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精算課税贈与の活用 ~2024年以降の考え方~

 2024(令和6)年から贈与税が変わります。暦年課税は、贈与加算が相続開始前3年から段階的に7年に延長されます。精算課税贈与は、新たに毎年110万円までの非課税枠が設けられ、使い勝手がよくなります。
 この改正を踏まえ、来年以降の精算課税の活用方法を検討します。

1.令和6年以降の暦年課税について

 令和6年以降の暦年課税は、贈与加算が段階的に7年以内に延長されるため、相続直前の節税目的の贈与が難しくなります。贈与加算は、基礎控除110万円以下の部分も含めて贈与した財産を相続財産に取り込んで相続税を計算するので、該当してしまうと贈与による節税の効果は失われます。
 ただし、贈与加算の対象となる方は、相続人、受遺者や死亡保険金の受取人など相続で財産を取得する人(以下「相続人等」といいます。)に限られます。相続人等は別として、相続人等以外の孫などへの贈与は、贈与加算の対象になりません。贈与加算のことは気にせず、これまでどおり暦年課税を使うことができます。しかも、暦年課税は、精算課税とは違い適用を受ける人の要件がありませんので、孫や子の配偶者など多くの人に贈与することが可能です。

2.精算課税の概要

・贈与者…60歳以上
・受贈者…18歳以上の推定相続人、孫
・特別控除額…累積2,500万円
・税率…特別控除額を超えた部分について一律20%
・贈与加算…2,500万円の特別控除額の枠内も含め、精算課税を利用して贈与した財産(贈与したときの評価額)をすべて相続財産に取り込んで相続税を       計算します。支払った贈与税は相続税から控除し、控除しきれない部分は相続税申告で還付を受けることができます。
・非課税枠…令和6年以降、累積2,500万円の特別控除額とは別に毎年110万円の非課税枠が設けられます。
・暦年課税と精算課税の選択は、贈与者ごとに行います。一度、精算課税を選択したらその選択をした贈与者から受ける贈与については、暦年課税に戻  ることができません。

3.令和6年以降の精算課税の活用方法

 令和6年から新たに設けられる精算課税の110万円の非課税枠を活用する方法をご説明します。


(1) ご相続が近い場合
 110万円の非課税枠の部分は、贈与加算の対象外です。つまり、精算課税を使えば、相続開始の直前であっても、年間110万円まで無税で贈与した上、相続財産から切り離すことが可能です。
 ご相続が近い場合、相続人等に対する暦年課税は贈与加算の対象になるリスクが高いです。贈与加算を回避するため、精算課税を選択できる子などの推定相続人は、精算課税を選び年間110万円の非課税枠をきっちり使って相続税を減らすことができます。


(2) 贈与者が2人の場合
 父A、母Bの2人が子Cに贈与するとします。暦年課税と精算課税の選択は、贈与者ごとに行います。令和6年以降は、A、Bの2人とも暦年課税または精算課税を選択するとCの非課税枠は110万円です。しかし、Aが精算課税、Bが暦年課税を選択すると、Cは精算課税の非課税枠110万円と暦年課税の基礎控除110万円の最大220万円まで1年間に無税で贈与を受けることができます。
 Aに相続が発生すると、CはAから贈与(精算課税)を受けた財産を最大110万円×贈与年数だけ無税で承継できたということになります。
 Bに相続が発生すると、Bからの贈与(暦年課税)のうち、贈与加算の期間を徒過したものは相続財産から切り離されます。仮に先にAに相続が発生したら、Bからの贈与について贈与加算を避けるため、暦年課税から精算課税に切り替えるのも一案です。

4.適切な選択を

 精算課税は、贈与者と受贈者に一定の要件があります。また、一度に多額の贈与をしたい場合や、将来値上がりしそうな財産を移転するには使いやすい制度ですが、一度選択すると暦年課税に戻せません。そのため、相続財産はどのくらいあるか、110万円の非課税枠を超えて贈与をするか、相続により財産を取得する予定か等、色々な検討要素があります。
 令和6年以降は2つの制度を併用することで、非課税枠が220万円まで拡充されます。次世代への財産の移転の促進のため、有効に使うことが大切です。それぞれの贈与制度について、特性を踏まえた上で使い分けることが必要と考えます。

2023年11月15日

非上場会社の事業を分割するときの税務について

同族会社の事業承継において、複数の相続人が共同で事業を引き継ぐ場合、経営方針が一致するとは限りません。むしろ、親族であっても考え方は十人十色ですから、円滑な共同経営は将来的な課題となります。その親族間の共同経営の対策として会社の分割が有効なことがあります。今回は、質疑形式を使って会社を分割する際の税務をご紹介します。

1.質問

父Aは、長男Bと二男Cの2名の子がいます。
 父Aの主な財産は、不動産賃貸業を営む非上場の同族会社の株式です。その同族会社は、父Aが100%株主であり、賃貸マンションを2棟(簿価3億円×2棟)所有しています。父Aは、相続人である長男Bと二男Cの2名に財産を均等に相続させたいと考えています。どんな方法が考えられますか。

2.会社分割の検討

理想的には、相続人同士が協力して会社を経営してくれることが望ましいでしょう。しかし、兄弟間で何かの折に意見が対立することも珍しくなく、2人に株式を等分に分けてしまうと、会社の意思決定に問題が生じ、将来的に会社の経営が困難になることが予想されます。兄弟2人で株式を持ち合うのはお勧めできません。
 そこで、簡便的に賃貸マンション1棟を1つの事業単位とみて、兄弟に均等に財産を相続します。現在の会社を二つの会社に分割しておき、相続発生時に分割前から存続する会社(旧会社)の株式をB、新設された会社(新会社)の株式をCが各々引継ぎ、単独で会社を経営していきます。
 それでは会社分割の方法と税務の取扱いをご紹介します。

3.事業譲渡を用いる場合

事業譲渡とは、会社が特定の資産、事業、または負債を他の企業や個人に売却する手法です。今回の事例では、父Aが100%出資の新会社を作り、その新会社に旧会社が賃貸マンション1棟を売却しますので、新会社から旧会社に売買代金を支払うことになります。
 税務上の要点として、新旧の会社を一つのグループとしてみたときのグループ外への税流出を考えます。まず資産の譲渡損益については、新旧会社の株主は父Aのみであるため、グループ法人税制の適用により、資産移転時の法人税負担は繰延べられます。しかし、両社の取引を通じて登録免許税、不動産取得税等の流通税や一定の事業者に対して消費税等の負担が生じるため、計画段階でこれらの税負担を考慮して検討する必要があります。ただ、収入のすべてが住宅の貸付業である同族会社間の不動産売買において、時価と簿価の差額がない場合は、売主に法人税・消費税の税負担は生じず、税流出は流通税の負担のみで済みます。

4.会社分割を用いる場合

会社分割とは、一つの会社を2つ以上の独立した会社に分ける手法です。それぞれの会社が、賃貸マンションを1棟ずつ所有します。
 税務上の要点としては、支配関係が継続しているなど一定の要件を満たした場合は「適格分割」に該当し、事業譲渡よりも有利になることがあります。具体的には法人税、消費税が掛からず、一定の要件を満たしている場合は不動産取得税も掛かりません。また、不動産の購入資金も必要がないため、資金的な負担が少なく、リソースを効率的に活用できるというメリットがあります。
 さらに、会社分割は権利と義務を一括して移転するため、法務手続きが比較的容易であるという特長もあります。したがって、一定の要件を満たすのであれば事業譲渡よりも使いやすく有効な手法になります。

5.留意点

会社分割は、比較的コストをかけずに実行できるのですが、事業承継の観点からすると実行時期に注意が必要です。
① 相続後に会社分割を行う場合
 相続が発生し、遺産分割で旧会社の株式を相続人が各々50%ずつ取得した後に兄弟が旧会社を分割しようとすると問題が生じます。適格分割に該当するためには旧会社の株主の持分割合に応じて新会社の株式を発行しなければならないため、新会社もBとCが50%ずつ持ち合わなければなりません。BとCが新旧会社を各々100%所有になるよう会社分割すると、適格分割にはならないため、賃貸マンションを時価で旧会社から新会社へ移転したものとみなされます。事業譲渡と同様にグループ法人税制が適用され、旧会社に対する法人税は繰り延べられますが、一定の事業者には消費税の負担が生じます。更に新会社の株式を取得するCは、時価で旧会社の株式を売却して新会社の株式を取得したものとされますので、みなし配当による税負担が生じてしまいます。
② 相続直前に会社を新設して会社分割をした場合
 非上場会社の株式の相続税評価の多くは、会社の財産を基にした株価(純資産価額方式)と業績値を基にした株価(類似業種比準方式)を組み合わせて算出することになります。ただし、開業後3年未満の会社は一般的に評価額が高くなりやすい純資産価額方式のみで株価を算定することになり、類似業種比準方式を併用することができません。更に取得後3年以内の土地等は時価で評価する必要があるため、相続時の株価が高くなることがあります。

6.まとめ

生前から事業承継を見据えて会社の事業を分割するというのは、どうしても時間がかかってしまいます。会社分割の活用をお考えの場合は、税務や法務に関する専門家としっかりと相談して計画を立てることが大切です。

2023年10月16日

実家に帰ってマイホームを建てる(増築する)時の税務の注意点

 一生で一番大きな買い物といわれるマイホーム。近年は不動産価格の上昇により購入者の負担もより大きくなっています。子が家を建てるとき、家の建築資金は出せるが、土地は購入できないという場合、親の土地に家を建てることがあると思います。このようなときの相続税・贈与税の注意点を考えました。

1.子が親の土地にマイホームを建てるとき

 子が親の土地に家を建てると、土地の購入費用がかからないので、子の負担は軽減されます。家が完成して住んだら、親が地主で、子が賃借人となりますが、他人に土地を貸して建物を建てさせたときと同じように、親子間であっても借地権は生じるのでしょうか。

2.使用貸借と賃貸借

 親子間で地代のやりとりをするかどうかで借地権は以下のような違いがあります。


(1) 使用貸借
 親族における土地の貸借は、わざわざ権利金や地代を決めて賃貸借を開始することはほとんどなく、タダのケースが多いと思われます。
 タダでの貸借を含め、借り受ける土地の必要経費である固定資産税相当額以下での貸借を「使用貸借」といいます。「使用貸借」は、地代のやりとりをする「賃貸借」と比較して賃借人の権利が借地権ほど強くありません。税務上は、子に借地権が発生したとはみないので、贈与税がかかることはありません。また、子は土地をタダで借りることから、将来にわたって地代相当の利益を受けることになりますが、この部分にも基本的に贈与税はかかりません。
 ただし、将来の相続税では、「使用貸借」している土地として評価しますので、借りている子の権利は考慮されず、更地価額が相続税の対象になってしまいます。


(2)賃貸借
 固定資産税相当額を越える地代のやりとりをする「賃貸借」の場合は、借主に借地権が発生するため、相続税評価上は更地価額から借地権価額を控除して評価することになります。 
 ただし、権利金の支払いがないと、親から子に借地権相当の贈与があったとされ、思わぬ税金が発生しますので注意が必要です。

3.親の家と同じ敷地にマイホームを建築するとき

(1)別棟を新築して住むとき
 親の家の隣に子が家を建てて住むのは、いきなりの同居に対する抵抗がある場合は良いかもしれません。
 ただし、同一敷地内で別居する子が相続で敷地を取得する場合、特定居住用の小規模宅地の特例の適用要件である「同居親族」を満たさなくなるため、原則として、同特例の適用を受ける事が出来なくなります。
 例外として、別居の子が親の生活費を面倒みるなど生計が一であれば、敷地のうち子居住部分のみが特例の適用対象になります。


(2)親の家に増築して2世帯住宅とするとき
 親の所有する建物に子が増築して2世帯住宅にすると、子からみればマイホームを一から建てるよりは金銭負担が軽くなりそうです。しかし、次のように贈与の問題が生じるかもしれません。
 親名義の建物に子がお金を出して増築すると、増築部分は親の建物になりますから、親は子から増築費用分の贈与を受けたことになってしまいます。そこで子が支払った増築費用分の建物の名義を親から子に移転させて共有とすれば、贈与税がかかることはありません。
 しかし、1つご注意いただきたいことがあります。


(3)2世帯住宅は共有登記か区分登記か
 増築部分を登記する方法として、共有のほかに建物の構造などの条件を満たせば区分登記することができます。区分登記すれば、親の家と子が増築した部分は別の家屋になりますから、共有持分の計算をする必要はありません。しかし、特定居住用の小規模宅地の特例では区分登記された建物は登記に合わせて別の建物と判定することになります。したがって、子が親の家に増築して増築部分を区分登記すると、別棟を新築したのと同じように、特定居住用の小規模宅地の特例の適用に影響が及びます。小規模宅地の特例では共有のほうが有利です。

4.まとめ

 実家に帰ってマイホームを建てる(増築する)ことは親子の生活にとって大きな転機となります。税金面はご説明したように選択の仕方によって様々な違いが生じてきます。どのような方法が良いか相続税・贈与税の注意点も考慮に入れて決めていただければと思います。

2023年9月15日

本当にあった相続税の話 母の預金口座から14億円を出金

今回は、相続税に関する裁判例をご紹介し、タンス預金について考えます。

1.事案の概要

 二男は、母の預金14億円を2年余りの間に毎日のようにATMから200万円ずつ現金で引き出し、相続税の申告財産を隠したというものです。

2.判決内容(令和5年2月16日東京地裁判決)

 二男は、「母の預金から現金を引き出したのは自分ではない。」と主張して裁判をしましたが、認められませんでした。
 二男は、国税局の調査で母の預金14億円の説明を求められましたが、一貫して「知らない」という態度で臨みました。調査では、引き出された現金が見つからなかったばかりか、二男が預金を引き出した決定的な証拠となるATMの監視カメラ映像が無かったようです。
 しかし、国税局は、①母は認知症を患って老人ホームに入っており、ATMから預金を引き出していないこと、②預金が引き出されたコンビニの店員は、頻繁に二男が来店していたのを目撃していたこと、③ETCカード履歴による二男の滞在場所と現金が引き出されたATMがいずれも近隣していることなど、いくつかの証拠を積み重ねて二男が母の承諾なく預金を引き出したので、不当利得返還請求権の申告漏れがあると判断しました。裁判所は、国税局の主張を全面的に認めました。

3.不当利得返還請求権?

 申告漏れ財産は、二男が引き出した現金ではなく、不当利得返還請求権という債権とされています。不当利得返還請求権とは、法律上の原因がなく利益を得た人に対して、損失を被った人が利益の返還を求める権利です。
 二男は、母に無断で預金から現金14億円を引き出し、その現金を所持しているか使ってしまったと認められるので、母には二男に対して14億円の返還を求める不当利得返還請求権が成立することになります。

4.タンス預金は見つかるか?

 相続税の調査は、相続開始から2・3年後に行われるのが一般的です。現金は、名前が書かれていないので誰のものか直ちに分からない上、使えば無くなるし、記録が残らないまま保管場所を移すこともできます。現金そのものが税務調査で見つかり難いことは間違いないでしょう。
 しかし、現金そのものが見つからなかったとしても、相続税の調査では、税務署が持っている過去の様々な資料と申告内容の矛盾や預金口座の動きを注視しており、相続人に疑問点の説明が求められます。調査官の納得いく説明内容でなければ徹底した調査が行われます。
 二男のように毎日200万円、合計14億円もの現金を引き出して何も知らないというのは無理な話です。また、国税局が裁判で主張した不当利得返還請求権というロジックが使われると、現金そのものや現金の使い道が調査で明らかにならなくとも課税処分されてしまいます。結局、タンス預金を隠し通すのは、難しいと言わざるを得ません。

5.タンス預金のリスク

 タンス預金は、低金利を背景に総額100兆円を越えると言われています。タンス預金を持つこと自体は、税務上、直ちに問題になるわけではありません。
 しかし、タンス預金は、銀行等に預けた場合と比べ、①盗難や火災等に対する安全性が低い、②ばれたくないと考えると自由に使うことが難しくなる、③申告漏れ財産として税務署にばれた場合、悪質とみられペナルティーが大きくなるというデメリットがあります。

6.まとめ

 この裁判では、二男の2年間に渡る徹底した毎日の200万円の引き出しは水の泡。さらに重加算税までかかって大変なことになりました。
 令和6年に新紙幣が導入されることから、紙幣交換のタイミングで新たな資料が税務署に蓄積されるかもしれません。タンス預金をお持ちの方は、その資産運用・相続対策を検討してはいかがでしょうか。

2023年8月17日

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ATO通信

会社を分けて簡易課税を活用!

 消費税の計算方法には2種類あることをご存知ですか。原則課税と簡易課税です。どこかでは聞いたことがあることでしょう。この簡易課税による計算、上手に使えばいろいろなメリットがあります。また、新たに始まったインボイス制度への対応でも簡易課税の利用価値があります。

1. 簡易課税のメリット

 消費税が課税される売上げ、この売上規模が5000万円以下であれば簡易課税方式によって消費税を計算することができます。ちなみに売上規模の判定は、原則として基準期間という2年前の売上げを用います。
 この簡易課税を選択すると消費税の計算が簡単になるばかりではなく、税メリットが生じることが多いです。
 例えば、貸店舗や貸事務所などの不動産賃貸業で課税売上げが4400万円(うち消費税400万円)、課税仕入れが880万円(うち消費税80万円)の場合を見てみましょう。
 1 原則課税での納税額
   売上消費税400万円 - 仕入消費税80万円 = 320万円 ⇒ 320万円の消費税
 2 簡易課税での納税額
   売上消費税400万円 - 売上消費税400万円 × 40% = 240万円 ⇒ 240万円の消費税
                                (原則より80万円お得!)
 簡易課税では実際の仕入れに係る消費税は計算せず、売上げに係る消費税の何割かを納めるだけです。割合は事業の業種区分ごとに定められていて、不動産賃貸業であれば上記のとおり売上げの40%を差し引いて、残りの60%を納めれば良いのです。
 つまり、実際の仕入れに係る消費税よりもこの割合が有利であると得をするわけです。特に不動産賃貸業の場合には、消費税を支払う仕入れが通常は売上げの40%も生じませんので簡易課税の方がお得になるはずです。なお、簡易課税では消費税還付を受けることができないため、多額の修繕費が見込まれるときなどは注意です。

2. 簡易課税を利用

簡易課税の方が有利なケースだと分かったら是非利用しましょう。しかし、先ほどのとおり年間売上高が5000万円超の方は利用できません。それならば、売上高を5000万円以下にすれば良いのです。


 1 法人の場合なら
 会社を分けて売上高5000万円以下の法人を作りましょう。事業を切り分けることになるため現実には難しい面もありますが、不動産賃貸業の場合であれば比較的簡単です。物件ごとに考えればいいですし、もし1物件であるのならばビルを区分所有にしてフロアごとの所有にする、共有にするなどを行えば1社当たり5000万円以下にできるはずです。年間売上高が税込1億円であれば、2社に分ければ良いのです。


 2 個人の場合なら
 生前贈与をする、一部を法人化する、などをして年間売上高を5000万円以下にできないか探ってみましょう。
 
 いずれにしても、不動産賃貸業の方は他業種に比べて実行し易いはずなので、消費税が課税される売上げが5000万円超の方は検討です。どれくらいの節税ができるのかをあらかじめ試算しましょう。新会社を作ると申告の手間が増えることになるため税理士報酬も増えるのではないかという心配が出てきそうですが、消費税のお得分が勝つのであればWin-Winです。さらに売上げが複数に分散することになりますから、法人税や所得税の観点からも有利に働くことでしょう。

3. インボイス制度だって乗り切れる

 簡易課税になれば、今話題のインボイス制度への経理対応も必要ありません。
 インボイス制度で最も厄介で面倒なことは、原則課税では領収書や請求書などからインボイス登録番号を1つ1つ確認して処理をしなくてはならないことです。簡易課税はそもそも仕入れに係る消費税を計算しませんので、インボイス登録事業者に支払ったかどうかなどは関係ありません。インボイス制度が導入されてもお構いなしというわけです。

4. 新会社の設立方法は要検討

 会社を分けるのであれば、新会社を兄弟会社とするのか、それとも子会社とするのか。この際ですので、相続時の分割対策も踏まえておくのが良いでしょう。1人に承継させたい不動産であれば子会社を設立する、子ども2人に承継させたいのであれば兄弟会社を設立するという具合です。
 また、設立手法には気を配る必要があります。通常通り新たに出資をして会社を設立するのか、それとも会社分割という方法を用いて設立するのか。設立後2年間の免税メリットが取れるか否か等に違いがあります。また、どちらを選択するにしても上手に計画実行しないと免税や簡易課税が利用できなくなる可能性があります。想定していた消費税の節税効果が無くなってしまっては元も子もありません。検討するのであれば税理士へ相談して進めましょう。

2023年11月30日

相続税の延納ってどうなの?

 税金は金銭で一括納付しなければならないのが原則です。たとえ多額の相続税が生じたとしても同じことです。そうは言うものの、相続税は財産税であるがゆえに実際には金銭一括納付が難しいことも多々あります。そこで例外的に、分割払いする延納や、相続財産で納付する物納という制度が設けられています。特に延納は使い勝手が良い場合があるので、一括納付が難しい方は検討価値ありです。

1. 延納を検討してみよう

 相続税と贈与税について金銭で一括納付することが困難な場合には、延納制度が利用できます。実際には、税金が多額となる相続税で利用する場面が多いので、相続税のケースを前提にします。
 延納が認められると、相続税を最長20年間の分割払いで納められます。納め方は元金均等方式です。そのため、支払総額は抑えられますが返済初期のうちは返済額が大きく、段々と減少していきます。例えば総額1億円で20年間の延納であれば、毎年500万円の元金と利子税(利子税の割合を以下「金利」と言います)を支払う感じです。
 延納できる期間と金利は、相続で取得した不動産等(※)の割合によって変わり、以下のようになっています。
(※)不動産等とは、不動産、立木、不動産の上に存する権利、事業用減価償却資産、同族会社の株式・出資

不動産等の割合延納可能期間令和5年の金利
(利子税割合)
75%以上動産等に係る相続税10年0.6%
不動産等に係る相続税20年0.4%
75%未満
50%以上
動産等に係る相続税10年0.6%
不動産等に係る相続税15年0.4%
             (不動産等の割合が50%未満の場合は割愛)

2. 延納金利は思ったより低い

 延納はやめた方が良い、延納を考えるなら金融機関から借りて納税した方が良いと聞いたなど、延納自体を検討しない方がいるようですが、1の表を良く見てみましょう。以前は延納金利が高かったこともあり、確かに金融機関から借りた方が有利なケースがありました。でも、現在の金利は0.4%または0.6%です。実務上はそのほとんどが不動産等に係る相続税の延納ですので、実質0.4%です。
 適用される金利は年ごとに変わる変動金利ですが、思ったよりも低金利だと思いませんか。金融機関から同等の条件で借りるのは難しいのではないでしょうか。
 しかも、繰り上げ返済はいつでも可能ですし、返済手数料も掛かりません。

3. 担保設定費用も掛からない

 もう1つ大きなメリットがあります。それは担保設定費用が生じないということです。
 延納は国から相続税分の金銭を借りている状況と同じですから、担保提供が必要になります。銀行から借りる場合に担保がいるのと同じです。担保提供は、一般的には土地や建物などの不動産に対して抵当権設定をすることが多いでしょう。不動産に抵当権を設定するには、債権金額×0.4%の登録免許税を支払う必要がありますが、延納の場合には必要ありません。国が自ら職権で登記を行うからです。債権金額が1億円だとすると、40万円が浮くことになります。ちなみに、全ての納税が終了すれば、担保解除手続きは国が勝手に行ってくれます。

4. 金利が経費にならないのであれば

 相続税を納税するための借入金利は、必要経費にはなりません。延納の金利も同じです。収入を得るために生じたものではありませんので、不動産所得などがあったとしても経費計上はできません。そういう観点から考えれば、相続税のための借入れ・延納はできるだけ早く返済するのが得策です。
 例えば、個人で賃貸不動産を所有しているのであれば、この機会に法人化を行うのはいかがでしょう。法人が資金調達をして個人から賃貸不動産を購入します。その代金で個人は相続税を支払います。延納しているのであれば延納税額の繰り上げ返済をします。法人は資産購入のための借入金ですので、この借入利息は紛れもない法人経費になります。金利負担を法人へ移すことで経費化するというわけです。

5. 経験豊富な税理士に相談

 延納許可を受けるための一番のハードルは担保提供できる財産があるか否かだと思います。でもそれは、金融機関から借りる場合も同様です。
つまり、納税計画を立てるのであれば、延納・物納の選択可否を含めた的確・柔軟なアドバイスができるのかどうか。ここが税理士選びの分かれ目です。

2023年10月31日

マンション評価改正の影響を考える

 来年の令和6年からマンションの相続税評価額の計算方法が大きく変更されます。いわゆるタワマン評価の見直しです。新聞報道等でも大きく取り上げられたことから、既にご存知の方も多いことでしょう。相続税関係で今年一番のホットなこの話題について、その影響を検証してみます。
 

1. 新たな評価方法

 新たな評価方法は、令和6年1月1日以降の相続・遺贈・贈与により取得した財産から適用されます。適用対象は居住用の区分所有財産、いわゆるマンションです。居住用のものに限定されていますから、店舗や事務所などのテナント用途は対象外です。それでは、新たな評価方法はどのような手順で行うのか一応確認しましょう。なお、計算式等は執筆時点における情報によっています。多少変わる可能性がありますが、基本の考え方は次のとおりです。


①いままでの相続税評価額を利用
 おそらく、評価方法自体を大幅に変えるのは難しかったのでしょう。新たな評価方法でも、まずは従来通りのマンション評価額を計算します。


②次に市場価格との乖離率(下記2参照)を調整
 今回の目的は、相続税評価額が市場価格の60%相当となるように調整を行うことです。しかし、現実には市場価格がいくらなのかを個別判断するのは難しいため、割り切りをしました。具体的には、統計的手法により算定した数値を、評価対象マンションの市場価格との乖離率と仮定したのです。こうすれば、従来のマンション評価額にこの乖離率を掛けるだけで、理論的な市場価格が導き出せます。

【新たなマンション評価の考え方】

              従来の相続税評価額×乖離率×0.6=新評価額                    

                    ⇓

             これを理論的な市場価格と仮定する

 令和6年からのマンション評価額は、理論的な市場価格の60%相当になると見立てた上記計算式により評価します。したがって、乖離率の数値が大きくなればなるほど、新たなマンション評価額は増加していきます。
 ちなみに乖離率が約1.666以下の場合は、すでに市場価格の60%水準以上に達していることになります。そのため、今回は説明を割愛しますが上記計算式は利用しません。

2. 乖離率の計算式

 今後はどのようになりそうか。新しい評価の肝は乖離率ですので、内容を確認しましょう。

乖離率 = 築年数×△0.033総階数/33(1.0超は1.0)×0.239所在階×0.018 敷地利用権面積/専有面積×△1.195 + 3.220

小難しい計算式ですが、ポイントは黄色でマーカーした4つの指標を見れば良いのです。乖離率が大きくなる、つまり相続税評価額がより増加するのは次のような物件です。
 ①築年数が浅い、②総階数が高い、③所在階が高層、④敷地利用権面積/専有面積が小さい(容積率が大きい高層マンション)

3. 調整の限界値は2.5倍?

 それでは、「乖離率×0.6」は最大でどれくらいになりそうか?検証してみました。
 新築の高層マンションで所在階は50階、50㎡の専有床面積に対して敷地利用権はたった1㎡と仮定します。(容積率的に考えると5000%なので有り得ないと思いますが)この前提で計算したところ、「乖離率×0.6=約2.58」となりました。つまり、評価額が増加したとしても従来の相続税評価額の2.5倍が限界と言えるでしょう。
 実際にいくつか計算をしてみましたが、ほとんどの物件はおおよそ2倍前後になりました。

4.影響実例を見る

① 都内のタワーマンション
築年数14年、43階建ての6階に所在する部屋は約1.80倍になりました。

・実際の市場価格 約1億3000万円
・従来の相続税評価額 約1750万円(約13.4%)
・新たな相続税評価額 約3200万円(約24.6%)

② 大阪のタワーマンション
築年数3年、42階建ての16階に所在する部屋は約2.09倍になりました。

・実際の市場価格 約6200万円
・従来の相続税評価額 約1670万円(約26.9%)
・新たな相続税評価額 約3500万円(約56.4%)

③ 都内のマンション(タワーマンション以外)
築年数7年、6階建ての5階に所在する部屋は約1.53倍になりました。

・実際の市場価格 約9800万円
・従来の相続税評価額 約2600万円(約26.5%)
・新たな相続税評価額 約4000万円(約40.8%)

5. 物件選びが益々重要

 上記実例をみると傾向が良く分かります。タワーマンションは評価額が増加しますが、①都内のタワーマンションはそもそもの価格が高すぎるためか、調整をしても市場価格のまだ25%程度です。しかし、②大阪の物件は56%となり目論見通り60%相当になりました。③はタワーマンション以外ですが40%水準となり大きな影響を受けてしまいました。つまり、実際の影響度は物件次第なのです。今後は物件選びが益々重要になるでしょう。

2023年9月29日

離婚で財産分与、申告を忘れずに

 結婚があれば、当然に離婚だってあり得ます。令和4年に日本において結婚したカップルは約52万組、逆に離婚をされた方は約18万組ありました。最近は離婚件数が減少傾向にあるようですが、夫婦仲が良いからといって絶対に離婚しないとは言い切れない世の中です。さて、離婚には財産分与が付きものですが、財産を渡したときは税金のこともお忘れないように。

1. まずは渡した側は注意

 離婚したときは、夫婦の一方は相手側に対して財産の分与を請求することができます。婚姻中に生じた財産の清算のためなど、その意味合いには様々な性質があるのですが、夫婦であった間に蓄積した財産を原則1/2に分けるようなものと考えれば良いでしょう。
 ここで、対象財産は誰名義のものなのかは関係ありません。あくまで夫婦であった期間に取得した財産か否かです。そのため、主に夫が働いて妻は主婦であったとすると、夫名義の財産を妻に分与することになります。
 分与する財産が現金であれば特に注意する必要はありませんが、不動産や株式などを渡したときは税金のことも頭にいれておきましょう。税務の世界では、財産分与をしなくてはならない義務の履行として不動産等を渡した、そして分与義務の消滅という利益が生じたため譲渡所得の対象になるという考え方なのです。

2. 不動産や株式などの財産分与

 財産分与なのですから売却代金は一切ありません。しかし、分与した側は不動産等を売却したことになりますから譲渡所得税が生じる可能性があるわけです。
 それでは、いくらで売却したとすれば良いのかですが、これは財産分与時における財産の時価で計算することになっています。
 不動産であれば、本来は市場価格が時価なのでしょうが、そんなものは実際に売却をしなければ誰も分かりません。そこで、実務的には相続税評価額を1つの参考指標として考えるのも良いでしょう。ただし、土地は公示価格という客観的な時価指標がありますので、相続税評価額をそのまま使うのでは無く、公示価格相当に引き直しましょう。具体的には、次のように計算すれば良いのです。
 「相続税評価額×1.25=公示価格相当=時価相当」
 また、上場株式などは分与日の終値を用いて計算すれば大丈夫です。市場で売却したわけではないので計算書が出ませんが、申告を忘れずに行いましょう。
 このように、株式そのものを分与すると自分で計算して申告しなければなりません。ところが、上場株式は特定口座で所有をしており、個別に計算などしたことがない方が現実には多いのではないでしょうか。
 そこで、相手側は上場株式そのものを望んでいないのであれば、売却をして得た現金を分与した方が簡単かもしれません。こうすれば、売却の計算は証券会社が行ってくれます。

3. 財産をもらった側は

  財産分与で財産をもらった側の取扱いも確認しておきましょう。もらった側(取得者)は、財産分与を受けることができる請求権と引き換えに財産を取得したことになります。つまり、請求権が対価であり贈与を受けたわけではないので、たとえ高額であっても贈与税の対象にはなりません。不動産や株式などであれば、渡した側は分与時の時価で売却したことになり、もらった側はその時価で取得したことになるのです。
 そのため、財産分与で不動産などを取得した方がその後に売却をしたときは、分与日の時価を取得費として譲渡所得の計算をすることができます。もらった側は分与時には税金の問題が生じないため、取得費のことまでを気にする方はまずいないと思います。不動産を売却したときは、特に取得費の計算を忘れずに行いましょう。何も考えずに売却価額の5%の概算取得費を用いて申告をしてしまったとしたら、譲渡所得税は数百万円単位で増えることでしょう。ちなみに、事前に登記簿謄本をしっかりと確認しておけば、取得原因は財産分与となっているので見落とすことはないはずです。

4. 偽装離婚は?

 財産分与額が相応に計算されたものであれば、どんなに高額であったとしても、原則として贈与税は課税されません。著名人や富裕層の方などは数億円から数十億円に達することも珍しくないでしょう。
 そうすると、これを上手く使って生前に妻へ財産を移転しようという方も出てきそうです。そこで、税務署も牽制を行っています。離婚を手段として贈与税や相続税を免れようとしたと認められる場合には、贈与税を課税することになっているのです。財産分与の割合が大きすぎる場合や偽装離婚を利用したケースです。
 では、現実にはどこまで財産分与の実態をチェックできるのか?あらかじめ決められた基準はないですから一見して分かるものでもありません。あくまで、それぞれの家庭の事情に合わせて判断することになるでしょう。


 


 


 


 

2023年8月31日

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今月の言葉

艦名(続)

本誌2016年3月号の本欄で、大日本帝国海軍の軍艦名を取り上げた。命名の規則として、戦艦は日本の律令制下の国の名、重巡洋艦は山、軽巡洋艦は川、一等駆逐艦は気象、二等駆逐艦は草木や花から名付けられたこと。おしなべて陸軍の装備命名が「勇ましい」基準であるのに対して、海軍のそれは優美であって、平和的であったことなどを述べた。
 さて、今号では、それを継承した現代の海上自衛隊の護衛艦の名前について取り上げたい。
 以下に述べるとおり、現在の護衛艦は、殆ど旧帝国海軍の軍艦名を踏襲している。ほとんどの艦に旧海軍の「先代」がいる。が、一つ大きな違いがあるとすれば、すべて平仮名で表記されていて、漢字ではないというところであろうか。
 周知の通り、海上自衛隊は、旧海軍が一度壊滅した後、米国から支給された小型艦艇で再建を始め、次第に大型艦を国内で建造するようになった経緯がある。そこで、まず、一番隻数が多い小型のDD(destroyer = 駆逐艦)クラスの名前から紹介を始めたい。「むらさめ」「はるさめ」「ゆうだち」「きりさめ」「いかづち」「あけぼの」「ありあけ」「たかなみ」「おおなみ」「まきなみ」「さざなみ」「すずなみ」「あきづき」「てるづき」・・・そのほか多数。概ね旧海軍の一等駆逐艦の命名を踏襲している。
 次に紹介するのは、ごく最近出てきたFFM(多機能フリゲート艦)という艦種で、こちらは、旧海軍の軽巡洋艦名をそのまま踏襲している。「もがみ」「くまの」「のしろ」「みくま」がすでに就役しているか、進水して艤装中である。艦の形状は、ステルス性に配慮してやや丸みを帯びた巨大な構造物が艦の側面からそのまま上部に向かって構築されている不思議なものだが、省人員で多様な用途に対応可能の由で、今後この種のフリゲート艦が多数建造されるらしい。川の名前の護衛艦は他にもあって、「あぶくま」「せんだい」「おおよど」「じんつう」「ちくま」「とね」(先代はいずれも第二次大戦期の軽巡洋艦としてよく知られている。とくに「大淀」は戦時中の一時期、連合艦隊旗艦を務めたこともある)はDE(destroyer escort)という艦種で、主に沿岸近海の防御の任に当たっている。
 山の名前は、というと、艦種名称はDDG(ミサイル護衛艦)で一般にはイージス艦として知られている。日本海に展開して大陸から打ち込まれてくるミサイルを迎撃する役割(そればかりではないが)を担っている。「きりしま」「こんごう」の先代は帝国海軍の高速戦艦であったし、「あたご」「あしがら」「まや」「はぐろ」「みょうこう」「ちょうかい」の先代はいずれも連合艦隊第二艦隊の代表的な重巡洋艦であった。
 そして国の名前は、DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)。「かが」「いずも」「いせ」「ひゅうが」が現役であるが、先代との比較で少し詳しく述べると、先代の「加賀」はワシントン軍縮条約の結果廃艦になるはずであった戦艦を空母に改造したもの、先代の「伊勢」「日向」は航空戦艦と言って、戦艦の後部甲板を改造して航空機を搭載したもの。いずれも「艦種を空母に改造」がキーワードである。
 現代の海上自衛隊がかねて航空母艦を望んでいながら諸般の事情から許されなかったものが、今般ヘリコプター空母「かが」「いずも」の「改造」によって航空母艦をはじめて手に入れたのも、背後に命名者の願いを見ることが出来る、というのはいささかうがち過ぎだろうか。また、「いずも」の先代「出雲」は日露戦争時代の装甲巡洋艦であるが、第二次大戦期には第三艦隊旗艦として長く上海に駐留していたため、現代の中国人から「帝国主義的命名で印象が悪い」とか言われている。

2023年11月30日

ベクトル量とスカラー量

 教育における偏差値と個性という話である。
 とかく、日本人はなんにでも序列をつけたがる。教育適齢期にある児童生徒の親の多くは、一定の年齢層のすべての日本人の中で、自らの子女が何番目に位置するかを知りたがる。
 全国一律の「学力」の序列と、全国一律の進学先の学校の序列があって、「自らの子女の学力がこれくらいだから、ふさわしい学校はここくらい」という関係が明らかであることに何故か安心する。そして子女の学力とふさわしい学校の関係が覆らないことが「公平・平等」と考える。
 そうした親にとって、序列の指標は一般的な「学力」であって、「国語、算数、理科、社会、(英語)」のどの科目が何点かではなくて、「総合得点」乃至「総合点の偏差値」が問題である。(後で詳しく述べるが、体育とか芸術とかいう科目は通常「学力」に含まれない。何故かというと体育や芸術は天分によるところが多く、努力によって高得点をあげることが困難であるからである)。全国一律の共通テストのようなもので、生徒が配点はともあれ総合点を何点か取ると、その総合点でだいたい行ける大学のメニューが決まっていて、生徒はメニューの中から、まあ文系とか理系くらいの大まかな選択肢で進学先を選択するのである。そこには、○○大学の△△学部に行って××教授の講義を聴きたいなどというシャープな選択肢はない。
 これまで述べてきた考え方は、数学的に言えば、「学力」の量をスカラー量(大きさのみを持って方向を持たない量、物理量で言えばたとえば重さのようなもの)と理解している。
 ところが、「学力」の値はベクトル量(大きさと方向の両方を持つ量、物理量で言えば力とか位置)だとする考え方もある。下の絵を見てほしい。

 この絵では、青い太線で描いた矢印が、太郎の「学力」であると考える。太郎の学力の方向と、各科目の矢印の方向は若干ずれているので、太郎の各科目の得点は、太郎の矢印の端から各科目に直角におろした直線の端(緑の点線とオレンジの矢印の交点)の値=cos(科目)太郎となる。
 つまり太郎の各科目の得点とは太郎の学力の「影」なのであって、その値は太郎の学力の方向によって微妙にかわってくる。たとえば太郎の学力の方向が「体育」や「芸術」などの方向に著しく近似していると、これらの科目を除外した太郎の学力は不当に低く評価されることになりかねない。
 「学力」をスカラー量と考えるか、ベクトル量と考えるかは、教育というものの本質を理解する上できわめて重要である。前者を取れば偏差値序列主義の教育が横行する。後者を取れば太郎の学力の方向は、「太郎の個性」であると考え、「個性を伸ばす教育」が可能となる。その代わり太郎の学力の絶対値は容易には測れないので、太郎と隣の次郎や花子との学力比較は困難となる。

2023年10月31日

国侍

 本欄では、しばしば、武士というものの起源について取り上げている。
 すなわち、平安時代中頃に、東国の荒蕪地を開拓した農民たちが武装するようになり、自らが開拓した農地を他から脅かされぬように、京の貴族や寺社に(形式的に)寄進してわずかな年貢と引き換えに保証(安堵)を求めたこと、そして平安時代末期には領地安堵の見返りが年貢だけではなく、彼らの貴族や寺社への武力のサービスとなり、それが武士の起源となったことを述べた。
 今月は、その後のことについて述べたい。まず源平合戦期をつうじて、貴族たちの過剰なサービス要求に困惑した新興の(とくに東国の)武士たちは、貴族から自立して、自分たちの自治による領地安堵システムを構築した。これが鎌倉幕府である。鎌倉幕府は単に東国圏における領地訴訟を裁いただけではなく、全国の荘園に警察権を有する地頭というものを派遣して、荘園領主から一定のサービス料を徴収して治安の維持にあたった。つまり、鎌倉時代を通じて、全国には荘園領主(貴族や寺社)と地頭(武士)という二つの存在が並立して、ヘゲモニーを競ったのである。このヘゲモニー争いは承久の変から南北朝の争いを経て武士の側に凱歌が上がり、室町期には次第に在地の地頭たちが貴族や寺社の領地を押領して支配するようになる。これがいわゆる国侍(くにざむらい)といわれる存在の始まりである。
 さて、私たちが歴史小説などでよく知っている戦国大名が覇権を競った時代と、上記の国侍という存在が全国に広まった時代とでは約百年から百五十年くらいの差がある。はじめは、在地の地頭を束ねる守護(室町時代、足利幕府が国ごとの単位で任命する名門の武士で、多くは京に在住したまま傘下の地頭たちを統括した)というものがいて、これが国単位の武力の触れ頭(ふれがしら)となった。たとえば斯波、畠山、赤松、大内、細川、山名などの諸氏がそれである。これら守護の内、自らが統括する地域に在住した者の中には、そのまま戦国大名に移行できた者もいる。たとえば薩摩の島津氏、長門の大内氏、駿河の今川氏、甲斐の武田氏などがそれである。一方で、守護が無力で没落してしまった国では、有力な国侍の中から地域を束ねる者が出てきた。あるいは、守護大名の家臣や守護代などの下位の武士たちが守護に取って代わる例もみられた。前者の国侍出身の典型が安芸の毛利氏、三河の松平氏。後者の守護代型の例が、尾張の織田氏、越前の朝倉氏、越後の長尾氏などである。
 いずれにしても、これら戦国大名たちは、在地の地頭出身の国侍を束ねて、武力として動員し、近隣の他の大名と競わなければならなかった。武力動員の見返りは、領地の安堵と(戦勝して領地が広がった場合には)あらたな領地であった。これら戦国大名同士の争いは、いわば甲子園のトーナメント戦のようなものであり、われわれがよく知っている、島津、大友、毛利、長宗我部、三好、朝倉、浅井、斉藤、織田、松平、今川、長尾、武田、後北条、佐竹、伊達、最上などの争いは、戦国期後半に、多くの戦国大名が滅びて次第に織田による天下統一が実現していく物語なのである。
 が、これら戦国トーナメント戦の前に、戦国大名が国侍をまとめるための戦いというものがあったことも(地味であるが)忘れてはならない。小田原の後北条氏による関東の統一、甲斐の武田氏による信濃の侵略と統一などの歴史を読むと、小さな地頭クラスの国侍たちが、いかに有力な戦国大名に抵抗し、自らの小領地を守ろうとしていたかがよくわかる。

2023年9月29日

因縁

 英国近現代史における二組の親子の因縁話である。
 19世紀後半、英国政治のライバルと言えば、保守党(トーリー党)のベンジャミン・ディズレリーと自由党(ホイッグ党)のウィリアム・グラッドストンであった。前者が地主貴族層に依拠しながらも貧困層への社会政策に目を向け、一方で多くの植民地を持つ大英帝国の建設に功績があったのに対して、後者は勃興しつつあった商工事業者に依拠して、「平和・緊縮財政・改革」を掲げて、ビクトリア朝期をつうじた、リベラリズム(政治的自由主義、平等、自由貿易、地方自治など)の方向への潮流を主導した。さて、保守党と自由党は、各々党内に突出した叛乱分子のグループを抱えていた。
 保守党の叛乱分子のリーダーは、大貴族マールバラ公爵の次男ランドルフ・チャーチル。貴族階級の出身ながら、より貧困層に向けた社会政策を標榜し、ディズレリーの没後は「プリムローズ・リーグ」(ディズレリーの好んだ桜草の花にちなんで命名したという)という大衆団体を組織して、保守党の選挙において下層階級からの集票に貢献した。
 自由党には、バーミンガム市長出身のジョゼフ・チェンバレン。こちらもかなり社会主義的な政策を掲げつつ、「自由党全国連盟」という議会外の大衆団体を組織して、自由党の選挙に貢献した。
 二人は、共に議会内、党内では少数派であったが、大衆組織を握っていた故に、党内では無視することの出来ない存在となっていたのである。
 やがてチェンバレンは、自由党の党首グラッドストンが、アイルランド自治法案にかまけて自己の立案した地方自治政策に無関心であったことなどを契機に自由党を離れ、国内的にはリベラルだが対外的には帝国主義者であったホイッグ貴族のハーティントン侯爵とともに、保守党陣営に身を移した。一方その頃ランドルフ・チャーチルは、保守党内閣の蔵相の地位にまで栄達を遂げていたが、強すぎる自己過信故に、保守党貴族層の嫌忌する軍事費の削減予算を組んで、反感を買い内閣を追われた。そのときの首相ソールズベリー侯爵は、チャーチルを内閣から追った後任をチェンバレン/ハーティントン派に求めた。つまりこの自由党を離党した派閥(アイルランド自治に反対であったので、「自由統一派」と呼ばれる)が手許に存在する限り、チャーチルは不要であったのだ。
 チャーチルは、その後脳に深刻な病を抱えて、政治家として立ち直ることが出来なかった。チェンバレンは、その後保守党と自由統一派との連立政権で植民地大臣などをつとめ、社会政策よりも帝国主義に寄った立ち位置での業績が大きい。
 さて、二人の子孫の因縁話である。チェンバレンには政治家となった二人の息子がいた。兄のオースティンは外相としてロカルノ条約を締結し、ノーベル平和賞を授けられた。弟のネヴィル・チェンバレンは、1930年代の英国首相。ヒトラーとの妥協で有名なミュンヘン会談の当事者である。このときチェンバレンの対独宥和政策を同じ保守党内で厳しく批判した者が、誰あろうランドルフ・チャーチルの長男ウィンストン・チャーチルであった。チェンバレンの宥和政策は結局失敗し、ナチスのポーランド侵攻とともに英国は1939年9月対独宣戦を布告し第二次世界大戦が始まる。が、翌年5月ノルウェーと西部戦線での敗退の責任を問われてチェンバレンが首相を辞任すると、あらたな挙国一致内閣で首相の印綬を帯びたのは、ウィンストン・チャーチルであった、と言うお話。

 

 

2023年8月31日

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