とならざるを得ないのです。一般には「生活の拠点」が老人ホームに移ったと判断されてしまうのです。
高齢者が要介護となった場合、その後、介護の必要がなくなるケースは少ないのかもしれませんが、特別養護老人ホーム(特養)や賃貸形式等の介護用老人ホームであれば、入院の場合と同様に、その入所が「一時的」なものと判断されるケースも多いようです。
5.本事例の場合は・・配偶者や同居親族がいない状況で、賃貸住宅に3年超の期間居住する子が被相続人の自宅敷地を相続し、申告期限まで保有していますから、取得者要件や保有継続要件は充足しています。問題となるのは老人ホームへの入所が「一時的」なものといえるかどうかです。「生活の拠点」の判断は、本来、住居の所有形態(自己所有・賃貸)で結論が左右されることはありません。しかし老人ホームでは、終身利用権が取得されていると、介護のための「一時的」なものというよりも新たな「自宅の取得」という印象が強くなります。個々の事実関係を検討する必要がありますが、一般には、自宅の敷地への減額特例の適用は困難と考えられます。
2012年8月15日
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135号
売ってないのに譲渡所得!?にご用心
土地や建物を売って利益が出たら譲渡所得税が課税される。当たり前のこととしてご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし、所得税法では、売っていないのに譲渡として課税されてしまう場合があるのです。今回は、そのような一般常識からは例外と言える所得税法上の取扱いをご紹介します。
1.所得税法における譲渡所得とは単に資産を引き渡して対価を得るという一般的な売買だけでなく、対価の授受がなくても譲渡所得として課税されることがあります。これは、所得税法が資産保有期間中の価値増加分を譲渡所得としているためです。
以下、代表的なケースについて具体例をあげて説明いたします。
2.譲渡所得とされるケース(1) 借地権等の設定
建物または構築物の所有を目的とする借地権等を設定するケースです。その対価として支払いを受ける金額が、土地の時価の2分の1を超える場合には、その対価の額で借地権等の譲渡があったものとして譲渡所得の計算をします。
ちなみに、対価の額が土地の時価の2分の1以下である場合には、不動産所得の収入金額となります。
(2) 代物弁済
代物弁済とは、例えば、Aから3,000万円の借金をしているBが、現金による返済に代えてAに時価3,000万円の土地を引き渡し、債務を消滅させる契約を言います。
この場合、Bは土地を3,000万円で譲渡したものとして譲渡所得の計算をします。
ただし、その代物弁済が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合において一定の要件に該当するときは、譲渡所得は非課税とされます。
(3) 離婚による財産分与
例えば、離婚による財産分与として、夫が自己名義のマンションを妻に引き渡した場合、所得税法上は次のように取り扱われます。
夫は、財産分与義務の消滅を対価とする資産の譲渡をしたとみなされます。したがって、分与時の時価でマンションを譲渡したものとして譲渡所得の計算をしなくてはなりません。
ただ、この場合、居住用財産の譲渡をした場合の特例が使える可能性がありますが、ここでは詳述いたしません。
一方妻は、財産分与請求権に基づいてマンションを取得したに過ぎず、贈与により取得したものではないと考えるため、贈与税は課税されません。
しかし、その取得した財産の価額が、婚姻中の一切の事情を考慮して過当であると認められる場合には、その過当である部分の価額については贈与税が課税されます 。
(4) 法人に対する現物出資
現物出資とは、法人の設立や増資等に際して金銭以外の財産により出資して、その法人の株式等を取得することをいいます。
例えば、法人の設立時に個人が時価5,000万円の土地を出資し、5,000万円相当の株式を取得したとします。この場合、出資した個人は取得した株式の時価である5,000万円で土地を譲渡したものとして、譲渡所得の計算をします。
(5) 限定承認による相続及び包括遺贈
相続人は、相続する財産を限度として、被相続人の債務を弁済すべきこととして相続の受諾をすることができます。これを限定承認と言います。なお、相続財産を特定されず、一定の割合を指定されて遺贈を受けた人(包括受遺者といいます)も相続人と同一の権利義務を有するため、限定承認をすることができます。
被相続人が、財産より多くの債務を抱えている場合に限定承認を選択されるかと思いますが、税務上は相続税ゼロだけでは終わりません。限定承認により不動産等を相続した場合、相続開始時の時価で被相続人から相続人に対して譲渡があったものとされるのです。
(6) 法人への贈与及び遺贈
個人が、法人に不動産等を寄付した場合には、寄付した時のその不動産等の時価により譲渡をしたものとして譲渡所得の計算をします。
また、被相続人が法人に不動産等を遺贈した場合には、相続開始時の時価により譲渡をしたものとして譲渡所得の計算をします。この場合、被相続人の譲渡所得の申告は相続人等が行うことになります。
以上ご紹介の通り、何気なく行った行為に思わぬ所得税がかかってしまうことがありますので、十分ご注意ください。2012年7月13日