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実家に帰ってマイホームを建てる(増築する)時の税務の注意点

 一生で一番大きな買い物といわれるマイホーム。近年は不動産価格の上昇により購入者の負担もより大きくなっています。子が家を建てるとき、家の建築資金は出せるが、土地は購入できないという場合、親の土地に家を建てることがあると思います。このようなときの相続税・贈与税の注意点を考えました。

1.子が親の土地にマイホームを建てるとき

 子が親の土地に家を建てると、土地の購入費用がかからないので、子の負担は軽減されます。家が完成して住んだら、親が地主で、子が賃借人となりますが、他人に土地を貸して建物を建てさせたときと同じように、親子間であっても借地権は生じるのでしょうか。

2.使用貸借と賃貸借

 親子間で地代のやりとりをするかどうかで借地権は以下のような違いがあります。


(1) 使用貸借
 親族における土地の貸借は、わざわざ権利金や地代を決めて賃貸借を開始することはほとんどなく、タダのケースが多いと思われます。
 タダでの貸借を含め、借り受ける土地の必要経費である固定資産税相当額以下での貸借を「使用貸借」といいます。「使用貸借」は、地代のやりとりをする「賃貸借」と比較して賃借人の権利が借地権ほど強くありません。税務上は、子に借地権が発生したとはみないので、贈与税がかかることはありません。また、子は土地をタダで借りることから、将来にわたって地代相当の利益を受けることになりますが、この部分にも基本的に贈与税はかかりません。
 ただし、将来の相続税では、「使用貸借」している土地として評価しますので、借りている子の権利は考慮されず、更地価額が相続税の対象になってしまいます。


(2)賃貸借
 固定資産税相当額を越える地代のやりとりをする「賃貸借」の場合は、借主に借地権が発生するため、相続税評価上は更地価額から借地権価額を控除して評価することになります。 
 ただし、権利金の支払いがないと、親から子に借地権相当の贈与があったとされ、思わぬ税金が発生しますので注意が必要です。

3.親の家と同じ敷地にマイホームを建築するとき

(1)別棟を新築して住むとき
 親の家の隣に子が家を建てて住むのは、いきなりの同居に対する抵抗がある場合は良いかもしれません。
 ただし、同一敷地内で別居する子が相続で敷地を取得する場合、特定居住用の小規模宅地の特例の適用要件である「同居親族」を満たさなくなるため、原則として、同特例の適用を受ける事が出来なくなります。
 例外として、別居の子が親の生活費を面倒みるなど生計が一であれば、敷地のうち子居住部分のみが特例の適用対象になります。


(2)親の家に増築して2世帯住宅とするとき
 親の所有する建物に子が増築して2世帯住宅にすると、子からみればマイホームを一から建てるよりは金銭負担が軽くなりそうです。しかし、次のように贈与の問題が生じるかもしれません。
 親名義の建物に子がお金を出して増築すると、増築部分は親の建物になりますから、親は子から増築費用分の贈与を受けたことになってしまいます。そこで子が支払った増築費用分の建物の名義を親から子に移転させて共有とすれば、贈与税がかかることはありません。
 しかし、1つご注意いただきたいことがあります。


(3)2世帯住宅は共有登記か区分登記か
 増築部分を登記する方法として、共有のほかに建物の構造などの条件を満たせば区分登記することができます。区分登記すれば、親の家と子が増築した部分は別の家屋になりますから、共有持分の計算をする必要はありません。しかし、特定居住用の小規模宅地の特例では区分登記された建物は登記に合わせて別の建物と判定することになります。したがって、子が親の家に増築して増築部分を区分登記すると、別棟を新築したのと同じように、特定居住用の小規模宅地の特例の適用に影響が及びます。小規模宅地の特例では共有のほうが有利です。

4.まとめ

 実家に帰ってマイホームを建てる(増築する)ことは親子の生活にとって大きな転機となります。税金面はご説明したように選択の仕方によって様々な違いが生じてきます。どのような方法が良いか相続税・贈与税の注意点も考慮に入れて決めていただければと思います。

2023年9月15日

本当にあった相続税の話 母の預金口座から14億円を出金

今回は、相続税に関する裁判例をご紹介し、タンス預金について考えます。

1.事案の概要

 二男は、母の預金14億円を2年余りの間に毎日のようにATMから200万円ずつ現金で引き出し、相続税の申告財産を隠したというものです。

2.判決内容(令和5年2月16日東京地裁判決)

 二男は、「母の預金から現金を引き出したのは自分ではない。」と主張して裁判をしましたが、認められませんでした。
 二男は、国税局の調査で母の預金14億円の説明を求められましたが、一貫して「知らない」という態度で臨みました。調査では、引き出された現金が見つからなかったばかりか、二男が預金を引き出した決定的な証拠となるATMの監視カメラ映像が無かったようです。
 しかし、国税局は、①母は認知症を患って老人ホームに入っており、ATMから預金を引き出していないこと、②預金が引き出されたコンビニの店員は、頻繁に二男が来店していたのを目撃していたこと、③ETCカード履歴による二男の滞在場所と現金が引き出されたATMがいずれも近隣していることなど、いくつかの証拠を積み重ねて二男が母の承諾なく預金を引き出したので、不当利得返還請求権の申告漏れがあると判断しました。裁判所は、国税局の主張を全面的に認めました。

3.不当利得返還請求権?

 申告漏れ財産は、二男が引き出した現金ではなく、不当利得返還請求権という債権とされています。不当利得返還請求権とは、法律上の原因がなく利益を得た人に対して、損失を被った人が利益の返還を求める権利です。
 二男は、母に無断で預金から現金14億円を引き出し、その現金を所持しているか使ってしまったと認められるので、母には二男に対して14億円の返還を求める不当利得返還請求権が成立することになります。

4.タンス預金は見つかるか?

 相続税の調査は、相続開始から2・3年後に行われるのが一般的です。現金は、名前が書かれていないので誰のものか直ちに分からない上、使えば無くなるし、記録が残らないまま保管場所を移すこともできます。現金そのものが税務調査で見つかり難いことは間違いないでしょう。
 しかし、現金そのものが見つからなかったとしても、相続税の調査では、税務署が持っている過去の様々な資料と申告内容の矛盾や預金口座の動きを注視しており、相続人に疑問点の説明が求められます。調査官の納得いく説明内容でなければ徹底した調査が行われます。
 二男のように毎日200万円、合計14億円もの現金を引き出して何も知らないというのは無理な話です。また、国税局が裁判で主張した不当利得返還請求権というロジックが使われると、現金そのものや現金の使い道が調査で明らかにならなくとも課税処分されてしまいます。結局、タンス預金を隠し通すのは、難しいと言わざるを得ません。

5.タンス預金のリスク

 タンス預金は、低金利を背景に総額100兆円を越えると言われています。タンス預金を持つこと自体は、税務上、直ちに問題になるわけではありません。
 しかし、タンス預金は、銀行等に預けた場合と比べ、①盗難や火災等に対する安全性が低い、②ばれたくないと考えると自由に使うことが難しくなる、③申告漏れ財産として税務署にばれた場合、悪質とみられペナルティーが大きくなるというデメリットがあります。

6.まとめ

 この裁判では、二男の2年間に渡る徹底した毎日の200万円の引き出しは水の泡。さらに重加算税までかかって大変なことになりました。
 令和6年に新紙幣が導入されることから、紙幣交換のタイミングで新たな資料が税務署に蓄積されるかもしれません。タンス預金をお持ちの方は、その資産運用・相続対策を検討してはいかがでしょうか。

2023年8月17日

祖父母から孫への資産移転方法
~一括贈与の改正を踏まえて検証~

 2023年度の税制改正で、教育資金・結婚子育て資金贈与特例について非課税措置の期限が延長されましたが、使い勝手が悪くなったところもでてきました。政府は、両親や祖父母の資産を早期に移転し、有効活用することを支援するためこれらの制度を創設しましたが、改正毎に課税を強化しています。それでは、一体どのような方法が一番次世代へ資産を継承しやすいのか、今回は祖父母から孫への移転方法について検証してみました。

1.祖父母から孫への贈与税の非課税措置

 相続対策として使われる一般的な贈与税の非課税措置としては、下記のようなものがあります。
①教育資金に係る一括贈与(1,500万円)
②結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円)
③住宅取得資金の贈与(1,000万円又は500万円)
①②の一括贈与は、銀行等に贈与資金を拠出し、教育代等の領収書を保管して支出の都度銀行等に提出が必要なことから、管理が煩わしいのがデメリットとなります。一方、住宅取得資金の贈与は、手続きが1回で済むので管理の面からメリットがあると思います。

2.教育資金贈与とは

 教育資金贈与は、今年度の改正で令和8年3月31日まで適用期限が延長されました。祖父母(親)から1,500万円まで一括贈与を受けても非課税となりますが、祖父母死亡時の残高を相続財産に加算する必要があります。数年前までは残高があっても一括非課税でしたが、その後孫(受贈者)が相続開始時に23歳未満であれば非課税と徐々に課税強化されてきました。そして、今年度の改正で更に規制が入り、贈与者である祖父母(親)の相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合には、23歳未満でも残高に対して相続税が課税されることになりました。孫に対する相続税額の2割加算が適用されるため、超資産家である祖父母から孫への贈与については、かえって相続税額が増える場合もあります。これまでより選択を慎重に行う必要がでてきます。
 また、孫が30歳になり祖父母が存命の場合、使い残し部分に対して贈与税が課税されます。この贈与税率も直系への低税率である「特例税率」から「一般税率」へ改正となり同じく課税強化となりました。

3.結婚子育て資金贈与とは

 結婚子育て資金贈与は、今年度の改正で令和7年3月31日まで適用期限が延長されました。祖父母(親)から1,000万円まで一括贈与を受けたときは非課税となりますが、教育資金贈与と異なり、残高に対しては 例外なく相続税の課税対象となります。孫への2割加算課税もされますし、使い残し部分に対しての贈与課税もされ、税率も教育資金贈与同様「一般税率」へ変更となり課税強化されました。

4.住宅取得資金贈与とは

 住宅取得資金贈与とは、親や祖父母などから住宅取得のための資金援助を受ける場合、最大1,000万円までは非課税となる贈与のことです。贈与時期や住宅の性能によって下表のように非課税限度額が異なります。

 適用を受けるためには、受贈者である孫の所得要件や取得建物の要件・確定申告が必要ですが、前記の教育資金・結婚子育て資金贈与と大きく異なるメリットがあります。

5.相続直前の贈与でも相続税に加算無し

 住宅取得資金贈与の一番のメリットは、相続直前の贈与でも相続財産への加算がされないことです。今年度の税制改正で生前贈与加算が3年から7年へ延長されます。これまでよりも長期的に贈与税対策が必要となることから、生前贈与加算の対象にならない孫などの法定相続人以外への贈与対策も考慮する必要がでてきます。祖父母から孫への大きな資産移転方法としては、相続直前でも行いやすい住宅取得資金の贈与が最も使い勝手がよく、また管理がしやすいと思います。

6.住宅取得資金の贈与の留意点

 住宅取得資金の贈与適用時の留意点があります。孫が住宅取得をすると持ち家有の状態となります。ここで相続発生の特例適用時にデメリットがでてきます。それは、小規模宅地等のいわゆる「家なき子」制度を適用できなくなることです。例えば、祖父母に相続が発生した場合、孫に自宅を相続させるなどの遺言を作成していても、家なき子でなくなるため、特定居住用宅地等の80%減額の適用が出来なくなってしまいます。「家なき子」として子供は小規模宅地等の適用が難しいことから、孫への遺贈を考えている場合に、特例の適用が不可となってしまいます。ご自宅の路線価が高い地域の場合の影響度はかなり大きく、住宅取得には相続を踏まえた総合的な判断も必要となります。

7.まとめ

 祖父母から孫への一括贈与に対して検証してきましたが、扶養義務者からの生活費・教育費等の贈与についてはそもそも非課税とされています。お孫さんのライフステージに合わせてその都度必要な教育費等の贈与を行い、住宅取得という大きな資産形成時に一括贈与などをご検討されてはいかがでしょうか。

2023年7月14日

老人ホーム等に入所中に相続があった場合の小規模宅地の特例

 近年、老人ホームや介護施設等の数はどんどん増えています。老人ホームといっても、富裕層の方しか入ることができないような高級老人ホームも近年は増えており、一人暮らしのため、平日は自宅で生活し、週末だけ高級老人ホームを別荘のように利用するケースもあるようです。
 今回は、被相続人が老人ホームに入所中に相続があった場合でも、小規模宅地の特例の適用を受けることができる要件を考えていきたいと思います。

1.小規模宅地の特例について

 相続開始の直前において「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」については、一定の要件を満たす場合、自宅敷地のうち330㎡まで相続税評価額の80%を減額することができます。小規模宅地の特例を使えるかどうかで相続税額は大きく変わってきます。
 被相続人が自宅を離れて老人ホームに入所したまま相続があった場合、一般的には、相続開始の直前において被相続人が自宅に住んでいたとはいえません。それでは、自宅の敷地に小規模宅地の特例を使えないのでしょうか。

2.老人ホーム入居中に相続があった場合

 結果から言えば、次の3つの要件を満たす場合は、自宅の敷地は老人ホームの入所直前の状況をもって「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」とみることになりますので、小規模宅地の特例の対象となります。

要件① 相続開始直前に要介護認定等を受けていること
要件② 老人福祉法等で認定された老人ホーム等に入所していたこと
要件③ 老人ホーム入所後の自宅が賃貸等されていないこと

 これは、被相続人が介護を受ける必要があるため、住んでいる自宅を離れて老人ホームに入所しなければならない場面を考えています。被相続人は、自宅での生活を望んでおり、いつでも自宅で生活することができるように自宅が維持管理なされていれば、実際には病気療養のために一時的に入院しているのと同様な状況にあります。自宅で生活していないため一律に小規模宅地の特例の対象に当たらないとするのは実情にそぐわないからです。

3.要件①…要介護認定等について

 被相続人が要介護認定等を受けていたかどうかは、老人ホームに入所した時ではなく、相続開始時までに認定を受けていたかどうかで判定します。
 それでは、要支援認定の申請中に亡くなった場合はどうなるのでしょうか。申請をしてから市区町村の審査を受けて認定を受ける流れになりますが、介護保険法では申請があった日に、さかのぼって効力が生じることになっています。相続開始時点では、申請中であっても、相続後に要支援認定が認められれば大丈夫です。
 なお、配偶者が要介護認定を受けたために、夫婦で一緒に老人ホームに入所することもあるかと思います。この場合で、要介護認定を受けていない方が亡くなってしまったときは、自宅の敷地について小規模宅地の特例の適用を受けることはできません。

4.要件②…老人ホームについて

 入所する老人ホームはどこでもよいというわけではなく、一定の要件を満たしている必要があります。老人福祉法により都道府県から認可を受けている老人ホームなどが該当します。
 無認可の老人ホームでは、小規模宅地の特例を受けることができませんので、入所前に施設に確認をしておくことが大事です。

5.要件③…老人ホーム入所後の自宅が賃貸等されていないこと

 自宅は、基本的には老人ホーム入所時と同じ状態を保つ必要があります。老人ホームに入所後、自宅の用途を変更し、他人に賃貸しているときや事業用に使用しているとき、生計が別の親族が引っ越してきたような場合には、小規模宅地の特例の適用が不可となりますのでご注意ください。
 なお、新たに自宅を他人に賃貸した場合は、居住用の8割引きに代えて、貸付事業用として200㎡まで5割引きの小規模宅地の特例を受けることができる場合があります。

6.誰が自宅の敷地を相続するか

 自宅を相続する方が誰でも小規模宅地の特例を使えるわけではありません。
被相続人が老人ホームに入所中に相続があった場合、小規模宅地の特例を使うことができる相続人は、次のいずれかの方です。

①配偶者
②老人ホームの入所直前に被相続人と同居していた相続人
③上記①、②がいないときは、いわゆる家なき子の要件を満たす相続人

7.最後に

 小規模宅地の特例は、相続前の状況で使えるかどうかが決まる要件が多くあります。また、老人ホームへの入所が絡むと、判断が複雑で非常に難しくなります。
 老人ホームへの入所を考えている方は事前に検討しておくことをお勧めします。ご不明な点がありましたら、ATOまでご相談ください。

2023年6月15日

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ATO通信

離婚で財産分与、申告を忘れずに

 結婚があれば、当然に離婚だってあり得ます。令和4年に日本において結婚したカップルは約52万組、逆に離婚をされた方は約18万組ありました。最近は離婚件数が減少傾向にあるようですが、夫婦仲が良いからといって絶対に離婚しないとは言い切れない世の中です。さて、離婚には財産分与が付きものですが、財産を渡したときは税金のこともお忘れないように。

1. まずは渡した側は注意

 離婚したときは、夫婦の一方は相手側に対して財産の分与を請求することができます。婚姻中に生じた財産の清算のためなど、その意味合いには様々な性質があるのですが、夫婦であった間に蓄積した財産を原則1/2に分けるようなものと考えれば良いでしょう。
 ここで、対象財産は誰名義のものなのかは関係ありません。あくまで夫婦であった期間に取得した財産か否かです。そのため、主に夫が働いて妻は主婦であったとすると、夫名義の財産を妻に分与することになります。
 分与する財産が現金であれば特に注意する必要はありませんが、不動産や株式などを渡したときは税金のことも頭にいれておきましょう。税務の世界では、財産分与をしなくてはならない義務の履行として不動産等を渡した、そして分与義務の消滅という利益が生じたため譲渡所得の対象になるという考え方なのです。

2. 不動産や株式などの財産分与

 財産分与なのですから売却代金は一切ありません。しかし、分与した側は不動産等を売却したことになりますから譲渡所得税が生じる可能性があるわけです。
 それでは、いくらで売却したとすれば良いのかですが、これは財産分与時における財産の時価で計算することになっています。
 不動産であれば、本来は市場価格が時価なのでしょうが、そんなものは実際に売却をしなければ誰も分かりません。そこで、実務的には相続税評価額を1つの参考指標として考えるのも良いでしょう。ただし、土地は公示価格という客観的な時価指標がありますので、相続税評価額をそのまま使うのでは無く、公示価格相当に引き直しましょう。具体的には、次のように計算すれば良いのです。
 「相続税評価額×1.25=公示価格相当=時価相当」
 また、上場株式などは分与日の終値を用いて計算すれば大丈夫です。市場で売却したわけではないので計算書が出ませんが、申告を忘れずに行いましょう。
 このように、株式そのものを分与すると自分で計算して申告しなければなりません。ところが、上場株式は特定口座で所有をしており、個別に計算などしたことがない方が現実には多いのではないでしょうか。
 そこで、相手側は上場株式そのものを望んでいないのであれば、売却をして得た現金を分与した方が簡単かもしれません。こうすれば、売却の計算は証券会社が行ってくれます。

3. 財産をもらった側は

  財産分与で財産をもらった側の取扱いも確認しておきましょう。もらった側(取得者)は、財産分与を受けることができる請求権と引き換えに財産を取得したことになります。つまり、請求権が対価であり贈与を受けたわけではないので、たとえ高額であっても贈与税の対象にはなりません。不動産や株式などであれば、渡した側は分与時の時価で売却したことになり、もらった側はその時価で取得したことになるのです。
 そのため、財産分与で不動産などを取得した方がその後に売却をしたときは、分与日の時価を取得費として譲渡所得の計算をすることができます。もらった側は分与時には税金の問題が生じないため、取得費のことまでを気にする方はまずいないと思います。不動産を売却したときは、特に取得費の計算を忘れずに行いましょう。何も考えずに売却価額の5%の概算取得費を用いて申告をしてしまったとしたら、譲渡所得税は数百万円単位で増えることでしょう。ちなみに、事前に登記簿謄本をしっかりと確認しておけば、取得原因は財産分与となっているので見落とすことはないはずです。

4. 偽装離婚は?

 財産分与額が相応に計算されたものであれば、どんなに高額であったとしても、原則として贈与税は課税されません。著名人や富裕層の方などは数億円から数十億円に達することも珍しくないでしょう。
 そうすると、これを上手く使って生前に妻へ財産を移転しようという方も出てきそうです。そこで、税務署も牽制を行っています。離婚を手段として贈与税や相続税を免れようとしたと認められる場合には、贈与税を課税することになっているのです。財産分与の割合が大きすぎる場合や偽装離婚を利用したケースです。
 では、現実にはどこまで財産分与の実態をチェックできるのか?あらかじめ決められた基準はないですから一見して分かるものでもありません。あくまで、それぞれの家庭の事情に合わせて判断することになるでしょう。


 


 


 


 

2023年8月31日

消費税相当の値下げ通告受けていませんか?

 令和5年10月、いよいよ消費税のインボイス制度が始まります。領収書はどうなるのか?取引慣行は変わるのか?など、新たな制度ですので不安なことも多いことでしょう。世間のうわさでは、インボイス発行事業者にならないと取引先から値下げ要求があるぞ!などとも言われていますが、本当でしょうか。

1. 免税事業者はインボイスを発行できない

 まずはインボイス制度の概要をおさらいしておきましょう。ご存知の通り、インボイスは消費税の納税義務がある事業者、いわゆる課税事業者でなければ発行することができません。そして、これからはインボイス発行事業者以外からの仕入れは消費税を支払ったことにならない取引へと変更されます。
 例えば、税抜10万円、税込11万円の取引を考えます。インボイス制度導入後も今までと同じ金額で取引を継続することにします。支払代金の総額は11万円です。
 ① インボイス発行事業者への支払い   ・・・ 税抜10万円、消費税1万円の取引
 ② インボイス発行事業者以外への支払い ・・・ 11万円の取引( 消費税は認識できない
 代金総額は変わらなかったとしても、消費税の処理が異なります。インボイス発行事業者以外、つまりは免税事業者からの仕入取引では、取引先は納める消費税が1万円増加する可能性があります。仕入れの取扱いが激変するということです。そこで、社会への影響を緩和させるため実際には次のような
経過措置が設けられました。
第1期間:制度導入後3年間(令和8年9月30日まで)
 上記②⇒税抜10万2000円、消費税8000円の処理可能
第2期間:第1期間後の3年間(令和11年9月30日まで)
 上記②⇒税抜10万5000円、消費税5000円の処理可能

2. 免税事業者に取引価格の引き下げ要請!

 このように、免税事業者からの仕入れは消費税的には不利になるため、取引の見直しを迫られる可能性があります。
 そうだとしても、経過措置があるのでインボイスの影響が完全に現れるのは6年後です。特に3年間は消費税相当として8割を認めてくれます。政府としては、この期間にインボイス対応を考えて下さい、経過措置もあるので取引先は不当に(安易に)取引金額の引き下げ等はしないで下さい、というスタンスです。
 それにも関わらず、免税事業者に対して11万円の支払いをしてもこれからは消費税1万円の処理ができなくなる。そのため、その分価格を1万円引き下げて下さいと要請する事業者が出てきています。貸家や駐車場などでも実際にチラホラと耳にするようになりました。
 

3. 慌てずに対応

 免税事業者の方は、課税事業者となってインボイスを発行すべきか否かは世間の様子を見ながら判断したいという方が多いのではないでしょうか。
 ところが、実際に取引価格の引き下げ要請があると、今後のこともあるし、相手はうちより大きい会社だからなど、様々な理由からどうしても弱気になりがちです。そして、もう課税事業者になるしかないか、というマインドになります。
 でもちょっと待ってください。先ほど見たように経過措置が設けられていますから、消費税全額への影響が生じるのは6年後です。少なくとも3年間は消費税への影響は2割相当のはずです。なんとかならないものでしょうか。

4. まずは交渉すべき

 実は、インボイス制度に絡んで取引価格の一方的な引き下げ要請を行うのは独占禁止法や下請法上の違反となっています。特に、6年間は経過措置もあることから消費税相当額の単なる価格引き下げを行ってはいけないとして問題視しています。
 そのため、課税事業者にならないのであれば取引価格を引き下げると通告した事業者については、公正取引委員会が注意勧告をしているのです。
 双方が協議して納得のうえで取引価格の見直しを行うのであれば良いのですが、一方的な見直しに応じる必要はありません。相手先は独占禁止法上の取扱いを知っていたとしてもわざわざ教えてはくれません。
 ルールはどのようになっているかを良く知り、減額要請を単純に受け入れるだけではなく、納得した上での対応を心掛けるべきです。
 

5. 消費税増でも税効果分を考えてもらう

 免税事業者から仕入れを行った事業者は納める消費税が増加する。このことだけを見れば消費税分は確かに損するでしょう。しかしながら、本来は法人税や所得税への税効果(減税効果)も測定しなければナンセンスです。事業者ですから、消費税の負担が増えればそれは経費が増えることになります。つまり、増えた消費税納税分だけ法人税や所得税が減ります。例えば適用税率が30%であれば、1万円の消費税が増加しても事業者全体での税負担影響額は7千円です。経過措置に加えて、ここまで考えたうえで減額要請をしてきたのでしょうか。価格引き下げの話があったら、まずは本当の影響額はどれ程なのかを知ってもらった上で交渉を行うようにしましょう。


 


 

2023年8月1日

相続時精算課税で上手に贈与

 既報のとおり、今年度の税制改正により相続時精算課税制度の使い勝手が向上しました。令和6年の贈与からは110万円の基礎控除が設定されることになったからです。これを機に、相続時精算課税を活用した贈与を考えてみましょう。

1. 相続時精算課税を検討?

 いままでは、相続時精算課税を一旦使ってしまうと毎年110万円までの基礎控除枠が無くなってしまう、という大きなデメリットがありました。これが利用を躊躇する理由の1つであったことは間違いないでしょう。
 この点について、税制改正により相続時精算課税を利用していたとしても110万円の基礎控除枠が設けられることになりました。令和6年からは、相続時精算課税を利用するか否かで毎年の贈与税の基礎控除に違いが生じなくなるのです。
 そこで、この機会に相続時精算課税の利用法を考えてみましょう。暦年課税では贈与税が多額になるので難しかった不動産の贈与も、相続時精算課税を利用すれば上手くいくかもしれません。

2. 賃貸建物の贈与

 相続時精算課税を使うのであれば、値上がりしそうなものや収益を生むものを贈与するのが良い!ということは幾度となく伝えているとおりです。そこで、アパートなどの賃貸不動産である土地建物を親が子に贈与するケースを考えます。収益を子に移転することが目的ですから、まずは建物のみの贈与で考えます。
 贈与時の賃貸建物の評価額は固定資産税評価額の70%です。建築費に比べると相当低い金額になっているはずです。それでも数千万円の評価額になることもあるので、贈与税のことを考えると暦年課税では難しい場合が多々あります。
 そこで相続時精算課税による贈与を活用します。「基礎控除110万円+特別控除2500万円=2610万円」までは贈与税がかかりません。2610万円を超える部分は20%の贈与税が生じますが、相続の際には精算されますので相続税の前払いのようなものです。
 贈与を受けた建物の評価額に対して、毎年の収益はどのくらいになりそうですか?この場合、土地は地代ゼロの使用貸借で借り受けるので、子からすれば建物評価額に対する家賃の割合がそのまま利回りになるという見方も出来そうです。贈与税の評価額は建築費の半分以下になるケースが多いので、利回りは10%でしょうか、はたまた20%でしょうか。物件次第では魅力ある贈与になりそうです。

3. 借入金があると難しい

 これも以前に伝えていることですのでご存知の方が多いかもしれませんが、借入金付きの賃貸建物の贈与は実務的には要注意です。借入金は当然建物とセットで移さなくてはならないので、借入金の負担を付けた贈与になります。このような場合は、賃貸建物の評価額は固定資産税評価額の70%で計算することが出来ず、時価相当額になります。固定資産税評価額を用いた贈与が出来ないので、贈与のうま味は大幅に減少します。
 また、税務上は贈与をした親は引き継がせた借入金額を対価として子に建物を売却したと考えるため、譲渡所得の計算まで登場します。
 このように、借入金付きの賃貸建物は贈与にはあまり向いてなさそうです。こんなときは、発想を転換して土地を贈与するのはどうでしょう。

4. 土地の贈与ではどうなる?

 土地は建物に比べて評価額が高くなることが多いですが、相続時精算課税を利用するからこそ、また納めた贈与税が相続時に最終精算されるからこそ、土地の贈与が行い易くなります。借入金付きの賃貸建物の敷地が担保提供されていたとしても、土地自体には借入金が付いていないことが多いのではないでしょうか。それならば、この土地を贈与します。賃貸建物の敷地の評価額は貸家建付地となり、路線価評価額×(1-借地権割合×30%)になります。
 ここでのポイントは、贈与された土地から収益を得るようにすることです。地代を設定して親から地代収入を得るようにすれば収益物件化できます。地代は借地権課税の問題を回避するため、土地の路線価評価額の約6%、いわゆる相当の地代で設定します。ここでの路線価評価額は、貸家建付地の(1-借地権割合×30%)をする前の自用地評価額で計算します。そうすると利回りは約6%ではなくて、実質的には約7.5%になりそうです。さらに言えば、地代の設定は路線価評価額ではなく土地の時価ベースでも構わないので、もっと高額に設定することも可能です。このように、賃貸建物を贈与せずとも親から子へ収益を移すこともできるのです。

5. 小規模宅地への影響

 贈与するのであれば、小規模宅地の特例との兼ね合いも考える必要があります。贈与前の賃貸建物の敷地は、貸付事業用宅地として減額対象になりますが、建物の贈与後はこの特例が利用できなくなる恐れがあります。また、土地を贈与すれば、その土地は当然に対象外です。
 つまり、贈与をすると相続税にどう影響するかまで把握しておく必要があります。内容は千差万別ですので、悩むのであれば一度弊社へご相談を。


 

2023年6月30日

贈与税が大変!申告前なら取消し可能

  相続税対策のことを考えて、子どもへ財産を贈与することはよくあります。自分ではお得と思って実行した贈与ですが、翌年に贈与税の申告を行おうと計算をしてみたところ、勘違いがあったのか贈与税が相当多額になってしまったらどうしますか?今からでも贈与を取り消すことはできるのでしょうか。

1. 原則的な取扱い

 生前贈与を行うのであれば、当然のことですが後々の相続税の負担より贈与税の方がお得にならなければ意味がありません。賃貸建物などの収益財産を贈与するので贈与税はある程度高くても構わない、ということがあるかもしれませんが、通常は贈与税の方が高くつくのであれば行うメリットはありません。
 そうは言うものの誰であっても間違えはあります。贈与を行った後になって勘違いや思い違いに気付いた、はたまた試算してみたところ贈与税が想定より多額になってしまったので考え直したい、ということもあるでしょう。このようなときは、贈与を取り消して無かったことにしたいと思いますが、税務上は認められるのでしょうか。
 残念ながら、原則的な取扱いでは贈与税を課税することになっています。それは、個人間で無償による財産の移転があったときは贈与があったものとして贈与税を課税するルールになっているためです。事後に取消したかどうかなどとは関係なく、まずは贈与の事実があったのであれば課税するのが税務署の考え方です。贈与を取り消しさえすれば良いという単純な問題ではありません。
 しかし、全てのケースについて杓子定規に贈与税を課税するのも酷な話です。そのため、一定の場合には贈与税を課さなくても良いという取扱いが用意されています。

2. 3月15日までに取消しすれば実務上はOK

 税務署としては、贈与の取消しや合意解除をやみくもに認めてしまうことが問題なのです。贈与税の申告納税をしたものの、1年後に贈与の取消しを行ったからやっぱり税金を返して欲しいと言われてしまっては困ります。
 そこで、そのようにならない下記の4つの要件を満たす場合には、贈与の取消し等を税務上も特別に認めて課税しなくても良いことになっています。
 1.取消し又は解除が贈与税の申告期限までに行われており、名義を戻す等の手続きを行っている
 2.贈与財産を処分しておらず、担保目的などにもされていない
 3.贈与された財産として所得税等の申告や届出をしていない
 4.受贈者は贈与財産からの賃料収入や配当収入などの法定果実を受領していない、受領したのであれば贈与者へ返却している

 ここでのポイントは、贈与税の申告期限である翌年の3月15日までに取消しや合意解除をするのであれば税務署は認めるということです。逆に3月15日を過ぎると、たとえ取消し等をしたとしても贈与税が課されます。考え直しは翌年の申告期限までだということです。

3. 登録免許税や不動産取得税は戻らない

 贈与財産が不動産であれば登録免許税や不動産取得税がかかります。贈与の取消しを行ったときにはこれらの税金はどうなるのでしょう。
 結論からいえば、このような流通税と呼ばれる税金は、たとえ取消しを行ったとしても課税されることになっています。どんな理由であれ、所有権が一度は移転したのは事実だからです。したがって、所有権移転に伴う登録免許税は返ってきません。また、不動産取得税も同様に課税されます。
 ただし、親族間贈与であれば、不動産取得税を一定の要件のもとで課税しないという特例的な取扱いを置いている県もあります。不動産取得税は念のため確認をした方が良いでしょう。なお、取消しや合意解除を贈与税の申告期限までに行う必要があるのは同じです。リミットは翌年の3月15日までと思いましょう。

4. いっそ相続時精算課税にするか?

 税務署は申告期限までに贈与の取消しをするのであればその理由は問いませんが、贈与税が多額になりそうなので暦年課税による贈与を一旦見直ししたい。これが理由としては一番多いのではないでしょうか。税負担のことで悩んでいるのであれば、いっそ2500万円までの特別控除枠がある相続時精算課税を検討するのはどうでしょう。令和6年からは制度が改正されて110万円までの非課税枠が新たに設けられます。今までは使い勝手が悪かった制度ですが、これからは利用価値が見出せます。
 登録免許税や不動産取得税が課税されるのであれば、贈与の取消しはせずに精算課税贈与に鞍替えしたらどうなるのか?今一度考えるのも良いかもしれません。
 いずれにせよ、判断には相続税と贈与税のシミュレーションが必要になります。しっかりと準備をしておけば、どんなことにも対応ができるのです。

2023年5月31日

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今月の言葉

因縁

 英国近現代史における二組の親子の因縁話である。
 19世紀後半、英国政治のライバルと言えば、保守党(トーリー党)のベンジャミン・ディズレリーと自由党(ホイッグ党)のウィリアム・グラッドストンであった。前者が地主貴族層に依拠しながらも貧困層への社会政策に目を向け、一方で多くの植民地を持つ大英帝国の建設に功績があったのに対して、後者は勃興しつつあった商工事業者に依拠して、「平和・緊縮財政・改革」を掲げて、ビクトリア朝期をつうじた、リベラリズム(政治的自由主義、平等、自由貿易、地方自治など)の方向への潮流を主導した。さて、保守党と自由党は、各々党内に突出した叛乱分子のグループを抱えていた。
 保守党の叛乱分子のリーダーは、大貴族マールバラ公爵の次男ランドルフ・チャーチル。貴族階級の出身ながら、より貧困層に向けた社会政策を標榜し、ディズレリーの没後は「プリムローズ・リーグ」(ディズレリーの好んだ桜草の花にちなんで命名したという)という大衆団体を組織して、保守党の選挙において下層階級からの集票に貢献した。
 自由党には、バーミンガム市長出身のジョゼフ・チェンバレン。こちらもかなり社会主義的な政策を掲げつつ、「自由党全国連盟」という議会外の大衆団体を組織して、自由党の選挙に貢献した。
 二人は、共に議会内、党内では少数派であったが、大衆組織を握っていた故に、党内では無視することの出来ない存在となっていたのである。
 やがてチェンバレンは、自由党の党首グラッドストンが、アイルランド自治法案にかまけて自己の立案した地方自治政策に無関心であったことなどを契機に自由党を離れ、国内的にはリベラルだが対外的には帝国主義者であったホイッグ貴族のハーティントン侯爵とともに、保守党陣営に身を移した。一方その頃ランドルフ・チャーチルは、保守党内閣の蔵相の地位にまで栄達を遂げていたが、強すぎる自己過信故に、保守党貴族層の嫌忌する軍事費の削減予算を組んで、反感を買い内閣を追われた。そのときの首相ソールズベリー侯爵は、チャーチルを内閣から追った後任をチェンバレン/ハーティントン派に求めた。つまりこの自由党を離党した派閥(アイルランド自治に反対であったので、「自由統一派」と呼ばれる)が手許に存在する限り、チャーチルは不要であったのだ。
 チャーチルは、その後脳に深刻な病を抱えて、政治家として立ち直ることが出来なかった。チェンバレンは、その後保守党と自由統一派との連立政権で植民地大臣などをつとめ、社会政策よりも帝国主義に寄った立ち位置での業績が大きい。
 さて、二人の子孫の因縁話である。チェンバレンには政治家となった二人の息子がいた。兄のオースティンは外相としてロカルノ条約を締結し、ノーベル平和賞を授けられた。弟のネヴィル・チェンバレンは、1930年代の英国首相。ヒトラーとの妥協で有名なミュンヘン会談の当事者である。このときチェンバレンの対独宥和政策を同じ保守党内で厳しく批判した者が、誰あろうランドルフ・チャーチルの長男ウィンストン・チャーチルであった。チェンバレンの宥和政策は結局失敗し、ナチスのポーランド侵攻とともに英国は1939年9月対独宣戦を布告し第二次世界大戦が始まる。が、翌年5月ノルウェーと西部戦線での敗退の責任を問われてチェンバレンが首相を辞任すると、あらたな挙国一致内閣で首相の印綬を帯びたのは、ウィンストン・チャーチルであった、と言うお話。

 

 

2023年8月31日

この道一筋

 【設問】 以下の文章を読み、末尾の問いに答えなさい。
○○島は、海に面した小さな島です。穏やかな水道をへだてて、本土の港まで連絡船が運航しており、英吉さんは連絡船の船長として、長く島の人々の暮らしを支えてきました。
英吉さん夫婦は○○島に住み、島の人々とも大の仲良しです。島が高齢化する中で、まだまだ元気で働いています。「平成の大合併」で島は本土の港町の一部となりました。それに伴って選挙区の区割りが変わったせいなのか、突然これまで島民の念願だった、島と本土の港町をつなぐ架橋の話が具体化し、あれよあれよという間に「ふるさと創成」だかの公共事業の一環として、数年後には連絡橋が完成する運びとなりました。さて、連絡橋ができれば当然連絡船は廃止です。
では、英吉さん夫婦は、これからどう暮らしていけばよいのでしょうか?あなたの意見を回答欄に200字程度で書きなさい。
<太郎の回答> 
  英吉さんは、若い頃船員になってから、船の仕事しかしたことがない。この道一筋の人である。
 定年までまだ間があるというなら、どこか外の土地で船の仕事を見つけるしか彼の働く道はない。
 連絡船の会社は、橋ができると解散するそうだから、それまでによその土地で船の仕事を見つけるのは、英吉さん本人と会社の責任である。
<桃子の回答> 
 これまで島の人々は、英吉さんの連絡船にひとかたならぬ世話になった。連絡船がなければ島の人々の暮らしは成り立たなかった。英吉さんは定年まで町役場で再雇用して、子供達に海のことでも教える仕事をしてもらうのがよいのではないか。
 合併で町が広くなってしまい、役場も本土側に行ってしまったので、色々難しい問題はあるだろうが、島民には、英吉さん夫婦がこれからも島に住めるように考える責任がある。
<次郎の回答>
 そもそも、令和の世の中で、「この道一筋」を貫いてきた英吉さんの生き方が問題なのではないか。
 これまでも、これからも日本はどんどん変化していく。英吉さんだって、連絡船の船長をやっている間に、たとえば無線技師とか、漁船のメンテナンスとか、何か趣味や副業でもよいから次の仕事につながるような、別の何かを準備しなければいけなかったのではないか。橋ができるまで、短いがまだ時間がある。英吉さん夫婦が、島に住み続けたければ、急いで第二の人生の仕事を準備するほかはない。
<この稿の筆者の論評>
 英吉さん夫婦の問題は、他人ごとではない。たとえば、現在人手不足で話題の路線バスの運転手だって、あと十年もすれば、自動運行の無人バスが実用化されて、仕事がなくなってしまう。それを知っているから、路線バス運転手の応募者が少ないのだ。都会ではロボットに宿泊サービスや介護までやらそうとしている。少子化が止まらず、移民も受け入れないこの国では、機械に頼って人間の仕事を少なくしようとする流れは止まらない。「この道一筋」で仕事への「こだわり」や「夢」をもっても、当のその仕事がなくなってしまうかもしれない。「この道幾筋」が正解なのだ。

2023年8月1日

岐阜の嫁入り

 以前本欄で「名古屋の嫁入り」と題して、昭和50年代の名古屋市民の結婚に対する考え方、派手な披露宴と「しーっかりと大きい」引き出物、嫁入り道具の移動が重要な意味を持つこと、「在所」の婿自慢等を書いた。今月はその続編として、名古屋の隣、岐阜の町で実際にあった披露宴の事例について、この稿の筆者が経験したことを書く。時代は同じく昭和50年代、筆者が二十代半ば頃の話である。
 H君とKさんは共にこの稿の筆者が大学で所属していた放送のクラブの後輩である。二人は、クラブ内恋愛で、ちょっとしたドラマを経て卒業一年後くらいにぶじ結婚の運びとなった。H君の出身は石川県、たしか能登半島の奥の方ではなかったかと思う。Kさんは岐阜の町中の高校を出て東京の大学に進学した。K家ではおそらくK嬢の結婚に備えてそれなりの資金を貯蓄していたのであろう。K嬢をH君に嫁がせることに異議はないが、披露宴が能登半島の奥で開催されて、岐阜の人々に見せられないのは困ると考えたのであろう。両家協議の結果披露宴は岐阜市内の有名な料亭で開催、H家の親戚一同は、当日朝能登をバスで出発し、岐阜市に繰り込むことで話がついた。(後から考えると、このバスの車中ですでに祝杯を挙げる親戚もいたのだと思う)
 さて、披露宴の司会者はと言うと、当時名古屋に在住していたこの稿の筆者が務めることとなり、週末に二度ほど、会場となる岐阜の料亭に通って、万端打ち合わせることとなった。まずちょっとした小競り合いがあったのは、会場側の司会マニュアルという台本のようなものがあり、披露宴冒頭「本日は席次万端整いませず、ご不満の向きもあろうかとは存じますが、めでたい席に免じて・・」と言えと書いてある。それを省略しようとしたところ、会場側が目を三角にして「この台詞だけは、必ず言っていただかないと困ります」と言うのだ。新婦K嬢の口添えもあって渋々了承したものの、心中では「なんでこんなアリバイ工作みたいな台詞を・・」と不満であった。
 司会者冒頭の辞は結局「新郎新婦が所属しておりました放送研究会のアナウンス読本に“暖かくなる花曇りの午後”という言葉がございます。そんな言葉がふさわしい今日昭和○年○月○日、ただいまより、H家、K家結婚披露の宴を開催致します。本日は席次・・」というものになり、続いて媒酌人による新郎新婦紹介、主賓の祝辞、乾杯の挨拶と滞りなく進み、けっこうたくさんの来賓の挨拶が新郎側、新婦側交互に行われて、新婦一時退席となる。その前後だったか、新婦の日本舞踊のお師匠さんがひとさしお祝いの舞いを舞われ、その答礼に新婦がまた舞うという儀式があった。
 さて圧巻は、新婦お色直し入場である。この料亭では新婦が歩いて入場するのではなく、モクモクとドライアイスの白煙がたなびく中を、お色直しを終えた新婦が舞台中央にせり上がってくる仕掛け。そのせり上がりの間舞台の袖には左右三人ずつの料亭従業員がゴム仕掛けの紙の鳩を持って控えており、司会者が小声で「鳩!」と合図すると、鳩が一斉に新婦を祝して舞台に羽ばたくのであった。ケーキカットの後は、能登と岐阜の余興合戦。手許の台本ではとっくに披露宴は終わっているはずなのに、とくに能登勢からは次々と追加余興の申し出があり、H君のご近所の皆様の「オハコ」を全部歌っていただかないと「このままでは、能登に帰せない」と幹事役が仰るものだから、もうどうとでもなれと次々と放歌高吟を紹介し、ようやく新郎新婦の両親へのお礼言上、両家代表挨拶、お開きとなったのは開始後3時間20分。筆者の披露宴司会最長時間記録であった。

2023年6月30日

ニンニク

  古来我が国では鱗茎を食用とする臭いの強いネギ属の植物を総称して蒜(ひる)と呼んだ。蒜には大蒜、小蒜、野蒜・・などの種類があって、ニンニクはその中の一種である、大蒜にあたるという。日本の中世、仏教では、ニンニクの強精作用が煩悩を刺激して修行に害を為すということから、ニラ、ネギ等とともに五辛の一つとして僧の食用が禁じられた。大蒜のことをニンニクと呼んだ語源は、あらゆる苦難や屈辱に耐え忍ぶという意味の「忍辱」という仏教用語から来ているとのこと。が、実際には、つらい修行の最中に、精力を補完するために密かにニンニクを口にして、栄養不足をしのいだ修行僧もいたのだとか。
 ニンニクの原産地は中央アジアらしい。紀元前三千年以上昔、既にエジプトで栽培されていたことが分かっている。現存する最古の医学書「エーベルス・パピルス」には薬としても記載されている。ⅰ 我が国でも8世紀頃にはニンニクには、大陸から伝播していたとみられる。ニンニクには、効能と臭いという二つの面があるが、1709年(宝永7年)に刊行された貝原益軒編「大和本草」巻之五 草之一 菜蔬類では、「悪臭甚だしくとも効能が多いので人家に欠くべからざるもの」とされている。
 ニンニクの効能について、以下「にんにくのことがなんでもわかる」と称する「にんにく大辞典」ⅱ というサイトを引用しながら述べることにする。このサイトによれば、ニンニクには血圧低下、風邪の治療、精力向上、食欲増進、疲労回復、不眠や焦燥の解消などのほかに、癌、心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、脚気、腰痛、神経痛、糖尿病、冷え性、痔疾、水虫等々の諸病の予防や抑制の効果があるのだとか。もうこうなってしまえば、ニンニクは万病に効きますと言っているようなものである。
 そのニンニクの効能の内、殺菌効果の中心を成すものは、アリシンという成分である。が、アリシンは、ニンニクそのものに含まれているわけではない。1951年にスイスのノーベル賞科学者・ストールとシーベックが、細胞内に蓄えられている無臭のアリインという成分と維管束にある酵素アリイナーゼが反応することで、はじめてにおい成分アリシンができることを発見した。要するところ、ニンニクをおろし金でおろしたり、包丁で刻んだりして、さらにそれが酸素に触れると、アリインやアリイナーゼが反応して、アリシンが出来るという訳なのだ。このアリシンは、ニンニクが傷つけられることによって外部に対して防御機能を発揮する殺菌効果の素であるのと同時に、ニンニクのあの強烈な臭みの素でもある。お茶の類や青汁に含まれるカテキンはこの臭みを消す効果がある。またアリシンは、蛋白質と結合しやすいため、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品も消臭効果がある。
 さて、ニンニクと言えばその臭み故に、魔物を退散させる効果があるとされてきた。西洋社会では、先ず吸血鬼ドラキュラがもっとも忌むものがニンニクであり、ドラキュラ退散を願う者は、軒端にニンニクをつるして置いたとされている。さらに、西洋の子供達は、なくし物をしたとき「ニンニク、ニンニク」というまじないを唱えるのだそうだ。これは失せ物を隠していた魔女が、ニンニクの臭みで退散し失せ物を返してくれるからだとか。我が国では、「古事記」に登場する日本武尊が、信濃峠だかで悪霊に襲われて、噛んでいた蒜を投げつけて退散させたという言い伝えもある。
 ニンニクは西洋では、特に肉料理の味を調えるのに用いられてきた。我が国でははじめ薬として用いられてきたが、江戸も後期に進むにつれて猪、鹿などを鍋で煮て食べる肉食習慣が普及し、ニンニクを食材に用いる様になってきた由である。

ⅰ Wikipedea にんにく
ⅱ https://www.229dic.com/

2023年5月31日

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